1 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 2015/05/16 12:13:27.31 ID:atI4F+kO0.net
あかり「ホームで電車を待つよぉ」
3 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 2015/05/16 12:19:37.09 ID:atI4F+kO0.net
夜だった
全く静かだった
あかりちゃんは高岡駅にいた
ホームは地方都市ながら広かった
だけど人はまばらだった
時折停車する特急電車が
日本第二の都市圏から連れてきた
この北側の日本の何処へと行くのかわからない大勢の人を乗せて
東の方へと走っていく
あかりちゃんはベンチで座っている
あかりちゃんは電車を待つ
4 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 2015/05/16 12:21:45.35 ID:atI4F+kO0.net
暗く
静かだった
僅かばかり進めば田畑や自然の広がる街だった
あかりちゃんは静けさの中
眠りに落ちてしまった
あかりちゃんは膝の上にある鞄を抱いたまま
ゆっくりと浅く短い眠りの中に入っていった
5 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 2015/05/16 12:26:31.79 ID:atI4F+kO0.net
あの日乗り遅れた電車の事を思い出す
あかり「あれ?さっきまで夜だったのに明るいよぉ」
櫻子「あかりちゃん!」
あかり「櫻子ちゃん!?」
櫻子「あかりちゃんもお出掛け!?」
あかり「いや・・・その、あかり・・・」
櫻子「?・・・どうしたの?様子がおかしいよ?」
あかり「さっきまで夜で・・・それで電車を待ってて・・・」
櫻子「???」
櫻子「変なあかりちゃん!まだお昼だよ!駅のホームではあるけどさ!」
あかり「そ、そうだよねぇ・・・あはは・・・あかり夢でも見てたのかなぁ・・・!」
櫻子「そうだよ、あかりちゃん!きっと寝ぼけてたんだよ!」
櫻子「さっきお昼になったばかりだからこんなに明るいのに!」
あかり「そ、そうだねぇ・・・」
6 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 2015/05/16 12:28:47.70 ID:atI4F+kO0.net
櫻子「あかりちゃんも電車でおでかけかぁ・・・」
櫻子「偶然だね!」
あかり「偶然だよぉ」
櫻子「私はこれから――にいくんだけど、あかりちゃんは?」
あかり「あ、あかりは・・・」
櫻子「あかりちゃんは?」
あかり「あかりは・・・――にいくんだよぉ・・・」
櫻子「私と一緒だ!」
あかり「そ、そうだよぉ」
櫻子「じゃあ一緒に行こうか!」
あかり「・・・・・・・・・・・・う、うん!」
8 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 2015/05/16 12:31:32.40 ID:atI4F+kO0.net
あの日乗り遅れた電車を思い出す
夢の中で
そこには櫻子ちゃんがいて
だけどあの日あの時そこにいなかった
あかりがいた
あかりはあの日櫻子ちゃんとこうして
駅のホームで会ってはいない
だけど今
過去の櫻子ちゃんがそこにいて
あかりはあの日いなかった駅のホームにいた
あかりは何故かそこにいた
お昼だった
――季節は初夏だった
9 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 2015/05/16 12:35:09.92 ID:atI4F+kO0.net
どうして・・・?という疑問も
夢だから
という結論で済ませた
あかりちゃんと櫻子ちゃんは電車をまつ
やがて小さな体を揺らす律動が響き
駅のホームへと電車が入ってきて
その扉を開けた
体を揺さぶるゴトゴトと響く電車の律動を感じて
うっすらと汗ばんできたこめかみのあたりの汗を感じて
あかりちゃんはその妙な幻の
夢の中の電車に足を踏み入れる
10 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 2015/05/16 12:41:40.93 ID:sYeAGb+n0.net
電車の中にはいつもどおりまばらに人がいた
通勤や通学の時間にならなければ
混むということをしらない電車立った
あかりちゃんと櫻子ちゃんは
並んで座った
あかりちゃんは違和感を覚えながらも
体を座椅子に沈めた
他の客は置物のように動かなかった
11 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 2015/05/16 12:43:29.77 ID:sYeAGb+n0.net
櫻子「あかりちゃんは学校では――」
櫻子ちゃんがお喋りをする
あかりちゃんはそれに応える
夢の中の世界だからそれはきっと
自問自答なんだとあかりちゃんは思っていた
だけどあかりちゃんは目の前の櫻子ちゃんに対して
丁寧に一つ一つ応えていた
あの日乗り遅れた電車
電車は走る
12 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 2015/05/16 12:46:12.41 ID:sYeAGb+n0.net
櫻子「ねぇあかりちゃん」
あかり「なぁに櫻子ちゃん」
櫻子「あかりちゃんは何か後悔してる事ってある?」
あかり「・・・え?」
櫻子「例えばだよ」
あかり「あかりは・・・・・・」
櫻子「・・・何かあるの?」
あかり「どうしていきなりそんなこと・・・」
櫻子「うーん、どうしてだろうね・・・」
あかり「・・・・・・・・・」
13 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 2015/05/16 12:48:04.56 ID:sYeAGb+n0.net
櫻子「だけどそれはきっと」
あかり「うん」
櫻子「聞いておかなければならない事だから」
あかり「・・・うん」
櫻子「だから・・・」
だからこれは自問自答だと思う
あかりちゃんはそう思って
口を開く
あかり「あかりは・・・」
櫻子「・・・・・・・・・」
14 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 2015/05/16 12:49:52.40 ID:sYeAGb+n0.net
櫻子「私の事で赤座あかりは悩みを持っている昔から今も」
あかり「あかりは・・・」
櫻子「全部わかってるよあかりちゃん」
あかり「・・・・・・・・・」
櫻子「あかりちゃんは・・・・・・」
あかり「・・・・・・・・・」
櫻子「こ れ が 夢 だ と で も 思 っ て る の ?」
あかり「・・・え?」
15 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 2015/05/16 12:52:22.29 ID:sYeAGb+n0.net
あかり「・・・・・・・・・え?」
櫻子「あかりちゃん」
あかり「・・・・・・ぁ」
櫻子「あの日乗り遅れた電車」
あかり「・・・・・・・・・」
櫻子「あれにあかりちゃんも乗っていたのなら・・・」
あかり「・・・・・・・ぁ・・・ぁあ」
16 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 2015/05/16 12:54:41.72 ID:sYeAGb+n0.net
電車の律動があかりちゃんの覚醒を叩きつける様にして引っ張り出す
あかり「ぶっひええええええええええええええええええ」
あかりちゃんは大声を上げて起きて
自分が今、夜のホームで電車を待っていたという状況を
周囲の光景で思い出す
あかり「ぶ、ぶっひぇー・・・あかり凄い夢を・・・」
あかり「すごい夢を・・・」
あかり「あかりは・・・」
18 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 2015/05/16 12:56:56.25 ID:sYeAGb+n0.net
あかり「あかりは・・・」
あの日乗り遅れた電車の夢を
あかりは時折見る
だけどあかりちゃんは覚醒してしまう
あの電車が目的地に着くことはない
あかりちゃんはいつも置いてけぼりにされる
あかりちゃんが欲している結末を
あの夢は辿ってくれない
19 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 2015/05/16 12:58:36.39 ID:sYeAGb+n0.net
櫻子「こ れ が 夢 だ と で も 思 っ て る の ?」
その言葉を
あかりちゃんはいつも疑っている
もしかしたらあれは本当に夢じゃなく
いつかなにかの瞬間に
あの電車は永遠に
あかりを乗せて
行ってしまうのかもしれない
まだその時期じゃないのかもしれない
あかりは・・・いつか・・・
20 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 2015/05/16 13:03:11.25 ID:sYeAGb+n0.net
あかり「あかりは・・・」
向日葵「夢でまた櫻子に会ったと・・・」
あかり「そうだよぉ」
向日葵「でもそれはただの」
向日葵「夢ですわ」
あかり「わかってるよぉ・・・」
向日葵「赤座さんが気にかける事はないのです」
あかり「でもあかりは・・・」
21 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 2015/05/16 13:03:31.62 ID:sYeAGb+n0.net
向日葵「いいですか、赤座さんこれは赤座さんの問題じゃないんですわ」
あかり「・・・・・・・・・」
向日葵「幼馴染でもない赤座さんの問題では・・・決して・・・」
あかり「・・・・・・今日はもう帰るねぇ・・・ありがとう・・・」
向日葵「・・・・・・ええ、わかりましたわ」
あかり「それじゃあ」
向日葵「あ、赤座さん待ってくださいまし」
あかり「向日葵ちゃん?」
向日葵「良い精神病院を見つける事をおすすめしますわ」
あかり「・・・・・・」
向日葵「櫻子と会っているなんて戯言をもう吐かないためにも・・・」
あかり「さよならだよぉ」
22 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 2015/05/16 13:05:51.00 ID:sYeAGb+n0.net
いつだってそうだった
向日葵ちゃんはあかりに対して上品に
酷く社交性をもって
あかりが櫻子ちゃんの話をするのを
心の奥底で憎んでいた
綺麗に包装された悪意を
僅かばかりあかりに寄越した
あかりはそれを無視していたけど
それはきっと人の在り方の当然あるべき感情なのだと
思った
あかりは櫻子ちゃんのことが好きで
櫻子ちゃんはあかりのことが好きだったから
23 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 2015/05/16 13:07:43.77 ID:sYeAGb+n0.net
そうして遠い所にあるだれかの心と共に
櫻子ちゃんの夢への誘いで
あかりはきっと
色々なものを見過ごしていた
あかり「あかりがこれからすることは・・・」
24 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 2015/05/16 13:08:10.61 ID:sYeAGb+n0.net
あの日乗り遅れた電車を最後までいくことでしかなかった
25 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 2015/05/16 13:10:55.74 ID:wFJPmRVL0.net
あかりは・・・
櫻子「そうしてまたここに来たわけだ」
あかり「そうだよぉ」
櫻子「行先は知ってるの?」
あかり「・・・ううん」
櫻子「もう戻れないとだけ言っておくよ」
あかり「うん」
櫻子「それでもあかりちゃんは」
櫻子「いいの?」
あかり「・・・・・・」
櫻子「もう戻れなくても」
櫻子「いいの?」
あかり「・・・・・・・・・」
26 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 2015/05/16 13:12:15.06 ID:wFJPmRVL0.net
あかり「嫌だよぉ」
櫻子「・・・・・・」
あかり「あかりは」
あかり「もちろん帰りたいよぉ」
櫻子「・・・・・・・・・」
あかり「それでも」
櫻子「!」
あかり「それがあかりの中の櫻子ちゃんの」
あかり「のぞむことなら」
28 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 2015/05/16 13:14:23.87 ID:wFJPmRVL0.net
あかり「あかりはこの電車に乗っていくよぉ」
櫻子「そう・・・」
あかり「あの日あかりが乗り遅れた電車」
櫻子「・・・・・・・・・」
あかり「櫻子ちゃんだけ先に行かせてしまって」
あかり「ごめんねぇ」
あかり「だけどあかりも今乗ったから」
あかり「だから」
櫻子「あかりちゃんはそれでも自分よりも私に付き合うの?」
あかり「・・・うん」
あかり「それがあかりの心だから」
32 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 2015/05/16 13:21:18.60 ID:wFJPmRVL0.net
櫻子「・・・・・・・・・」
あかり「・・・・・・・・・」
櫻子「・・・・・・・・・」
あかり「・・・・・・・・・」
櫻子「そうだよね・・・」
あかり「・・・うん」
櫻子「あかりちゃんはそういう子だからね」
あかり「うん」
櫻子「私もそれを知っているから」
あかり「うん」
櫻子「だからきっと私もまだあかりちゃんに夢の中で会えるんだ」
櫻子「あかりちゃんが私を思ってくれるから」
あかり「あかりは・・・」 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:0be15ced7fbdb9fdb4d0ce1929c1b82f)
33 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 2015/05/16 13:21:54.77 ID:wFJPmRVL0.net
櫻子「あかりちゃん」
あかり「なぁに?」
櫻子「まだこの電車は目的地につかないんだ」
あかり「うん」
櫻子「だからそれまで踊ろうよ狭い車内だけどさ」
あかり「・・・・・・うん!」
35 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 2015/05/16 13:24:02.95 ID:wFJPmRVL0.net
電車の外はいつの間にか夜だった
車内の座席を照らす
古くて黄色っぽい光と
月光が満ちている
あかりちゃんと櫻子ちゃんは互いに手をとって
踊り出す
狭い車内ではあるけど
それを感じさせない程
優雅に舞う
あかりちゃんと櫻子ちゃんは踊り続ける
ワルツを
36 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 2015/05/16 13:26:50.86 ID:wFJPmRVL0.net
北へと向かう電車は
車内灯が照らす範囲だけが世界だった
外は真っ暗だった
そうして北へ向かって
暗闇の中踊り続けて
そうやってある時突如世界を覆った光に
あかりちゃんと櫻子ちゃんは包まれた
38 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 2015/05/16 13:31:40.66 ID:wFJPmRVL0.net
あかりちゃんの人生はそこで閉じた
あの日の櫻子ちゃんを
あかりちゃんは追っていった
電車正面ライトに照らしだされたあかりちゃんは
月光の下で蝶のように舞っていたという
駅のホームで目を瞑り笑みを浮かべて
優美に一人踊るあかりちゃんを
そこにいた何人かの人が目にしていた
その最後の瞬間
舞った先はホームに滑り込んできた電車のライトの中だった
精神科での診察の帰りだったという
40 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 2015/05/16 13:35:20.88 ID:wFJPmRVL0.net
向日葵「・・・・・・・・・」
もう戻らない物が
向日葵ちゃんの世界に二つあった
だけどもう重ならないはずだった二つの心――
あかりちゃんと櫻子ちゃんの心は
そうやって再び重なった
向日葵「・・・・・・!」
――櫻子と踊る為には自分ですら捨てること
向日葵ちゃんは口を強く結ぶ
あかりちゃんが望んだのは
いつでも櫻子ちゃんと
「ワルツを踊る事だから」
おわり
元スレ:http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1431746007/
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