1 : 忍法帖【Lv=14,xxxPT】 [] 2011/03/25(金) 22:00:47.22 ID:XGJ+kagq0
休日、俺は暇だったので人気のない歩道を意味もなく一人で散策していた。
そんなありふれた日常が、何気ない出来事によって崩壊する事はよくある。
これもそんなパターンに違いなかった。
「ううう……」
苦しそうにうめいている老人に出くわした。俺は優しさの成分が九割を占める
バファリンも真っ青ないい男だったので、当然助けずにはいられない。
「大丈夫ですか?」
「ほにゃほにゃほにゃああああああぁぁっ!!!」
5 : 忍法帖【Lv=14,xxxPT】 [] 2011/03/25(金) 22:05:43.17 ID:XGJ+kagq0
老人は俺の問い掛けにそう答えた。何語だろうか。生憎外国語には疎いので
困り果てる。しかし、ほっておくわけにもいかない。意味も知りたかった。
「ごめんなさい。ジェスチャーお願いできますか?」
俺は苦肉の策として、意思の疎通を身体で表現してもらう事をお願いした。
しかし、老人は黙ったまま俺を睨んでいる。その表情があまりに鬼気迫るもの
だったので内心笑いそうになったが、太ももをつねってそこは耐えた。男である。
「ほんっにゃあああああああぁぁぁうううっ!!!」
至近距離でまたこの訳の分からない言語。だから分からないって。
聞こえない訳じゃないって。いや、もしかしたらただの奇声かこれ。
そう思い始めた俺の目の前で老人の身体が膨れ上がった。
7 : 忍法帖【Lv=14,xxxPT】 [] 2011/03/25(金) 22:12:03.56 ID:XGJ+kagq0
「なにするだァーッ!!」
何かを感じてとっさに離れたから良かったものの、そのままなら
間違いなくアゴに頭突きをヒットされていた勢い。老人は一瞬の内に
三倍位の大きさになり、その姿を変貌させていた。見た目はさながら
エイリアンの様なグロテスクな化物だが、ややクオリティは低く
稚拙なCGっぽい印象。
「おい!! そこの一般人!! やべーぞ逃げろ!!」
どうしたものかと腕組みをしながらそれを見上げていると、いつの間にか
現れた白衣の集団が俺に向かってそんな事を喚いている。
「参ったなあ……しかし俺の辞書には、敵前逃亡の文字はないのよねぇ」
8 : 忍法帖【Lv=14,xxxPT】 [] 2011/03/25(金) 22:17:10.15 ID:XGJ+kagq0
俺はそいつらにそう言って化物に突進した。悲鳴が上がった。
しかし心配無用、俺はすぐ回り込み、化物のバックを取った。こうなれば
こっちのものである。後ろを取られれば、どんな巨漢でも案外脆いものだ。
俺はそのままの勢いでバックドロップの体勢に入った。好都合にもここは
橋の上であった。そう、橋から投げ落とす事で威力は何倍、いや何十倍にも
膨れ上がる。そのシチュエーションと見事に合致した策略を一秒も掛からず
やってのけた俺の戦闘センスは、後世に語り継がれるレベル。
化物が川に落ち、水しぶきが上がった。
「す、すげえ!! 何だあんた!! 何者だ!!」
9 : 忍法帖【Lv=14,xxxPT】 [] 2011/03/25(金) 22:22:37.37 ID:XGJ+kagq0
白衣の集団から歓声がわき起こる。しかし俺は嫌な予感がした。もしかしたら
あれではまだ化物は死んでないのかも知れない。水がクッションになっている
可能性があるからだ。しかし、化物は金鎚で溺れ死ぬという可能性もある。
そこまで計算に入れていたとはいえ、俺は不安だった。
「ほにゃいわわわわああああああぁぁぁっ!!!!!」
化物は立った。しまった、どうやら浅瀬だったらしい。これでは溺れない。
見た所ダメージは残ってる様であるが、まだ元気である事には違いない。
勝てるのだろうか。俺は勝てるのだろうかこの化物に。
10 : 忍法帖【Lv=14,xxxPT】 [] 2011/03/25(金) 22:27:44.91 ID:XGJ+kagq0
「どうするんですかあなた!! どうやら怒らせてしまった様ですよ!!」
白衣の集団の中から一人の女が出てきてそう言った。田中美佐子似の知的そうな
美人だったが、状況を感情でしか判断出来ない所を見ると、どうやらそのメガネは
飾りらしい。
「黙ってろブス!! 電流持ってるか!!?」
「なんですってええ!!」
12 : 忍法帖【Lv=14,xxxPT】 [] 2011/03/25(金) 22:32:01.95 ID:XGJ+kagq0
「待ちたまえ宮城君」
カッとなる女をモジャモジャの髪をした八嶋智人似のおっさんが手で制止した。
ついでに胸を揉んでいる。羨ましい限りだ。
「電流といったか? 君はそれをどうしたいのだ?」
モジャ男が俺にそう言った。女は必死に抵抗しているがケツも揉まれていた。
こいつら同僚っぽいが、周りの連中は誰も止めようとしない。職場のセクハラは
社会問題だなと実感し股間が熱くなった。
13 : 忍法帖【Lv=14,xxxPT】 [] 2011/03/25(金) 22:38:17.62 ID:XGJ+kagq0
「決まってる!! 今、川に電流を流せば化物を必ず倒せる!!」
俺の一言に現場がどよめいた。しきりに頷く者もいれば、首を傾げる白痴もいた。
馬鹿が何故分からん。言っても分からぬ馬鹿ばかりか。
モジャ男が口を開いた。
「正直言って、電流は持っている」
好都合。ナイスな展開じゃないか。俺はウキウキしてモジャ男に怒鳴りつける。
「だったら早くやれ!! 間に合わなくなっても知らんぞ!!」
14 : 忍法帖【Lv=14,xxxPT】 [] 2011/03/25(金) 22:43:50.65 ID:XGJ+kagq0
しかし俺の提案に、モジャ男の表情が暗くなる。意味が分からず俺はモジャ男を
目で促すと、モジャ男はセクハラを一旦やめ、シリアスに言った。
「だが、そんな事をすれば川の魚はどうなる?」
「な……に?」
衝撃だった。この男、魚の命まで考えていたのだ。
「ぐっ……だが仕方ない!! 大の虫を生かすには小の虫の犠牲は必要だ!!」
俺がやぶれかぶれでそう主張すると、モジャ男は間髪入れずこう反論した。
「魚は虫ではない!! お魚さんは!!」
15 : 忍法帖【Lv=14,xxxPT】 [] 2011/03/25(金) 22:48:29.36 ID:XGJ+kagq0
俺は目からうろこが落ちた。お魚さんは虫ではない。確かにそうだった。
だがこのままあの化物を放置していいのだろうか。聞いて見よう。
「じゃあボク帰っていいですか?」
「ダメだ!!」
ダメだった。こうくるとは思わなかった。これは詰んだ。俺が頭を抱え、
その場に崩れると、さっきセクハラされていた女がやって来て、俺の肩に
手をやって慰める様に言った。
「諦めちゃダメ。諦めたらそこで試合終了ですよ」
16 : 忍法帖【Lv=14,xxxPT】 [] 2011/03/25(金) 22:54:11.86 ID:XGJ+kagq0
負けるのは辛い。でも諦めるのはもっと辛い。俺は初心を取り戻した。
「なんぼのもんじゃ~~~~いっ!!!」
俺は力任せに女をぶん投げた。化物に向かって。程なく激突。
ナイスコントロール。流石フォークで野茂二世と呼ばれた男。女は化物の口に
突き刺さっている。強制フェラ。あれでは命はないだろう。誰もが
そう思った。しかし――
「おべべえええええええええええぉ!! おおおおううぅええっ!!!」
17 : 忍法帖【Lv=14,xxxPT】 [] 2011/03/25(金) 22:58:37.82 ID:XGJ+kagq0
化物は吐いた。無理もない、喉の奥を押されれば誰でも気分悪くなる。
ゲロまみれの女は無事だろうか。いや手遅れだ。とうとう犠牲者を出してしまった。
心が痛む。畜生、絶対許さない。
「うっううぅ……」
俺は己の無力さに打ちひしがれ、その場で泣きじゃくった。周りの白衣の集団も
もらい泣きしていた。これが現実。厳しいな現実って。
「いや……あれを見たまえ!」
18 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 2011/03/25(金) 22:59:42.81 ID:WbZPaKn60
>>17
手遅れだっておいおいwww
19 : 忍法帖【Lv=14,xxxPT】 [] 2011/03/25(金) 23:04:57.03 ID:XGJ+kagq0
俺の涙を拭いてモジャ男が川を指差した。俺はハッとなった。目の前には
化物にゲロが撒き餌となって群がる魚達。
「まさか!」
ピラニアだった。ペットショップで外来魚を買ったはいいが飼い切れず、
川に放流するマナーの悪い飼い主は社会問題になっている。だが災い転じて
福となすといった所か。化物はなす術もなくピラニアに食われていく。
周りから歓声があがった。化物は身体の半分を既に失っており、再起不能。
俺は胴上げされていた。化物を倒したヒーローとして。しかしここまでに至った
経緯を考えれば、やはり俺の手柄ばかりではなかった。皆がいたからこそ
俺はここまで頑張れた。サンキュー皆、愛してるぜベイベー。
ちなみにお魚さん達は危ないので電流で処理したのは言うまでもない。
ついカッとなって書いた。ヒーローになりたかった。反省だけなら石原でも出来る。終わり。
20 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 2011/03/25(金) 23:11:50.14 ID:WbZPaKn60
ちょっとまて、投げ入れた奴どうなったwww
元スレ:http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1301058047/
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