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1 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 09:13:58.17 ID:VAMVrkxU0

俺「妹、どうしてこうなったんだろう」
妹「母さんのご飯がまずいから」
俺「だからって餓死すること無かったのに」
妹「兄はよく食べられるな。あんなまずいもの」
俺「食わなきゃ死ぬだろ」
妹「だから死んだ」
俺「俺は死にたくない。だから食う」
妹「私はあんなもの食べ続けたらそれこそもっと早く死んだ」
俺「何事も慣れだよ。大人になれば自分でご飯作れるし」
妹「でももう遅い」
俺「・・・」
ガチャ
母「ご飯できたよ」
俺「要らない」
母「どうして?」
俺「食欲ない」
母「そんなこと言って、どうせよそで食べて来たんでしょう」
俺「違うよ」
母「本当のこと言いなさい」
俺「妹が死んだから」
母「あんたも食べなきゃ死ぬわよ」
俺「母さんが妹を殺したんだ」
母「好き嫌いは駄目だって言うのに聞かないからよ」
俺「・・・」
母「妹ちゃんは? 食べないの?」
妹「食べない」
母「そう。じゃあお父さんと二人で食べるから、あんた達勝手にしなさい」
バタン


2 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 09:15:28.10 ID:VAMVrkxU0

俺「・・・」
妹「・・・」
俺「狂ってる」
妹「うん」
俺「自分の子供が目の前で死んでるのに」
妹「あ、蝿が」
俺「本当だ」
妹の死体に止まった蝿をゴキジェットに着火して焼き落とす。
俺「髪が焦げた。ごめん」
妹「別にいいよ。もう死んでるし」
俺「そっか」
妹「ご飯、食べないの?」
俺「そんな気分じゃない」
妹「ふーん。じゃあどっか行こう?」
俺「いいよ。歩ける? ・・・訳ないか」
妹の死体を担ぎ上げる。
俺「よい・・・しょ軽いな」
妹「15キロもないだろうしね」
俺「量ってみる?」
妹「いや、いいよ」


5 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 09:17:10.50 ID:VAMVrkxU0

―――――――――――
夜8時過ぎ。
俺「まだ蝉が鳴いてる」
妹「本当だ」
俺「・・・あ」
妹「何?」
俺「知り合いだ」
知A「あ? よう」
知B「うは、キモい奴に遭っちまったなー」
俺「やあ」
知A「どこ行くの? っていうか何担いでんの?」
俺「妹」
知B「はぁ?」
知A「ダッチワイフ? にも見えないけど」
俺「だから妹」
知B「何だそれ・・・うわ、気色悪! 何これ!」
俺「失礼なこと言うなよ」
知A「っていうか・・・」
知B「これ、本物・・・?」
俺「うん」
知B「嘘だろ?」
俺「いや本当。家で何も食えなくて死んだ」
知A「いやいやいやいや! 簡単に言うなよお前、え、マジで!?」
知B「え、え、警察とか行った方がいいのこれ?」
俺「大丈夫」
知A「ちょっと待ってどういうこと!?」
俺「もういいから・・・気にしないで。じゃあね」
知A「う、うん・・・」
知B「なんか、頑張ってな・・・」


7 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 09:19:42.05 ID:VAMVrkxU0

――――――――――――――
俺「ふぅ」
妹「ガラ悪かったね」
俺「クラスメイトだよ。見た目ほど悪い奴らじゃない。友達でもないけど」
妹「ふーん」
俺「ちょっと休んでいい?」
妹「いいよ」
俺「そこの公園で座ろう」
妹「やっぱ兄は体力ないな」
俺「死んでる妹ほどじゃないよ」
妹「まぁね」
小汚いベンチに腰掛ける。
俺「よいしょ」
妹「ここって何もないよね」
俺「ベンチと水道だけだね」
妹「・・・」
俺「なんかいい方法ないかなぁ」
妹「何が?」
俺「ご飯」
妹「ああ」
俺「妹もさすがに死ぬ前には食べると思ってたのに」
妹「ごめん」
俺「悪いのは母さんだよ」
妹「そうだね」
俺「妹、顔変わったな・・・」
妹「いつと比べてるんだよ」
俺「わかんないけど」


8 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 09:20:43.17 ID:VAMVrkxU0

妹「兄もちょっと痩せたんじゃない?」
俺「悩みがあるとやつれるもんなんだよ」
妹「あっそ。・・・彼女とか?」
俺「はは、彼女か。出来るかなあ」
妹「頑張ろうよ」
俺「これ以上問題を増やしてどうするんだ」
妹「それもそっか」
俺「どうしようかね、これから」
妹「もう自分で働いちゃえば?」
俺「うーん」
妹「バイトとかさ」
俺「でも何しよう」
妹「コンビニの店員とかじゃ駄目なの?」
俺「わかんない。やったことないから」
妹「これからも母さんのご飯食べていくの?」
俺「本当はそれがいいんだけどね」
妹「いつか死ぬよ。私みたいに」
俺「いつかは死ぬだろ、そりゃ誰だって」
妹「母さんに似ちゃうかもよ?」
俺「あ、それはまずい」
妹「なら美味しい物食べようよ」
俺「うん。それがいい。これからは何でも自分で何とかするんだ」
妹「ついでに私の分も」
俺「しょうがないな」


9 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 09:22:08.76 ID:VAMVrkxU0

――――――――――――――――――
次の夜。
俺「母さん、俺、出て行く」
母「何よ急に。出て行くってどういうこと?」
俺「そのまんまだよ。この家から出る」
母「馬鹿言ってないで、ご飯冷めないうちに食べちゃいなさい」
俺「だから・・・」
母「あ、そうそう。シチューの中に母さんの指入っちゃったから、出てきたら返してちょうだいね」
手から血が噴き出している。
俺「もう嫌なんだよ!」
母「どうしたのよ・・・」
俺「沢山だよ! 俺は母さんから生まれたと思うと反吐が出そうなんだ!」
母「・・・親に何てこと言うの! ちょっといらっしゃい」
俺「嫌だ!」
母「いくら親子でも言っていいことと悪いことがあるでしょう!」
ガチャ
父「こら! 何やってんだ!」
母「この子ったら家出するって言って聞かないのよ」
俺「もうこんな家にいたくないんだよ!」
父「座りなさい」
俺「嫌だ!」
父「いいから座れ!」
髪を掴まれて無理矢理座らされる。
俺「母さんはどうかしてる! そう思わないのなら父さんも馬鹿だ!」
父「一回落ち着いて何が気に食わないのか言ってみなさい。家族なんだから」
俺「・・・妹が死んだ」


11 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 09:24:45.81 ID:VAMVrkxU0

父「お前が殺したんじゃないのか」
俺「へ!?」
父「お前が母さんの料理を食べないように脅して縛り付けてたんだろう!」
俺「そんな訳ないじゃん! 間違えて自分の指切った上そのままシチューに入れてコトコト煮るような人の料理なんか食べられないに決まってるじゃん!」
父「またそうやって人の失敗をいちいちほじくり返してしつこく責めるのか」
俺「そういう事じゃなくて!」
父「誰にだって間違いはあるだろう。人間なんだから。それをケアし合って生きていくのが――」
俺「こいつら、異常だ・・・」
父「・・・今何て言った?」
俺「・・・」

耐え切れず、逃げ出す。
父「待ちなさい!」
妹の部屋に入って、扉を必死で押さえる。
父「開けろ、こら!」
ドン、ドン

妹「・・・」
泣いていた。
俺「こんな家出てってやる! 父さんも母さんも人でなしだ!」
父「・・・おい。母さん泣いてるぞ。悪いと思わないのか」
俺「っざけんな! 妹をもっと沢山泣かせたくせに!」
父「全く・・・しばらく出てこなくていい。落ち着いたら謝りに来い。そしたらまた話し合おう」
俺「・・・」
母「シチュー取っとくからね・・・?」
俺「だから要らないって!」


12 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 09:26:14.45 ID:VAMVrkxU0

俺「だから要らないって!」
母「・・・」
妹「・・・」
俺「家出しようか」
妹「私も?」
俺「そうだよ。昨日言ったじゃん」
妹「でもさ、ちょっと考えたんだけど、死体担いでたら昨日みたいに怪しまれない?」
俺「それでもここにいるよりはマシだろ」
妹「まぁね」
俺「よし! じゃあ行こうか」
妹「あ、蝿」
俺「うわうわ・・・」
ボオー



―――――――――――――
3日後、雨上がり。
俺「止んでくれたのはいいけど・・・」
妹「濡れちゃったね」
俺「蚊が出てきた・・・あぁ、また食われてる」
妹「私は刺されないから関係ないけどね」
俺「そこら中痒いしびしょ濡れだし両手塞がってて掻けないし頭おかしくなりそうだ」
妹「掻いたら余計痒くなるよ」
俺「そうだけど・・・ああ、もう暗くなって来たな。そろそろ寝るとこ探さないと」
妹「たまにはちゃんとした部屋がいいだろうね」
俺「うん。公園のベンチじゃよく眠れなくて」
妹「あとそろそろ死臭で通報されてもおかしくない気がする」
俺「そうだなぁ・・・って言っても部屋なんて当分無理だよな」
妹「あ、兄」


13 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 09:27:56.81 ID:VAMVrkxU0

俺「ん?」
妹「こっち見てる人がいる」
俺「バレた?」
妹「多分」
俺「どんな人?」
妹「お婆さん」
俺「道変えようか」
妹「うん。あ、もう遅いかも。こっち来る」
俺「どうしよ。とりあえず目逸らしとく」

老婆「ねぇ、ちょっと」
俺「・・・」
老婆「そんなに汚れて。あの雨の中傘も差さずに歩ってたのかい?」
俺「は、はい、まぁ」
老婆「彼女具合悪そうじゃないか。かわいそうに」
俺「え? あ、はい」
老婆「家は遠いのかい?」
俺「はい・・・」
老婆「そう。よかったらうちへ寄って行っておくれよ、孫のお下がりだけど着替えもあるから」
俺「どうする?」
妹「・・・」
俺「ありがたいんですけど、結構です」
老婆「そんな、遠慮しないで。こんな婆さんで疑るなって方が変だけど」
俺「そういうんじゃないです。すいません」
老婆「そう・・・」
俺「では」
老婆「お兄さんや」
俺「・・・?」
老婆「1つ聞くけどねぇ。その子、生きてるのかい?」
俺「!」


14 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 09:28:42.99 ID:VAMVrkxU0

老婆「目は悪くなっちゃったけどね。わかる時もあるんだよ。何かある人っていうのは」
俺「い、いや何も・・・」
老婆「その子の事は誰にも言わないよ。詮索もしないし」
俺「えっと・・・」
老婆「本当はただ話し相手が欲しくてしょうがないんだよ。毎日暇で暇で」
俺「そうなんですか」
老婆「着替えを貸すだけだから。ね? 何も考えずいらっしゃいな」
俺「ありがとうございます」


15 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 2011/01/27(木) 09:29:23.59 ID:1V5VK5dN0

マジキチ。でも嫌いじゃない。


21 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 10:40:56.93 ID:VAMVrkxU0

―――――――――――
老婆の家。着替えは済んだ。
老婆「座ってちょうだい。自分の家だと思って」
俺「・・・」
老婆「どうしたの?」
俺「俺の家は・・・」
老婆「あはは、じゃあ、汚い旅館だと思って」
俺「はい」
老婆「彼女はいいのかい?」
俺「え、でも死んでますし・・・」
老婆「うーん、濡れたまましょってたらアレでしょう?」
俺「着替える?」
妹「・・・」
俺「妹は、知らない人がいると喋れないみたいです」
老婆「そう。じゃあ洋服出しとくから、いい時に着替えな」
俺「ありがとうございます」
老婆「私はその間にお菓子でも用意するからね」
俺「すいません・・・」

俺「妹?」
妹「ん?」
俺「着替えたい?」
妹「うーん、面倒臭いかな。兄が濡れたまま担ぐの嫌じゃなければこのままでいいよ」
俺「わかった。まぁここを出る頃には少しは乾いてるよ」
妹「どれぐらいここに居るの?」
俺「わかんない。1時間なのか1日なのか」
妹「変な人だね」
俺「そうだね。死体を見ても何も言わないなんて」
妹「そういえばさ」
俺「うん」


22 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 10:42:47.22 ID:VAMVrkxU0

妹「生きてるのと死んでるのって何が違うの?」
俺「全然違うよ」
妹「例えば?」
俺「うーん。死んでると息とか出来ないし」
妹「じゃあもし息しなくても生きていられるようになったら?」
俺「うーん。歩いたり出来ないし」
妹「じゃあ兄が怪我とかで歩けなくなったら?」
俺「ああ・・・うーん。そうだ、死んだらご飯が食べられない」
妹「生きてても食べられなかったら?」
俺「そっか。あとは何だろう・・・変な目で見られる・・・?」
妹「兄は変な目で見られたこと無い?」
俺「あー・・・うん。じゃあ何が違うんだろうね」
妹「あ、戻ってきた」
俺「本当だ」

老婆「モナカでいいかしら?」
俺「え?」
老婆「モナカ。私が好きなんだけれど」
俺「これは何だろう」
老婆「食べたこと無い? 甘くて美味しいんだよ」
俺「へぇ・・・」
老婆「よかったら召し上がってちょうだい」
俺「あ、ありがとうございます」


23 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 10:43:58.67 ID:VAMVrkxU0

一口。
俺「え・・・」
老婆「あはは、若い子の口には合わないのかねぇ」
俺「ううん、美味しいです」
老婆「そうかい?」
俺「その、びっくりしちゃって・・・あれ? 涙が」
老婆「あらあら、涙が出るほど美味しい?」
俺「はい」
老婆「そりゃよかったねぇ。私も出してよかったと思うわ」
俺「お婆さんが作ったんですか?」
老婆「とんでもない、スーパーで買ってきたんだよ」
俺「高いんだろうなぁ」
老婆「そんなこと無いよ。お小遣いを貰ってる子なら誰でも食べられるだろうね」
俺「そうなんだ。でも貰ったこと無いや」
老婆「孫は最近和菓子を食べなくなってね。専らポテトチップスだとか、ポッキーだとか」
俺「ポッキーって?」
老婆「チョコレートだよ。細長い」
俺「ポキって折れるからポッキーっていうのかな」
老婆「あはは、そうかも知れないね」
俺「はは」
老婆「彼女、妹さんなんだ?」
俺「あぁ、はい」
老婆「私の孫がね、ちょうどお兄さん達と同じぐらいの歳なんだよ」
俺「そうなんですか」
老婆「うん。ちょっと私の子達が・・・孫の母親達が喧嘩したもんで、私が育ててたんだけどね」
俺「はい・・・」
老婆「ついこの間、母親がうちへやってきて、返して! なんて言って無理矢理連れて行っちゃってねぇ」
俺「それは・・・」
老婆「親が子を思い遣るのは当たり前。だけど、親の都合でいいように振り回されちゃ、あの子達が気の毒ってもんで」


24 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 10:45:12.44 ID:VAMVrkxU0

俺「・・・」
老婆「かわいそうにねぇ・・・うまくやってるといいんだけど」
俺「お婆さんはどう思ったんですか?」
老婆「私は正直寂しかったよ。夫の遺産で細々とやってたけども、可愛くてしょうがなかった」
俺「いいなぁ」
老婆「あはは、お兄さんも孫が欲しいかい?」
俺「いや、そんな風に言ってくれる人がいたってことが」
老婆「そうかい・・・ここに来るまで大変だったでしょう」
俺「別に・・・実を言うと、家出したのはほんの3日前ぐらいで」
老婆「ううん、家出なんて夕方には帰るのが普通の子だったよ、昔は。お腹減ったーなんて言ってねぇ」
俺「ご飯かー」
老婆「・・・」

不意に泣き出す。

俺「どうしたんですか?」
老婆「ううん・・・ごめんなさいね、急に泣いたりして、みっともない」
俺「いいんですけど、なんで?」
老婆「ご飯もろくに食べさせて貰えないで、兄妹2人っきりであてもなく歩ってたんでしょう」
俺「そんなことは・・・ただ母さんの料理が不味いから」
老婆「・・・?」
俺「妹はそれが嫌で、家で何も食わなくなっちゃって、それで死んだんです」
老婆「なんてこと・・・」


25 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 10:46:05.58 ID:VAMVrkxU0

俺「どうしよう、妹」
妹「すごい泣いてる」
俺「大人が泣いてる所ってなんか怖いね」
妹「母さんがアレだからじゃん?」
俺「ああ。でも母さんが泣くのは、なんか、違う」
妹「なんか、ね」
俺「わかった」
妹「何?」
俺「母さんは自分の為に泣いてたから」
妹「なるほど」
俺「だから変に子供じみて見えたんだろう」
妹「兄、頭いいな」

老婆「お兄さんや」
俺「はい」
老婆「今、喋ってたのかい? 妹さんと」
俺「そうです」


26 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 10:47:06.28 ID:VAMVrkxU0

老婆「そっかそっか。心ってのは通じるものなんだねぇ」
俺「?」
老婆「いいねぇ、家族が死んで自分が駄目になるようでなくて」
俺「はぁ・・・。あ、でも。さっき妹と話したんですけど、生きてるのと死んでるのの違いって何ですか?」
老婆「そうだねぇ。心の拠り所じゃないけれど、身の置き場がどこにあるか、じゃないかしら」
俺「身の置き場?」
老婆「あはは、ちょっとややこしいかねぇ。私達の身の置き場はこの座布団の上でしょう?」
俺「はい・・・」
老婆「私の夫はね、心の中にいるんだよ。妹さんも、お兄さんの心の中にいるでしょう」
俺「心の中かー。わからないなぁ。妹はやっぱり、こうやってここにいるし」
老婆「そうかい? それにしても、よっぽど仲がよかったんだろうねぇ。初恋の相手がお兄ちゃんだって子もいるぐらいだし」
俺「はは、それは無いですよ」
老婆「わからないようにしてるだけかも知れないよ? 何気ない時に、ふと彼女がいるかどうか気にしたりするんだよ」
俺「おお」
老婆「あったでしょう、そういうこと」
俺「確かに」
老婆「兄妹なんてそんなもんだよ。ほら、もう1個召し上がって」
俺「いただきます」
老婆「妹さんの分。よっく味わってあげなさい」


33 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 11:56:34.84 ID:VAMVrkxU0

―――――――――――――――――――――
その夜は結局公園で過ごす事に。
妹「いいの?」
俺「泊めてもらったら死臭が染み付いちゃうし」
妹「そっか」
俺「生きてると死んでるの違いは、臭いだね」
妹「ごめん」
俺「別にいいよ」
妹「あーあ、私臭いかー」
俺「そういうの気にするんだ」
妹「兄は1年ぐらいお風呂入らないで学校行ける?」
俺「あはは、誰でも気にするか」
妹「そうだよ」
俺「ところでさ」
妹「ん?」
俺「さっきお婆さんが言ってたこと、あってる?」
妹「あれか」
俺「あれ。妹は心の中にいるの?」
妹「私はここにいるよ、見ての通り」
俺「やっぱりそうだよな」
妹「でも」
俺「?」


34 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 11:57:18.91 ID:VAMVrkxU0

妹「心の拠り所って言ってたじゃん」
俺「ああ、なんか言ってた気がする」
妹「それが兄」
俺「なるほど。俺の心」
妹「そう。兄の考え方とか、そこら辺」
俺「面白いお婆さんだったなぁ。何でも知ってるし何でもわかっちゃう」
妹「すごいよね」
俺「あ、じゃあさ」
妹「うん」
俺「初恋の相手も?」
妹「ねーよ」
俺「よかった」



35 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 11:58:41.35 ID:VAMVrkxU0

―――――――――――――――――
俺「アルバイト募集中」
妹「行くか?」
俺「でもなぁ」
妹「家出する勇気はあっても働く勇気は無い」
俺「だって世界が違う気がするんだもん」
妹「何事も慣れじゃないの?」
俺「言われちゃったなぁ」

死体を物陰に隠して。

店員「いらっしゃいませー」
俺「あの」
店員「はい?」
俺「アルバイトしたいんですけど」
店員「あ、はい。少々、はい、お待ちください」
俺「はい・・・」



36 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 11:59:43.35 ID:VAMVrkxU0

店長が出てくる。
店長「あ、どうも。アルバイトのご応募ということで?」
俺「そうです」
店長「そうですね、じゃあ面接・・・あ、今からということで、よろしかったですか?」
俺「まぁ、そうです」
店長「はい結構です。履歴書は?」
俺「はい?」
店長「えと、履歴書のほうはお持ちで?」
俺「何ですか?」
店長「あ、面接に来ていただくには履歴書をご持参いただくことになっておりまして」
俺「えっと・・・それって、何ですか?」
店長「あー・・・職歴とか通勤時間とか、そういったものを書く書類なんですよ。一応こちらでも扱ってますので、ご購入いただいても結構です」
俺「あぁ・・・いくらですか?」
店長「はい、枚数にもよるんですがとりあえず一番安いのだと210円からになっております」
俺「そうですか・・・すいません。ありがとうございました」
店長「左様でございますか。ではまた今度お越しください、ありがとうございました」

意気消沈。
俺「妹」
妹「受かった?」
俺「駄目だった」
妹「まぁしょうがないよ」
俺「履歴書が要るんだって」
妹「何それ?」
俺「なんか難しい書類。しかも金が無いと手に入らない」
妹「ふーん。なんか大人って感じだね」
俺「生きてくって大変なんだなぁ」


40 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 12:41:37.34 ID:VAMVrkxU0

――――――――――――――――
夜、街灯の下で。

俺「あの人何やってるんだろう」
妹「酔っ払いじゃない?」
俺「めっちゃ吐いてる」
妹「食うなよ?」
俺「食わねーよ」
妹「避けて通れば?」
俺「うーん、でも吐いてるから避けたって思われたらやだしなぁ」
妹「そういう所は気にするよね」
俺「もし怒られたらどうしたらいいかわかんないもん」
妹「確かに」
俺「暗いから普通にしてれば気付かれないかな」
妹「そうだね。あ、私が酔っ払ってるように見せかければ?」
俺「なるほど!」

苦しそうなサラリーマンの横を通り抜ける。
俺「もう、飲みすぎだよ」
リーマン「え・・・?」
俺「やば」
リーマン「何だよ、ガキのくせに」
俺「いや、今のは妹に言ったんであって・・・」
リーマン「嘘は、よくないぞー嘘は」
俺「ほ、本当・・・」
リーマン「あぁ? 何だよそれ、妹だってぇ? 気持ち悪いなぁ」
俺「・・・」
リーマン「だいたいなぁ、お前ぐらいの歳で、飲酒は禁止されてるんだから」
俺「あ、そっか・・・」


41 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 12:42:20.61 ID:VAMVrkxU0

リーマン「何が飲みすぎだよ、ちくしょう。うぅ・・・」
俺「大丈夫ですか?」
リーマン「うるせー。大丈夫大丈夫って、大丈夫じゃねーよ、馬鹿野郎!」
俺「どうしよう、怒った・・・」
妹「・・・」
リーマン「ちくしょー・・・帰れねーよ。終電はどこだー!」
俺「酔っ払いって怖いなぁ」
リーマン「あ? どこだよ、もう」

向かい合ったまま突然嘔吐。
ビチャビチャ。
俺「うわ!」
リーマン「うぅ・・・」
俺「本当に大丈夫ですか?」
リーマン「馬鹿野郎! だいたい、何だよ、そのミイラみたいなのは」
俺「あ・・・」
リーマン「ああ? ・・・うん!?」
俺「妹、です」
リーマン「妹だぁ? 妹だぁ!?」
俺「はい・・・」
リーマン「死んでねぇかぁこれ!?」
俺「もう駄目だ、逃げないと・・・」
妹「逃げたら通報されるよ」
俺「でもどうする!?」
妹「ぶっ飛ばせ」
俺「でも」


42 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 12:44:14.54 ID:VAMVrkxU0

リーマン「うぅ・・・」
俺「苦しそうだ・・・」
リーマン「うちまで送ってくんねぇかなぁ・・・」
俺「俺がですか?」
リーマン「俺がだよ馬鹿野郎! ・・・うぅ、早く帰りてぇよ」
俺「その、家、どこですか?」
リーマン「家だよちくしょう・・・ちくしょー」
俺「ああ・・・と、とりあえず公園まで連れて行きます」
リーマン「おう・・・いいよいいよ」

立ってるのがやっとのサラリーマンに肩を貸して。
俺「重い・・・」
妹「兄よりでかいしね」
俺「妹担いだままだし」
妹「一回下ろせば?」
俺「隠す場所が無いだろ。はぁ、やっと着いた。よいしょ」
ベンチに寝かす。

リーマン「ふぃー・・・水くれぇ」
俺「水はあげられませんよ。コップとか無いから」
リーマン「コップじゃなくて水・・・」
俺「何だかなぁ」
妹「寝ちゃいそうだし、ほっといてもいいんじゃない?」
俺「このまま死なないよね」
妹「どうだろう。人間意外とあっけなく死ぬから」
俺「この人も妹みたいになるのかな」
妹「この人は火葬とかされるでしょ」
俺「あぁ、そっか。普通そうだもんな」
妹「行こう?」
俺「そうしよう」


44 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 12:45:24.20 ID:VAMVrkxU0

トイレから不良が3人出てくる。
不良A「お前やれよ」
不良B「また俺かよ、やなんだよ俺だといつも起きるから」
不良C「平気だって」
俺「何だろう」
不良A「起きたら起きただよ」
不良C「待って、誰かいる」
妹「兄、こっち見てるよ」
俺「逃げよう」
不良C「おい、こら。テメェ何バックレてんのかな」
妹「兄に言ってる。こっち来てるよ」
俺「嘘・・・」
不良B「おいおいやめとけって」
不良C「俺らが何かするって決め付けてそうやって目逸らしてんだろ? 違うか?」
俺「別に・・・」
不良C「別に。別に? はは、ウザ! ねぇ喧嘩売ってんの君?」
俺「違う、何でもないんです」
不良C「何でも無いんだったら目見て言えよ、なぁ、なぁ、なぁ。おい。こっちだよ。死ぬか?」
不良B「やめとけやめとけ」
不良C「女連れてさ、こんな所来てさ、何? 野外プレイ? で、俺らがいるからやめたと」
俺「・・・」
恐る恐る振り返る。

不良C「・・・!」


45 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 12:47:28.05 ID:VAMVrkxU0

不良B「ほっといてやれよお前だってやってんだろ実は」
不良C「・・・待ち」
俺「・・・」
不良A「っつーか何してんの? ボコり? シャーシャーのカポーボコっちゃうの?」
不良C「待って、待って、マジで」
俺「・・・すいませんでした」
不良C「ヤバい事やってんの・・・?」
俺「・・・散歩してただけです」
不良B「あ・・・」
不良A「どうしたー?」
不良C「逃げようぜ」
不良B「うん、そうしよう。俺ら何も見てないよな? な?」
不良C「見てない見てない。殺人現場とか死体遺棄とか、え? 何それ? 行こうぜ」
不良B「気をつけて帰れよ諸君!」
俺「は、はい・・・帰りませんけど」
不良A「は? おめーら待てし。スクリューパイルドライバーすんよ?」

走り出す不良達。
不良C「ちょ、マッポいたわ!」
パトカーのサイレンが、目の届かない所で、鳴り始めた。

妹「助かったね」
俺「すげぇ怖かった・・・」
妹「ヤンキーって死体怖いんだ」
俺「どうだろう。やっぱり人殺したりとかはしないのかな」
妹「それに近いことならやろうとしてたような気がするけど」
俺「やれやれ。はぁ、本当死ぬかと思った」
妹「私は本当に死んだよ」
俺「とりあえずここにいたら警察来そうだから、どっか行こう」
妹「うん」


58 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 17:33:32.59 ID:VAMVrkxU0

―――――――――――――――――――――
俺「妹。あ・・・」
妹「ん?」
俺「目が・・・」
妹「あぁ、蛆か」
俺「うん・・・蛆湧いちゃったね」
妹「目食われてる」
俺「どうしたらいい?」
妹「もう止められないでしょ。腐ってきた証拠」
俺「だなぁ。妹もそのうち骨だけになるのか」
妹「そうなんじゃん? まだわかんないけど」
俺「死体ってどうやって骨になるんだろう」
妹「うーん。肉とかが腐って剥がれ落ちるんじゃない?」
俺「内臓から腐るっていうよね。どういう風になるんだろ」
妹「兄はどう思うの?」
俺「どうなんだろう。干からびて小さくなるとか?」
妹「いや、そういう話じゃなくてさ」
俺「うん」
妹「なんていうか、私が腐っていくのをどう思うのかなーって」
俺「うーん。怖いかな」
妹「怖い、か」
俺「ゾンビとか苦手なほうだしさ」
妹「おいおい、仮にも妹。ゾンビはねーよ」
俺「悪い悪い」
妹「でもしょうがないか。死体なんて綺麗な訳無いし」


59 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 17:34:17.35 ID:VAMVrkxU0

俺「参ったなぁ。そうなると肉片が道に散らばっちゃう」
妹「足跡みたいにね」
俺「そろそろ何か袋とかに入れたほうがいいのかなぁ」
妹「そうしたら?」
俺「でもこんなでかい袋落ちてるかなぁ」
妹「落ちてるとかじゃなくて、働いて買ったら?」
俺「本当はそれがいいんだけどね」
妹「ああ、履歴書ってやつが要るんだっけ」
俺「そう。でもそれ自体は200円ぐらいらしいから、金拾ったら買えるかも」
妹「なんか惨めだね」
俺「ごめん」
妹「私はいいよ。死んでるほうが気楽」
俺「そうなのか。・・・そうなのか」
妹「死ぬなよ」
俺「そんなこと考えてないよ」
妹「ふーん。ならいいけど」
俺「でもさー、妹が死んで気楽なら、俺も死んだら全部解決するような気がするんだよね」
妹「考えてんじゃん」
俺「実行する気は無いよ。ただ思っただけ」
妹「そっか」
俺「あ、あれ公園かな」
妹「学校の裏庭とかじゃない?」
俺「ああ、そうかも。ん? テント張ってあるよ」
妹「キャンプ場?」
俺「だとしたら入場料とかあるんだろうなぁ」
妹「行ってみれば?」
俺「そうだね」


60 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 17:38:40.97 ID:VAMVrkxU0

テントの乱立する鬱蒼とした敷地。
俺「人がいる」
妹「テントって人が住むものでしょ」
俺「それもそうか。何なんだろう。超いっぱいある」
妹「って、ホームレスじゃん」
俺「ああ」
妹「ホームレスってダンボールなイメージあった」
俺「俺も。こんな風にまとまって生活したりするんだ」
妹「入れてもらえば?」
俺「いいのかなぁ。実質ホームレスだけど」

焚き火の上の小さな鍋を、3人のホームレスが囲んで座っている。
A「こらぁ! 何か用かぁ!」
俺「!」
妹「駄目だね」
B「何だこらぁ! 見せもんだと思って入って来んなぁ!」
俺「すいませんでした」
妹「見せもんだと思ってないでしょ兄は。事情説明してみたら?」
俺「でもなんかそういう空気じゃないような・・・」
A「あぁ? お前が担いでんの死体か」
俺「はい」
B「何?」
C「死体?」
A「どういうこったい。ここは墓場じゃあねーぞ!」
俺「実はちょっと前に妹が死んで、家出したんです。けど、どうしていいかわからなくて・・・」


62 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 17:39:23.57 ID:VAMVrkxU0

A「うちはなぁ、家族がどうなったとか言ってる余裕の無い連中の集まりなんだよ」
B「そうだよ! 妹が死んだからって、家出なんて抜かしてる間はまだまだゆとりがあんだよ! テメェん家帰れ!」
俺「死体を見ても驚かないなんて・・・」
C「はっはっは。うちのお袋も親父もとっくに死体になっちまったよ。あんたみたいにしょって歩いたりはしなかったけどな」
A「・・・」
B「死体しょって家出して。ホームレスんとこ来て。煙草あるか?」
C「はいよ」
潰れた箱を取り出すホームレス。

B「ふー・・・」
C「まぁ座んなよ」
俺「ありがとうございます」
C「カクちゃんもそんな噛み付きなさんなって。坊主も見た所こっち側の人間じゃねぇか」
A「はぁー、こっちゃあ親兄弟が今どこで何してんのかもわかんねぇのによ」
C「まあまあ。それにしたって、死んだ妹を連れてここまで歩いて来たってんだ。面白いじゃねぇかい。話ぐらい聞いたって罰当たんねぇよなぁ?」
B「・・・んま、煙草屋が言うんだからしょうがねぇやな。ふー・・・」
俺「・・・」
C「それで、坊主。ここに何の用だい」
俺「しばらく泊めて欲しくて」
C「はっはっは、そうかい。で? 何の仕事してるんだ」
俺「仕事?」
C「人間、仕事が全てさ。俺らだってちゃんと働いてるんだよ」
俺「そうなんですか?」
A「あったりめーだろが!」
C「落ち着いて落ち着いて。無理もねぇよ。俺だって昔はホームレスは乞食だと思ってたもんさ」
A「・・・」


63 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 17:40:03.52 ID:VAMVrkxU0

俺「仕事、探したんですが、履歴書がなかなか手に入らなくて・・・」
C「はっは、履歴書なんか要らない要らない。公園掃除したり雨の日に傘売ったり、こういう奴らの為にあるような仕事だっていくらもあるんだから」
B「おかげさんでこうして食い繋いでいける。煙草も呑めるしな。はは」
A「こんなのが生きてるって言えるのかねぇ」
C「ありがたいこっちゃねぇか。何もキャバクラ通ってパチンコやって美味いもん食って、ってだけが人生じゃねぇんだから」
俺「そっか・・・」
C「あぁそうだそうだ、それで? 妹が死んで家出した。その妹ってのがそのお嬢さんだろう?」
俺「そうです」
C「何があったんだい」
俺「母さんの作る料理があまりにも不味くて」
A「出た。あー嫌だ嫌だ! これだから今の若ぇ奴らは。っとに!」
C「最後まで聞くんだよ。人が死んでるってんだよ?」
俺「妹はそれが食べられなくて餓死したんです。俺は我慢してましたけど、妹が死んだのに両親が何とも思ってないのが嫌になって・・・」
C「ほう」
俺「そんなことより俺がご飯食べないのを嫌がらせだって言って怒るんです。だから我慢出来なくて家出しました」
C「うんうん・・・」
B「それはそれは」
A「へっ・・・」
俺「だからって訳じゃないですけど、泊めてもらってもいいですか?」
C「悪いとは言わねぇ。けど、死体はどうにかならねぇかい」
俺「どうにかって?」
C「ここはこんな汚い所って思うだろうけどな、死体なんかあったらみんな捕まっちまうんだよ」
俺「ああ・・・」
C「家に返すとか何とかしてさ」
俺「でも、俺が運んでやらないとどこにも行けないし」
C「・・・」


64 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 17:42:20.35 ID:VAMVrkxU0

俺「すいません。迷惑かける訳にもいかないので、やっぱり諦めます」
C「不思議な坊主だな」
俺「ありがとうございました」

A「おい」
俺「はい?」
A「仕事する気はあるのかよ」
俺「まぁ」
A「まぁ、じゃねぇんだぞ。お前みたいな訳ありも出来るかも知れねぇ仕事があるんだよ」
俺「それは何ですか?」
C「カクちゃん」
A「世田谷に知り合いのヤクザがいんだよ。俺はまっぴらだけどな」
俺「え・・・」
A「本当にやる気あって他にどうしようもねぇってんならそいつんとこ行ってみろ」
俺「・・・」
A「ただしこれは世の中の悪い部分の片棒担ぐような仕事ってこと忘れんじゃあねぇぞ」

死体から黒い液体が漏れた。
ポタ、ポタ。
C「ありゃ・・・」
俺「何か、大きめの袋とかあります・・・?」


67 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 2011/01/27(木) 17:58:39.94 ID:BYTTsaJa0

バキが死んだ母親をおんぶするやつを思い出した


68 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 2011/01/27(木) 17:59:24.26 ID:4TrBzIYf0

>>67
俺も俺も


69 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 18:35:09.95 ID:VAMVrkxU0

――――――――――――――――
深夜。
俺「えっと、80円のサイダーとメロンソーダと・・・これだこれだ」
自販機の下にパッケージを貼り付ける。

俺「よし・・・」
原付で走り出す。
妹「兄」
座席の下から。
俺「ん?」
妹「微妙に死体の扱い雑になったよね」
俺「こうでもしないとまた液漏れで騒ぎになるからさー」
妹「まぁいいけど。今日の仕事は終わり?」
俺「うん。給料は来週」
妹「免許取らないとね」
俺「それなんだよなぁ。でも大丈夫かなぁ、身分証とか無いし」
妹「なんかややこしいね。人間。っていうか社会?」
俺「うん。何でも手続きだとか証明だとか。息苦しいったらありゃしない」

朽ちたプレハブ小屋。
俺「着いたよ」
妹「お疲れ」
俺「よいっしょ・・・」
死体の入ったゴミ袋。
俺「そろそろ取り替えようか」
妹「そうだね」
俺「腐敗のスピード速くなったなぁ」
妹「変わらないよ。表面に出始めてるだけじゃん?」
俺「そっか。あぁ、もう皮膚無いじゃん」
妹「だね」


70 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 18:35:50.95 ID:VAMVrkxU0

俺「虫湧くのだけ何とかならないかなぁ」
妹「防虫剤とか?」
俺「うーん。妹はどう思う?」
妹「私は別に。もはや何とも」
俺「じゃあいいや。金もったいないし」
小屋の裏で死体を別の袋に詰める。体液が止まらない。
俺「また軽くなったなぁ」
妹「もう10キロ切ったんじゃないかな」
俺「そんなもんじゃないよ。見た目だいぶ小さくなったし」
妹「面影ないね」
俺「うん。小さい頃はどんな顔してたっけ」
妹「さあね。昔の写真とかあんまり見たこと無いし」
俺「俺、妹が生まれる前の記憶ちょっとあるんだよな」
妹「本当?」
俺「うん。ほんのちょっとだけど」
妹「どんな?」
俺「うーん。母さんが横になってて、大きくなったお腹見てた」
妹「それで?」
俺「なんかそこだけ覚えてる。どんな子が生まれてくるんだろうって思ってた」
妹「ふーん。その後のことは?」
俺「生まれてすぐのことならちょっと。まだ名前決まってなくて、妹のことみんな赤ちゃんって呼んでたんだよ」
妹「へー」
俺「結構長い期間だった気がする。どんどん大きくなっていくんだよ。すぐ立てるようになったし」
妹「全然覚えてないや」


71 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 18:37:34.15 ID:VAMVrkxU0

俺「俺も自分のことは覚えてないよ。近所の人とか、みんな妹のこと可愛がってた」
妹「ああ、それはある。どこ行っても必ず言われるんだよね。なんてリアクションしていいかわかんなくて困った」
俺「はは、子供なりにそういうこと思うんだな」
妹「そうそう、言葉には出来かったけどとりあえずウザい感情はあったよ」
俺「まさか死ぬなんてなぁ」
妹「まぁ、今思うと正直自分でも意外」
俺「母さん達は誰かに聞かれたらどう答えるつもりなんだろう」
妹「はん、家出したとしか言わないんじゃない?」
俺「なんか想像つく。ムカつくな」
妹「そういえば兄、ご飯は?」
俺「ああ、そうだった。なんか慣れないんだよなぁ、こういうの」
妹「まぁしばらく食べてなかったからね」
俺「それもだけど、自分で作るっていうのが、元々無かったから」
妹「そうだね。でも意外と簡単じゃない?」
俺「うん・・・」
今日の夕飯はカップラーメン。
俺「美味いなぁ・・・」
妹「私も食べたかったな」
俺「・・・」
妹「泣いてる?」
俺「食えなかったんだよな」
妹「何が?」
俺「妹はこんな美味いもの食えないまま死んだんだよな」
妹「やめてよ」
俺「なんで今まで自分で作らなかったんだろう。こんなに簡単なのに」
妹「お湯入れるだけだしね」
俺「うん・・・」


72 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 18:38:48.17 ID:VAMVrkxU0

妹「冷めるよ?」
俺「泣いてると味しないんだもん・・・」
妹「しょうがないんだよ。死んじゃったんだから。もう何を食べても戻らないんだよ」
俺「わかってるよ。だから悔しいし、情けない。俺が働くのを怖がってたせいだ」
妹「兄のせいじゃねーよ・・・」
俺「こうやってちょっと頑張れば妹にご飯作ってあげられたのに」
妹「・・・」
泣いている。

俺「死ななくてよかったのに・・・」
妹「ごめん」
俺「なんで?」
妹「私が我慢すればよかったんだよ。私が食べるのをやめたから兄が無理する羽目になったんじゃん」
俺「・・・でも、妹が死ななきゃ、俺、働かなかった」
妹「まぁね」
俺「妹」
妹「うん」
俺「俺が死んだらどうなってたかな」
妹「またそれか。うーん、兄が先でも、私はこうなってたと思うよ」
俺「そっか。働ける歳じゃないしな」
妹「それに、あの家のことだから死体ほったらかしでしょ。ただでさえ不味いのに余計食欲無くすよ」
俺「だな。結局は、生きてるうちになんとかするしか無いんだ」
妹「あー」
俺「どうした?」
妹「今更だけど、こういうことなのかね。生きてる人と死んでる人の違い」
俺「やり直せるかどうか?」
妹「そう。怪我で歩けなくなっても、人に変な目で見られても、生きてればさ、兄みたいに自分を変えられるじゃん」
俺「確かにそうか。妹は腐ってく一方だもんね」
妹「うん」


77 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 19:30:05.50 ID:VAMVrkxU0

――――――――――――――
昼間の繁華街。大きなリュックを背負って。
俺「あーあ、バイク汚したからってすげー引かれちゃったよ」
妹「給料?」
俺「うん。一応借り物だけどさー、まだ返す訳でもないのに」
妹「厳しい世の中だね」
俺「本当生きてくのって大変だ」
妹「はは。でもいいじゃん、家も食べ物もあって」
俺「そうだね。働いた分だけ美味いものが食える。いいことだ」
妹「今日は何食べるの?」
俺「うーん。パンかな」
妹「いいねぇ」
俺「それより今日は大きな買い物をしようと思うんだ」
妹「何?」
俺「テレビ」
妹「それはまた思い切ったね。なんで急に?」
俺「休みの日は暇だけど、昼間に出かけるのは袋変えたり色々大変じゃん」
妹「ああ、だから夜になるまでのんびりテレビ見て過ごすのか」
俺「そんな感じ。いいだろ」
妹「いいね。段々贅沢になってきたなぁ」
俺「働くのも楽しくなるよ」
妹「でもなぁ」
俺「んー?」
妹「兄がやってるのってぶっちゃけ多分麻薬運びじゃん」
俺「ああ・・・」
妹「どうかとは思うよね」
俺「確かに。証拠は無いけど多分そうだ」


78 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 19:30:54.84 ID:VAMVrkxU0

妹「バレたりしないのかな。取りに来る人とかも」
俺「いつの間にかこれが当たり前になっちゃってるんだよな」
妹「うんうん。なんかね、危ない橋渡ってるって感じがしなくなったんだよね」
俺「でも、まぁ、今なら履歴書が買えるし」
妹「そっか。書き方とかわかるの?」
俺「うん、裏に書き方とか色々書いてあったから」
妹「そうなんだ」

夫婦で経営している小さな中古家電店。
旦那「いらっしゃい」
俺「テレビって、一番安いのでいくらですか?」
旦那「そうだね、映り悪くてDVD見れないのなら3200円だけど」
俺「ちょっと高いかな」
妹「買っちゃえ買っちゃえ」
俺「よし。じゃあそれください」
旦那「どうもありがとう。配送にするかい?」
俺「え?」
旦那「住所書いてくれたら2時間ぐらいで車で届けるよ。代金かからない」
俺「住所かぁ・・・いや、大丈夫です。自分で持って行きます」
旦那「あっそう? 結構重いよ」
俺「平気です」
旦那「じゃあ紐つけてあげるから、ちょっと待ってて。・・・ん、なんか臭うな」
俺「あ・・・」


79 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 19:31:39.11 ID:VAMVrkxU0

旦那「ガス漏れかな・・・おーい、なんか臭いぞ。ガス見て来い」
奥さん「あら大変」
俺「えっと、紐、いいです」
旦那「ええ? 持ちにくいよ?」
俺「早く帰りたいので」
旦那「あっそうかい。じゃあ3200円」
俺「はい」
奥さん「ちょっと、ねぇ何の臭い? ガスは出てないみたいだけど」
旦那「何だ? 参ったな、お客さん臭くて困ってるよ」
奥さん「すいませんねぇ、本当に何の臭いやら」
俺「い、いえ・・・」
旦那「はい、お釣り1800円。どっこいしょ、落とさないようにね」
俺「はーい・・・」

背を向け、足早に遠ざかる。
旦那「あのお客さんだなぁ」
奥さん「そうねぇ」

俺「やばかったな・・・そんなに臭うのか」
妹「鼻が悪くなったのかもね」
俺「かも知れない。全然気付かなかった・・・昼間の外出は気をつけよう」


80 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 19:32:44.61 ID:VAMVrkxU0

プレハブ小屋。
俺「これでいいのかな・・・えっと、地上波ってやつだよな。・・・っと、よし」
妹「これで映るの?」
俺「線これしか無いし多分大丈夫」
妹「壊れてたらやだなぁ」
俺「スイッチ入れて・・・ん? チャンネルかな・・・ああ、映るじゃん」
妹「よかった」
俺「やったな」
ニュースが流れている。
テレビ「・・・市で兄妹の行方がわからなくなっている件で――」
俺「あ、これもしかして」
妹「え?」
俺「前の家の近くが映ってるよ」
妹「本当だ。すごいなぁ」
テレビ「・・・によく似た少年が、遺体のような物を担いでいたという目撃証言があり、警察は、兄妹が何らかの――」
俺「え・・・」
妹「あら・・・」
テレビ「・・・警察署では、この2人に関する情報を引き続き募集しているということです。心当たりが――」
俺「俺達のことがニュースになってる・・・」
妹「私は生きてることになってるんだね」
俺「母さんか父さんが通報したのかな。俺達のことなんか何とも思ってないくせに」
妹「学校が気付いたんじゃない?」
俺「ああ、そうかも」
妹「どっち道バレたら駄目だったけど、なんかますます動きづらくなりそうで怖い」
俺「うん。それに妹が家で死んだこと誰も知らないから、見つかったら俺が殺したことにされそう」
妹「あぁ・・・そうだね。兄は私を連れ出してくれただけなのにね」
俺「ちょっと不安になってきた。俺達どこまで行けるんだろう」
妹「・・・」


85 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 20:44:18.41 ID:VAMVrkxU0

―――――――――――――――――
深夜の住宅街、原付に乗って。あちこちの家がクリスマス色の化粧をしている。
俺「なんか歩きで外出ることすっかりなくなったよなー」
妹「バイク乗ってないのにフルフェイス被ってたらただの変質者だもんね」
俺「今度はサングラスと帽子とマスク買わないとなぁ・・・」
妹「まぁ、いいんじゃん?」
俺「それ自体はな。でももう普通の仕事は出来ない。あーあ、ニュースで写真出すから」
妹「それがちょっとね」
俺「あれ?」
妹「どうした?」
俺「Kだ。なんであんな所で止まってるんだろう」
妹「Kってどの地区の人だっけ? 聞いてもわかんないけど」

Kの横でバイクを停める。
俺「どうしたの? パケ取りに行かないの?」
K「クサオか。顔見るまでもない」
俺「俺臭くないってば」
K「お前ブツに手出してんだろ。ジャンキーは臭いでわかる」
俺「そんなことしてないって」
K「シー。見てみ」
俺「何・・・?」
K「あそこ。赤い光だ」
俺「本当だ・・・警察が来てるのかな」
K「多分な。こういう時は俺らが取りに行かなくても異常が無ければチンピラがここに届けに来る」
俺「知らなかった・・・Kがいなかったら近付いてた」
K「だけどさっきから待ってるんだが一向に来ない。待機所で何かあったのかも」
俺「調べて来る?」
K「よせ、馬鹿。お前は臭いだけで即刻捕まるよ」
俺「そんなに臭いかなぁ」


86 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 20:45:01.56 ID:VAMVrkxU0

K「中毒患者は死臭を放つ。お前のはマジで異常だけど」
俺「そっか・・・もう俺自身にも臭いが染み付いてるんだ」
K「やばい、動いてる。来るぞ」
俺「どうする?」
K「とりあえず逃げろ。今日はもう来ないほうがいい」

急発進するK。
妹「何だろうね」
俺「なんか、嫌な予感する」
元来た道を走る。

プレハブ小屋。午前2時。
ドン、ドン、ドン。
俺「!?」
妹「何!?」
ドン、ドン、ドン。
俺「風じゃないぞ・・・誰かがドア叩いてる」
妹「怖い・・・」
俺「どうしよう・・・警察かな」
妹「兄・・・」
ドン、ドン。
俺「やばい。えっと・・・とりあえず冷蔵庫の中入っとけ」
妹「え、でも兄が逮捕されたら私ずっとこの中だよ? やだよ?」
俺「俺もやだよ。でも死体が見つかったら捕まる確率100パーだろ」
妹「連れてってよ!」
袋ごと冷蔵庫に入れる。
妹「兄!」
ドン。


87 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 20:46:19.91 ID:VAMVrkxU0

俺「・・・音が止んだ。帰ったかな」
妹「兄ー・・・」
・・・
俺「何だったんだろう」
ガンガンガンガン。
窓ガラスから。
俺「!!」
K「クサオ! クサオだろ! 入れてくれ!」
俺「K!」
K「無茶苦茶寒い! 大事な話があるんだ、ドア開けてくれ!」
急いでドアを開ける。
K「よかった、ここなら足がついてないと思ったんだ」
俺「どうしたの?」
K「聞いてくれ、うわっ、とんでもねぇ臭い・・・」
俺「ごめん。それでどうしたの?」
K「クライアントが捕まった。罪状はわからん。そっから芋づる式にどんどん罠にかかって・・・」
俺「ええ・・・!」
K「行かなくて正解だったよ、危うく俺らもパクられるとこだった」
俺「どこで知ったの?」
K「あの後まっすぐ帰ろうとしたんだけど、うちの近くに覆面がうろついてた。多分ミシャ辺りが吐いちまったんだと思う」
俺「それで?」
K「公衆から事務所に電話入れて聞いたんだ。俺らの待機所に登録してる奴らが次々に捕まってるって」
俺「どうしてここがわかったの?」
K「元は俺がここに住んでたんだ。今は違う奴が住んでるかもしれないって思って来てみたんだけど、外に止まってる原付でお前だってわかった」


88 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/27(木) 20:47:33.18 ID:VAMVrkxU0

俺「これからどうすればいい?」
K「ここは地図にも載ってない。空き地扱いになってる。だから他の奴の家にいるより数倍安全なんだ。すまないがしばらく泊めてくれ。もう家にも帰れん」
俺「それはいいけど・・・」
K「問題は金だな・・・」
俺「うん」
K「・・・ふぅ。まぁとりあえず生きてるうちはなんとかなる。捕まらなきゃな」
俺「・・・そうだね」
K「ところで、お前本当に薬やってんの? 顔見た感じだとずいぶん健康そうだけど」
俺「だからやってないって」
K「おかしいな。じゃあなんでこんなに臭いんだよ」
俺「自分ではわからないけど・・・多分、死体の臭いだと思う」
K「死体・・・?」
俺「これだよ」
冷蔵庫を開け、ゴミ袋を掴み出す。中身はほとんど液状。
K「・・・これは・・・?」
俺「妹」
K「小さいな」
俺「溶けちゃったからね」
K「・・・お前が殺したのか?」
俺「違うよ・・・」
K「そうか・・・ならいい。でもなんで死体なんか隠してるんだ?」
俺「母さんの料理が不味くてさ、食べなくなっちゃったんだ。それで餓死して。俺は家出。あんな家に置いとくのはかわいそうだから、連れ出したんだ」
K「お前・・・」
俺「ん?」
K「変だな」


90 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 2011/01/27(木) 20:50:11.15 ID:8eLNA4w80

おk
やっとまともなのが現れたなw
知られなかっただけか


97 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 2011/01/27(木) 21:54:44.93 ID:EBAiWvZh0

いいな。
こういうスレを待っていたんだ


110 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/28(金) 00:24:11.66 ID:SDt9HwHE0

――――――――――――――――
数日後の夜。眠っている時に。
妹「兄・・・兄」
俺「ん・・・? 何だよ、こんな時間に」
妹「Kがいない」
俺「Kが?」
電気をつけて見回す。
俺「本当だ。どこ行ったんだろう」
妹「仕事なら無くなっちゃったはずなのに」
俺「でも時間が時間だからなぁ。何かコネで見つけたのかも」
妹「教えてくれてもいいのにね」
俺「あー、バイクも無いや。黙って出て行くなんて」
妹「どうする?」
俺「どうするったってなぁ。うーん、起きて待ってみるか」
妹「わかった」
テレビをつける。古い映画。
俺「そうだ、またニュースで何か身近なことやってるか見てみよう」
妹「この前のニュース見てなかったら今も素顔で出歩いてたろうしね」

俺「・・・」
妹「・・・」
俺「何にも無い。よかった」
妹「そうだね。あぁ、それにしても自分のことがニュースになるなんて思ってもみなかったなー」
俺「あれから俺達少し敏感になったよな。どこに暮らしのヒントがあるかわからない」
妹「うんうん。あーあ、また仕事無くなっちゃったんだなぁ」
俺「困ったな・・・民間人には顔見せられないし、ヤクザはいなくなっちゃったし」
妹「本当。八方塞がりって感じ」
ガチャ。扉が開く。


111 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/28(金) 00:25:51.50 ID:SDt9HwHE0

俺「ん? あ、K」
K「ただいま・・・起きてたのか」
俺「どこ行ってたんだよ。びっくりしたぞ」
K「悪い。バイク売りに行ってたんだ。あれ、私物だから」
俺「そうだったんだ。でもこんな時間に行くってことは・・・」
K「気にすんな。まともな店じゃ審査とかうるせーからよ」
俺「・・・俺達ってまともじゃないんだよな」
K「ははは、一番異常なのはお前だろ。そんな平然と死体運んでよ、この臭気にも無反応」
俺「だって妹だもん、見捨てられないよ」
K「けどよ・・・もうドロドロだし、原型無いのに、それでもよく妹だって普通に言えるよな」
俺「うーん、バイクは壊れたらもうバイクじゃないけど、妹は死んでも妹だし」
K「埋葬してやろうとかは思わないのか?」
俺「まさか。この前だって冷蔵庫に入れた時すごい怖がってたんだよ」
K「はは、そのリアルな物言いマジこえぇ。想像で語ってるとは思えんな」
俺「なんで想像の話になるんだよ、ははは」
K「はは・・・」
俺「・・・?」
K「マジで笑ってるのか?」
俺「気に障った?」
K「いや。別に」
俺「えー、なんかごめん」
K「そうじゃねぇよ。なんつーの・・・もしかしてさ、お前、霊感とかあるタイプ?」
俺「無いよ」
K「じゃあ妹が怖がってたって話はどういう意味だ?」
俺「何言ってんの・・・?」
K「だからよ、俺が聞きたいのは・・・。例えとか空想とかじゃなく、現実問題、妹が喋ったりするってのか?」
俺「K、ちょっと怖いよ。意味がわからないな・・・じゃあそのまま答えるけど、そりゃ喋りますよ妹は」
K「・・・死んでるんだぞ?」
俺「死んでるよ」
K「・・・」


112 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/28(金) 00:28:00.38 ID:SDt9HwHE0

俺「悪いかよ」
K「あのな。俺をからかってるんじゃないとして真面目に言うけどよ」
俺「うん」
K「死んだ人間は喋らないって知ってるか?」
俺「なんで?」
K「人間は死んだら喋れないんだよ。なぁ、冗談だったなら今のうちそう言えよ」
俺「またまた、そんな都市伝説みたいなの信じてるのKは」
K「おい」
俺「ん・・・その顔怖いって・・・」
K「怖いのはお前だよ・・・」
俺「・・・」
K「わかった。じゃあ喋ってみろよ、妹と」
俺「妹は知らない人がいると喋れないんだよ」
K「はっ、んな都合いい話があるか。だいたい俺と会って結構経つじゃんか」
俺「まぁ確かに。聞いてみる」
K「うお・・・」
俺「妹?」
妹「・・・ん?」
俺「Kが妹と喋ってるところ見たいって言うんだけど」
妹「うーん・・・まぁ、いいんじゃん?」
俺「だってさ」
K「・・・」
俺「Kなら大丈夫だって」
K「・・・俺には聞こえなかったな。もうちょっと大きい声で」
俺「何なんだよまったく・・・妹ー」
妹「でも何て言ったらいいんだよ」
俺「とりあえず挨拶とか」
妹「んー・・・じゃあ、こんにちは・・・」
俺「聞こえた?」
K「クサオ・・・」


113 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/28(金) 00:29:47.99 ID:SDt9HwHE0

俺「何?」
K「・・・」
俺「何だよ・・・」
K「・・・聞こえたよ」
俺「K・・・?」
K「ああ、聞こえた。こんにちは、だろ? 本当だった。俺が間違ってたわ」
俺「あはは、意外と天然なんだなぁKって」
K「っはは、悪かったな、馬鹿で」
俺「ごめんごめん」
妹「はは」
俺「妹、Kっていい奴だろ。見た目不良だけどさ」
妹「まぁね。そういえば死んでから家族以外と口利くの初めてだなぁ」
俺「あぁ、確かに」
K「っへへ、そうかな、そんなこと無いと思うけどなー俺は」
俺「いやいや、Kは知らないだろ」
K「あ、ああ・・・そうだったかもな」
俺「ふぅ。なんか笑ったなぁ。眠くなってきた」
K「だな」
俺「Kは明日何するの?」
K「俺? 俺は・・・新しい仕事を探す。出来ればお前にも向いてるやつを」
俺「ありがとう」
妹「こんな兄でごめんな」
K「出来れば、だぜ」
俺「うん」
K「俺も寝るわ。電気消してくれ」
俺「はいよ。おやすみ」
K「おやす」
妹「おやすみ」
・・・・・・
・・・・・・


115 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/28(金) 00:32:52.23 ID:SDt9HwHE0

K「クサオ、起きてるか」
俺(もう眠いから寝てるふりしよう)
K「ふぅ・・・なぁ、聞こえてるのか?」
妹「私?」
K「一応信じるけどよ」
妹「うん」
K「やっぱ、俺には聞こえねぇよ。兄ちゃんに嘘ついてごめんな」
妹「・・・そう」
俺(!?)


158 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/28(金) 18:24:57.58 ID:SDt9HwHE0

――――――――――――――――――――――――
翌朝。
俺「んん・・・」
妹「おはよう」
俺「うん・・・あ、K・・・K!?」
妹「いるよ」
俺「あぁ、本当だ・・・毛布で見えなかった」
妹「昨日寝てなかったからぐっすり寝てる」
俺「だな。はぁ、バイク売っちゃったのかー」
妹「いくらぐらいになったんだろう」
俺「うん。なんか聞きづらいや。そんなに大事にしてなかったならいいけど」
妹「・・・」
俺「妹?」
妹「何?」
俺「・・・いや」
妹「・・・」
俺(家族以外と会話出来ないって知ってショックなんだ・・・)
K「う、うぅ・・・」
妹「起きたよ」
俺「あ、あぁ」
K「・・・んー・・・うぅ」
俺「・・・やっぱ起きてない。なんか苦しそうだけど変な夢でも見てるのかな」
妹「なんか兄より気苦労多そうだしね」
俺「否定出来ないな」
K「あぁー・・・っく」
俺「K?」
K「・・・」
俺「起きた?」
K「・・・ああ」


159 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/28(金) 18:26:40.47 ID:SDt9HwHE0

妹「・・・」
俺「うなされてたよ」
K「・・・そうだな」
俺「何の夢見てたの?」
K「・・・いや。夢じゃない」
俺「じゃあ何だよ」
K「違うんだ。頭が痛くてよ」
俺「頭痛いの? 大丈夫?」
K「・・・ッチ。残念ながら。どうも風邪とかじゃない気がする」
俺「・・・」
K「ああ、機嫌悪いように見えるか? すまんな、マジで痛ぇんだ」
俺「外、出てくる」
K「ははっ、そんな顔すんな。大方寝不足か仕事無くしたストレスだ」
妹「・・・」
バタン。

朝の外気は凍るように冷たかった。
俺「・・・はぁ。Kとも妹とも気まずくなっちゃったなー・・・。Kはなんで妹に本当のこと言ったんだろう。はぁ・・・ひどい話だ」
ガチャ。
俺「K?」
K「俺が出てきちゃ迷惑か? はは、外の空気ぐらい好きに吸わせろ」
俺「こう見えても独りで考え事したい時だってあるんだよ」
K「お前って本当馬鹿だもんな。いいんじゃね? その習慣」
俺「うるさいな」
K「うーん。ちっと楽になったな。中の空気が悪かったのかも知れん」
俺「あぁ、死体・・・」
K「・・・まぁ、妹優先しろよ。俺は余所者だ」
俺「ごめん」
K「・・・いい、いい。だいたいお前が何とも無いってのなら、俺もそのうち慣れるだろ。ごほっ」
俺「やっぱり風邪じゃない?」


161 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/28(金) 18:28:08.61 ID:SDt9HwHE0

K「煙草が効いてんのかな。臭いを紛らわす為につい吸いすぎちまう」
俺「煙草か・・・俺も吸おうかな」
K「ああ、そういや吸ってないんだったな。どうも薬中のイメージがあって。本当のお前って割と丈夫だよな」
俺「どうだろう。比べる相手が少ないからわからないや」

K、煙草に火を着ける。遠くを見ながら。
俺「・・・1本貰っていい?」
K「・・・ぷっ。いいよ、吸えよ」
俺「ありがとう」
K「ほらよ、くわえて吸い込まないと火着かないぞ」
俺「うん」
K「・・・」
俺「ふぅ・・・」
K「あら、むせなかったな」
俺「見様見真似」
K「へー」
俺「煙草の臭いにも慣れないと」
K「・・・」
俺「・・・」
K「次から自分で買えよな?」
俺「あは」


168 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/28(金) 19:42:18.48 ID:SDt9HwHE0

―――――――――――――――――
妹「兄」
俺「ん?」
妹「いつからヒゲ生えるようになった?」
俺「あぁ・・・結構濃くなったんだなぁ。ちょっと前まで産毛だったんだけど」
妹「無精髭伸びてるとだいぶおっさん臭くなるね」
俺「やだな」
妹「なんか違う人見てるみたい」
俺「今度は髭剃りか・・・でも髭ってどうやって剃るんだろ。ちょっと痛そうだな」
妹「髭剃りって切れ味よさそうだしね。あ、でもさ、でもさ」
俺「うん?」
妹「逆に髭生やしてるほうが人からバレにくいんじゃない?」
俺「え、そんなに違う?」
妹「うーん、全くってほどじゃないけど、歳がかなり上に見える」
俺「よくわからないな」
妹「ニュースでやられた写真はなんか結構子供って感じだったじゃん。だから印象違うと思う」
俺「そうかー。まぁ、利用出来るならするに越したこと無いな」
妹「うんうん」

ガチャ。
K「ただいま・・・」
俺「おかえり」
K「今日は結構稼いだぜ・・・」
俺「ご飯食う?」
K「の前に水を大量にくれ・・・」
俺「はい」
ペットボトルの水を冷蔵庫から出して手渡す。
妹「・・・」


169 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/28(金) 19:44:52.84 ID:SDt9HwHE0

K「ふぅ、サンキュー」
俺「走って来たの?」
K「いや。口の中がどうもな」
俺「ふーん。出張ホストってどういう仕事するの?」
K「あー・・・うん。お前馬鹿?」
俺「知らないもんは知らないよ」
K「妹の前で言っていいの?」
俺「言っちゃいけないようなことなのか」
K「そういうことだ。特に2丁目絡みのは」
俺「そんなに危ない仕事なんだ・・・」
K「・・・まぁ、別の意味でな・・・それより金だ。ほら」
俺「8千円!」
K「疲れたぜ」
俺「なぁ、K・・・」
K「あ?」
俺「Kはなんで俺達にこんなによくしてくれるの?」
K「ガキにはわからんか。・・・俺もガキだが。受けた恩恵の分は働く。それだけだ」
俺「でも俺は・・・俺は・・・働いてないし」
K「・・・運ってやつだろ。俺が追い込まれた時、ここに住んでたのがたまたまお前だった。お前が主人だった」
俺「だけど、いいの?」
K「いい訳ねぇだろ。働けよ」
俺「・・・」
K「そうすりゃ俺とお前でもっと贅沢出来る。あぁ、妹も入れて3人でだ」
俺「そうだね」
K「すまんな。一応探してはみたんだけどよ、お前にも出来る仕事。だがコネは使い尽くしちまった」


170 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/28(金) 19:46:07.68 ID:SDt9HwHE0

俺「・・・何馬鹿なことやってるんだろう」
K「は?」
俺「自分の問題は自分で解決するって決めて家出したのに」
K「・・・ふっ、ふふ。ああそう」
俺「千円、貰うね」
K「どこ行くんだ」
俺「履歴書買って来る。それと写真撮る」
K「お、おい。指名手配されてんだろ?」
俺「違うよ。ただの捜索願い」
K「どっちにしろ情報流されたらアウトだろうが。俺も関与したとかでタダじゃ済まなくなる」
俺「大丈夫だって。半年近くもこんな生活してるんだから、それなりにわきまえてる。行くぞ、妹」
妹「ほい」
K「へっ・・・マジ頼りねぇ」

その直後、夜11時。
妹「兄」
俺「おう、兄だ」
妹「気付いてるよね」
俺「何が?」
妹「私がKと喋れないの」
俺「あ・・・」
妹「なんでだと思う?」
俺「なんでって・・・」
妹「人見知り、じゃないよ。先に言っとくけど」
俺「・・・うん」
妹「あは、やっぱり気付いてた」


172 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/28(金) 19:47:33.58 ID:SDt9HwHE0

俺「実はさ、あの時起きてたんだ。Kが妹に打ち明けた時」
妹「そうなんだ。それは知らなかった」
俺「俺の目を盗んで言うんだから、多分本当なんだろう」
妹「そうだろうね」
俺「生きてると死んでるの本当の違いってこれなんじゃないかな・・・」
妹「喋れるかどうか?」
俺「うん・・・Kの言い方から察するに、俺と妹がこうして喋ってるのも、異常なことなんだと思う」
妹「そっか・・・」
俺「なぁ妹」
妹「はい」
俺「妹は本当にいるよね?」
妹「まぁ」
俺「あれから時々思うんだ。これ全部俺の夢なんじゃないかって」
妹「ほっぺたつねってみれば?」
俺「そうじゃなくて、俺1人がただ、妹が死んだのを受け入れられてないだけで、これ全部幻で・・・」
妹「・・・」
俺「本当は妹は喋ってなんかなくて、俺が勝手に1人芝居してるだけなんじゃないかって・・・」
妹「・・・」
俺「妹?」
妹「かもね」
俺「・・・だとしたら、異常なのは母さん達だけじゃないよ」
妹「私はちゃんと私が喋ってるって言えるよ。兄は納得いかない?」
俺「信じたいよ」


173 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/28(金) 19:50:16.86 ID:SDt9HwHE0

妹「じゃあ、私だけが知ってることを教えたら納得いく? 幻だったら兄の知らないことまでは聞こえないでしょ」
俺「あー・・・」
妹「ちょっと立ち止まって」
俺「うん」
妹「えっとね。ちょっと待って」
俺「うん・・・」
妹「後ろから歩いて来てる人は、ベージュのコートを着てて、黒い手袋をしてる。で、シャネルのバッグを肩にかけてる」
俺「シャネル?」

女が追い抜いていく。
妹「あれがシャネル」
俺「おお」
妹「おお?」
俺「納得」
妹「よかったね」
俺「よかった。俺おかしくなかった」
妹「リュックに腐乱死体入れて歩いてるのはおかしいけどね」
俺「こいつ。冷蔵庫入れるぞ」
妹「ごめんごめん」


182 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 2011/01/28(金) 20:50:18.80 ID:nRI7dcOL0

>>173
これなら兄が後ろを向いてる状態でKと妹が筆談(妹の声は兄が代弁)すればKに信じてもらえるね


174 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 2011/01/28(金) 19:50:35.31 ID:npXxIa+P0

捜索願いってどういう事?
アリバイ作り?
馬鹿ですまん


177 : ◆2kGkudiwr6 [] 2011/01/28(金) 20:16:57.70 ID:SDt9HwHE0

>>174
誰にも伝わってなかったらやだから説明しちゃうわ。
「捜索願い」ってのは兄の憶測である部分が大きい。
「行方不明の兄妹」としてニュースで顔さらされて以来、人目を気にするようになった。
誰かの親切心で所在が暴かれたら妹の死体が露見するから表の世界がより遠くなった。


178 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 2011/01/28(金) 20:20:18.46 ID:npXxIa+P0

>>177
ありがとう。分かった



元スレ:http://raicho.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1296087238/
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