1 : ◆ddlClgI6fA[saga] 2015/09/15 23:24:04.40 ID:U0Rkg4Zm0
男「じゃあさ」
女「しません」
男「もう二人っきりなんだから」
女「そうね、確かに私とあなた二人しかいないね」
男「だからさ」
女「お断りします」
2 : ◆ddlClgI6fA[saga] 2015/09/15 23:32:38.31 ID:U0Rkg4Zm0
女「ちょっと! 何出してるの?」
男「見てわかるだろう、ゴムだよ」
女「えいっ」ポイッ
男「何するんだ!」
女「あなたが変なことする前に捨ててやったのよ」
男「はあ……手ごわいな……」
女「ため息つきたいのはこっちよ。気をつけないと何するかわかったものじゃないわ……」
3 : ◆ddlClgI6fA[saga] 2015/09/16 01:08:51.05 ID:ijf/BL1v0
スタスタ
男「女さん、歩くなら車に乗らない?」
女「車の何でするって? 冗談じゃないわ」
男「何もしないよ」
女「じゃあどうしてさっきのゴムを拾ってきてるの?」
男「えっと、これは……。じゃあさ、マッチ持ってるからさ蝋燭つけて」
女「私、そういうの一番嫌い」
男「じゃあさ、カラオケ入らない?」
女「まともに歌えないでしょ」
男「あの空間がいいんじゃないか」
女「どうしてあなたはそういう事しか考えられないのかな……」
男「くそっ……今日も密室作戦は失敗か……」
5 : ◆ddlClgI6fA[saga] 2015/09/17 00:38:28.93 ID:+8SlbGCV0
男「ここでしよう」
女「は? ここって道路の真ん中で?」
男「どうせ誰も見てないし」
女「昨日は密室がいいとか言ってたじゃない」
男「場所なんてどこでもいいんだよ。レッツゴートゥーヘブン!!」
女「い、いやーっ!!」
ボコバキ
男「いてて……酷いな……」
女「道路のど真ん中なんてあなたおかしいんじゃない?」
男「むしろおかしいのは君だよ」
女「あなたが毎日毎日迫ってくるからおかしくなりそうよ」
7 : ◆ddlClgI6fA[saga] 2015/09/17 01:04:11.13 ID:+8SlbGCV0
ザバーン
男「海だー」
女「海だね」
男「誰もいないね」
女「海でもしないよ」
男「どうせ誰も来ないよ」
女「嫌なものは嫌」
スタスタ
子犬「くーん」
女「あれ、迷い犬かな?」
子犬「くーんくーん」
女「よしよしどこから来たの?」
ヨロヨロ
子犬「くーん」
スリスリ
男「かなり弱ってるな。きっと何も食べていないんだろう」
女「何か食べさせないと」
男「よし、二人プラス一匹でしよう」
女「空気読め!」
男「どうせ助からないんだ。せめて最へぶっ」
女「そういう所が最低って言ってるの」
子犬「くーん」
女「もう大丈夫だからね。おいしい物食べさせてあげるから」
8 : ◆ddlClgI6fA[saga] 2015/09/17 20:35:14.34 ID:+8SlbGCV0
男「よし、ご飯にするか海に入るか、それとも」
女「よしよし、いっぱい食べていいよ」
子犬「くーん」
モグモグ
男「無視か」
女「よしよしいい子だね」
男「この子はオスなのかメスなのか」
女「メスみたいね……」
子犬「くーん」
ペロペロ
男「おい、くすぐっていな」
女「あなた気に入られたね」
男「おうおう、どうした?」
子犬「くーんくーん」
男「わかんねーよ」
女「これでもする?」
男「今日はやめとくよ」
9 : ◆ddlClgI6fA[saga] 2015/09/17 20:56:07.13 ID:+8SlbGCV0
子犬「くーん」
男「そういやこいつ、どこから来たんだ?」
女「首輪してるね」
男「じゃあ飼い犬だったんだな」
女「そうみたいね。飼い主探そう」
男「見つかるわけないって。よし、じゃあ三人で」
女「ふざけないで。飼い主に怒られるよ」
男「飼い主なんて見つからないって。誰が怒るんだよ」
女「飼い主よ」
男「だいたいどうやって探すのさ」
女「ポスターでも貼ったら誰か見るかも」
男「誰が見るんだよそんなもの」
女「あなた、本当に考え方が暗いね」
男「そうでなきゃ毎日迫らないよ」
女「理解に苦しむわ」
男「それはこっちの台詞だよ」
10 : ◆ddlClgI6fA[saga] 2015/09/17 23:17:17.38 ID:+8SlbGCV0
女「うう……グスッ……子犬ちゃん……」
男「病気だったんだ。わかっていただろう」
女「でも……」
男「ちゃんとお墓まで作って弔ってあげた。十分だろう」
女「助けられなかった……」
男「俺たちじゃ無理だったんだよ」
女「わかってるよ。でも……」
男「できることは全部やった」
女「だからって……」
男「もう諦めろ!」
ビクッ
女「っ!」
男「これが運命なんだよ」
女「……」
男「さあ、忘れさせてあげるよ」
女「……最低。でも、いいよ。ちょっと怖いし、痛いのは嫌だけど……」
男「大丈夫、痛くしないから」
11 : ◆ddlClgI6fA[saga] 2015/09/19 00:10:52.86 ID:gQQuQg720
女「ちゃんとゴムはあるのね」
男「それじゃあ……」
女「やっぱりダメッ!」
男「えっ」
女「こんなことで自棄になっちゃうのはやっぱりダメだわ」
男「急にどうした?」
女「これで自棄起こすんじゃあ、子犬ちゃんを見つけなかった方が良かったみたいだから……」
男「……」
女「だから、ごめんやっぱり無理……。できないよ」
男「そうか……」
13 : ◆ddlClgI6fA[saga] 2015/09/25 00:39:50.69 ID:fGgEH6IB0
女「あ、リスだ」
男「森にリスぐらいいるだろ」
女「私、野生のリス初めて見た」
男「これ、レッドリストに載ってた種類じゃないか?」
女「そうなんだ」
男「向こうにもいる。絶滅危惧種だったのに随分と増えたな……」
女「そうね。森林開発もなくなったからね……。あ、オスがメスに求愛してる」
男「そろそろ、しようか」
女「待って、私は絶対しない」
男「どうして頑なに嫌がるんだ?」
女「嫌だからよ。したいなら一人ですればいいじゃない!」
男「一人が嫌だから……言ってるんだ」
14 : ◆ddlClgI6fA[saga] 2015/09/25 01:30:30.71 ID:fGgEH6IB0
女「そんな理由で私に迫らないで。他の相手でも探してよ」
男「他には誰もいないよ」
女「もしかしたら」
男「もう俺たち以外、この世界には誰もいないんだよ!」
女「……わかってる。でも、最後まで諦めたくないの」
男「でも、もう無駄なんだ」
女「だからって、心中なんてごめんよ。ゴムバンドだろうと、密室で練炭だろうと、道の真ん中でも、海でも、森でも!」
男「それで、何になる? もう希望なんてないんだ」
女「だから心中なんて馬鹿げてる」
男「馬鹿げてるのはお前だ。早く一緒に楽になろう。……一人にだけは……なりたくない」
女「なら、子孫でも増やす?」
男「え……?」
女「誰もいないね」
男「そうだな」
女「じゃあ」
終
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