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751 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/09 20:34:45.09 ID:CRK6ltOp0

 ――《夜行》控え室

利仙「ただいま戻りました」

藍子「おかえりなさーいっ!」

絃「さすがに荒川は強かったか?」

利仙「そうですね。かつてのナンバー7として、もっと善戦する予定だったのですが……」

藍子「ガチの荒川さんと打ち合ってプラス収支になってるだけでもすっごいことですよ。私は無理ですっ!」

絃「私もだ」

利仙「ありがとうございます。実際……都市伝説にまでなっている例の仕草が出たときは、鳥肌が立ちましたよ。
 あの《悪魔の目》に捉われていたら、私とて無事では済まなかったでしょう。攻撃対象が私ではなかったのが幸いでした」

藍子「いやはや……利仙さんにここまで言わせるとは。さすがの荒川さんだわー」

絃「宮永照を筆頭に、上位《三人》は本当に人外な打ち手ばかりだな……」

いちご「……上位の《三人》。あのチームにおるそのうちのもう一人と、ちゃちゃのんは今から戦うわけじゃな……」ズーン

もこ「」ブツブツブツブツ

藍子「トばされなければなんでもいい、だそうです」

いちご「わりゃー!?」

利仙「ま、なんとかなるでしょう。一年生の最初の頃、佐々野さんは辻垣内さんと打ったことがありますが、そのときはトびませんでした」

いちご「あの頃から力の差が開いてなければええがの……」

絃「まあ、さすがに十万点持ちでトぶことはないだろうが、とにかく気をつけてくれ。敵は辻垣内だけじゃない。
 《煌星》からはあの宮永照の妹が出てくる。中堅戦も厳しい戦いになるはずだ」

いちご「わ、わかっちょる! いつもは考慮せんことまで考慮して、なんとか繋いでみせるけえ、応援よろしくの!!」

利仙「はい。任せてください」

いちご「ほいじゃ! 行ってくるわっ!!」ダッ

利仙「行ってらっしゃい――」

 ダッダッダッ バタンッ

752 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/09 20:40:11.83 ID:CRK6ltOp0

絃「…………行ったか。ということは、いよいよ始まってしまうわけだな。問題のいちごの対局が」

藍子「ええ……始まりますね。大問題のいちごさんの対局が」

もこ「」ブツブツブツブツ

利仙「もっ、もう行きましたよね? 大丈夫ですよねっ?」ソワソワ

絃「ああ、大丈夫だ。廊下を見てきたが、姿はなかった」

利仙「よし……っ!!」イソイソガサゴソ

絃「……チーム編成のとき、私と藍子は、五人目に荒川を誘おうとしていたんだよな」

藍子「ダメ元でしたけどね。言うだけ言ってみようって。私は保健委員なんで、顔見知りですし」

絃「だが、利仙がそれに異を唱えた。『五人目は佐々野いちごにしよう』『佐々野いちごのほうがいいに決まっている』――と」

藍子「いちごさんも決して弱くはないですけど、実績は荒川さんのほうが遥かに上。チームの勝率を上げたいなら、間違いなく荒川さんのほうがいいはずです」

絃「だが、あの《花散る里の天女》、《百花仙》、《最愛》の大能力者、《神憑き》、元ナンバー7と数々の異名を持つ利仙が、『どうしても佐々野いちご』『佐々野いちご以外にありえない』とまで言う」

藍子「聞けば、利仙さんといちごさんがチームを組むのは、これが初めてじゃないってことでしたし。何か、私たちには考えの及ばない、海より深ぁーい理由があるのかと思いました」

絃「それが蓋を開けてみたら……」

利仙「きゃー!! いちごちゃんが対局室に姿を見せましたよー!! ちょっと緊張してるのがまた可愛いなーもーっ!!」ブンブン

絃・藍子「………………」

753 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/09 20:48:38.07 ID:CRK6ltOp0

利仙「さあっ! 霜崎さんも百鬼さんも対木さんも!! この『いちごうちわ』を持って応援しましょうっ!!」ブンブン

絃「利仙、お前……またこんなもの作って……」

藍子「このプリントしてある写真……いちごさんの目線がこっちにない。さては練習のときに隠し撮りしましたね?」

利仙「細かいことは気にしないっ! そんなことより、ほらっ! いちごちゃんが場決めしますよー!! きゃー! きゃー!!」ブンブン

もこ「」ブツブツブツブツ

藍子「あ……もこ的にはアリなんだ。ってか、そう言えば、今までももこはわりとノリノリだったっけ」

もこ「/////」ブツブツブツブツ

絃「いちごは夢にも思わないだろうな。自分の対局中に、あの花散る里の天女百花仙最愛の大能力者神憑き元ナンバー7と数々の異名を持つ利仙が、
 手作りの『いちごはっぴ』を着て、『いちごはちまき』を締めて、『いちごうちわ』を振り回しているなんて……」

藍子「利仙さん、いちごさんには隠してますからね。ファンだってこと」

絃「それもただのファンじゃない。まだいちごがメジャーじゃなかったジュニア時代からの最古参だ。
 いちごに会いたいがために麻雀を覚え、半年そこらでインターミドルの舞台に出てくるくらいだから、相当だぞ」

藍子「霧島に通って神代さんたちに特訓してもらったんでしたっけ。いくら生まれつき《神憑き》の才能があったからって、とんでもない成長っぷりですよね」

絃「実際、利仙はあまりに強くなり過ぎて、記念すべき初対面となったインターミドルの個人戦で、いちご本人をボコボコに負かしたらしいからな。もう何がなんだか」

藍子「《最愛》は《斎愛》――愛し祝いて花咲かす斎き女って、これがその由来なんだって知ったときは、利仙さんに対する諸々の幻想が砕け散りましたよ」

利仙「ほらあー! 二人とも、何よそ見してるんですか!! いちごちゃんが起親ですよーっ! サイコロ回しますよっ! せーのっ、L・O・V・E・い・ち・ごー!!」ブンブン

絃・藍子「い、ち、ごー……」

利仙「声が小さぁーいっ!!」

絃・藍子「い、ち、ごー!!」

利仙「きゃー!! いちごちゃーん! 頑張ってーぇ!!」ブンブン

絃「またこれが半荘二回ずっと続くのか……」

藍子「ゆゆしき大問題ですよね。ま、なんだかんだで、楽しいからいいんですけど」

絃「確かに、ここでしか見られない貴重な光景ではある」

利仙「きゃー! いちごちゃーん!! 愛してるーぅ!! きゃーっ!!」ブンブン

もこ「/////」ブンブンブンブン

 ――――

754 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/09 20:51:18.53 ID:CRK6ltOp0

 ――対局室

美子「よろしくとです」

 北家:安河内美子(新道寺・57900)

いちご「よろしゅう」

 東家:佐々野いちご(夜行・104700)

咲「よろしくお願いします」

 南家:宮永咲(煌星・82900)

智葉「よろしく……」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 西家:辻垣内智葉(劫初・154500)

『中堅戦……開始です!!』

765 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/15 20:24:16.57 ID:jCpyXqlc0

 東一局・親:いちご

いちご(さて、起親じゃ。幸い配牌もまずまず。手堅く和了っておきたいとこじゃが……打点も下げたくない。ひとまず門前で進めるかの)タンッ

いちご(にしても、さっきの次鋒戦の速さは異常じゃったな。決して裏目らん《悪魔》と、筒子とド真ん中しか引かん《百花仙》の利仙、さらには門前特化の《ステルス》……とどめは《飛雷神》の一巡国士テンパイと来たもんじゃ)タンッ

いちご(ほとんどの局が山の半分くらいで決着がついとった。じゃが、普通はもっと深くまでもつれることもある。
 ちゃちゃのんは特殊な能力がないけえ、手はしっかりと暖めたい。焦らず、騒がず、動じず打つ……!)タンッ

美子「ツモです。1000・2000」パラララ

いちご(は――?)

智葉(一回戦と打ち方を変えてきたか)

咲(この人……)

いちご:102700 咲:81900 智葉:153500 美子:61900

766 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/15 20:26:44.55 ID:jCpyXqlc0

 東二局・親:咲

美子(こん点差……できることない取り返したかばってん、私にナンバー3の辻垣内さんとあの宮永さんの妹ばどげんかできるとは思えん)タンッ

美子(現状、三回戦に駒ば進めるためには二位狙いが妥当。二位の《夜行》とは四万点差。私には無理でん、池田さんか仁美ない一発でひっくり返せる点差と)タンッ

美子(なら、私のすべきことは何か。これ以上離されない。凹まない。逆転のチャンスば残したままで池田さんと仁美に繋ぐ。
 そんために、こん中堅戦は徹頭徹尾流す。そいで、辻垣内さんや宮永さんのペースば乱せればなおよか……!)タンッ

美子「ロン、3900」パラララ

いちご「はい……」チャ

美子(私は私にできることばすっ……そいがチームのためと!)

いちご:98800 咲:81900 智葉:153500 美子:65800

768 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/15 20:31:51.84 ID:jCpyXqlc0

 東三局・親:智葉

咲(二回戦に勝ち上がってくる人たち相手だと、さすがに思うようにいかないな。1000点スタートは大変だよ。合宿のときもそうだったけど、序盤でハコになることがある)タンッ

咲(そもそも団体戦に《プラマイゼロ》は存在しない。それを、25000点持ちの30000点返しだって自分を騙して、能力を使ってる。
 その上、1000点スタートなんて無茶な想定をしてるから、騙しどころか騙し騙しの応用。ちょっと崩されると立て直すのに時間がかかる……)タンッ

咲(先鋒でへっぽこエースの淡ちゃんが不発だったから、チーム的には、この中堅戦で真のエースの私がなんとかしないといけない。
 できるだけ稼いで、友香ちゃんや煌さんの負担を、少しでも軽くしておきたい)タンッ

咲(嶺上開花は自己判断でやっちゃっていいって話だったけど、淡ちゃんの残念ダブリーの例もある。あんまり能力を過信するのもな。
 特に、この眼鏡の――辻垣内さん。さっきの荒川さんと同じ、あのお姉ちゃんをそこそこてこずらせる人)タンッ

智葉「」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

咲(この人がいつどこで何をしてくるかわからない。慎重に行くよ。私はバカの淡ちゃんと同じ轍は踏まない……!!)

咲「カン」パラララ

咲(よし、これであとは次巡でツモれば!)

美子(出た……《魔王》のカン。こいで場の支配を強めて、点数調整ばしとるとかなんとか)タンッ

いちご(嫌な感じじゃの――)タンッ

智葉「ポン」タンッ

咲(え――飛ばされ……!? いや、それだけじゃない――!!)

美子「あ……ツモ、500・1000です」パラララ

咲(トばされた……!? その和了り牌は私のだったのに!! いきなり1000点スタートの想定が崩されたよ。この人、やっぱり危険……ッ!!)ゾクッ

智葉「」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

いちご:98300 咲:81400 智葉:152500 美子:67800

769 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/15 20:38:45.70 ID:jCpyXqlc0

 ――《劫初》控え室

憩「おおーぅ、さすがガイトさん。いやらしいとこで鳴きますなー」

菫「智葉のポンがなければ照の妹が和了っていた。あいつもお前と同じで、よく見透かしたような打ち方をするな。
 頭が切れるのは認めるが、お前のような《特例》の才能を持っているわけではないはず。あの鋭さは一体どこから来るものなんだか……」

憩「あれ、菫さんは知らへんのですか? ガイトさん、元能力者やってん。その名残で、能力者が引き起こす場の変化に敏感なんやそうですよー」

菫「初耳だぞ……。というか、元ということは、今は違うんだよな? 能力者が能力を失った例というのも、私は聞いたことがないが」

憩「それは、まあ、聞いたことないのも無理ありません。ガイトさんのは厳密には能力とちゃいますから、ホンマのホンマにレアケースなんやと思います」

菫「能力じゃない? しかし、お前は先ほど能力者と……」

憩「言葉の綾ですわ。ガイトさんが能力者と呼ばれていた時期はありません。あくまで学園都市基準で言うならそうや、っちゅー話です」

菫「……どういうことだ?」

770 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/15 20:46:36.46 ID:jCpyXqlc0

憩「菫さんは聞いたことありますか? 《魔術師》っちゅー単語」

菫「あるにはある。海外では《能力》のことを《魔術》と呼び、《能力者》のことを《魔術師》と呼ぶのだろう?
 実際、ウィッシュアートも母国では《魔法使い》という扱いだそうだし」

憩「ところがどっこい、学園都市の《能力》と海外の《魔術》は、まったく別物らしいんですわ。
 引き起こす現象が同じやから、便宜的に《オカルト》でひとくくりにしとるだけ。両者は根底にある理念からして違うそうなんです」

菫「具体的に、どこがどう違うんだ……?」

憩「あー、いや、詳しいことは、ウチも知らへんのです。小走さんが『学園都市にいる雀士が聞いたら間違いなく発狂する』『特にお前はヤバい』言うて、教えてくれへんかったんですよ」

菫「な、なんだそれは……?」

憩「えーっと、ふわっとは聞かせてくれましたよ。ほら、今朝、話したやないですか。ウチと衣ちゃんと小蒔ちゃんとチーム《刹那》で一緒やった二人――《拒魔の狛犬》、《双頭の番犬》」

菫「染谷まこと井上純か。タイプ的に智葉に近いと言っていたな」

憩「小走さんの話やと、あの二人は、知らず知らずのうちに《運命論》ベースの打ち方を体現しとる節があるそうなんです」

菫「ん? その、運命論というのは一体なんなんだ?」

憩「場には《流れ》があるっちゅー理論、って言うてました」

菫「流れ……? ただの思い込みと意識的確率干渉が混同されていた古代に横行した、あれのことか?
 今は流れがいいからツモれそうな気がするとか、流れが悪いから大人しくしていよう、といった」

憩「一時的な確率の偏りを、何かの力やと誤解してまうやつですね。古典確率論をぶっちぎる《能力》とは別物。
 せやけど、その流れと、ウチが――というか小走さんが言うた《流れ》、《運命》っちゅーんは、全然ちゃうそうなんです。
 ほんで、運命論っちゅーんは、そこを出発点に理論を組み立てとるとかなんとか……」

菫「わけがわからん!」

憩「誰かー!? 小走さんつれてきてー!!」

771 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/15 20:56:53.29 ID:jCpyXqlc0

菫「ま、まあ、いい。《魔術》とやらの詳細は今は置いておこう。智葉が元魔術師――元能力者だという話だったな」

憩「えっと、なので、学園都市風に言うなら、ガイトさんは《パーソナルリアリティ》空間内における支配力や意識的確率干渉の《波束》の変化に敏感なんですわ。
 これ、雀士によってはまったく感じ取れへん人もいますでしょ。今回は《新道寺》の助っ人しとる《砲号》の池田さんなんかがそうです。衣ちゃんのゴゴゴもまったく感じ取れへんくらいやから、相当ですよ」

菫「私もそこまで鋭敏なほうではないから、漠然としかわからんがな。せいぜい、嫌な予感がする、とか、何かしているな、くらいだ。
 過去の牌譜や相手の打ち筋のクセから、総合的に能力の発動を察知しているに過ぎん」

憩「ガイトさんは元々高位の魔術師――高レベルの能力者やってん。系統は学園都市で言うところの感応系。他者の《パーソナルリアリティ》に干渉し、その意識の《波束》と共振するタイプの能力者。
 せやから、相手の支配領域《テリトリー》やら能力の発動やらに、異常に鋭い。
 さっきの《魔王》のカンも、普通ならデータと睨めっこしてなんか怪しいなー、くらいまでしかわからへんところを、ガイトさんには、たぶんもっと深いところまで見えとったはずです。
 でなければ、山牌が見えるわけでもないガイトさんに、あんな的確な鳴きはできひん」

菫「言われてみれば……あいつも大概オカルトな打ち手だったな。にしても、よく知ってるな。私は智葉とはそれなりに長い付き合いだが、魔術云々の話は聞いたことがなかったぞ」

憩「いや、たまたまです。ちょっと機会がありましてん。チーム結成したあの日――菫さんが帰ってもうたあと、ウチとエイさん、ガイトさんに誘われて、ちょっと打ったんですわ。
 そんとき、なんや観光で来たとか言うてはりましたけど、ガイトさんの魔術師時代のお友達も一緒やってん、あることないこといっぱい聞かされましたわ」

菫「ああ……確か、中学三年の頃までだったか。智葉のやつ、海外を放浪していた時期があったと言っていたな。国際色豊かなやつだと思っていたが、そうか、そのときのあいつは魔術師だったんだな」

憩「そういうことらしいですね。ほんで、魔術師っちゅーんは、《魔法名》っちゅーんを持ってるのが一般的やそうなんです。
 で、そのガイトさんの昔のお友達さんから聞いたガイトさんの《魔法名》が、あまりにぴったり過ぎて、エイさんと大爆笑したんですわ」

菫「ほう。何と言うのだ、その、智葉の《魔法名》というのは?」

憩「Fallere825――」

     智葉『ロン。12000』

     美子『は、はい』

憩「《背中刺す刃》」

772 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/15 21:01:43.07 ID:jCpyXqlc0

菫「……なるほど。それは確かに智葉らしい」

憩「ガイトさんは、世界的、歴史的に見ても極めて稀な、科学と魔術のハイブリッド。交差するはずのない二つの世界の両方を知る二重存在です。
 魔術世界から科学世界に移るときに、魔術師としての力を失いこそしたものの、その経験は今も活きとる。
 ほんでもって、魔術世界におったときも、科学世界におる今も、その本質は変わってへん。あの人は、あの人自身が抜き身の刀……向こうの《背中刺す刃》は、こっちでも《懐刀》や」

菫「《懐刀》は《快刀》――その刃は乱麻を断ち、濫魔を絶つ……か」

憩「魔術師としてのガイトさんも、相当強かったらしいですよ。当時のガイトさんも、今と同じでほぼ無敗。同世代でガイトさんを超える雀士は、たった一人しかおらへんかったとか」

菫「むしろ一人でもいたことが驚きだな。まあ、お前は《特例》中の《特例》だから科学も魔術も関係ないとして……そうか、あちらの世界にもいるのか。
 あの智葉が敵わん相手――魔術世界の照とでも呼ぶべき存在が」

憩「《神に愛された子》……ガイトさんたちはそう言うてましたね。あらゆる魔術師の《頂点》に君臨する超魔術師。その名もずばり――運命奏者《フェイタライザー》」

菫「魔術世界の《頂点》、か。照と戦わせたらどちらが強いんだろうな」

憩「ウチも同じことをガイトさんに聞きましたわ。両方と対戦経験があるのは、世界広しと言えどもガイトさんだけでしょうし」

菫「なんと言っていた?」

憩「『わからん』……言うてました」

菫「…………それが本当なら、恐ろしいことだ。この世に照みたいなやつがもう一人いるなんてな。《頂点》へと至る道のりは……あまりに長く険しい」

憩「ま、科学と魔術――この二つの世界は滅多に交わることがないそうですから、直接対決なんて実現せーへんでしょうけど」

菫「だといいがな……」

     いちご『リーチじゃ……!』

773 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/15 21:14:32.22 ID:jCpyXqlc0

 ――対局室

 南一局・親:いちご

いちご「リーチじゃ……!」

 東家:佐々野いちご(夜行・97300)

いちご(はぁ……本格的にヤバいの、視界がかすむ――)クラッ

美子(佐々野さん、具合悪か感じやけど、大丈夫とやろか……?)

 北家:安河内美子(新道寺・55800)

智葉(佐々野いちご……無能力者。麻雀歴は十年以上。それなりに精度の高いデジタル打ち。だが、白糸台の二軍《セカンドクラス》――その上位と張り合うには、致命的な弱点がある)

 西家:辻垣内智葉(劫初・164500)

咲「」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 南家:宮永咲(煌星・81400)

いちご(っ――! また、吐き気が……うくっ、悪寒が止まらん。いや、我慢じゃ。今は対局中。泣き言は言っとれん……!!)タンッ

智葉(支配力、或いは、確率干渉力。これが異常に強いと、周囲の環境に目に見えるほどの影響を及ぼす。気圧の乱れ、電磁場の乱れ、等々。
 それに、強過ぎる確率干渉の波動は、時として人体そのものを直接蝕む。内臓や感覚器官にモロにダメージがいくわけだ。これが、いわゆる確率干渉の余波と呼ばれるものだが――)

いちご(牌が――重い……)タンッ

智葉(個人差はあるが、低ランク雀士の中には、この確率干渉の余波に対する耐性がまるでない者も多い。佐々野はそれだ。そんなやつが、この白糸台に五人しかいない、最高の支配力を誇るランクSと同卓している。
 喩えるなら、防護服もなく宇宙線に晒されるようなものだろう。まともなコンディションを保てるわけがない。下手をすれば、半荘一回が終わらないうちに病院送りにされるぞ)

咲「カン……」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

いちご「――っ!?」ゾワッ

咲「ロン、8000」パラララ

いちご「はぁ……はぃ……」

いちご(オーダーを見たときから覚悟しとったが……辛過ぎる。高ランク雀士が相手でも意識を保てるよう、利仙に特訓してもらったんじゃが……こいつの支配力は《神憑き》の利仙すら遠く及ばん。桁が違うんじゃ)

咲「」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

いちご(い、いや、耐えるんじゃ……! ちゃちゃのんは一人の雀士として卓に着いた。チームの一員として戦っちょる。今にも身体が指の先から溶けていきそうじゃが、負けるわけにはいかんのじゃ……っ!!)

智葉(精神力でどうにかできるレベルではないと思うが……まあ、その気概は評価しよう。さて、私もそろそろ動くとするか。ランクSの魔物――宮永妹。悪いが、お前にはこれ以上何もさせん)

美子(次は宮永さんの親番……生牌ば抱えつつ、さっさと和了るっ!)

いちご:89300 咲:90400 智葉:164500 美子:55800

774 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/15 21:18:00.48 ID:jCpyXqlc0

 ――《煌星》控え室

     咲『カンッ!』

淡「えーっ! もったいない! さっさと嶺上で和了っちゃえばいいのにー!!」

桃子「カンしたあとの対応から、相手の力を推し量ってるんだと思うっす。嶺上さんは、超新星さんと私の能力が打ち破られるのを見てたわけっすから」

友香「咲は他家の出方を見るのがめちゃめちゃうまいんでー」

煌「咲さんの洞察力は、この《煌星》でも随一ですからね」

     いちご『チ』

     智葉『カン』

桃子「そこで大明槓!? 意味わからないっす!!」

友香「門前も三暗刻も捨てて……なんのつもりでー、あのナンバー3」

淡「でも、今ので、サッキーの支配領域《テリトリー》がまた揺らいだ。あのまま普通に進んでいれば、サッキーは《夜行》の人から直撃を取れてたのに!」

煌「……いや、それだけではありませんね。恐らく辻垣内さんは、鳴いてツモ順をズラすと同時に、点数調整をしたのでしょう。
 ここで和了られると、咲さんにとっては非常にやりにくい状況になるかもしれません」

淡「キラメ、それどういうこと……?」

煌「見ていればわかります」

     智葉『ツモ、1300・2600』パラララ

775 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/15 21:22:26.22 ID:jCpyXqlc0

淡「え、ちょ――この点数……!? そっか、そういうこと!」

桃子「現段階での嶺上さんの個人収支がプラス4900点で順位が二位……ってことは!」

友香「《プラマイゼロ》でー!?」

煌「咲さんの能力は、能力それ自体が《制約》みたいなものです。このまま直撃とツモがなければ、通常の《プラマイゼロ》が達成できてしまう。
 残り局数も僅かですし、このまま蚊帳の外に追いやられても不思議ではありません。むしろ、咲さんの能力的にはそのほうが安定……自然に打てば現状維持に傾くでしょう」

淡「そっか……《プラマイゼロ》からズレてれば、それをどうにかしようっていう能力の効果が働くから、和了りにもっていきやすい。
 普段のサッキーは、そこに支配力のブーストをかけて、強引に1000点スタート《プラマイゼロ》を達成してた」

桃子「でも、現状で既に《プラマイゼロ》なら、能力的には現状維持の効果が強く働くっす。あのとんでもない場の支配も、他家で打ち合いをさせるような方向にしか使えない」

友香「現状維持は、言わばゼロのベクトルでー。そこにいくら支配力を相乗させたところで、ゼロはゼロのまま。むしろ相乗させればさせるだけ点を取りにくくなる。自分で自分の首を絞めることになる……」

煌「咲さんがここから点を取るためには、自身の能力の強制力を振り払い、辻垣内さんの妨害を掻い潜って、和了らなければいけません。
 どちらか一つを超えるだけでも大仕事だというのに、それを二つ同時にクリアしなければいけないというのは」

     智葉『ロン、7700』

     いちご『は、はい……』

淡「ま、まあでも、なんだかんだで二位浮上してるし、いいのかな……?」

桃子「トーナメントを勝ち上がるだけなら、いいと思うっすけど」

友香「でも、咲は私たち《煌星》のダブルエースの一人。《プラマイゼロ》そのものが弱点だって知れ渡ったら、この先チームが立ち行かなくなるかもでー」

煌「モニターで見る限り、咲さんも歯がゆく思っているようですよ。どうなっても見守りましょう。それが今の私たちにできることです」

776 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/15 21:27:43.75 ID:jCpyXqlc0

 ――対局室

 南三局一本場・親:智葉

咲(わざと点数を下げて私の得点を《プラマイゼロ》にして、そのまま蚊帳の外に追いやる……? そんなの……そんなのってないよ……!!)ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 北家:宮永咲(煌星・87800)

いちご(うっ……また――)クラッ

 西家:佐々野いちご(夜行・80300)

美子(さ、佐々野さん!? しっかり……!!)

 南家:安河内美子(新道寺・54500)

智葉(ふむ……まだ消えないか。大したやつだな。ま、そのほうが楽しめていい。ここから何かしてくるというのなら、それはそれで見てみたいものだ。
 が、チームとして戦っている以上、あまり滅多なことはできん。手堅く断ち切っておくか――)

 東家:辻垣内智葉(劫初・177400)

智葉「カン」パラララ

いちご(ま……た大明槓!? しかも、今度はドラ4じゃと!? こんなんオリるしかなかろう……っ!!)

美子(辻垣内さん……普段はこんな危うか打ち方なんてしてこんのに。連荘は止めたかばってん、直撃は避けたか。ツモられる分には二位との点差は広がらんけん、ここは大人しくオリたほうがよかとやろか……?)

咲(またわけのわからないところで……この人――!? けど、連荘なんてさせないよ。《プラマイゼロ》の状態からでも、否、だからこそ、できることがある……!!)ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

智葉(ん……宮永妹がテンパイを崩した? 一体どういう――ああ、そうか。なるほど、そこそこ頭は回るようだな。積極的に現状維持をしようということか。
 佐々野と安河内はオリ気味だし、そちらの得意分野で攻めてこられると、レベル0の私にはなかなか辛いものがある。
 まあ、いい。せっかくだから試せるだけ試してやろう。こちらの懐は痛まんわけだしな……)

777 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/15 21:34:47.96 ID:jCpyXqlc0

 ――《劫初》控え室

     咲『ノーテン』

     智葉『ノーテンだ』

     いちご・美子『……ノーテン』

菫「流れたな。これは智葉の思惑通り、なのか?」

憩「ちゃうと思いますよ。これは妹さんの思惑通りです」

菫「というと?」

衣「あのカン使い、途中でわざとテンパイを崩した。あれが真に《プラマイゼロ》にしかならないというのなら、ここから点を得ることも失うこともないということ。その特性をうまく利用したのだな」

菫「自身の点棒をそのままにできることというと……」

エイスリン「アガラナイ、フリコマナイ、ツモラセナイ、ツイデニ、モヒトツ」

憩「ノーテン罰符も無にできる、っちゅーことです。今の局、佐々野さんと安河内さんはベタオリやったから、テンパイするとしたら妹さんかガイトさんの二人だけ。
 せやけど、二人がテンパイしてもうたら、流局時にノーテン罰符で点棒の移動が起こることになります」

菫「つまり、照の妹は、わざとテンパイを崩すことで、全員がノーテンになるように場を支配したのだな?
 それなら、確かに点棒の移動は起こらない。照の妹は《プラマイゼロ》のまま。これ以上ない現状維持だ」

憩「全員の手を止めてまえば、ガイトさんが他の二人から和了ってまうっちゅー可能性も消せます。
 自身の《プラマイゼロ》を崩さず、他二人がベタオリの状態からガイトさんの親を蹴る。その両方を同時に達成できる冴えたやり方は、全員ノーテン流局しかありません」

菫「天江ばりの呆れた場の支配だな……。まあ、こちらの点棒は減らないわけだから、問題ないと言えば問題ないのか」

衣「さとはも色々と試していたようだが、今回はあれの支配を突破するには至らなかったようだな。衣と同じ最高階級の支配者《ランクS》……一度打ってみたいものだ」

エイスリン「マケテモ、ホネハ、ヒロッテヤル!」

衣「衣は負けないっ!」

菫「まあ、照の妹は勝たないし負けないのだから、お前の望むような勝負が成り立つかどうかは微妙なところだと思うぞ」

憩「衣ちゃんはすーぐ相手の心を折りにいくからなー」

衣「それは貴様も同じだろう、けいっ!」

憩「人聞きの悪い。ウチは心を折るんとちゃう、曲げて捻って弄ぶんや!」

菫「どちらも性悪だな……」

憩「いや、菫さん。それを言うたらガイトさんなんか極悪ですわ。見てください。あれはきっと何か殺るつもりですよー?」

エイスリン「サトハ、カオ、コエーゾ!!」

     智葉『リーチ……』ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

778 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/15 21:43:35.69 ID:jCpyXqlc0

 ――対局室

 南四局流れ二本場・親:美子

智葉「リーチ……」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 北家:辻垣内智葉(劫初・176400)

美子(ここでトップの辻垣内さんのリーチ!? どがんなっとん……ただのリーチやのに恐ろしか!)タンッ

 東家:安河内美子(新道寺・54500)

いちご(くっ……なんのつもりじゃ……!? じゃが、ちゃちゃのんも大きいの張ったけえ、ヤミで撃ち落しちゃるッ!!)

 南家:佐々野いちご(夜行・80300)

咲(こ、この人は……っ!!)ゾッ

 西家:宮永咲(煌星・87800)

智葉(宮永妹――お前の《プラマイゼロ》は確かに強力だ。強度もそうだが、支配領域《テリトリー》が通常では考えられないほどに広い。はっきり言って、何もかもが異常だ。得体が知れないにも程がある。
 しかし、強力な力ゆえに、制限も多いらしい。選別戦や予選での不自然な打ち回しを見たときから、もしやとは思っていたが、直に打って確信を得た。
 こいつは《プラマイゼロ》の力を意識的にオフにすることができない。信じ難いが、《プラマイゼロ》以外の結果になったことがないようにも見える。
 だとすれば、こいつを殺すのは実に容易い。この何の変哲もないリーチで、その四肢を斬り落とすことができるわけだ)

咲(トップで、しかも元々リーチ率はそこまで高くないはずなのに、このオーラスで仕掛けてきた。さっきの点数調整といい……この人、私の《プラマイゼロ》を完全に見切ってる……!?)

智葉(宮永妹の今の個人収支はプラス4900点。通常の《プラマイゼロ》は達成している。
 しかし、時と場合によって、こいつは1000点スタート《プラマイゼロ》などというわけのわからん真似をしてくるそうじゃないか。
 つまり、今現在、こいつの頭の中では、1000点+4900点で、持ち点が5900点ということになっているはず。ここから三倍満――24000点を和了れば、積み棒の分も入れて30500点。五捨六入で《プラマイゼロ》達成。
 だが、そこにリー棒が出ればどうなる……?)

咲(ここで三倍満を和了ると、リー棒もついてきちゃうから個人収支は31500点――《プラマイゼロ》にならない……!
 いつもなら……ちょっとくらい予想外のリー棒が出てきても、カンで符点調整して誤魔化せる。けど――!)

智葉(満貫までの点数なら、調整の手段はいくらかあったろう。しかし、お前が今狙っているのは満貫以上の大きな和了り。
 4000点、8000点刻みで打点が上がってしまう。計算を狂わすには、たった1000点分のリー棒で事足りる)

779 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/15 21:49:20.78 ID:jCpyXqlc0

咲(リー棒が出た時点で、この局での1000点スタート《プラマイゼロ》の達成は封じられた。どうしよう……!?
 この人の狙い通り、このままプラス4900点をキープして通常《プラマイゼロ》で終わる……? いやいや、そんなの許せるわけないよっ!!)ゴッ

智葉(ん? 手足を失ってもなお噛み付いてくるのか。面白い。一体何を見せてくれる……?)

咲「カンッ!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

智葉(大明槓ツモ切り。プレッシャーは悪くない。宮永と同じ血が流れているというのも納得だ。で、ここからどうなる――?)タンッ

美子「ロ、ロンです! 7700は8300ッ!!」パラララ

智葉「……はい」

智葉(ほう……? ツモ順をズラし、他家の手にカンドラを乗せ、私を削りに来たか。
 しかも、ただ私を削りたいだけなら、佐々野のほうが大きい手を張っている風だった。なのに、こいつはわざわざ安手だった安河内をアシストした。これはつまり――)

咲(次は南四局三本場……積み棒が邪魔で点数調整がキツいけど、対局さえ続けば、1000点スタート《プラマイゼロ》にするチャンスがきっとどこかで出てくる。私は勝ちを諦めない……!!)

智葉(ラス親の安河内の連荘支援か。なるほど。確かに、それなら、いつかどこかで点数調整の機会が巡ってくるかもな。やり方次第では、チャンスを伺いつつ私を削ることもできよう。
 しかし、残念だが、宮永妹。その程度の《解答》では不合格だよ)

美子「……和了り止めするとです。前半戦は、こいで終わりと」

咲(は――?)

780 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/15 21:53:45.09 ID:jCpyXqlc0

智葉(英断だな。中堅戦開始時に五万点近くあった二位との差が、今は二万五千点程度に縮まっている。
 後続の得点能力を考えれば、安河内がここで無理をする必要はない。宮永妹、これではっきりした。今のお前は姉に――宮永照には遠く及ばない)

 一位:辻垣内智葉・+13600(劫初・168100)

咲(そんな……なんで!? ラスなのに連荘しないの? どうして……!!)

 三位:宮永咲・+4900(煌星・87800)

美子(そげん泣きそうな目で見られても困っとよ。私には私の目的と優先順位のあっ。
 さて……ひとまず気持ちば切り替えっと。次で、せめて二位との点差ば一万点台にしたかね。そんために……私になんのできる……!!)

 二位:安河内美子・+5900(新道寺・63800)

いちご(や、焼き鳥一人沈みで三位転落……じゃと!? こ、こんなん、皆に申し訳ない。うぅ……ちゃちゃのんはどうしたらええんじゃ……)クラッ

 四位:佐々野いちご・-24400(夜行・80300)

智葉(さて、今のところは荒川の見立て通りか。ランクSとは言えまだまだ一年生。私や荒川の敵ではない。この程度なら、たとえこいつらが三回戦に上がってきたところで、それまでだろう。だが――)

咲(か、必ず……!! 次こそは必ず1000点スタート《プラマイゼロ》にしてみせる……!!)ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

智葉(本気で向かってくる相手を優しくいなしてやれるほど……私は器用じゃない。真剣には真剣で切り返す。
 これだけ脅してもまだ歯向かう気概があるか、宮永妹。よかろう……そのか細い首、この《懐刀》が斬り落としてくれる――)

781 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/15 22:00:51.10 ID:jCpyXqlc0

 ――《夜行》控え室

利仙「い、いちごちゃああああああん!!!」ポロポロ

藍子「な、泣かないでください利仙さん! まだ終わったわけじゃありませんよっ! 後半戦があります……!!」

絃「いちごだって辛いはずだ。ここでお前が応援してやらないで、誰があいつを支えるというのだ」

利仙「もちろん、そんなことは私もわかってます……! わかってますけど、いちごちゃんの悲しみはファンみんなの悲しみですから! いちごちゃんが涙目になっているときは、私も一緒に泣くっ!!」ポロポロ

絃「こんなに想われて……いちごは幸せ者だな」

藍子「利仙さんの気持ちを直接届けられたらいいんですけどね」

利仙「それなら……ご心配には及びません。気持ちはちゃんと届きますよ。いちごちゃんを愛する気持ちは、必ずいちごちゃんに届く――! それはファンの誰もが知るところっ!!」

もこ「」ブツブツブツブツ

藍子「え? もこ、それどういうこと? ここからはいちごさんの独壇場って……」

利仙「ふふっ……さすが対木さん、わかっていますね。その通りです。いちごちゃんは……負けて凹んでからが本領っ!!」

絃「何……?」

利仙「いちごちゃんは、本人もそう言っていますが、まったくの無能力者。ですが! ファンの間では、いちごちゃんは実は能力者というのが通説なのですっ!」

藍子「いちごさんの能力……? 見たことも聞いたこともないですよ? それに電子学生手帳の記録でも――つまり実際の能力測定でも、確かにレベル0だったはずです」

利仙「学園都市の能力測定は、特殊な場合を除き、個人で発動できる能力のみを対象としています。
 しかし、レベル5の《約束の鍵》しかり……複数の人間が能力の発動に関与しているケースというのも、ごく稀にあります」

絃「いちごがそれだというのか?」

利仙「ええ、無論、実証はされていませんがね。しかし、ファンはちゃちな測定結果などなくとも、信じています。いちごちゃんの秘めたる力……それは、《みんなの応援が力になる》感応系能力だと!!」

絃・藍子「………………」

利仙「じ、実際いちごちゃんは応援すればするほど強くなるんですっ! そして、応援というのは、勝っているときより負けて凹んでいるときにその最高潮を迎えるもの――!
 即ち、今この時こそ、いちごちゃんの真の姿が見られるというわけですっ!!」ブンブン

もこ「」ブンブンブンブン

利仙「さあ……皆さん、気合を入れ直しますよ。私たちの応援が、そのままいちごちゃんの勝利へと繋がるんです! みんなで愛を叫びましょう! いきますよー、せーのっ! L・O・V・E・い・ち・ごー!!」ブンブン

絃・藍子「い・ち・ごー!!」ブンブン

もこ「」ブンブンブンブン

782 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/15 22:01:51.68 ID:jCpyXqlc0

 ――対局室

智葉「よろしく」

 東家:辻垣内智葉(劫初・168100)

美子「よろしくと」

 南家:安河内美子(新道寺・63800)

いちご「……よろしゅう」

 北家:佐々野いちご(夜行・80300)

咲「よろしくお願いします……」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 西家:宮永咲(煌星・87800)

『中堅戦後半、開始です!』

786 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/16 19:00:06.55 ID:0dY3lpQd0

 ――《煌星》控え室

友香「後半戦……始まったんでー」

桃子「起親は極道さんっすか。嶺上さん、かなり意識してるっすね……」

     咲『』ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

淡「ちょ、これ……サッキー、序盤からぶっ飛ばしてるなー」ビリビリ

     咲『ツモ……3000・6000ッ!!』ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

煌「カンに頼らず和了りましたね。支配力だけで強引に振り切るつもりでしょうか。先行して優位に立ち、細かい調整は追々する、と。
 常にプラスをキープしていれば、最悪、《プラマイゼロ》が達成できなくても、チームとしては万々歳です」

淡「させてくれればいいけどねー……」

     智葉『ツモ、1300・2600』

友香「《懐刀》――辻垣内先輩……さっきから隙らしい隙がないんでー」

桃子「嶺上さんの能力も支配力も、まるで意に介してないっす。単純に戦い慣れているって感じっすね」

煌「辻垣内さんは三年生でナンバー3。二年以上も前から、あの方は咲さんのお姉さんを始めとした上位ナンバーの方々と数多くの対局を重ね、ほとんど無敗に近い戦績を残しています。
 戦いに慣れていないわけがない、隙があるほうがおかしい、というものでしょう」

787 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/16 19:04:01.77 ID:0dY3lpQd0

淡「けど、ここまで差が出るもんかな。だって、サッキーは、あの人が二年以上も勝てなかった学園都市の《頂点》――宮永照の妹。素質も実力も、高校九十九年生くらいはあるんだよ?」

煌「力の差は……言うほどないように、私には思えるのですけどね。辻垣内さんにあって咲さんにないものが、明暗を分けている。そんな風に見えます」

桃子「……そう言えば、中堅戦が始まる前、嶺上さん言ってたっす。能力に目覚めてから今まで、1000点スタートみたいな例外も含めて、『プラマイゼロ以外になったことがない』って」

友香「超能力者ばりの《絶対》でー」

淡「でも、それってつまり、勝っても負けてもいないまま、ここまで来たってことだよね」

煌「勝利の味は覚えたはずです。あの合同合宿――三年生の上位ナンバーを相手に、咲さんは見事な勝利を収めました。あれ以来、咲さんは前にも増して麻雀にのめりこむようになりましたね」

淡「ただ……敗北の味をまだ知らない、かぁ」

煌「ええ。能力や支配力云々ではなく、それこそが、咲さんの最大の弱点なのかもしれません。そして、そこを的確に突いてくる百戦無敗の雀士と、咲さんは今、対戦しています。これが、もし……もしもです」

淡「なあに?」

煌「この対局に、咲さんが敗れるようなことがあれば……」

淡「あれば?」ゴクリッ

煌「…………どうなってしまうんでしょうね?」

淡「ずこー!! もー、キラメってば思わせぶりにテキトーなこと言うのやめてー!!」

煌「すいません。いや、まあ、ですが――」

淡「ほえ?」

煌「どうやら少々……その『もしも』が現実味を帯びてきたようです」

     智葉『ロン』ゴッ

淡・桃子・友香「っ!!?」ゾッ

788 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/16 19:05:46.12 ID:0dY3lpQd0

 ――対局室

 東三局・親:咲

智葉「ロン」ゴッ

咲「え――」ゾワッ

智葉「槍槓赤二ドラ3……12000」パラララ

美子(ちゃ……槍槓――!?)

いちご(しかも槍槓以外役ナシ! どういう理屈でそんな打ち方ができるんじゃ……!?)

咲(そんな……! そんなっ!! そんなそんなそんな――!!?)カタカタ

智葉(他愛もない。これで終わりか、宮永妹。だとしたら、お前は姉だけではない。この私にすら、一生敵うことはできんぞ)

咲(そ……んな――)カタカタカタカタ

智葉:179300 美子:58200 咲:86500 いちご:76000

789 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/16 19:17:30.09 ID:0dY3lpQd0

 ――《劫初》控え室

憩「あーあー。ガイトさんがついに殺ってもうたー」

エイスリン「ゼンカ、イッパイ!!」

衣「それを言うなら一犯だろうに。ま、実際いっぱいあるのかもしれないが」

菫「おい、照の妹は大丈夫か……? 心臓は動いているか?」

憩「とりあえず、ぎりぎり生命反応は見られますわ。せやけど」

エイスリン「ハイヲ、ツモッテ、ステル、ダケノ、シカバネ!!」

衣「乏しいなっ! 闕望したぞ!!」

菫「お前らには他人を気遣う心がないのか?」

憩「っちゅーかガイトさんも大人げないですわー。なんも、わざわざ相手の支えになっとるもんを断ち切らんでもええですやん」

菫「東横の《ステルス》を破ったやつが何を言う」

衣「これであのカン使いは木偶に成り果てたな」

     智葉『ロン、6400』

     美子『はい……』

エイスリン「オヤバン、キタゼッ!」

憩「これは始まってまうでー、ガイトさんの殺戮ショーが!!」

衣「カン使い以外はまるで凡夫! 話になるまい!!」

菫「おい、荒川、天江。お前ら、あまり白糸台の三年を」

     『――リーチッ!!』ゴッ

エイスリン「オ?」

憩「へえ」

衣「ほう……」

菫「と――言うまでもなかったようだな……」

790 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/16 19:26:37.22 ID:0dY3lpQd0

 ――対局室

 南一局・親:智葉

いちご「――リーチッ!!」ゴッ

 北家:佐々野いちご(夜行・75000)

智葉(さっきまで確率干渉の余波で瀕死だったはずだが……? ここでこの気炎。顔色も良くなっている。ああ、そう言えば、二年前もそうだったか――)

 東家:辻垣内智葉(劫初・185700)

いちご(辻垣内が宮永咲を真っ二つにしたからじゃろか。身体が嘘のように軽いの。手も面白いように伸びていく。さっきまでの地獄がなんじゃったのかっちゅうくらい、ええ感じじゃ!!)

いちご(この感覚は知っちょる。公式戦で負けとるときに、どこからともなく力が湧いてくることが何度もあった。ほいで……決まって、どっかの誰かの声が聞こえてくるんじゃ)

        ――L・O・V・E・い・ち・ごー!!

いちご(ジュニアの頃から、凹むたんびに聞こえてきた。よう知っちょるやつの声に似とるが、いや、あいつがこがなん声を出しとるのは、かなり想像を絶するの……)

    ――きゃー! いちごちゃーん!! 愛してるーぅ!!

いちご(うん。あいつは死んでもこんなこと叫ばんじゃろ。きっと、性格の全く違う双子の妹とかがおって、そっちが叫んどるんじゃと思う。
 実際、三年前のインターミドルであいつにボコボコにされたときだけ、この声は聞こえてこんかったけえ。そういうことなんじゃ。そういうことにしとく……)

       ――いちごちゃーん! 頑張ってーぇ!!

いちご(なんにせよ、有難い限りじゃ。身体の中が不思議パワーで満たされていく感じがする。謎の声の主……われには随分と助けられちょる。
 直に会えんのが残念じゃけど、会えんからこそ、ちゃちゃのんは、われの声援に――麻雀で応えたいっ!!)

いちご「ツモッ!! 2000・4000じゃ!!」

智葉(これはなかなか……)

美子(えええ!? 辻垣内さんの親番の流された!? 信じられなか!!)

いちご(よしっ! どこまでやれるかわからんが、このまま二位復帰しちゃる!!)

  ――いちごちゃああああああああん!! 最高っ!! 大好きーぃ!!

いちご(おっ……やっぱり、どっか遠くで見てくれとるんか。どこの誰かはわからんが、いつも応援、ありがとのっ!!)

智葉:181700 美子:49800 咲:84500 いちご:84000

791 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/16 19:29:53.61 ID:0dY3lpQd0

 ――《夜行》控え室

     いちご『ツモッ!! 2000・4000じゃ!!』

利仙「いちごちゃああああああああん!! 最高っ!! 大好きーぃ!!
 ほら、見ました見ましたー!? あの辻垣内さんにいちごちゃんが満貫の親っ被りをかましましたよーっ!!」ブンブン

絃「見ているさ……そして驚いている。これはいちご能力者説を信じたくもなるというものだ」

藍子「流れるようにテンパイして和了ってましたね!!」

もこ「」ブンブンブンブン

利仙「ふっふっふ、辻垣内さん。宮永さんの妹さんに気を取られましたねっ!?
 しかし、その卓――本当に警戒すべき雀士は他にいました! つまり、いちごちゃんのことですっ!! きゃー!! いちごちゃーん、カッコ可愛いーっ!!」ブンブン

絃「宮永照の妹は目に見えて消沈しているな。おかげで支配力も幾分和らいだか。やっと回ってきた好機――物にしてみせろ、いちごちゃん!」

藍子「い、絃さん……?」

絃「忘れてくれ」ゲフンゲフン

利仙「いちごちゃんファンが増えてくれて何よりです。その調子ですよ、霜崎さん。その溢れる愛が、何よりもいちごちゃんのパワーになるっ!!」

     いちご『リーチッ!!』

藍子「まあ、確かにいちごさんが息を吹き返したのは嬉しいです。けど、喜んでばかりはいられない」

利仙「ええ、あちらもあちらで立て直してきたようですね」

絃「宮永照の妹の支配力が弱まって、あいつも前半戦序盤のキレを取り戻したか」

     美子『ロンです、1500ッ!』

     いちご『っ!?』

利仙「いちごちゃーん!! 負けないでーぇ!!」ブンブン

もこ「」ブンブンブンブン

793 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/16 19:33:54.94 ID:0dY3lpQd0

 ――《新道寺》控え室

華菜「いっけー、そこだし安河内先輩っ!!」

友清「ぶちかますとですーっ!!」

     美子『ツモ、2100オールッ!!』

華菜・友清「わああああああああ!!」

巴「盛り返してきましたね」

仁美「美子もこの学園都市で生き抜いてきた雀士の一人と。そげん簡単にはやられん。もちろん、佐々野もな」

     いちご『ロン、5200は5800じゃ!!』

     美子『くっ……』

華菜「まだまだっ! まだいけるし!!」

友清「頑張ってとですーっ! 安河内せんぱーい!!」

     いちご『リーチじゃ!!』

     美子『ツモ……1000・2000』

華菜・友清「ふぉおおおおおおおおおお!!!」

巴「いよいよオーラスですね」

仁美(美子、頑張りんしゃい……っ!!)

794 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/16 19:45:12.72 ID:0dY3lpQd0

 ――対局室

 南四局・親:いちご

いちご(くっ……調子はこれでもかってくらいに上がってきたんじゃが、ちゃちゃのんだけじゃなく《新道寺》のもじゃったか。
 それに、辻垣内がずっと静かなのも気になるの。じゃが、ここで行かんでいつ行くんじゃ――!!)タンッ

 東家:佐々野いちご(夜行・83200)

いちご(前半で失ってしもうた点数、このラス親でできるだけ取り返す。ほうじゃないと絃や利仙に合わせる顔がない。大丈夫……今のちゃちゃのんなら、できるはずじゃ!!)タンッ

智葉「リーチ」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 南家:辻垣内智葉(劫初・177600)

いちご(っ!? 動いてきたの、辻垣内。こんなに恐いリーチはない……じゃが! ちゃちゃのんにだって、ちゃちゃのんの意地がある――!!
 われが強いのは知っちょるが、この声が聞こえちょる限り、ちゃちゃのんは止まらんけえの!!)

    ――いちごちゃーん!! やっちゃってーぇ!!

いちご「(わかっちょるっ!!)ツモじゃ! 2600オールッ!!」ゴッ

795 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/16 19:58:18.46 ID:0dY3lpQd0

智葉(切っ先を突きつけても怯まん……か。二年前のクラス対抗戦もそうだったな。
 この後半戦、よくわからんが、佐々野の『何か』が変わった。こういう土壇場で得体の知れない力を発揮するタイプが、正直、私は一番恐い)パタッ

智葉(さて、それはそれとして、どう出るか、佐々野いちご。私に言わせれば、ここでラス親を続行するのは、それこそ愚の骨頂。お世辞にも賢い判断とは言えんが――)

いちご「ラス親……続行じゃあッ!!」ゴッ

智葉(マズい、口元が緩むのを止められん。佐々野いちご。確率干渉の余波に弱いことを除けば、二軍《セカンドクラス》に相応しい実力を持ち、稀に信じられないような底力を見せてくる、それなりに手強い打ち手だ。
 しかし、どうにも、勝負どころで熱くなり過ぎる嫌いがある。
 それがお前の悪いクセだと、なぜ学習しない? 二年前のクラス対抗戦からまるで成長が見られないぞ。本当に、愚かしいにも程がある。だが、それがいい……)

いちご「」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

智葉(私は向かってくる者に容赦はしない。敵は全て斬り殺す。なに、安心しろ。痛みはない。ちゃんと次の一局で終わらせてやるさ)ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

智葉:175000 美子:55200 咲:77800 いちご:92000

796 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/16 20:00:00.10 ID:0dY3lpQd0

 ――《夜行》控え室

     いちご『……リーチッ!!』

藍子「ここまでか……いちごさん」

絃「あの辻垣内を相手に、よく戦った」

利仙「ええ。これこそ、みんなの大好きな、いちごちゃんの麻雀です」

もこ「」ブンブンブンブン

     智葉『ロン、2600は2900……!』

     いちご『――っ!!』

『中堅戦終了ーッ!! 辻垣内智葉がその切れ味を見せ付ける一人浮き! チーム《劫初》が完全に独走態勢に入りましたー!!』

797 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/16 20:04:05.61 ID:0dY3lpQd0

藍子「いやぁー、続行しなければ! って、言わぬが華ですかねっ!?」

利仙「いいんです。どんどん言ってやってください。いちごちゃんは、ちょっとマヌケでおバカさんです。けど、そこがまた、たまらなく可愛い」

絃「勝っても負けても受け入れるとは、本当に利仙はファンの鑑だな」

利仙「いえ、私だけが特別ではありません。いちごちゃんファンはみんなそうです。いちごちゃんは、勝っても負けても愛らしい。なぜなら、いちごちゃんは、勝つときも負けるときも、いつだって一生懸命だから」

もこ「」ブツブツブツブツ

利仙「いつも一生懸命だから、いちごちゃんは、勝ったら本気で泣いて喜ぶ。負けても、本気で泣いて悔しがる。それが、いちごちゃんの魅力で、いちごちゃんの強さです。
 私はこれからも、いちごちゃんを応援し続けますよ。いちごちゃんのひたむきさが、私に元気をくれる。だから、お返しに、私は応援でいちごちゃんの力になりたいっ!!」

もこ「」ブツブツブツブツ

絃(……なあ、藍子)コソッ

藍子(なんですか、絃さん?)

絃(《夜行》の五人目……もし、過去に戻って新しく誰かを選べるとしたら、誰にする?)

藍子(そんなの――もちろん決まってますっ!)

絃(だよな)

藍子(みんなのアイドル……いちごちゃんですっ!!)

もこ「」ブツブツブツブツ

利仙「おっと、そろそろいちごちゃんが帰ってきますね。応援グッズを隠さなくては……」イソイソガサゴソ

798 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/16 20:10:24.51 ID:0dY3lpQd0

 ガチャ

いちご「うー……ただいまじゃあ……」ヨロヨロ

 四位:佐々野いちご・-16600(88100)

絃「お疲れ、いちご。最後は続行しないほうがよかったな」

いちご「うっ……!」

藍子「後半の感じで前半もいければよかったんですけどねっ!」

いちご「うぅっ……!!」

もこ「」ブツブツブツブツ

いちご「なに言っちょるかわからんけど、うううう……!!!」

利仙「……佐々野さん」

いちご「利仙……すまんの、利仙が作ってくれたリードを守れんかった……」

利仙「過ぎたことは気にしないでください。私も力不足でした。次はオリジナルプリントTシャツを拵え――三万点くらいはプラスにしなければいけませんね」

いちご「こ、の……! さすがに三万は言い過ぎじゃろっ!? 二万くらいで十分じゃ!!」

藍子「あ、二万くらいはほしいんですね」

絃「それだけ元気があるなら大丈夫だな、いちごは」

もこ「」ブツブツブツブツ

利仙「次は勝ちましょうね、佐々野さん」

いちご「もちろんじゃ!!」

藍子「さってーぇ、けど! まっ、なんだかんだで二位はキープぅ! このまま私たちで逃げ切るよ、もこッ!!」

もこ「」ブツブツブツブツ

絃「今日も頼むぞ、最終兵器」

利仙「対木さん、まだ麻雀を始めて半年も経たないのに、少なくとも佐々野さんよりは強いですからね」

いちご「ちゃちゃのんを物差しに使うなっ!?」

藍子「さあ、度肝を抜いてきてやって!! 任せたよ、もこーッ!!」

もこ「」ブツブツブツブツ

799 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/16 20:16:06.64 ID:0dY3lpQd0

 ――《新道寺》控え室

美子「ただいまと」

 二位:安河内美子・-2700(55200)

友清「お疲れ様とですー!!」

仁美「マイナスとは言え個人収支は二位やけん、本当にようやってくれたな、美子」

美子「あいがと。逆転はできんやったばってん、あとは頼むと、仁美、それから――」

巴「出番ね、華菜」

華菜「任せろだしーっ!!」ゴッ

美子「池田さん、それに狩宿さんも。二人のおらんやったら、私ら《新道寺》はクラス選別戦にも出れんやった。重ね重ね、感謝と」ペコッ

華菜「そ、そんな……! あたしなんて大したことはしてないですっ! だ、だから、そんな、頭を上げてくださいし!!」

仁美「池田の言う通りと、美子。それは、こいつの勝って帰ってきたときんために、とっときんしゃい」

美子「ああ、そいもそうやね」

巴「だってさ。期待されてるね、華菜。私なんて原点で帰ってくれば御の字の扱いだったのに」

友清「そいはそい、こいはこいとですっ!」

仁美「政治ば例に挙げるまでもなく、何事にも役割分担ってもんのあっ。このチームの一番の稼ぎ頭は誰ぞ、池田、言ってみんしゃい!」

華菜「もちろん、あたしだしっ!!」

仁美「ハッ、言っとれ、二年坊! 私の一番であんたは二番とっ!!」

華菜「ふっふっふっ……じゃあ、今日もどっちが稼げるか勝負ですよ、江崎先輩っ!」

仁美「ええやろ、乗ったッ!!」

美子「精鋭揃いの風紀委員会でもトップ率三割ば誇る屈指のスコアラー……白糸台の《生ける伝説》――《砲号》と名高か池田さんのいてくれたおかげで、今までどげん助かったか」

友清「池田せんぱい、今日もがつーんとお願いするとですっ!!」

仁美「ま、後には私のおるけん。伸び伸び打ってきんしゃい!」

巴「応援してるよ、華菜」

華菜「にゃああああああああ、頑張るしーっ!!」ゴッ

800 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/16 20:24:43.97 ID:0dY3lpQd0

 ――――

咲「……………………」フラフラ

 三位:宮永咲・-5100(煌星・77800)

友香「だ、大丈夫でー……咲?」

咲「ああ……友香ちゃん。うん。大丈夫。大丈夫だよ……うえへへ……」ドヨーン

友香(だ、大丈夫じゃないー!?)

咲「ごめんね、勝てなかったよ。私、ダメだな。誰が相手でも《プラマイゼロ》にできるところを煌さんに見初めてもらったのに……それもできないなんて……」

友香「咲……」

咲「友香ちゃん、このまま《煌星》が負けたら、私のせいかな……?」

友香「えっ? ああ、うん! それはそうでーっ!!」

咲「えー……そこそんな勢いよく肯定するとこ?」

友香「《煌星》が負けたら咲のせいだよ。あと、淡と桃子と私と煌先輩のせいっ!! だって団体戦でー? 負けたらみんなのせいに決まってるんでー!!」

咲「ふふっ。友香ちゃんの、そういうとこ、好きだな。淡ちゃんと違って嫌味がなくていいよね」

友香「そこは淡を引き合いに出さなくてもいいんじゃなーい? 素直に私が好きって言ってくれればいいんでー」

咲「うん。友香ちゃんのこと、嫌いじゃない」

友香「こーのー捻くれ者ーっ!!」ガバッ

咲「わわっ!?」

友香「そんな顔で帰ったら、煌先輩が心配するよ。あと、淡が反応に困ってオロオロする。で、そんな空気をなんとかしようと、桃子が変な踊りを踊り出す」

咲「……そうだね。淡ちゃんがオロオロするのは勝手だけど、煌さんと桃子ちゃんに迷惑はかけられないよね」

友香「わかったら、ちゃんと顔を洗ってから帰るんだよ、咲」ナデナデ

咲「ありがと――って、えへへ、なんか、こうして頭撫でられると、友香ちゃん、まるでお姉ちゃんみたい」

友香「でーっ? 私が宮永照みたいって? ないない!」

咲「あっ、いや、そっちのお姉ちゃんじゃなくて。もっと一般的な、お姉さんキャラ、みたいな」

友香「なるほど……じゃあ、咲がやられた分は、この友香お姉さまが取り返してくるんでー! 一位をまくるのはかなりキツいけど、二位ならたった一万点で手が届く。
 それで、三回戦に行って、今日やられた分は、そんときまとめてお返ししようっ!!」

咲「そう……だねっ!! そうしようっ!!」

友香「じゃ、行ってくる。応援よろでーっ!!」

咲「うんっ! 行ってらっしゃいでー!!」

801 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/16 20:28:28.39 ID:0dY3lpQd0

 ――――

智葉「む、ウィッシュアートか。出迎えご苦労」

 一位:辻垣内智葉・+24400(178900)

エイスリン「サイゴハ、ヒヤヒヤ、シタゼ!!」

智葉「お前……語尾に『ぜ』とかつけるな。見た目を考えろ、見た目を」

エイスリン「ミタメヲ、カンガエル、ノハ、サトハノ、ホウダロ!!」

智葉「ああ?」

エイスリン「カガミ、ミテカラ、モノヲイエ!!」バッ

智葉「これは……今朝の絵か」

エイスリン「カガミヨ、カガミ! コノヨデ、イチバン、ウツクシイ、ノハ――」

智葉「ふん、眼鏡を外して髪を下ろした私だろ。聞くまでもない」

エイスリン「コンドハ、ソノ、ダサイ、フクモ、ヌグカ?」

智葉「バ――!? おまっ……何を考えてんだ!?」

エイスリン「オメカシ、スルカッテ、イミ、ダケド?」ニヤニヤ

智葉「…………お前、あとで帰ったら覚えてろよ」

エイスリン「ヨク、イミ、ワカンネーケド、イッテクル!!」

智葉「幸運を」

エイスリン「マカセトケッ!!」ゴッ

 タッタッタッ

802 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/16 20:41:29.28 ID:0dY3lpQd0

智葉(ま、今日の面子なら、あいつに限って滅多なこともあるまい。さて、それはそうと)パイフダウンロード

 ピコン

智葉(やはり、妙だな。説明のつかない点が多過ぎる。宮永咲――あいつは違和感の塊だ。姉も相当だが、妹のほうはそれが顕著。これは深く斬り込んだほうがいいのか、関わらないほうがいいのか)

 ピリッ

智葉(む――? この気配……なるほど、私が斬ったのは本体ではなく鎖のほうだったらしい。さては宮永のやつ、ずっと放置していやがったのか。
 ったく、本当に愉快な姉妹だよ、お前ら。笑えるかどうかは微妙なところだがな)

 ビリッ

智葉(…………今度のはなんだ? 気のせいならばいいが、いや、それはないか。だとすると、この会場、まだ何かいるな……)

『まもなく副将戦が始まります。対局者は席についてください』

智葉(魔術世界から科学世界に移って三年……未だ闇の底が見えん。本当に、退屈しないな、この街は――)

 ――――

803 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/16 20:45:04.69 ID:0dY3lpQd0

 ――対局室

華菜「(一回戦より面子は段違いに強い……それでもやるしかない。《新道寺》の皆さんのためにも、巴さんのためにも。まずはこの親で稼ぐんだッ!)
 よろしくだし!」

 東家:池田華菜(新道寺・55200)

友香「(この副将戦、間違いなく乱打戦になる。気持ちで負けたらそれまで。まずは二位をまくらなきゃだけど、一位を凹ますくらいの気合で臨もう。やってやるんでーっ!!)
 よろっ!」

 南家:森垣友香(煌星・77800)

もこ「」ブツブツブツブツ

 北家:対木もこ(夜行・88100)

エイスリン「ヨロシク♪」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 西家:エイスリン=ウィッシュアート(劫初・178900)

『副将戦、開始ですッ!!』

810 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/20 17:03:29.42 ID:slJPP1Wb0

 東一局・親:華菜

華菜(よーし、早速いい感じだし! ウィッシュアート先輩がいるこの場はスピード勝負でどうにかしなきゃって思ってたけど、さすが華菜ちゃん!
 スピードを重視してもこの打点。伊達に白糸台の《生ける伝説》――《爆心》の一角を担っていたわけじゃないんだしーっ!)タンッ

友香(うっ……親危なそー。こっちは二向聴。どーしよこれ。安牌はあるから、押しつつ追いつく方向で。ま、ツモられたらツモり返せばいいだけでー!!)タンッ

エイスリン「ツモ!」

華菜・友香(はあっ!?)

エイスリン「300・500♪」パラララ

華菜・友香(ゴミ手――!!)

華菜:54700 友香:77500 エイ:180000 もこ:87800

811 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/20 17:07:20.90 ID:slJPP1Wb0

 ――《劫初》控え室

智葉「六巡目に断トツトップがゴミツモ。本人は楽しかろうが、他家にとってみればいい迷惑だな」

憩「エイさんも大概ド畜生ですわー」

衣「あやつは衣と同卓しても平気な顔で張ってくるからな」

菫「というか、ウィッシュアートがテンパイできない局なんてあるのか?」

憩「ウチなら何回かに一回は妨害できますよ。衣ちゃんの《一向聴地獄》をどーにかするんと要領はほぼ同じですから」

菫「ああ……同じ系統の能力だもんな」

智葉「学園都市一万人の中でも限られた使い手しかいない脅威の系統――全体効果系」

衣「ただ、衣の《一向聴地獄》と違って、えいすりんの能力は場の偏りが一見して分かりにくい。牌譜を見ただけだと、無能力者のそれとさほど変わらないように思える」

憩「せやけど、きちんと統計を取ってみると、明らかに古典確率論を逸脱しとる。それ即ち、意識的確率干渉――能力《オカルト》や」

     エイスリン『ツモ、2000・3900♪』

812 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/20 17:21:11.76 ID:slJPP1Wb0

智葉「ウィッシュアートは13巡目までにテンパイすることが異常に多い。というか、普通に打っていれば、13巡目までにほぼ確実にテンパイできる」

菫「ただ、実際に打ってみると、あれは《13巡目までに必ずテンパイする》なんて生易しい能力ではないとわかる」

憩「言うなれば、《どんなに遅くとも13巡目までに必ずテンパイする》っちゅー感じでしょうか」

智葉「あいつの平均テンパイ速度は、13巡の半分でおよそ6~8巡。宮永と荒川に次いで、学園都市でも最速の部類に入る」

衣「しかし、テンパイが早いことは、えいすりんの能力の副次効果であって、本質ではない」

憩「エイさんはテンパイが速いだけやない。テンパイすると、そのあと4巡以内にあっさり和了ってまう。それも毎回や」

智葉「《13巡目までに必ずテンパイ》……さらに、《テンパイから4巡以内に必ず和了る》――つまるところ、あいつは《どんなに遅くとも海底までに必ず和了る》んだよな」

衣「そして、その《必ず和了る》を実現するために、えいすりんは、自分の手牌だけではなく、他家の手牌にまで干渉する」

菫「そこが、自牌干渉系との違いだな」

憩「他家が和了らなければ――っちゅー条件つきなら、海底までに必ず和了れる自牌干渉系能力者の十人や二十人、この広い学園都市にいくらでもおるやろ」

菫「だが、ウィッシュアートは違う。他家が和了らなければ《必ず和了る》のではない。他家に和了らせず、ただひたすら、《ずっと和了る》んだ」

     エイスリン『ロン、7700♪』

     華菜『はいだし……』

813 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/20 17:25:55.63 ID:slJPP1Wb0

智葉「《他家を自分に追いつかせない》というのが近いのだろうか。あいつとの対局では、天江と違って、普通に進めてテンパイできるときがある。が、毎回、こちらがテンパイするや否や、一足先にあいつが和了る」

憩「衣ちゃんの《一向聴地獄》は、《普通に打つと他家のノーテン状態がずっと続く》。同様にして、エイさんの能力は、《普通に打つとエイさんの和了りがずっと続く》」

菫「一局一局の牌譜を見れば、さほど不自然なところはない。単にウィッシュアートが他家に先んじて普通の手を和了ったように見える」

智葉「だが、いくら一局ごとの牌譜に不自然な点がないといっても、放っておけば和了率100パーセントで対局を終わらせることもしばしばのあいつを、誰もデジタルだとは思わんだろう」

衣「その絵筆が描き出すのは『自分の願望』――裏を返せば、『他者の絶望』」

憩「ウチかて、さすがに和了率100パーセントは真似できひん。どう計算しても和了れる道が見つからんときっちゅーんが、毎ゲームどこかであるのが麻雀や」

菫「全体効果系が脅威の系統と恐れられる理由はまさにそこだな。天江もウィッシュアートも、通常では有り得ないレベルのワンサイドゲームをやってのける」

     エイスリン『1300ハ、1400オール♪』

814 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/20 17:29:10.87 ID:slJPP1Wb0

智葉「さて……こうして話している間に、我らが《夢描く天使》の連続和了が四まで来たところだが」

菫「照と違って、あいつの連続和了に《制約》はないからな。さすがは《最多》の大能力者と称される打ち手。無限に和了り続けるんじゃないかと思うときさえある」

衣「相手が相手なら、衣とえいすりんは起親で十万点削ることも可能だぞっ!」

憩「ま、言うても本選――しかも一回戦を勝ち上がってきた面子や。ぼちぼち普通に打っとったらあかんことに気付き始めるやろな」

智葉「ウィッシュアートの支配する《一枚絵》の世界――その額縁から最初に抜け出すのは、果たして誰になるのか……」

815 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/20 17:34:36.20 ID:slJPP1Wb0

 ――対局室

 東三局二本場・親:エイスリン

エイスリン「♪」タンッ

 東家:エイスリン=ウィッシュアート(劫初・199800)

友香(覚悟はしてたけど、本当に和了れない。普通に手は進んでいる気がするのに、和了るのは決まってウィッシュアート先輩)

 北家:森垣友香(煌星・72200)

友香(手牌や捨て牌に偏りがあるわけじゃないから、スピードを意識して打てば次こそ私が――と思っているうちに、何もできないまま四連続で和了られた。さすがの天使様でー)タンッ

友香(この異常な和了率は、手が速いとか有効牌を引きやすいとかいう自牌干渉系の能力とは一線を画す。煌先輩は、天江先輩の《一向聴地獄》と同じ、全体効果系の能力なんじゃないか……って言ってた)

友香(そのときは半信半疑だったけど、確かに、打ってみるとそれ以外に考えられない。この人は、こちらの手牌まで支配領域《テリトリー》にしている)タンッ

友香(ということは、普通に打っちゃダメなんだ。この人の描く《一枚絵》――その思惑通りに動いているうちは、どうやってもこの人の和了りを止められない)タンッ

友香(強い支配力を持つ淡や咲は、恒常的に、全体効果系の能力に近い場の支配をしてくる。掴ませたり、ここぞというときに和了ったり。そんなランクSの二人を相手にするとき……私はどう戦っていた? 思い出すんでー)タンッ

友香(さて、ここ辺りが分岐点かな。片や待ちも打点も高いタンピン系への道、片や牌効率の悪いリーのみへの道……素直に打つなら当然手広く構えたほうがいい。けど、その先に待ってるのは、たぶん袋小路)

友香(なら、狭くても可能性のある道を選ぼう。大丈夫。リーのみがなんでー。この巡目、まだまだ私の支配領域《テリトリー》。リーチさえできれば……なんとかなるッ!!)タンッ

エイスリン「?」

816 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/20 17:44:13.15 ID:slJPP1Wb0

友香(合同合宿のとき、私は上位ナンバーの先輩たちに、結局一度も勝てなかった。それから、私はずっと、あの人たちを想定して打ってきた。それはなんのためか。決まってる。今ここで勝つためでー!!)タンッ

友香(淡や咲だって、いつもいつも勝てるわけじゃない。エースの二人が苦しいとき、それでもチームとして勝とうとするなら、私か桃子が点を稼ぐしかない。
 私と桃子が上位ナンバーと互角に戦えれば、《煌星》の力はぐんと底上げされる……!!)タンッ

友香(やってやるんでー……私は、もうあのときの私じゃないッ!!)

友香「リーチでーッ!!」クルッ

エイスリン「♪」タンッ

華菜(先制リーチ!? えっと……なんだっけ、こいつ、森垣友香。確か、リーチ率も、リーチしたときの和了率も打点も高いって話だった。ってことは、もしかしてここで――)タンッ

友香「っ……ツモッ!! 3200・6200でー!!」ゴッ

華菜(リーのみが一発ツモと裏でハネ満!? これが《煌星》の《流星群》……!! 一年生があの《最多》の大能力者――ウィッシュアート先輩の連続和了を止めたのか。これは、あたしもぼやぼやしてられないしっ!!)

友香(よし、手応えありっ! 全体効果系能力の支配下でも、《発動条件》さえ満たせば、私の能力値《レベル》でも一点突破はできる!
 やり方次第で先制テンパイ可能っていうのも、今ので確かめられた。いける……! 戦えるんでー、《一桁ナンバー》ッ!!)

エイスリン「♪」

華菜:40400 友香:84800 エイ:193600 もこ:81200

817 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/20 17:52:53.58 ID:slJPP1Wb0

 ――《夜行》控え室

藍子「ひゅーぅ! やるねぇ、あの一年生。ウィッシュアート先輩に先んじてテンパイするだけでも至難の技なのに、僅かな支配の瑕から自分の支配領域《テリトリー》を展開、電光石火の一発ツモで親っ被りを食らわせるとかー!」

利仙「格上相手にどう戦えばいいかを心得ている感じがしますね。同じチームのランクSに鍛えられたのか、はたまた、ウィッシュアートさん以外の《一桁ナンバー》と対戦経験があるのか」

いちご「格上の能力者や実力者を相手にするときは、できるだけ自分の得意分野で勝負する。基本的な戦略じゃが、大抵の打ち手は、まず相手を自分の得意分野に引き込む段階で躓くもんじゃ」

絃「そのあたりに、あの森垣とかいう一年の上手さが光るな。利仙とやりあった東横もそう。能力を使っているときよりも、能力を使わずに打っているときにこそ、あいつらの強さが伺える」

藍子「さすがは《煌星》といったところですかね。今年の一年生で最も実力ある四人が集まっている、と言われるだけのことはあります」

いちご「大星、宮永、東横、森垣……それぞれがエース級の力を持っちょる。そこに、あの《南風》の南浦か《デジタル神》の原村、或いは《原石》なんかが加われば、今年の一年で最高のチームが出来上がるかもしれんの」

利仙「最高――そうですね。確かに、今名前の挙がった方々は、今年の一年生の中で最高級の実力の持つ雀士でしょう。ただ、最強となると、また別ですが」

絃「麻雀を覚えて僅か半年……インターミドルに出たときの利仙にも並ぶ成長速度で、もこはここまで来たわけだ」

利仙「いえ、私の上達は、尋常ならざるモチベーションと、霧島の方々の指導があってこそです」

いちご「尋常ならざるモチベーション……?」

818 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/20 18:16:11.35 ID:slJPP1Wb0

利仙「私の話は置いておくとして。ただ、対木さんは私とは違います。
 麻雀のルールを覚えたあとは、そのまま誰とも対局することなく、模擬対局を含む白糸台の特殊入試を見事にパスしてみせたそうですよ。でしたよね、百鬼さん?」

藍子「はいっ!」

絃「それはすごい……」

いちご「まさに才能の塊っちゅうわけか」

利仙「大能力者《レベル4》としての対木さんは、ランクSの大星さんや宮永さんにも匹敵する化け物です。
 去年の一年《三強》は間違いなく《悪鬼羅刹》ですが、今年の一年三強は、或いは、大星さんと宮永さんと対木さんかもしれませんね」

藍子「実際、もこと初対局したときは衝撃だったですよ。私の超音波《ソナー》で見えてた牌を《上書き》する能力値《レベル》の高さもそうですし、その能力の内容も、しばらく信じられないくらいでした」

いちご「聞いたら誰もがほしがる能力じゃもんな。たまにでええからちゃちゃのんに貸してくれんかの」

利仙「あれは対木さんが持っているから強いんですよ。佐々野さんの手には余ります」

絃「だな。もこの勝負勘の良さというか、感性の鋭さというか。そういう才覚があってこそ、あの力はより威力を発揮してくる。いちごでは宝の持ち腐れだ」

いちご「わりゃあらなんて嫌いじゃ!!」

絃「冗談だ。さて……ここまでは、どうにも我慢の局だったようだな。しかし、やっと回ってきた親番。そろそろ切り込んでいくんじゃないか?」

いちご「ほうじゃの。また《煌星》の一年が仕掛けてきそうじゃし、ウィッシュアートもダマで大きいのを張っちょる。あいつの好きそうな展開じゃあ」

利仙「今年の四月に《ゴールデンルーキー》と呼ばれ一躍時の人となった《東風》の片岡さん。それに、予選で森垣さん相手に互角以上の闘牌を見せた《南風》の南浦さん。
 しかし、今年の一年生で最強の《風》は……やはり対木さんでしょう」

いちご「おっ……! もこのやつ、笑っちょるぞ! これはいよいよじゃなっ!!」

絃「もこの麻雀は攻撃特化の究極形。学園都市最強の盾があの《塞王》だとしたら、学園都市最強の矛は間違いなくあいつだ。
 動き出したもこを止められる雀士が、この学園都市に果たして何人いるか……。あの《風》は、もこの身に降りかかる、あらゆる厄禍を吹き飛ばす――!」

     友香『リーチでーッ!!』

藍子「リーチ来たーっ!! なかなかいい感じに場が盛り上がってきましたよーっ! これこそまさに、もこの注文通りの展開……そりゃ笑顔にもなるってねっ!
 さあ、今日も今日とてエンジン全開ッ! フルスロットル……!! いつもみたいに華麗にブッ込んじゃってちょーだいよっ、我らが自慢の特攻隊長――《神風》のもこーッ!!」

819 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/20 18:20:42.17 ID:slJPP1Wb0

 ――対局室

 東四局・親:もこ

友香「リーチでーッ!!」

 西家:森垣友香(煌星・83800)

友香(二位浮上くらいで矛を収めたりはしない。私は攻める……!!)

もこ「」タンッ

 東家:対木もこ(夜行・81200)

友香(え――そんな強いとこを……!? まだ張ってもいないような感じだったのに……)

華菜「チーだしっ!」タンッ

 南家:池田華菜(新道寺・40400)

友香(こっちもオリてない……っていうか、ズラされた! くっ、けど、それならそれで――)タンッ

エイスリン「?」

 北家:エイスリン・ウィッシュアート(劫初・193600)

友香(私の一発がそっちに行くなら、それも好都合。ウィッシュアート先輩がテンパイを崩すなら、この場、私の優位は変わらない。リーチを掛けている以上、和了るチャンスは何度でも舞い込んでくるはずっ……!!)

エイスリン「♪」タンッ

友香(よし、足止め成功っ!! あとは次巡あたりでツモれれば――)
 
もこ「」タンッ

友香(ま……たそんな際どいところっ!? ちょ、もしかして……! これが煌先輩が気をつけろって言ってた、対木さんの能力――!?)

もこ「」ブツブツブツブツブツブツブツブツ

華菜(森垣のリーチに躊躇なくド真ん中。しかも的確に有効牌を引いたっぽい。対木もこ……そうだった、こいつもこいつで相当ヤバいんだったしっ!)タンッ

友香(こ、これ……南浦さんと打ったとき以上の風圧を感じるんでー!! 私の支配領域《テリトリー》が、対木さんの纏う《風》に一掃されてる!? 能力値の次元《レベル》が違うんだ……!!
 マズいんでー……これが対木もこさんっ! 淡や咲さえ超えるかもしれないっていう、同学年最強の大能力者《レベル4》――《神風》ッ!!)タンッ

もこ「っ――!! ロン、3900……/////」

友香(ちょ、超ヤバい笑顔でー!? っていうか、ブツブツ以外の声初めて聞いたーっ!!)

もこ「///////」ブツブツブツブツ

華菜:40400 友香:79900 エイ:193600 もこ:86100

820 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/20 18:24:58.80 ID:slJPP1Wb0

 ――《煌星》控え室

淡「ちょっとユーカ!? 何ヌルヌル打ってんのー!? ズラされても和了れるように特訓したじゃーん!!」

桃子「今のは……たぶん噂のヤバ子さんが何かしたっすよ。あの人は、私ら一年生で『最強の能力者は?』ってアンケートを取ったら、間違いなく名前が挙がる一人っす。
 その能力の強度は、さっきの《飛雷神》さんもそうっすし、超新星さんや嶺上さんをも上回ると目される……同学年最強の大能力者《レベル4》っすからね」

咲「淡ちゃんのは《大体安全圏》だし、私の《プラマイゼロ》はトップを取れない。
 最高の能力者ならレベル5の《原石》さんなのかもしれないけど、あの人よくわからないから、結局、最強の能力者は対木さん、ってことになるのかな」

煌「予選のデータにも、その特異性はありありと現れていましたね。内容は半分くらいしか掴めていませんでしたが……今の友香さんの能力との衝突で、やっとその全容が見えてきました」

淡「《神風》の対木もこ……その打ち筋の特徴は、《新道寺》の《飛雷神》、それに《ステルスモード》のモモコと同じ」

桃子「全局全ツッパ。親リーが来ようとなんだろうと、無関係に切り込んでいくっす」

咲「《飛雷神》さんは能力の《発動条件》ゆえに、桃子ちゃんは能力の効果ゆえに、そういう打ち方をするんだよね」

煌「そこでいくと、対木さんは恐らく、そのどちらにも当て嵌まるのだと思われます。《神風》……あれは、弘世さんの《シャープシュート》と同じ、二つの能力の複合で成立している力――」

821 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/20 18:31:42.63 ID:slJPP1Wb0

淡「で……なんなの、対木もこの能力って。まあ、一つはデータから簡単に推測できるけど」

咲「放銃率ゼロ。少なくとも、公式戦では一度も振り込みをしたことがない。
 どころか、相手の和了り牌を捨てたことが、同巡フリテンなんかの場合も含めて、本当にただの一度もない。そこが、桃子ちゃんの《ステルス》と違うところだよね」

桃子「そうっすね。私のは《和了り牌を捨てても相手に気付かれない》感応系の能力。対して、ヤバ子さんのあれは、たぶん自牌干渉系の能力っす」

煌「《相手の和了り牌を掴まされない》自牌干渉系の能力者。或いは《相手の和了り牌が見える》感知系の能力者の可能性もありますが、牌譜を見る限り、対木さんは前者でしょうね」

淡「私もそう思う。感知系特有の……あのレベル5の《未来視》の人みたいな、不自然な回し打ちがない。あの《神風》は、回しも様子見もしない。ひたすら和了りに向かって不要牌を切っていく」

咲「まさに特攻だよ……」

桃子「それで、きらめ先輩。ヤバ子さんの二つ目の能力ってなんなんっすか?」

煌「恐らくですが……《危険牌を切れば切るほど》《有効牌が入り和了率が上昇する》自牌干渉系の能力ではないかと」

淡「なっ、なにそのイカれたコンボ!? 《和了り牌を掴まされない》→全ツッパ→《危険牌を切るほど和了りやすい》って……! 私の《絶対安全圏》→《ダブリー》→《カン裏モロ》くらい非人道的じゃん!!」

桃子「自覚はあるっすね、超新星さん」

咲「まあ、淡ちゃんのわりかし穴だらけなコンボと違って、対木さんのは本当にかなり厄介かも。
 手数が多い人、出和了りが多い人、リーチ率の高い人、打ち合いが得意な人……要するに、攻撃型の雀士をほぼまとめて食い物にできるってことだもんね。いわば、攻撃特化の究極形」

煌「先ほどの嬉々とした闘牌からして、対木さんは特に、相手がリーチを掛けてきたときに、その本領を発揮するようですね。
 過去の牌譜でも、先制リーチに対して危険牌を切り込み、そのまま追いつき追い越せで和了りをものにしていました。リーチが能力の《発動条件》である友香さんにとっては、非常にやりにくい相手と言えるでしょう」

淡「そっか……それでさっき和了れなかったのか。ユーカの能力値はレベル3強……レベル4の《神風》に強いところを切ってこられたら、ユーカの支配領域《テリトリー》がそっちに侵食されて、能力が《無効化》されちゃう……!!」

咲「かといって、ウィッシュアートさんの全体効果系能力が支配しているあの場で、リーチは友香ちゃん最大の武器。捨てるわけにはいかないよ」

桃子「そこっすよね……あの天使さんの能力も、恐ろしく厄介っすから」

     エイスリン『ツモ、400・700ハ500・800♪』

822 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/20 18:36:04.69 ID:slJPP1Wb0

 ――対局室

 南一局・親:華菜

華菜(このドン詰まり感……去年天江と戦ったときを思い出すな)タンッ

 東家:池田華菜(新道寺・39900)

華菜(しかも、前回は天江一人が大暴れだったのに対し、今回は三人とも強敵。これが一軍決定戦《ファーストクラス・トーナメント》本選の二回戦。予選決勝より厳しいのは当然か)タンッ

華菜(で、私はこの局面をどう打破しようか。普通に打つとウィッシュアート先輩に和了られる。どうにか先制してリーチができたとしても、森垣みたいにほいほい和了れない上に、全ツッパで調子を上げてくる対木に狙われる)タンッ

華菜(どーにも参っちゃうし。けど……巴さんが見てる前で、恥ずかしい闘牌はできない。大丈夫……あたしはこの一年間、天江を倒すために練習してきた。全体効果系がなんだし。まして一年二人なんかに負けるかし)タンッ

華菜(《夢描く天使》――ウィッシュアート先輩! あなたにあたしの本気を描き切ることが出来ますかっ!? いざ尋常に……勝負だしッ!!)ゴゴゴゴゴゴゴゴ

823 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/20 18:45:57.25 ID:slJPP1Wb0

 ――《新道寺》控え室

巴「《ずっと和了り続ける》全体効果系のレベル4、リーチ条件で《和了率と打点が上昇する》レベル3強、《振り込まない》上にツッパることで《有効牌を引き寄せる》レベル4……かぁ」

仁美「ひどか八方塞がりと」

美子「レベル0には厳しか面子やね」

友清「ぶっちゃけ無茶! 略してぶちゃとです!! 池田せんぱいは大丈夫とですかー!?」

巴「うーん。大丈夫じゃないかもね。ただでさえ、レベル0で全体効果系能力者の場の支配を抜け出すのは、とても大変なことだから」

美子「まあ、《劫初》は断トツやけん、別に放っておいてもよか。無理にウィッシュアートさんにぶつからんでん、二位の《夜行》ばぶち抜ければ、そいでよかと。ばってん――」

仁美「あん《神風》からは直撃の取れん。しかも、ツモで削ろうにも、リーチ掛けっと逆に食われよる。リーチに強か強能力者の《流星群》でんダメやったけん、レベル0の池田にあいば打ち破るのは不可能と」

友清「そいなー……」

巴「華菜は強いけど、一軍決定戦《ファーストクラス・トーナメント》の本選はこれが初めて。しかも、今は二回戦。苦戦するのは当然だよ。それはわかってた」

友清「うぬー! どげんかならんとですか!?」

巴「さあ……。でも、きっと、大丈夫。ちょっと苦しいけれど、見る限り、今の華菜は、ちゃんといつもの華菜だから。全然辛そうに見えないでしょ? どころか、すっごく楽しそう」

     華菜『』ピコピコ

友清「おお!? 確かにとですーっ! 耳のぴこぴこしとっとですー!!」

仁美「どげん状況でん、諦めたらそいで終わり。前に進まんと見えるもんも見えん。あいつはそいばよう知っとう」

美子「姫子と同じ白糸台の《生ける伝説》――元《爆心》メンバー。しかも、あの天江さんと打って二度も立ち直ったくらいやけん。このままやられっぱなしで終わるような子やなかと」

824 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/20 18:51:44.66 ID:slJPP1Wb0

友清「ふあっ……!! とか言っとうたら、池田せんぱいの手がっ!?」

巴「ツモのみ1100点。けど、華菜の《砲号》ならっ!」

美子「和了り拒否……! ウィッシュアートさんのおる場でよう頑張っとね!」

仁美「序盤で焦って鳴いとったら、こうはいかんやったかもな」

友清「わっ! フリテンとですけど一盃口、ツモれば2000!! ばってん、もう一声!!」

美子「平和がついてフリテン解消! しかも高めで三色と!! ばってん、もう一声!!」

     華菜『……ッ!!』

巴「ドラ……! その感じで、もう一声っ!!」

仁美「おお、やりおるやりおる――ッ!!」

     華菜『ツモっ!! 6000オールだしー!!』

巴「プラスに戻したっ! うん! やっぱり華菜はこうでなくっちゃ!!」

     華菜『そろそろまぜろよっ!!』バンッ

仁美「あいつ……ようほざきよる」

美子「なんとやらほどよく吼える――ばってん、池田さんの《砲号》は、必ずしもそん限りやなか」

友清「なら、こっから池田せんぱいの逆襲の始まっとですかっ!?」

巴「んー、それはどうかなぁ。華菜、今、かなり調子乗ってるから。それが華菜の強いところであり」

仁美「間抜けなところと」

     華菜『リーチだしッ!!』

美子「おわわっ、さっきは掛けんやったのに……こいは大丈夫なんやろか?」

友清「大丈夫とですっ! ……たぶん!!」

巴「ここで踏ん張れれば、華菜も上位ナンバーの仲間入りができると思うんだけど」

     友香『リーチでー!』

825 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/20 18:54:01.08 ID:slJPP1Wb0

仁美「難しか局面やね。私ない、点差のあっけん、ダマで通す」

美子「私も様子ば見ゆ」

友清「私は振り込み上等リーチとです!」

巴「十人十色。それで勝てる人もいるし、負ける人もいる」

     もこ『リーチ――/////』ブツブツブツブツ

仁美「ばってん、勝っても負けても、私は、この場面でリーチば掛けたあいつの前向きさが好きと」

巴「……あげないよ?」

仁美「奪えるとは思っとらん」

     もこ『ロン――12300……/////』

     華菜『にゃあああああ!?』

巴「あららら。せっかく持ち直したと思ったら」

仁美「こいは……大将戦は大仕事になりそうと」

826 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/20 19:03:43.63 ID:slJPP1Wb0

美子「そんわりには、仁美、楽しそうやね?」

巴「後輩にいいところを見せたい、とか?」

友清「江崎せんぱいのそーゆーとこ、あざとかとですっ!」

仁美「よ、よかとやろ別に!? カッコつけくらいさせてほしか。どうせトップばまくるなら、ラスからブチ抜くほうが夢のあっ!!」

美子「仁美、そうやって大きか手ばっか狙って、去年はよう哩に怒られとったとやろ」

仁美「そいは……やって、姫子んために無理する哩のカッコよかったけん……!」

美子「自分の器ば考えんしゃい、器ば」

仁美「……おい、美子、そい以上言いよったら、こっちも黙っとらんとよ? なんやっけなー、去年の冬やったっけなー、あんた姫子に」

美子「ななななななんのこととや!? 知らんー!! そいなこと知らんとー!!」

友清「ふふっ、せんぱいたち……楽しそうとですね」

巴「二年間以上一緒に戦ってきたんだもん。色んな思い出があるよ」

友清「私も早く三年生になりたかとですー」

巴「こらこら、それは急ぎ過ぎ。これから楽しいことがたくさんあるんだから。一つ一つ、大事に味わっていかないと」

友清「確かに。そうとですね……っ!」

仁美「友清ー! よう聞けよー、美子は去年の冬――」

美子「仁美ーっ! あんたそい言うたら絶交やけんなー!!」

827 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/20 19:08:11.97 ID:slJPP1Wb0

 ――対局室

 南二局・親:友香

友香(ラス親……ここでなんとかしないと、引き離される一方でー)タンッ

 東家:森垣友香(煌星・72400)

友香(けど、どうすればいい? ウィッシュアート先輩のいるこの場では、手の作り方は限られてくる。それでもリーチができればって思ったけど、私の《流星群》は対木さんの《神風》には敵わない……)

友香(いやいやっ! 弱気になっちゃダメでー。まだできることはあるはず……それが証拠に、この局はテンパイできた!!)

友香(私が能力を磨いたのはなんのためでー? 私が技術を高めたのはなんのためでー!? 今ここで――勝つためだろうが……ッ!!)ゴッ

友香「リーチでー!!」クルッ

友香(負けられない……負けるわけにはいかないッ!!)

もこ「リーチ――/////」ブツブツブツブツ

 西家:対木もこ(夜行・92600)

友香(お、追いかけられた――!? しかも切ってきたのは超危険牌! これはまた《神風》が来る……!!)

華菜「チー、ダブル一発消しだしっ!」タンッ

 北家:池田華菜(新道寺・44600)

友香(こっちもでー!? くっ……当たり前のことだけど、私だけじゃない! 対木さんも池田先輩も勝ちに来てる。私だって、気持ちでは負けてないつもり……でも、でも――)タンッ

エイスリン「ロン、3900♪」パラララ

友香(そんな……! これも、あなたの手の平の上だったって言うんですか!? こんなの、私、どうすれば…………!!)

エイスリン「♪」

華菜:44600 友香:67500 エイ:195300 もこ:92600

828 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/20 19:11:01.01 ID:slJPP1Wb0

 ――《劫初》控え室

     エイスリン『ツモ、1000オール♪』

菫「なんというか、毎回毎回、お前ら四人の対局を見ていると胃がキリキリするな……」

憩「えー? なんでですかー?」

菫「いつ誰がどんな形で対戦相手の心を折ってしまうのか、不安で仕方ないからだ」

智葉「失敬な、私は丁重に斬り捨てているだけだぞ」

菫「照の妹を殺しかけておいて何を言う」

衣「心配するな、すみれ! 玩具は一度壊れたほうがより頑健になるっ!!」

憩「池田さんのことやんな。あの人、ちょっと抜けとるとこは変わらへんけど、ふとした拍子に噛み付いてくるから恐いわー」

衣「好きなだけ牙を剥いてくればいい。何度でもその身に恐怖をくれてやるっ!」

菫「麻雀はそういうゲームじゃないぞ……?」

憩「まー、でも、菫さんの不安は杞憂やと思いますよ。中には相手が強いほど燃えるって人もおりますから」

     エイスリン『リーチ!』

智葉「それに、今ここで私たちが相手にしているのは、いずれも厳しい戦いを経て、ここまで勝ち上がってきたチームの一員だ」

衣「まさに極上の生贄。だが、踊り食いをするには少々活きが良過ぎる輩も、中にはいるようだな」

憩「食うつもりでおったら逆に食い物にされた、なんてこともあったりなかったりや。特に、あの子は、手数の多いエイさんとは相性がよさそうやんな。あの《神風》の子……」

     もこ『リーチ――/////』

829 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/20 19:15:37.69 ID:slJPP1Wb0

智葉「《煌星》の東横とは違う意味で、まったく被弾しない戦闘機。砲弾飛び交う戦場を、ただ真っ直ぐに突っ込んでくる。それは決死でも必死でもない。むしろ決殺で必殺の特攻――《神風》」

衣「えいすりんもさぞや楽しかろう。あれの力は言わば無色透明の奔流。いかにえいすりんと言えども、色のない《風》を描いたことはあるまい」

     もこ『ロン、6700……////』

     エイスリン『ハイッ♪』

菫「個人収支で並ばれたか。ウィッシュアートの支配下にありながら、大した一年生だ」

憩「今年の一年生で三強を決めるなら、あの子がその一人、っちゅー噂もあるくらいですよ。
 超新星さん、妹さん、それに《原石》さん――その辺りと比較しても十分タメ張る、一年最強の大能力者《レベル4》やとかなんとか」

菫「末恐ろしい……」

智葉「聞けば、麻雀を初めてまだ一年にも満たないという。あいつが学園都市で経験を積んだら、どれほどの雀士に化けるか。その行く末を間近で見られないのが残念だな」

憩「ま、ウチの目が黒いうちは好きなようにはさせまへんけどねー」

衣「奇幻な手合いが増えるのは衣も嬉しいぞっ!」

菫「さて……ウィッシュアートの親が蹴られて、その対木のラス親か。また今のように一騎打ちに持ち込まれると、いかにウィッシュアートとは言え、捌くのは難しそうだ」

憩「菫さん、何も敵は《神風》さん一人とちゃいますよ。今あっこで戦っとるんは、学園都市一万人の中から選ばれた十六チーム八十人の中の四人。何がきっかけでどんなことが起こるか……それは最後までわかりません」

菫「《悪魔の目》を持つお前でも『わからない』か。他の誰が言うより説得力があるな、荒川」

憩「あはっ、それほどでもー」

830 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/20 19:17:56.17 ID:slJPP1Wb0

 ――《煌星》控え室

桃子「ヤバ子さんのオーラス……! でー子さん、頑張ってっすっ!!」

咲「ただでさえ厄介なウィッシュアートさんに、相性の悪い対木さん。友香ちゃん、焦ってなければいいんだけど……」

淡「ユーカなら大丈夫……!! きっと、この場もあっと驚くようなアイデアで、なんとかしてくれるはずっ!!」

煌「淡さん、落ち着いてください。落ち着いて、座ってください。淡さんが慌てても状況が良くなるわけではありませんし、なによりモニターが見えません」

淡「で、でも、キラメ! ユーカがピンチなんだよっ!?」

煌「そうですね。しかし、それがなんです」

淡「大問題じゃん!!」

煌「なら、お聞きしますが、対局室の友香さん……今、どんな顔をしていますか? 私には、たとえ淡さんの背中でモニターが見えなくとも、大体想像がつきますよ」

淡「ユーカ……そんな、笑ってる……!?」

煌「そうでしょうとも。ですから、心配は要りませんよ。そもそも、友香さんにとって、ウィッシュアートさんや対木さんは、敵ではありません」

淡「ど、どういうこと?」

煌「淡さんがおっしゃったことですよ? 覚えていませんか?」

淡「私? え、いつそんなこと……?」

831 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/20 19:21:28.59 ID:slJPP1Wb0

煌「友香さんをチームに誘ったときです。もっとも、私は友香さんから聞いただけなので、実際には聞いていませんが」

淡「えっと……」

煌「友香さんの何よりの天敵は、淡さん、あなただと」

淡「あっ!?」

煌「そして、淡さんはこうも言ったそうですね。天敵を味方にしてしまえば、むしろ無敵だと」

桃子「え、もしかして、うまいこと言ったつもりっすか?」

咲「淡ちゃん、おバカなんだから無理しなくていいよ……」

淡「うるさーいっ! そ、そうだよ……!! キラメの言う通りっ!! というか、私の言う通り!!」

煌「ええ。そういうわけなので、友香さんなら大丈夫です。どんな強敵も難敵も、友香さんの天敵にはなりえない。友香さん自身も、それはわかっているはずです」

淡「そうだよねっ!! いやー、いいこと言うな! 過去の私っ!!」

煌「では、淡さん。いつまでもモニターに張り付いていないで、こっちに来て一緒に応援しましょう。
 友香さんの力になりたいのは、私たちみんなそうです。友香さんの勇姿を、私たちにもよく見せてください」

淡「うんっ! わかった!!」バッ

煌「……あの、淡さん? こっちに来てとは言いましたが、私の膝の上に乗られると、やはりモニターが見えないのですが……?」

淡「頑張れー、ユーカー!!」

832 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/20 19:25:55.46 ID:slJPP1Wb0

 ――対局室

 南四局・親:もこ

友香(なーんか、淡がまたバカなことやってる気がするのはなんででー? さては、負けてる私を見て騒いで、煌先輩に迷惑を掛けてるな……? まったく困ったやつでー)タンッ

 西家:森垣友香(煌星・66500)

友香(けど……それだけ、心配かけてるのか。そりゃまあ、この点数状況で、この相手、私が私の試合を見てても、きっと気が気じゃない。いてもたってもいられない。実際、淡がピンチだったときは、私も熱くなっちゃってたし)タンッ

友香(でもさ、淡。あんまり心配されても、私的には嬉しくないんだからね? だって、私のことを、強いから欲しいって言ってくれたのは、淡だよ?
 なら、信じて見ててほしいんでー。私を《煌星》に誘ったこと……きっと後悔させはしないから……!!)タンッ

友香(こんな状況になっても、まだどこか、心に余裕がある。それはきっと、普段から淡や咲の相手をしてたからでー。
 共同戦線を張ってくれるはずの桃子だって、ちょっと協力してくれたと思ったら、すぐに消えて絨毯爆撃始めるし……)タンッ

友香(卓についたら、戦いが始まったら、誰だって一人でー。自分の技術と能力を信じて頑張るしかない。
 けど、もし、今みたいに、それも難しいような相手に囲まれてしまったら?)タンッ

友香(そんなとき、支えになるのがチームのみんな。大丈夫……私はまだまだ戦える。淡と咲と桃子との対局だって、今と同じくらい苦しい状況だった。それでも、諦めない限り……道は開く――!!)タンッ

友香「ツモッ! 2000・4000!!」パラララ

エイスリン「?」

友香「これにて前半戦は終了でーっ、おつッ!!」

 三位:森垣友香・-3300(煌星・74500)

エイスリン「モイッコ、オツ♪」

 一位:エイスリン=ウィッシュアート・+9700(劫初・188600)

もこ「」ブツブツブツブツ

 二位:対木もこ・+7200(夜行・95300)

華菜「お疲れ様でしたし!」

 四位:池田華菜・-13600(新道寺・41600)

友香(なーんか、能力封印とか、先鋒戦前半オーラスの淡みたいなことしちゃったんでー。
 けど、和了れたから良し。二位と点差は開いたけど、まだ後半がある。やり方次第では和了れるんだから……チャンスはきっと来るっ!!)

友香(さあ……残り半荘一回! 必ず勝って煌先輩に繋げるんでーッ!!)ゴッ

833 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/20 19:29:51.40 ID:slJPP1Wb0

 ――Dブロック二回戦・《永代》控え室

塞「ただいまー。ちゃー、削られたわー」

照「問題ない」

まこ「原村和……あいつはちと厄介そうじゃの」

純「自覚してるのか無自覚なのか、オレら以上にオカルトキラーなところがあるよな」

穏乃「原村さんもそうですが、鷺森さんもいい感じでしたねっ!」

塞「このまま順当に行けば、薄墨が踏みとどまったのと園城寺が稼いだ分で、チーム《新約》が上がってくるかな?」

照「どうだろう。《姫松》の末原さんは諦めの悪い人だし、《有珠山》の獅子原さんもかなり強い能力者。高鴨さんの変な力が誰にどう効くかによるんじゃないかな」

穏乃「変な力じゃありません! すごいパワー、略してすごパですっ!!」

まこ「ま、さすがに逆転されることはないじゃろうが、気ぃつけての」

純「オレは心配してねえぜ。お前がいつも通り楽しめりゃ、普通に勝ってこれんだろ」

穏乃「お任せあれっ!!」ゴッ

834 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/20 19:40:13.26 ID:slJPP1Wb0

塞「ちなみに、他のブロックはどうなってる?」

まこ「えっとじゃな……隣のCブロックは、中堅戦で愛宕洋榎と江口セーラが大暴れして、そこからあまり変わっとらん。大将はあの竹井久と亦野誠子じゃけえ、これは《久遠》と《幻奏》で決まりそうかの」

純「Bのほうも状況は似てるな。《豊穣》と《逢天》が抜けてて、しかも大将が小蒔と石戸霞っつー悪夢の同門対決。他の二チームがどんな切り札を用意してようと、あの化け物巫女をどうにかできるとは思えねえ」

塞「Aブロックのほうはどう?」

照「とりあえず、菫のチームは上がってくる」

塞「へえ、どれそれ――って、うわぁ、副将戦前半終わって十九万近くとか。二位とは九万点差以上。ぶっちぎってるわねぇー……」

穏乃「先鋒戦終了時の照さんより浮いてますよね」

まこ「二位争いじゃと、今のところ、個人戦の強者・際物が集まっとる百鬼の《夜行》が、着実にバトンを繋いどる感じじゃの」

純「《煌星》も悪くねえが、中堅戦で噂の妹ちゃんが辻垣内に斬殺されたのが痛いな。先鋒戦の超新星も不発だったし、ダブルエースが稼げなかったのが響いてる感じだ」

照「辻垣内さん……私の咲になんてことを……!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

塞「じゃあ、上がってくるのは《劫初》と《夜行》? 《煌星》の大将――例のレベル5は……けど、能力の強度はとんでもないって話だけど、他の二年レベル5トリオと違って、稼げる選手じゃないのよね?」

穏乃「それはそうだと思います。でも、あの人は……その、何をしてくるかわからない、という恐さがあります……」

純「それに、大将戦には我らが《修羅》こと天江衣が出てくる。何をしでかすかわからねえっつー意味では、あいつ以上の雀士をオレは知らねえな」

まこ「アレは何もかもが規格外じゃからの……」

照「まあ、決勝まで当たることはないし、今はこの二回戦に集中しよう」

塞「そうね。じゃあ、あとは頼むわ、高鴨」

穏乃「はいっ! じゃ、行ってきまーすっ!!」

 ガチャ ダダダダダダダダダ

835 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/20 19:44:21.84 ID:slJPP1Wb0

塞「さて、と。ま、高鴨なら大丈夫か。点差も点差だし。……っていうか、そっか、あっちの副将戦、エイスリンが出てるんだ」

照「ああ、仲良いんだっけ」

塞「うん、去年の冬に豊音と一緒にうちのクラスに転校してきて、シロと胡桃と五人でよく打ったわ。で、前半戦の結果はどうだったの?」

まこ「記録はこんな感じじゃ」ペラッ

塞「へえ……ふーん。なんだろ、今日はあんまり調子よくないのかな」

純「何言ってんだ? 明らかに一人だけ浮いてたぞ」

塞「いや、でも、なんだかんだ他の三人に出し抜かれてるし」

まこ「そりゃあ他の連中も一筋縄じゃいかんじゃろ。《煌星》と《夜行》の一年は、今年の一年の中でも上のほうじゃし、あの《砲号》も侮れん」

純「懐かしいな。去年のクラス対抗戦と、一軍決定戦《ファーストクラス・トーナメント》の予選……衣が楽しそうにボコボコにしてたっけ、あのニャーとか言うやつ」

塞「まあ……他がそれなりに強いのは、そりゃそうなんだけどね。でも、《一桁ナンバー》のエイスリンがてこずるほどとは思えないのよ。それに、和了率だって五割そこそこしかないし」

まこ「二回に一回和了れりゃ十分じゃろうが」

塞「あのね……エイスリンの手数は宮永以上なんだからね? 和了率100パーセントの完全試合だってやってのける《最多》の大能力者なんだから。二回に一回なんて少な過ぎ」

純「ま、後半戦が今に始まる。調子が悪いのか他が手強いのか、その目で確かめればいいだろ」

照「あの……みんな、高鴨さんの応援は……?」

 ――――

836 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/20 19:45:44.96 ID:slJPP1Wb0

 ――Aブロック二回戦・対局室

『対局者は席についてください――』

友香「よろっ!」

 北家:森垣友香(煌星・74500)

エイスリン「コッチモ、ヨロッ♪」

 南家:エイスリン=ウィッシュアート(劫初・188600)

華菜「今度は負けないしっ!」

 西家:池田華菜(新道寺・41600)

もこ「」ブツブツブツブツ

 東家:対木もこ(夜行・95300)

『副将戦後半……開始ですッ!』

843 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/24 21:38:15.05 ID:bU2yb3Go0

 ――《夜行》控え室

藍子「もこーっ! 後半戦もぶちかませー!!」

利仙「佐々野さんの負け分も大分取り戻せましたね」

いちご「わりゃー!?」

絃「ウィッシュアートの手数の多さをうまく利用しているな。もこの特攻は基本後攻めになるから、ああやってほぼ毎局先制テンパイしてくるやつがいると――」

     エイスリン『ツモ、2000・4000♪』

いちご「いると――なんじゃ?」

絃「なかなか大変だな」

利仙「あの速度と和了率でこの打点。連発されると手がつけられません」

いちご「弱点とかないんか? あの天使様は」

藍子「でもっ! もこは振り込みませんし、ばんばんツッパっていけばいいんです! それだけで、あの天使様の思惑を外すことになるっ!」

利仙「……そう、なればいいのですけれど」

藍子「えっ……?」

844 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/24 21:43:43.15 ID:bU2yb3Go0

利仙「お気を悪くされないで聞いていただきたいのですが、私は、本気で卓を囲めば、この《夜行》メンバーの全員を薙ぎ払えると自負しています」

藍子「いやいや、自負どころか他負しますよっ! 利仙さんは私たち《夜行》のエースです! もこもいっつも言ってますよ。利仙さんの強さは反則級だって」

利仙「なるほど……では、対木さんがウィッシュアートさんを出し抜くのは、かなり厳しいということになるでしょう」

藍子「ほえ?」

いちご「藍子、忘れとるっちゅうことはないじゃろ? 元《一桁ナンバー》――かつてのナンバー7。個人戦ベスト8常連じゃった利仙が、いつ、どうして、《一桁ナンバー》から追われてしまったのか」

藍子「あ――」

利仙「去年の冬……学園都市に二人の転校生がやってきました。ちょうど、此度の《煌星》の二人のように、その活躍と台頭には目を見張るものがありましたね」

いちご「冬季大会《ウィンター》、春季大会《スプリング》と、そいつは個人戦で快進撃を続けた。
 冬はベスト16、春はベスト8。利仙とそいつのナンバーが入れ替わったのは、春季大会《スプリング》のときじゃったな」

利仙「時として和了率100パーセントの完全試合を達成する、脅威の全体効果系能力者。《最多》と称される《夢描く天使》――それが、現在のナンバー7。エイスリン=ウィッシュアートさんです」

藍子「おおぅ……」ゾクッ

845 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/24 21:52:49.66 ID:bU2yb3Go0

いちご「この白糸台に君臨する四つのトップグループ。一軍《レギュラー》は元より、学園都市に七人しかいない超能力者《レベル5》、白糸台に五人しかいない支配者《ランクS》。
 そんな連中と並び称されるのが、九人しかいない《一桁ナンバー》じゃ。そして、《一桁ナンバー》と二桁以下のちょうど境界線上におるのが、我らが《百花仙》――ナンバー10、藤原利仙」

利仙「つまり、私のことを手強いと感じている程度では、《一桁ナンバー》の壁を超えるのは到底不可能、ということになりますね。
 もちろん、能力の相性にも左右されますが、ただいつも通りに打っているだけでは、まず敵わないでしょう」

絃「《一桁ナンバー》か。私には、超えられなかった壁だな」

藍子「い、絃さん……」

いちご「当然ながら、ちゃちゃのんもまるで話にならん。さっきの辻垣内以外じゃと、去年の一軍決定戦《ファーストクラス・トーナメント》で《姫松》の愛宕洋榎と対戦しての。洒落にならんレベルで削られたわ」

利仙「《一桁ナンバー》……その誰もが、一騎当千の雀士。能力の優位性だけで突破できるほど、その壁は低くも脆くもありません。
 元一軍《レギュラー》の四人、超能力者《レベル5》の七人、支配者《ランクS》の五人と同様に、彼女ら九人もまた、学園都市が誇る格別の別格なのです。
 かつてそこにいた私も、今のところは、私以外の二桁以下に上を行かれるとは微塵も思っていません。無論、対木さんも例外ではないです」

     もこ『リーチ――/////』

藍子「もこ……っ!!」

絃「先制リーチ……後攻めではウィッシュアートに追いつけないという判断か?」

いちご「じゃが、それがあの天使様の描いた《一枚絵》の通りじゃったとしたら、マズいかもしれんの」

利仙「《相手の和了り牌を掴まされない》……対木さんの大能力は確かに強力で、実際、試合でも練習でも、彼女の《神風》が破られたことは一度としてありません。しかし――」

藍子「ちょ、そんな! もこが……もこが――ッ!?」

846 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/24 22:00:10.45 ID:bU2yb3Go0

 ――《劫初》控え室

智葉「対木もこの《神風》……あらゆる厄禍を吹き飛ばすという話だが、決して《絶対》ではない。どんなに強かろうと、それが大能力者《レベル4》の超えられない壁だ」

     エイスリン『ロン、2400♪』

     もこ『――っ???』

菫「ふむ……対木の振り込みは、公式戦だとこれが初か。ウィッシュアート……何もわざわざ同じ七対子でやり返さんでもいいだろうに」

憩「いや、これたぶん、さっきの牌譜を反転模写したんとちゃいますかね。上家と下家もちょうど逆やし。そこんとこどーなん、衣ちゃん。同じ全体効果系能力者として」

衣「細かくはわからないが、恐らくはけいの言う通りだろう。先ほどの前半戦南三局一本場での直撃……あれで、何かしら《神風》の尾を捕らえ、それを参考に、えいすりんはこの結末を描いた。
 喩えるなら、智恵板遊びのようなものか。形の決まっている断片を、好きなように並べ、己の思惑に近い全体像に仕上げる。全体効果系の能力は、とにもかくにも、断片の把握と、それらを俯瞰的に扱う構成力が大事なのだ」

847 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/24 22:08:46.11 ID:bU2yb3Go0

智葉「対戦相手のカラーを把握し、描きたい《一枚絵》を明確にイメージする。前半戦を経験した分だけ、あいつの描く絵に幅が生まれたのだろう。対木の強力な能力すら、あいつは自分の世界に取り込んでみせた」

菫「出し抜くには相当な無理をしないといけないことになるな」

     エイスリン『ロン、8000♪』

     友香『はい……』

憩「惜しいなぁ、あの子。かなりイイ線行っとったけど、それは額縁の内側やねー」

智葉「前半戦ならば、オーラスの満貫のように、或いはあの一年が和了っていたかもしれないな」

     もこ『リーチッ//////』

菫「対木もこ……表情はさっきまでと変わらないように見えるが、打牌に若干の焦りがあるな」

     エイスリン『ツモ、900オール♪』

衣「ふむ。あまりえいすりんに和了られると、衣の楽しみが減ってしまうというのに。一体いつまで黙っているつもりだ……あの《砲号》め」

憩「衣ちゃん、なんやかんやで池田さんのこと大好きやねー」

衣「べ、別に好きとかではないっ!」

848 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/24 22:20:35.05 ID:bU2yb3Go0

智葉「だが、気になってはいると」

衣「まあ……多少はな。因縁の相手と言えなくもない。去年、衣が公式戦という表舞台に立ったのは二大会だけ。その両方とも、衣はあやつと対戦したのだ」

菫「チーム《刹那》でのクラス対抗戦。それにチーム《龍門渕》での一軍決定戦《ファーストクラス・トーナメント》だな」

衣「左様。あのときは、まさかすみれとこうして同じチームになるとは思っていなかったが……それはさておき。
 《刹那》としては《爆心》の、《龍門渕》としては《風越》のあやつを、衣は完膚なきまでに粉砕してやった。
 だが、あやつはいまだ五体満足で、あそこで《新道寺》の副将として笑っている。まったく理解の外にいる生き物だ」

憩「理解の外――二度も対戦した衣ちゃんがそう言うんやったら、エイさんも、ひょっとすると池田さんを量りかねてるんちゃうかな?」

菫「おい、あまり不吉なことを言うな。お前ら一体どっちの味方だ」

智葉「私はいい経験になると思うがな。ウィッシュアートは学園都市に来てから半年そこそこと日が浅い。色々なタイプの雀士と打ったほうが、あいつのこれからに繋がるだろう」

菫「ま、まあ、それはそうだが……」

憩「と、なんや、誰のどんな祈りが通じたんか。いつの間にやらゴミ手がどえらい化け方しとるで」

衣「えいすりん……気をつけろ。そやつの《砲号》は起死回生の号砲。その振動は超えられるはずのない壁の向こう側へ届く。
 そこに見えるものが全てと思って聞き流してはいけない……! その窮鼠は獅子にすら噛み付くぞ――ッ!!」

     華菜『ロン、16900だしッ!!』ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

     エイスリン『ッ!?』

849 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/24 22:26:25.46 ID:bU2yb3Go0

智葉「先ほどから一撃が重いな。さすがは元《爆心》メンバー。《ドラゴンロード》、《ハーベストタイム》、《約束の鍵》、《導火線》と、全員が全員とも高火力型のレベル4以上で構成されたあのチームにおいて、
 ただ一人、レベル0ながらに、しかも天江の支配下にありながら、同等の火力を見せつけた《砲号》――池田華菜。侮るなかれだな」

菫「白糸台の《生ける伝説》――全てを無に帰す《グラウンドゼロ》。公式戦で《一試合一人一役満》という白糸台史上初の快挙を成し遂げた五人のうち、唯一、能力に拠らない役満を和了った雀士か……」

憩「ま、そんな大爆発軍団に勝ったウチら《悪鬼羅刹》こそ、本当の伝説ですけどねー。な、衣ちゃん?」

衣「無論だっ!」

菫「しかし、今の一撃で、ウィッシュアートの《一枚絵》は描き直しを余儀なくされたか」

智葉「なに、あいつ、それすら楽しんでいるようだぞ。子供のようにはしゃいでいるのが、モニター越しにもよくわかる」

憩「エイさんはホンマ天使やわー」

850 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/24 22:28:45.84 ID:bU2yb3Go0

菫「そうだな。荒川や天江の連荘より、あいつのそれのほうが、幾分マシだ」

憩「菫さんっ!? それはどーゆー意味ですか!!」ガタッ

智葉「諦めろ、荒川。お前は天使にはなれん」

憩「もーっ、ガイトさんには聞いてませんー!!」

     エイスリン『ロン、2000♪』

     友香『でっ……はい』

憩「ど、どこがちゃうんやろ……エイさんの連荘かて悪魔的なはずやのに……!!」

衣「けい、邪魔だ。画面が見えない」

     エイスリン『ツモ、700・1300♪』

851 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/24 22:33:23.35 ID:bU2yb3Go0

 ――《夜行》控え室

藍子「天使様さっきから和了り過ぎーぃ!!」

利仙「留まるところを知りませんね、ナンバー7」

絃「さすが《最多》の大能力者……白糸台最高の和了率を誇る雀士だな」

いちご「あっ、とか言っちょるそばからまた!!」

     エイスリン『ツモ、1300・2600♪』

利仙「親を蹴られてから疾風怒濤の三連続和了。あっという間に二度目の親番が回ってきました」

絃「《劫初》のチーム点数がまた20万の大台に乗ったな」

いちご「もこは……もこは大丈夫なんかの。さっきの振り込みが尾を引いとらんとええが……」

藍子「あのブツブツ具合からして、結構気にはしているみたいです」

いちご「やっぱりか!」

利仙「能力が破られるのは、精神的にかなりダメージがありますよね。私も、かつて神代さんに筒子を丸々奪われたときは、どうしようかと思いました」

絃「しかも、もこの能力が破られるのは、これが正真正銘初めてなのだろう?」

852 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/24 22:36:20.91 ID:bU2yb3Go0

藍子「はい。でも、大丈夫です。うちのもこは強い子ですからっ!」

いちご「じゃが……わりゃあ今気にしとるって」

藍子「気にしてるも気にしてる。私もあんなもこは見たことがないです。あいつは今――かつてないくらい燃えているっ!!」

利仙「あらあら」

藍子「あれから一回も和了れてないのは、たぶん、ウィッシュアートさんを狙っているからだと思います。
 もこのやつ……取り返すまでは他家も点数も無視するつもりですね。よっぽど悔しかったんでしょう」

絃「しかし、あのウィッシュアートが隙を見せるだろうか……」

     エイスリン『リーチ♪』

いちご「お、親っパネ!? 裏が乗ったら親倍も見える……またえらいの張りよったな……!!」

利仙「ダメ押しのつもりなのでしょうか、それとも――」

絃「ウィッシュアートが……もこの要求に応えたとでも?」

藍子「どっちにしろ、もこ的にはここが勝負所みたいです。けど、これは……!?」

いちご「なんじゃ!?」

853 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/24 22:49:28.86 ID:bU2yb3Go0

藍子「いや、あのもこが、捨て牌に迷ってる……!? 今までずっと問答無用で切り込んでたのに……!! ウィッシュアート先輩の裏をかこうとしてるんだ!! すごい、すごいよっ、もこ!!」

     もこ『リーチ……///////』

絃「よし……通ったッ!!」

いちご「親リーの一発目に……! さっきの振り込みは頭にあるはずなのに、よくあんな強いところを切れるの……!! それでこそ、もこじゃ!!」

利仙「あらゆる危機を好機に変える。実に対木さんらしい一打です」

藍子「大能力者《レベル4》同士の純粋な能力勝負。これで打ち負けたら、経験の少ないもこには打つ手がなくなる。
 ウィッシュアート先輩の親番を止めるという意味でも、もこの今後のためにも、どうか……! 《神様》が本当にいるなら、今はもこに勝たせてやってくださいっ!!」

いちご「それなら心配要らんじゃろ!! あいつは《神風》――天運を味方につけちょるッ!!」

絃「そういう意味では《天使》たるウィッシュアートも神とやらに近しい存在だがな……! ええい、だからどうした!! もこ、そこだっ、撃ち落とせ!!」

利仙「対木さんなら……きっと――」

藍子「いっけーっ、もこーーーーーーー!!!」

     もこ『ロン……8000ッ/////////』

     エイスリン『♪♪』

藍子「きゃー!! やっぱあんたは最高だよーっ、もこーーーーー!!!」

854 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/24 22:54:24.67 ID:bU2yb3Go0

 ――対局室

 南三局・親:華菜

友香(いやいやいやいや……参った。大参りでー。前半戦にも増してウィッシュアート先輩は暴れたい放題。かと思えば、他の二人も負けじとやり返して……)タンッ

 南家:森垣友香(煌星・59000)

友香(気付けば私だけ焼き鳥のまま南三局。和了回数にして、ウィッシュアート先輩7、池田先輩1、対木さん1、私0。色々な意味で、このままでは終われない)タンッ

友香(合同合宿の最終日もそうだった。石戸先輩と亦野先輩と原村さん相手に、自力でまともに和了れたのは一回だけ。そういえば、この面子も三年生一人、二年生一人、一年生一人が相手か……)タンッ

友香(あれから強くなったと思ってたのに、とんだ思い上がりだったんでー。自信失くすよホント……まあ、やる気はむしろ出てきたけどねっ!!)

友香(私が強くなればなるほど、《煌星》も強くなる。そして……私はまだまだ弱いまま。それってつまり、これからもっと強くなれるってこと!!)

友香(明日一つ強くなるために、今日一つ頑張る。この状況、この絶望を、いつかの希望に変えてやる……!! そのためにも、私は最後まで諦めないッ!!)

友香「ツモでー……2000・3900!!」ゴッ

エイスリン「♪」

友香(さあ、ラス親ッ! 諦めなければチャンスは掴めるはずでー! ここまで頑張ってくれたみんなのため、最後に控えている煌先輩のため……できることはきっとある――!!)

もこ:89700 エイ:193700 華菜:49700 友香:66900

855 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/24 23:01:36.82 ID:bU2yb3Go0

 ――《煌星》控え室

淡「ファイトぉー! ユーカー!!」

桃子「でー子さん、頑張ってっすーっ!!」

咲「友香ちゃん……っ! 負けないで!!」

煌「……ここまで、ですかね」

     エイスリン『ツモ、1000・2000♪』

『副将戦終了ーッ! エイスリン=ウィッシュアート、ここで本日最高の和了率七割を達成!! 他家も奮闘しましたが力及ばず。トップの《劫初》がさらにリードを広げる展開となりました!!』

煌「さて、と。私は友香さんを迎えに行って参ります。そのまま対局室に向かうので、試合が終わるまで、ここには帰ってきません。皆さん、何か、ありますか?」

咲「煌さん、頑張ってください!」

煌「はい」

桃子「応援はお任せくださいっす!!」

煌「よろしくお願いいたします」

淡「キラメ……!」

煌「はい、なんでしょう」

淡「私はキラメが勝って帰ってくるのを信じてるよっ! 待ってるからね……キラメッ!!」

煌「有難うございます。やる気が100倍になりましたよ。では、行って参ります……」

 ――――

856 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/24 23:07:22.20 ID:bU2yb3Go0

 ――――

華菜「うにゃー……」

 三位:池田華菜・-6500(新道寺・48700)

仁美「なーにシケた面しとんね、《砲号》」

華菜「え、江崎先輩っ!? いつの間にだし!!」

仁美「全体的にはまだまだやったばってん、よかとこもいっぱいあったと。
 巴も控え室できゃーきゃーはしゃいどった。胸ば張って帰りんしゃい」

華菜「で、でも、また二位との差が開きましたし……。ホントお役に立てなくて……」

仁美「やけん、気にすんな言っとうと!」ワシャッ

華菜「ちょ!? ちょ、江崎先輩っ!?」ニャニャニャ

仁美「池田のおらんやったら、私らはクラス選別戦も戦えんやった。こん一軍決定戦《ファーストクラス・トーナメント》やって……予選ば突破できただけでん大健闘。
 哩のいなくなったときはどうなることかと思ったばってん、最後の最後によか夢ば見せてもらった。全部、あんたと巴のおかげと」ワシャワシャ

華菜「江崎先輩……」

仁美「そいけん、たった一回の負けなんて気にせんでよか。あとのことは私に任せんしゃい。よかと?」

華菜「は……はいだしっ!!」

仁美「じゃ、行ってくるけん。応援よろしくと!」

華菜「え、江崎先輩……っ!!」

仁美「ん……? なんや?」

華菜「そ、その……か、勝ってほしいしっ! 勝ってくれたら……あたし、次こそちゃんと勝ってみせるしっ!!」

仁美「ははっ、なん当たり前のことば言っとう」

華菜「にゃ……?」

仁美「こいでん私は、旧《新道寺》では哩の次に強かデジタルやった。去年のトーナメントのときは、あんたと同じ《生ける伝説》の渋谷ば抑えたこともあっ。
 ランクSの魔物か、百鬼夜行の際物か、はたまたレベル5の《怪物》か知らんばってん、二年なんかに遅れは取らんと。やけん……信じて待っとれ、池田!」

華菜「わ――わかりましたしっ!!」

仁美「そいたら……行ってくるッ!!」ゴッ

 ――――

857 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/24 23:11:06.02 ID:bU2yb3Go0

 ――――

藍子「よーすっ、もこー! いや~、なかなか大変そうだったね~!!」

もこ「」ブツブツブツブツ

 二位:対木もこ・+600(夜行・88700)

藍子「あははっ、そうだね。そーしてよ。あのチームとは決勝まであと二回も戦うことになるんだからさっ!!」

もこ「」ブツブツブツブツ

藍子「えーっ? 私? 私はなー、まっ、いつもどーり楽しんで打つだけ。なんたって、今回のトレジャーハントは、いつもの山とは一味違うっ!!」

もこ「」ブツブツブツブツ

藍子「そゆこと。今回のお宝は、山じゃなくて海にあるのよ。深ーい深ーい海の底。くーっ、一度打ってみたかったのよねーっ、天江さんとは!!」

もこ「」ブツブツブツブツ

藍子「えっ? ああ、大丈夫。それなら心配ないよっ。いちごさんにブツブツ辞典貸してきたから。そろそろ私以外にも、もこと喋れる人いないと困るもんねー」

もこ「」ブツブツブツブツ

藍子「うん、決勝までは長いから。その頃には、みんな、もこと普通にお喋りできるようになってるかもねっ!!」

もこ「//////」ブツブツブツブツ

藍子「あっはっはっ! 相変わらずシャイだねー、もこは。じゃ、まーっ、わいわい気楽に待っててよ。応援ヨロシクーぅ!!」ゴッ

もこ「」ブツブツブツブツ

 ――――

858 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/24 23:15:25.55 ID:bU2yb3Go0

 ――《劫初》控え室

エイスリン「ッテ、ダレモ、ムカエニ、コーヘンノカーイ!!」ババーン

 一位:エイスリン=ウィッシュアート・+18800(劫初・197700)

菫「おい、誰だ。またウィッシュアートに変な言葉を教えたのは」

智葉「この方言は荒川だろう」

憩「濡れ衣ですわっ!!」

衣「言い訳とは見苦しいぞ、けい」

エイスリン「コロタン、イェ~イ♪」

憩「あっ、さては衣ちゃんやな! ウチに罪を被せてなんのつもりや!!」

衣「くっ、バレたか……!」

菫「というか、ウィッシュアート、お前、天江のことをそんな風に呼んでたんだな」

エイスリン「オウヨ、マジカル☆スミレ!」

菫「…………誰だ、ウィッシュアートに変な言葉を教えたやつは。正直に言えば、シャープシュート(物理)は勘弁してやるぞッ!!」ギロッ

憩「こ、衣ちゃんとちゃいますか……?」

衣「な、なな、なんのことだ……?」

859 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/24 23:21:18.81 ID:bU2yb3Go0

智葉「おい、ウィッシュアート、私の名前を呼んでみろ」

エイスリン「? ダレダコノ、モブメガネ」

智葉「よーし屋上行くぞー」

憩「ちょーちょーちょー! 大将戦、これから大将戦ですよー!!」

衣「ま、屋上で遊びたいなら遊んでいればいい。衣も高いところは好きだっ! さっさと有象無象を打ち滅ぼして追いつくぞ!」

エイスリン「バカナ、コロモハ、タカイ、トコロガ、スキ!」

衣「衣はバカじゃないっ!」

憩「菫さーん! 収拾つけてー!!」

菫「コホン。では、天江。最後は頼んだ」

衣「頼まれたーっ!」

憩「行ってらっしゃ~い」

智葉「好きなように打ってこい」

エイスリン「キョウハ、ナンテン、トルノヤラ!」

衣「貴様ら四人分より多く稼いできてやるぞっ!! では、行ってくるッ!!」ゴッ

 ガチャ タッタッタッ

憩「いやー、今のが冗談に聞こえへんのやから、さすが衣ちゃんやわー」

菫「とは言え、何があるかわからないのが麻雀。結果が出るまでは安心できん。
 が、それはそれとして……誰なんだ、私の《忌み名》をウィッシュアートに教えたやつは……!!」

エイスリン「♪」チラッ

智葉「………………」

憩「えっ、まさか!?」

菫「智葉、ちょっと、試合終わったら屋上に行こうか……」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 ――――

860 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/24 23:25:47.24 ID:bU2yb3Go0

 ――――

友香「き、煌先輩……」

 四位:森垣友香・-12900(煌星・64900)

煌「友香さん、お疲れ様です。最後までよく頑張りましたね。すばらでしたよ」

友香「うっ……うぅぅぅうぅぅ……!!」ポロポロ

煌「大丈夫です。友香さんの頑張りは、決して無駄にしません」ギュ

友香「煌せんぱあああああい……!!」ポロポロ

煌「あとは私に任せてください。この《煌星》の大将に――」

友香「うぅ、き、煌先輩……」

煌「不謹慎かもしれませんが、私、今、少しだけ嬉しいのです。やっと……やっと皆さんのお役に立てるときが来たかと思うと……」

友香「そんな……! 煌先輩は、いつも私たちをリードしてくれてました! 対戦相手の分析も、対策も、練習も。煌先輩がいなかったら、私たちは星になれなかったんでー!!」

煌「いえいえ、皆さんの力があってこそですよ。私はそれを後押ししたに過ぎません」

861 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/24 23:32:02.04 ID:bU2yb3Go0

友香「あ、あの、煌先輩……っ」

煌「友香さん、そんなに辛そうな顔をしないでください。大丈夫ですから」

友香「でも、私が――」

煌「反省会は、試合が終わってから。次にどうやって戦うかも、そのとき一緒に検討しましょう。
 心配は無用です。対局を見ていて気になったことは、既に電子学生手帳にメモしてあります。ほら、この通り」コノデンシガクセイテチョウガメニハイラヌカー

友香「煌先輩……っ!!」

煌「わかっていただけましたか? ここで敗退する気など、私にはさらさらありません。友香さんはいかがです?」

友香「わ……私もっ! 次は勝ってみせるんでーっ!!」

煌「頼もしい。その意気です。では、よろしければ私は行きますね。応援、よろしくお願いいたします」

友香「煌先輩……勝ってきてくださいでー!!」

煌「ええ、私は負けませんよ。ここから優勝までの一本道……もし、そこに私たち以外の誰かが割り込もうとしてきても、そんなことは、この私が《絶対》に許しません」ゴ

友香「煌……先輩っ!!」

煌「相手が誰かなど関係ない。私たちの行く手を阻まんとする雀士は、一切合切、この学園都市に七人しかいないレベル5の第一位……《煌星》大将・花田煌が――」ゴゴゴゴゴ

友香「っ!?」ゾワッ

煌「《通行止め》しますッ!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 ――――

862 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/24 23:38:39.66 ID:bU2yb3Go0

 ――――

衣(ふっふふーん、今日は何万点取れるっかなーっと♪)タッタッタッ

衣(今年も去年の二回戦と同じことをしてみようか。ふふふ……塵芥どもの生気を失った顔が目に浮かぶようだ。きっと想像もしていまい。自分たち全員が同時に




                            え




         な







                    こ





                                 ?

衣「~~~~~~~っ!!!?」

衣(な、なんだ、今のは!? 意識が急に飛びかけたぞ……? 何者かのプレッシャー?
 否、これほどの妖気――プリンで大憤怒したときのこまきをも超えていたぞ……!! そんな人間がこの世に存在するのか!?)

衣(この会場……何か、とんでもないのがいる――ッ!!?)ゾワッ

 ――――

863 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/24 23:41:50.81 ID:bU2yb3Go0

 ――対局室

藍子「(さあ、ついに始まる……! ここまで点棒を守ってくれたみんなのために、気合入れていくぞーっ!!)よろしくでーすっ!!」

 南家:百鬼藍子(夜行・88700)

仁美「(二位までちょうど四万点。親で役満ば和了れば一発逆転やけど、天江衣のおるこん場……点数関係なく、まずは和了ることば優先すっと)よろしく」

 北家:江崎仁美(新道寺・48700)

衣「(さっきの……少なくとも、大将戦の面子にはいないように感じる。となると、衣と同じランクSという《煌星》の二人のどちらかか……?
 だが、やつらの対局はモニターで見ていた。こまきの全力を超えるほどとは思えなかったが――)……よろしく」

 西家:天江衣(劫初・197700)

煌「よろしくお願いします」

 東家:花田煌(煌星・64900)

『大将戦前半……開始ですっ!!』

871 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 19:02:13.62 ID:uRvGT8n10

 東一局・親:煌

衣(ひとまず……先ほどのことは置いておくか。あれほどの力を持つ者ならば、遅かれ早かれその正体を現すはず。
 今は、目の前の玩具どもにどんな悪夢を見せてやるかを考えなくては。まずは……挨拶代わりに一発――)

衣「ロン」ゴッ

煌「すばっ!?」

衣「……12000」パラララ

煌「はい……」チャ

仁美(綺麗な手ば張っとう……まだ山の半分も行っとらんのに、リーチとドラに頼らずそん打点。こっちはやっと二向聴やったのに)

藍子(相変わらず速いのに高ぁーい! これで肩慣らしどころか準備体操でもないってんだから、化け物が過ぎるよね~)

衣(ふん、他愛ない。これでは予選の決勝と大差ないぞ。雑魚なら雑魚なりにもっと衣を楽しませろ!!)

煌:52900 藍子:88700 衣:209700 仁美:48700

872 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 19:06:38.04 ID:uRvGT8n10

 東二局・親:藍子

藍子(さてさて。まずは一回目の親。大事にしたいところだけども……今回は不幸なことに天江さんの上家に座っちゃったからなー。
 私が親のときは、天江さんが海底。出和了りに気をつけつつ海底を阻止しなきゃいけない)タンッ

藍子(ま、ズラすにしても先に和了ってどーにかするにしても、テンパイしないことには始まらない。
 っていうか、私の超音波《ソナー》だって、効果は《自分の和了り牌が見える》だから、テンパイしないと使えないわけだしねー)タンッ

藍子(天江さんのことは一年の最初のクラス対抗戦のときから知ってる。あの龍門渕さんの親族で、あの超能力者の松実さんを脅威とも思わず、あの荒川さんや神代さんと遊び感覚でやりあえる、化け物中の化け物)タンッ

藍子(表に出回ってる牌譜は、クラス対抗戦と去年の一軍決定戦《ファーストクラス・トーナメント》のものだけだけど、それで十分凄さが伝わってくる。
 《三強》で最も好戦的で攻撃的な打ち筋……《修羅》の異名も納得ってもんだよね)タンッ

藍子(今回も、ほっとくと天井知らずで点棒を積み上げそう。学園都市で最も悪名高い全体効果系の大能力――《一向聴地獄》。他家の向聴数と打点がわかる感知系の大能力――《掌握》。
 トドメに、海底が必ず有効牌になる自牌干渉系の大能力――《満月》……)タンッ

藍子(どうしてこう、才能ってのは偏って発現するもんかねぇ。《煌星》の大星さんや宮永さんもそうだけどさ、ランクSでレベル4のマルチスキルなんて、本当に、《牌に愛された子》としか思えないわ)タンッ

873 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 19:09:04.72 ID:uRvGT8n10

藍子(ま、ないものを羨んでも仕方ないけどねー。私は私なりに楽しむよ。
 なーに、こっちは感知系能力一つで個人戦を生き抜いてきた。その経験が、私の武器。これが有象無象のありったけ……喰らえるものなら喰らってみろ……!!)タンッ

藍子(さーて、テンパイしたよっ!! これもあなたの思惑通りなのかな、天江さん。細かいことまではわからないけど、張ってしまえばこっちのもの!
 さあ、私のお宝――和了り牌はどこにある? 探知開始……超音波《ソナー》ッ!!)ゴッ

藍子(ふむふむ……? これはまたいい感じに抱えられてるなぁ。出してくれれば有難いけど、たぶん面子に使われてるんだろうなー。
 となると、私の手に入りそうなのはアレか。これはこれは……また随分と深くに眠っていること……)

藍子(オーケーオーケー。落ち着いていこう。もっと手堅い待ちが来たら、そっちに変えてもいいしね。ひとまずはこれで様子を見るよっ!)タンッ

874 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 19:15:07.44 ID:uRvGT8n10

 ――十六巡目

仁美(百鬼……中盤からずっとツモ切りの続いとう。張っとうと見てよかか。しかも、海底親っ被りコースかもしれんのに、全然鳴けるところば切ってこん。何か勝算のあっとやろか……?)タンッ

藍子(何度かズラせるタイミングはあったけど、結局ここまで来ちゃった。天江さんは門前のまま。海底狙いってことだと思うけど……いいのかな?
 このままだと私、次巡、あなたが海底牌をツモる直前に、ラスヅモで和了っちゃうけど……?)タンッ

衣「……カン」パラララ

藍子(げっ……それマっジ――ッ!?)ゾワッ

仁美(海底直前に大明槓……? 上家から鳴いたけん、海底コースに変わりはなかばってん、門前のままならリーチ一発ば狙えたやろうに。なぜわざわざ点数ば下げるような真似を――)

藍子(私のお宝を横取りする気なの!? いや……そっかっ! 深いところでの和了りをチラつかせることで、私に余計な動きをさせないようにしてたんだっ!!
 ギリギリまで鳴きの入らない場を維持して、最後の最後にやってくれる……。けど、これでリーチも一発もない。ドラも大半が見えてるし、大明槓しといて対々三暗刻ってこともまずありえない。
 晒された牌と超音波《ソナー》で見えた情報から推測すれば、断ヤオや染め手でもないはずだから、海底赤一とか、それくらいかな? よかった……比較的被害は少なそう――)

衣「」クルッ

藍子(ってーぇ!? ちょ――後めくりのドラが……!!)ゾワッ

仁美(カ……カンドラモロやと――!?)ゾクッ

衣「」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

875 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 19:19:59.94 ID:uRvGT8n10

仁美(ズラせるとは思わんが……一応、それらしいところば出しとくか)タンッ

藍子(うーん、これはなかなかのなかなかなのかなー!!)タンッ

衣「ツモ、海底ドラ四赤一……3000・6000ッ!!」

仁美(海底以外に役のなか手……そん手で大明槓ばしたんか。私ない一生ありえなか打ち方と)

藍子(ってゆーか、私の超音波《ソナー》で見えてた牌が《上書き》されてるんだけどーっ!! こっちだって一応大能力《レベル4》相当の強度があんのよ……!?
 滅多なことがない限り、見えた牌が違ってるなんてことはない。それを易々と塗り替えてくれちゃってまぁー。
 もしかして、こうやって力の差を見せ付けるのも狙いだったり? うーん、天江さんの力を軽く見過ぎてたかな。この人、明らかに一年生の頃より強くなってる……!!)

衣「さあ……衣の親番だな」ゴッ

煌:49900 藍子:82700 衣:221700 仁美:45700

876 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 19:22:57.00 ID:uRvGT8n10

 東三局・親:衣

衣「」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

仁美(二位との差は詰まったには詰まったばってん……この魔物ばなんとかせんと、にっちもさっちもいかん)タンッ

衣「ポンッ!」タンッ

仁美(一巡目から鳴いてきた? いや、私はツモの増えるけん歓迎やけど……)タンッ

煌「」タンッ

衣「ポン……!!」ゴッ

藍子(ちょっ、ツモらせてー!!?)

仁美(なんのつもりと……)タンッ

煌「」タンッ

藍子(ふあっ! やっとツモれたーっ!!)タンッ

衣「それもポンだッ!!」タンッ

仁美(さ、三副露!!)

藍子(激しく恐いんだけどー……!?)

衣「」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

仁美(くっ……これは、いかるか……?)タンッ

衣「ロン――!!」パラララ

仁美(っ!? こ、こいが……ランクSの魔物――ッ!!)

衣「ダブ東白対々赤一……18000」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

藍子(配牌のあと一度もツモらずにインパチって……!! さっき海底を和了ってた人間のすることかぁーそれ!?)

仁美(緩急の揺さぶりの激し過ぎる……!! 対応もなんもなか。頭ば使って考えようにも、こうも心ば引っ掻き回されっと、そいもままならん!!)

衣「一本場ッ!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

煌:49900 藍子:82700 衣:239700 仁美:27700

877 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 19:27:31.19 ID:uRvGT8n10

 ――《劫初》控え室

憩「卓上に血の雨が降っとんでー」

智葉「これでも、本人的には軽く流している程度なのだろうな」

菫「去年、理事長が『照の打点は低い』と評していたのを、私は『何をバカな』と思った。が、天江衣という存在を知って、嫌でも納得されられたよ。高火力雀士とはすべからくこうあるべきなのだ、とな」

エイスリン「ヒャクテンボウノ、ソンザイイギ!!」

憩「積み棒で使いますやん」

     仁美『ロン……3900は4200!』

     藍子『うぇっ!?』

菫「粘るな……《新道寺》。天江の親を蹴るとは」

智葉「後には退けんからな。藁に縋ってでも和了るしかないんだろう。だが――」

憩「関係ないんや。衣ちゃんには」

エイスリン「テンボウガ、ゴミノヨウダ!!」

     衣『ツモ、2000・4000ッ!』

878 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 19:29:27.18 ID:uRvGT8n10

 ――《新道寺》控え室

友清「そいな……!! 江崎せんぱいがやっとの思いで和了った点棒が、親っ被り一発でパーとですかー!?」

美子「よう見ときんしゃい……あいがランクSの魔物と」

華菜「天江のやつ、間違いない。去年より強くなってるし」

巴「荒川さんや姫様、或いは大星さんや宮永さん……《三強》としてもランクSとしても、天江さんは誰よりも《魔物》って感じがするよね」

     衣『ロン、12000ッ!!』

     藍子『はい……』

879 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 19:34:25.04 ID:uRvGT8n10

 ――《夜行》控え室

     藍子『ツモっ! 1300オール……!!』

絃「江崎も藍子も、天江の支配下ではザンクを一つ和了るのがやっとか」

利仙「実際、どうなのでしょう。《一向聴地獄》を掻い潜って、どうにかテンパイ。そこから単騎待ちの張り替えを繰り返してのツモ和了り。
 一見して、百鬼さんが天江さんの支配を打ち破ることに成功したように思えます。ですが――」

もこ「」ブツブツブツブツ

いちご「えー……っと、『それすらも、大いなる流れの、一部』……? ど、どういうことじゃ?」

     衣『ツモ、2100・4100ッ!!』

絃「……江崎のときと同じだな。やっとの思いで和了っても、あっという間にその分を毟られる」

利仙「狙ってやっているのでしょう。とても同じ人間とは思えません……」

もこ「」ブツブツブツブツ

いちご「えっと……ああ、そうじゃなっ! われの言う通りじゃ、もこ!!」

絃「なんと言っているんだ?」

いちご「『それでも、藍子ちゃんは、大丈夫』……じゃと!」

利仙「対木さんが言うなら……心配は要らないのでしょうね」

絃「だな」

いちご「うおーっ! 藍子ーっ!! 魔物がなんじゃー!! われの底力を見せちゃれーっ!!」

もこ「」ブツブツブツブツ

880 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 19:36:24.72 ID:uRvGT8n10

 ――対局室

 南三局・親:衣

藍子(うおいおいおい……っ!! 洒落にならないよーっ!? 一人浮きで七万点近く稼ぐとか、アンビリーバボーなことしてくれるねー、この人っ!!)タンッ

 北家:百鬼藍子(夜行・64300)

衣「」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 東家:天江衣(劫初・266700)

藍子(三位・四位との点差はほぼそのままで、二位キープはできてるから、チームとしては現状維持で問題ないんだけどさ。やられっぱなしってのは気に入らないのよーぅ!)タンッ

藍子(いいよ……天江さん。点棒はくれてやるッ!! その代わり、あなたの高そーなプライドだけは――全力でボッコボコにしてやっからさーっ!!)タンッ

藍子(うしっ――!! 張ったァ!!)

 藍子手牌:四五六七八九②③④⑤⑥⑥⑧ ツモ:⑥ ドラ:五

藍子(天江さん……どっちが先にお宝をゲットできるか――勝負ッ!!)ゴッ

881 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 19:41:25.10 ID:uRvGT8n10

 ――《夜行》控え室

利仙「いよいよ超音波《ソナー》の本領発揮ですか」

 藍子手牌:四五六七八九②③④⑤⑥⑥⑧ ツモ:⑥ ドラ:五

絃「藍子のあの手……二・五筒切りで七・八筒待ちになるから、まず七・八筒の在り処がわかる」

いちご「八筒切りじゃと一・二・四・五・七筒の五面張……こっちも合わせると、筒子の在り処がほぼ全てわかるの」

もこ「」ブツブツブツブツ

いちご「……っと、そうじゃな。それだけ見えちょれば、自ずと三・六・九筒の在り処も見えてくるっちゅーもんじゃ」

利仙「超音波《ソナー》の網に、筒子が引っかかったということですね。と、六筒を切りましたか。テンパイに取らないとは」

 藍子手牌:四五六七八九②③④⑤⑥⑥⑧ 捨て:⑥ ドラ:五

絃「藍子にしか見えない道があるのだろう」

     藍子『チーッ!』

 藍子手牌:四五六七八九②③④⑤/(⑦)⑥⑧ 捨て:⑥ ドラ:五

いちご「鳴いたっ!? じゃが、これじゃと役ナシの形式テンパイ。何をするつもりじゃ、あいつ……!!」

もこ「」ブツブツブツブツ

いちご「『騒ぐな、今にわかる』……? もこ、そりゃどういう――」

利仙「……なるほど、これは面白い」

 藍子手牌:四五六七八九②③④⑤/(⑦)⑥⑧ ツモ:⑤ ドラ:五

絃「この五筒をツモりたいがためのズラしだったか……!! これで、藍子に見える牌の種類が倍増するッ!!」

882 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 19:46:14.25 ID:uRvGT8n10

いちご「え……っと、ほうか!! 役ナシじゃが形は和了っちょる!! ここから何を切ってもフリテン――つまり、切った牌が和了り牌になる!! っちゅーことは……」

利仙「百鬼さんの今の手牌……そこに含まれている全ての牌の在り処が、たちどころにわかるということですね」

絃「加えて、六・九萬切りで三萬も和了り牌になる。そこにさっきの分も合わせると」

いちご「三~九萬、一~五・七・八筒――今の藍子には、十四種類の牌が卓上のどこにあるか見えちょるのか!!」

利仙「百鬼さんから普通に見える範囲も含めると、萬子と筒子の位置はほぼ全て把握したといっていいでしょう」

絃「あとはひたすらに計算だな。藍子曰く、似たようなことを荒川がやっているらしい。山牌と他家の手牌を見透かし、一定の手順を踏むことで、場を自分の思い通りに動かしているのだとか」

いちご「あの《三強》の荒川の真似事ができるなら、同じ《三強》の天江相手にも、どうにかなるかもしれんの!!」

利仙「もっとも、さすがに荒川さんほど一瞬で計算できるわけではないようですが……」

絃「なに、心配は要らないさ。フリテン上等の和了り拒否をすることで、より大きな和了りへのルートを探知するのは、藍子の十八番。
 今に計算を終え、手に入れるだろう。あいつの言う――《宝の地図》とやらをな!」

883 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 19:54:38.09 ID:uRvGT8n10

     藍子『っ!』タンッ

いちご「長考の末に五筒切り……! 意味はよくわからんが、見えちょるんじゃろ!! しゃー、かましたれーっ!! 藍子ー!!」

     衣『ポンッ』

     煌『!』

利仙・絃・いちご「っ!?」ゾワッ

もこ「」ブツブツブツブツ

いちご「そ、それくらいはちゃちゃのんもわかっちょる! これで天江が海底コース……!!」

絃「いや、しかし、天江が鳴いたのはドラの五萬――藍子にはこのポンが予測できていたはずだ」

利仙「ええ、それが証拠に、あの手からノータイムで九萬を残しました」

 藍子手牌:五六七八九九②③④⑤/(⑦)⑥⑧ 捨て:四 ドラ:五

いちご「わ、わけがわからん!!」

絃「大丈夫……藍子を信じろ……!!」

     藍子『ポンッ!!』

     衣『――!?』

いちご「おおっ!! 天江から海底を奪いよったッ!!」

 藍子手牌:五六七八②③④/九九(九)/(⑦)⑥⑧ 捨て:⑤ ドラ:五

     衣『ポンッ!!』

いちご「ってー!? 間髪入れず奪い返されよったぞ……!?」

利仙「落ち着いてください、佐々野さん。天江さんが鳴いたのは既に超音波《ソナー》で探知済みの五筒です」

絃「これも計算通りというわけだなっ!」

もこ「」ブツブツブツブツ

いちご「も、もう何がなんじゃかわからんが……とにかく頑張れーっ!!」

884 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 20:04:37.94 ID:uRvGT8n10

 ――対局室

衣(こいつ……ッ!!)ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

藍子(まだまだぁー! このルートも《宝の地図》に載ってるよっ!!)

 藍子手牌:五六七八②③④/九九(九)/(⑦)⑥⑧ ツモ:④ ドラ:五

藍子(ランクS……天江さん。その支配力は大したもんだよ。けど、お宝の独り占めはよくないと思うんだ――)タンッ

 藍子手牌:六七八②③④④/九九(九)/(⑦)⑥⑧ 捨て:五 ドラ:五

衣(ここでドラ切り……? この感じ、けいと打ったときのそれに近い。何か、衣とは違うやり方で、場を自分のものにしようとしている――)タンッ

藍子「ポンッ!!」

衣(な、んだと……!?)

 藍子手牌:七八②③/④④(④)/九九(九)/(⑦)⑥⑧ 捨て:六 ドラ:五

藍子(近付いてきたよ、海の底――! 真っ暗な深海に眠るお宝……私の和了り牌ッ!)

 藍子手牌:七八②③/④④(④)/九九(九)/(⑦)⑥⑧ ツモ:八 ドラ:五

衣(くっ、ズラせない――!? このままでは……!!)

 藍子手牌:八八②③/④④(④)/九九(九)/(⑦)⑥⑧ 捨て:七 ドラ:五

藍子(っしゃあああー!! お宝げーーーーっとォ!!)

藍子「ツモッ! 海底のみ、300・500!!」ゴッ

 藍子手牌:八八②③/④④(④)/九九(九)/(⑦)⑥⑧ ツモ:① ドラ:五

衣(こ、衣の親が流された!? その上で海底も奪っていくとは――こいつ……生猪口才ッ!!)

 衣手牌:①東東東白白白/(⑤)[⑤][⑤]/五[五](五) ドラ:五

藍子(ははっ……ゴミ手って! 安っいお宝もあったもんだよねー。けど……ま、いいんだ。
 他人から見たらゴミみたいなものでも、私にとっては金銀宝石以上の価値がある――!!)

藍子(どーですかねー? 絃さん、利仙さん、いちごさん、もこ……みんなの目に、今の私はどう映ってる……?
 不甲斐ない大将かな? ゴミを手にして笑う愚か者かな? はたまた勇敢なる冒険者かな?)

藍子(ま、どう映ってようと、私のやることは変わらないんだけどねー。不甲斐ないって言われるなら、もっと点を取れるように頑張る。
 愚かだと言われるなら、もっと賢く立ち回る。勇敢だって褒めてくれるなら……もっともっと攻めていく――!!)

藍子(みんなが見ててくれるなら……私はどこまでも強くなれるよーっ!! だから、最後まで応援よっろしくぅー!!)ゴゴゴゴゴゴゴゴ

煌:44200 藍子:65400 衣:266200 仁美:24200

885 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 20:11:10.31 ID:uRvGT8n10

 ――《劫初》控え室

菫「百鬼が海底を奪ったか」

智葉「何の確率干渉もなしに、場の支配において天江を上回るとはな。あんな真似は荒川くらいしかできんと思っていた」

憩「百鬼さんの能力は、やり方次第でウチ並みの探知性能を発揮しますから」

エイスリン「コロタン、クヤシソウ、マジウケル!」

菫「他家にとっては笑えないオーラスになりそうだがな……」

     衣『』ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

智葉「やっとエンジンが掛かってきたか」

憩「夜が深まってきましたからねー」

エイスリン「ツキガ、ツキヲ、ヨブ!」

憩「おっ、うまいこと言わはりますねっ! ほな、這いよる夜は、牌よく寄るっちゅーことでー」

智葉「…………?」

菫「どうした、智葉? つまり、荒川は『這い』と『牌』、『夜』と『寄る』を掛けたのだぞ? 何が面白いのかはわからんが」

憩「ぐっはーぁ!?」

智葉「菫……悪いが、お前にジョークの解説をされるほど、私はユーモアに欠如していない。そうではなく、対局だ。どうにも場の様子がおかしい」

エイスリン「ンムー?」

菫「普通に《一向聴地獄》が場を支配しているように見えるが……」

智葉「ならいいけどな。荒川、下らんことで凹んでないで答えろ。百鬼の能力についてだ」

憩「うぅ……百鬼さんの超音波《ソナー》がどうかしたんですか?」

886 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 20:19:14.04 ID:uRvGT8n10

智葉「その超音波《ソナー》だが、効果は《自分の和了り牌が卓上のどこにあるかわかる》だと聞いている。
 加えて、先ほどのを見る限り、フリテンや役ナシといった形式的な和了り牌でも、その効果が適用されるようだな。が、他に副次効果はないのか?」

憩「副次効果ですか? 例えば?」

智葉「例えば……他人の《パーソナルリアリティ》と共振して、そいつの《意識の偏り》と同位相の怪音波を叩き込む――要するに《能力反射》みたいなことはできるのか?」

憩「えぇー? なに言うてはるんですか、ガイトさん。百鬼さんの超音波《ソナー》は感知系ですよ?
 あくまで牌の《存在波》と共振しやすいだけで、他人の《パーソナルリアリティ》と共振なんてできるわけがあらへんっちゅーか、できたところで全体効果系は反射できひんでしょ。
 やって、そんなことができたら、百鬼さんは感知系やのに《上書き》ができるってことになってまいますやん」

智葉「だよな。ま、言ってみただけだ」

菫「智葉……?」

智葉「とりあえず、全員、河や他家の手牌ではなく、天江の手を見てみろ」

憩「えっ?」

エイスリン「イーシャンテン……?」

菫「さっきのプレッシャーからして本気になっているはずだが……それにしては、確かに手の進みが遅いな」

智葉「五巡目くらいからずっと足踏みが続いている。何か強大な力によって、テンパイを阻まれている感じだ」

憩「まんま《一向聴地獄》やないですか」

智葉「天江の表情からも、動揺が見てとれる。恐らくは、能力の一部が機能不全を起こしているのだろう。あいつの場の支配が崩れている」

菫「あの天江の支配が……? 何が原因でそんなことになっているのだ?」

智葉「少なくとも、百鬼ではないようだな」

エイスリン「ナラ、《シンドージ》?」

菫「いや、江崎は非能力者だったはず」

憩「ほな、答えは一つしかないですやん……花田さんや」

智葉「レベル5の第一位か」

エイスリン「《ツーコードメ》……」

菫「仮にそうだとして、一体、彼女は何をしているというんだ……?」

887 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 20:24:17.97 ID:uRvGT8n10

 南四局・親:仁美

衣(おかしい……もう海底が近いというのに、手が凍りついたかのように一向聴のまま。まるで衣自身と戦っているかのようだ)タンッ

 北家:天江衣(劫初・266200)

衣(この異常事態……考えられる原因は唯一、このレベル5だ。しかし、こいつはこの半荘で一度も変わった動きはしてこなかった。なぜこのオーラスで……?)

煌「」タンッ

 南家:花田煌(煌星・44200)

衣(わからない……何かをしているのは間違いないと思うのだが、こやつ自身にはなんの変化もない。
 この局も、先刻までと同様、一向聴のまま身動きができずにいる。その様はまるでそこらの無能力者と大差ない)タンッ

衣(粛々と、何を考えている? このままでは、誰もテンパイできずにこの半荘が終わってしまうぞ……?)タンッ

衣(まあ、何もしてこないのではなく、できないだけということもあるか。
 ならば、何を恐れる必要がある。衣が衣自身の能力を打ち破れないほど無力だとでも……? 甘く見てもらっては困る――ッ!!」

衣「ポンッ!!」

藍子「っ!」ゾクッ

 西家:百鬼藍子(夜行・65400)

衣(これで衣が海底……!! 海底が必ず有効牌になる衣なら、最後の最後でこの地獄を抜けられる。なんの意図があったか知らないが、衣が貴様如きの手の平に収まると思うなよッ!!)

888 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 20:32:06.42 ID:uRvGT8n10

藍子(天江さん、やけに静かだなと思ってたけど、今回は海底狙いだったってこと……? んー、色々試してはみたんだけどなぁ。どーにもテンパイが遠いわー)

仁美(親っ被りは避けたかばってん、こがん重たか場でどげんしたらよかとね……)

 東家:江崎仁美(新道寺・24200)

衣(さあ、いざ海に映る月を撈わんッ!!)ツモッ

藍子(南無三――!!)

仁美(くっ……止められんか!?)

衣「…………っ!?」ゾワッ

藍子(えっ……? 和了りじゃないの?)

仁美(助かった、とや?)

煌「」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

衣「(こいつ――ッ!?)……ノーテンだ」パタッ

藍子「ノ、ノーテンです!(えっ? ええ?)」パタッ

仁美「ノーテン(なんのどがんなっとう……?)」パタッ

煌「ノーテン。前半戦は、これで終了ですね」パタッ

 二位:花田煌・-20700(煌星・44200)

藍子(レベル5の第一位……ひょっとして、今、何かしてたのかな?)

 三位:百鬼藍子・-23300(夜行・65400)

仁美(わからんが、ひとまず二位との点差の広がらずに一安心と。さて……この休憩中に、次の半荘ばどう戦うか考えんとな!)

 四位:江崎仁美・-24500(新道寺・24200)

889 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 20:36:07.94 ID:uRvGT8n10

衣(こんなに正体の読めない敵は初めてだ。何をされたのかもまったく見当がつかない。わかるのは、衣の支配が崩され、能力が《無効化》されたという結果だけ)

衣(だが、この感じ……覚えがないこともない。これは、確かに超能力とやらの特性だ――)

衣(あのドラ置き場と同じ。あやつも、ただただドラを独占し、他家がドラを目にすることを不可能にする――その結果だけを残す。
 確率干渉なんて生易しいものではない。やつら超能力者は、卓上《セカイ》の規律《ルール》を司る)

衣(あらゆる能力者の最上位――生路を断つ《通行止め》か。どういう能力かは目下不明だが、警戒し過ぎても仕方あるまい。
 こいつが何かをしてくるとしたら、それは《絶対》なのだ。わかっていたからといって、どうにかなるものでもない)

衣(後半戦も衣のやることは同じ。目に入るものを片っ端から粉砕するだけだッ!!)ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 一位:天江衣・+68500(劫初・266200)

 ――――

890 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 20:41:47.42 ID:uRvGT8n10

 ――《煌星》控え室

     衣『』ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

淡「……ねえ、サッキー的にどうよ。あのちっちゃいの」

咲「……正直に言っていい? 小さい頃のお姉ちゃんよりひどいよ」

桃子「そんなにっすか……」

友香「自分があの場にいたらと思うとぞっとするんでー」

咲「まあ、煌さんは比較的その手の感覚鈍いから、プレッシャーに呑まれるみたいなことはないと思うけど」

淡「支配力もそうだけど、能力も面倒そうだよね、あの《一向聴地獄》とかいうやつ。私のは配牌イジるだけだけど、あっちは海底までずーっとだもん」

桃子「っていうか、きらめ先輩、前半戦は一度もテンパイできてなかったっす」

友香「煌先輩はランクFだからなぁ。能力以外の部分ではやられたい放題。自力でなんとかするしかない。けど……見てた限り物理的に無理っぽいんでー」

淡「《通行止め》自体はちゃんと機能してるんだけどねー」

咲「ここから一体どうやって二位になるつもりなのかな……」

桃子「守りに徹してるだけじゃ、詰められる点数には限界があるっす」

友香「どこかで和了らないといけない。一発でまくるとしたら、最低でも12000の直撃が必要」

淡「二万点差、かぁ……」

891 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 20:48:17.07 ID:uRvGT8n10

咲「私がちゃんとプラマイゼロしてれば……」ズーン

桃子「私がステルスを過信しなければ……」ズーン

友香「私がリーチで打ち負けなければ……」ズーン

淡「私がちゃんとダブリー決めてれば……って!! やめやめっ!! 反省会はあと!! 今は、とにかくキラメの応援っ!!」

友香「それもそうでー! 煌先輩、ここで敗退する気はないって言ってたしっ!!」

桃子「おっ、さてはきらめ先輩、何か勝算があるっすかね?」

咲「いや、桃子ちゃん。あの煌さんがそんな細かい計算で動くはずないよ。意外と大体の感覚で動くから、あの人」

淡「確かに。でもっ、キラメがすばらなのは、それでハズさないってとこだよねー!」

桃子「能力分析のときなんか、ちょいちょいついていけなくなるときがあるっす」

友香「そうそう。咲の分析はいかにも理詰めって感じがするんだけど、煌先輩のは、途中途中で直感の飛躍があるっていうか」

咲「今回も、なんだかんだで、なんとなーく、いい感じになんとかしてくれると思う。どうやるのかはさっぱりだけど」

淡「みんなでキラメを信じよう。きっと大丈夫……! だって、キラメは私たちの大将だからっ!!」

桃子「そうっすね!」

友香「そうでーっ!」

咲「うんっ!」

淡「っしゃー!! キラメーっ!! 頑張ってー!!」

 ――――

892 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 20:49:12.29 ID:uRvGT8n10

 ――対局室

仁美「……よろしくと」

 東家:江崎仁美(新道寺・24200)

藍子「最後もよろしくーぅ!」

 南家:百鬼藍子(夜行・65400)

煌「よろしくお願いします」

 北家:花田煌(煌星・44200)

衣「よろしく……」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 西家:天江衣(劫初・266200)

『大将戦後半――開始です……ッ!!』

893 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 20:56:57.18 ID:uRvGT8n10

 東一局・親:仁美

仁美(ふぅ……始まったと。私の現役雀士としての、白糸台での最後の半荘――になるかもしれん半荘が。
 ここで負けたら、もう何かば懸けて麻雀することものうなっとやろか……)タンッ

仁美(私は、美子と同じで、就職は地元でするつもりやけん。引退して卒業ばしたら、学園都市に来る機会も少なくなっとやろな。
 普通に働いて、年ば取って……麻雀も、たまにしか打たなくなるんやろか)

仁美(白糸台高校麻雀部――学園都市……ここは雀士のための街やけん。コンビニ感覚で雀荘のあって、大人も学生も年中無休で麻雀のことばっか考えとる。
 大会も小さかのから大きかのまで毎週のようにあって、牌に触れん日は一度もなかった)

仁美(ばってん、外の世界はそんなことなか。雀荘よりカラオケやゲーセンのほうのたくさんあっ。個人で自動卓ば持っとう人もほとんどおらん。せいぜい、トッププロの対局がテレビで中継されるくらいと)

仁美(本当に……ここでの生活は楽しかった。色んな打ち方の雀士のおって、色んな能力のあって、弱かも強かも、デジタルもオカルトも、みんな卓ば囲めば対等。
 分かり合うのに言葉なんて要らんやった。半荘一回も打てば、そいだけでもう友達みたいなもんやった)

仁美(外の世界に出たら、そんなこともできなくなるんやろな。麻雀は数ある娯楽の一つ、数ある人気競技の一つ、或いは暇つぶしの一つと。
 卒業しても第一線で麻雀ば打ち続けられるんは、白糸台出身者でんほんの一握り。大半の卒業生は、麻雀とはなんの関係もなか人生ば歩んどる)

仁美(私も、きっと十年後か、二十年後か。それくらいには、麻雀のことなんかすっかり忘れて、ニュース見て政治の動向ば気にしとるのかもしれん。
 まあ、それはそれで悪かことやなか。未来の私には未来の私の幸せのあっ……)

894 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 21:01:08.71 ID:uRvGT8n10

仁美(そいけん、そいやからこそ、今この瞬間は、こん対局ば全力で楽しみたか。全力で勝ちば目指したか。
 力の差のあっとは最初からわかっとうばってん、応援してくれるみんなのためにも、手ば抜かずに打ってくれる相手のためにも、私は最後まで諦めん――諦められん……っ!!)

仁美(ああ……そりゃ諦められんやろ!!)

    ――江崎さん、受かっとったんやね、白糸台。 

 ――私、安河内。覚えとう? 地区予選の決勝で私……ああ、そいならよかった。

         ――中学の頃の借りはここで返すと。またよろしく。

  ――なあ、仁美。《新道寺》ってチームのあっとやけど……。

仁美(学園都市に来てから二年と四ヶ月。私はこの大将戦で唯一の三年と)

   ――仁美、今年はダメ元で白水さんと鶴田さんば誘ってみんか? 哩姫のおったら、一軍《レギュラー》も夢やなかと思うんよ。

       ――白水哩と。よろしくな、江崎、安河内。

    ――鶴田姫子、レベル5とです。よろしくお願いします!!

895 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 21:05:07.40 ID:uRvGT8n10

仁美(印象深か出来事ば挙げたらきりのなか……)

     ――稼ぎ負けた……っ!! 不甲斐なかエースですまん……。

         ――申し訳なかとです……取り返せませんでした……っ!!

   ――大丈夫と、哩、姫子。私と仁美でどうにかすっけん! な、仁美!?

                ――お願いします、仁美先輩……っ!!

  ――仁美ーっ!! すごかっ! 区間トップとねーっ!!

            ――あいがとな……仁美。

       ――よし、あとは私がこの副将戦で片ばつけたる……っ!!

仁美(数え切れんほどの対局ばしてきた。数え切れんほどの出会いのあった)

    ――私の副将に……? そいない、大将は姫子やとして、先鋒はどげんすっと? お前も美子も向いとうとは言い難かやろ?

         ――友清と申しますっ!! よろしくとです、せんぱいっ!!

896 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 21:08:34.14 ID:uRvGT8n10

仁美(ああ……別れもあったと――)

     ――今年の一軍決定戦《ファーストクラス・トーナメント》なんやけど……私は《新道寺》としては出れん。

   ――ま、待ってください……! そんなん嫌とっ!! 私ば置いていかんで……!!

       ――姫子せんぱい、落ち着いてくださいとです!!

  ――ちょ! さっきからなん黙っとう!! 仁美からもなんか言うてよっ!!

                  ――……さよならと。

仁美(……ばってん、それも新しい出会いのきっかけになったと)

   ――元気を出してください、江崎さん。私たちでよければ、力になりますから。

      ――白糸台の《生ける伝説》とは華菜ちゃんのことだしっ!!

仁美(本当に……! 色んなことのあったなっ!!)

               ――江崎せんぱい……っ!

      ――江崎さん、幸運を。

             ――行ってらっしゃいだし!!

  ――悔いのなかようにな……仁美っ!

897 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 21:15:00.10 ID:uRvGT8n10

仁美(今ここで諦めたら、その全部が無駄になってしまうけんッ!!)

     ――なあ、仁美……必ず、本選に行こう。

          ――行って、哩と姫子に見せたらんとなっ!

  ――私たち《新道寺》の力ば……ッ!!

仁美(ああ、わかっとうよ、美子。よーく見とれよ……っ! こいが二年四ヶ月の重み! あんたと一緒に《新道寺》の看板ば背負い続けた――私たちの力とッ!!)

仁美「ツモ……! 3900オールッ!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

衣「っ!?(なんだ、これは……ただの意地のようなもので和了りをもぎ取っただと!?
 これだけの点差を突きつけられながら、一体何がこいつの支えになっているというのだ……)」

藍子(まっじっすかー!? これ、もしかして都市伝説に聞く《三年生ブースト》ってやつ?
 いやいやっ、伝説はあくまで伝説っ! そーじゃなくて、正真正銘、これはこの人だけの力……この人が積み上げた力なんだっ!!)

仁美「(いかる……まだ戦えるっ!! ここから二位にインパチかませば二位浮上とッ!!)……一本場ッ!!」ゴッ

仁美:35900 藍子:61500 衣:262300 煌:40300

898 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 21:19:54.42 ID:uRvGT8n10

 東一局一本場・親:仁美

藍子(いやいや、大変だよー、これは。天江さんは満遍なく削ってくるし、《一向聴地獄》が終始続くなら、攻め三・守り七くらいでいけるかなーと思ってたけど、今みたいなのがもう一回来たら、さすがに危なそー……)

藍子(《新道寺》の三年生。夏の一軍決定戦《ファーストクラス・トーナメント》はこれが三回目なんだっけ。しかも、去年の準決勝では区間トップ……《新道寺》のベスト4入りの立役者だった)

藍子(私らの学年にはレベル5の鶴田さんがいたから、《新道寺》って言えば哩姫のイメージが強い。
 けど、《新道寺》は、隣のブロックの《劔谷》や《越谷》とかと同じで、同地方出身者が集まる伝統の強豪チーム。
 そこに一年生のときからメンバー入りして、鶴田さんたちがいなくなった今年も、リーダーとしてチームをここまで引っ張ってきた……)

藍子(チームを組むのもリーダーをするのもこれが二度目の私とは、経験も、トーナメントに懸ける想いも、比べものにならないんだろうなぁ……)

899 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 21:23:58.22 ID:uRvGT8n10

藍子(でもね、今のチームが好きだって気持ちとか、このチームで勝ちたいんだぞって気持ちなら、私だって負けないつもりだよ。
 私個人には来年があるけど、今の五人で大会に出られるのはこれが最後だからさ。あとがないのは……こっちも同じっ!!)

藍子(譲れないプライドとか、負けられない理由とか、死んでも一軍《レギュラー》になりたいとか……そーゆー堅っ苦しいのは、ぶっちゃけ、私はあんまないけど)

藍子(けど……それでも、だからといって、私の勝ちたいって気持ちが、偽物になるわけじゃない! ホントに本気で、私は勝ちたいよ。
 勝って、このお祭りをもっとみんなと楽しんでいたい……!! 頑張るワケなんてそれで十分でしょ――!!)

     ――藍子……私のことを覚えているか? 一つ上の霜崎絃だ。

藍子(あーっ、楽しいなぁー!! なんでこんなに楽しいんだろ!! チーム《夜行》なんて、冗談みたいな名前のチーム……! 結成したのだって、つい三ヶ月前だっていうのに――!!)

            ――私とチームを組んでくれないか?

  ――私は、白糸台での最後の夏を、あなたと共に過ごしたい。

900 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 21:27:16.19 ID:uRvGT8n10

藍子(絃さんがいきなり教室に押しかけてきたときは、びっくりしたなぁー!!)

          ――ほう、あの《神風》を? かなり変わった雀士だと聞いてるが……いや、無論、私は構わないよ。

    ――ブツブツブツブツブツブツブツブツ

藍子(もこを口説く――っていうか会話を成立させるのにも結構苦労したっけ。でも、おかげで、ぐっと仲良くなれた)

      ――四人目なんだが、私の友人に一人、とても頼りになるやつがいてな。

            ――《最愛》の大能力者……と言えばわかるか?

  ――わかりました。そういうことでしたら、喜んで。

藍子(利仙さん……絃さんが言っていた通り、麻雀も強いし、綺麗だし、大人っぽいし、パーフェクト過ぎて最初は気後れしたんだよね。でも――)

     ――ちなみに、五人目は決まっているのですか?

         ――《悪魔》も悪くありませんが、ここは一つ、佐々野いちごさんを誘ってはいかがでしょうか。

  ――ちゃちゃのんをわれのチームに……? そうか利仙が……いや、嬉しいんじゃが、本当にちゃちゃのんでええんか?

藍子(いちごさん……利仙さんがファンになるのも納得。今ではすっかり私もいちごさんファンの一人ですよっ!)

901 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 21:33:47.23 ID:uRvGT8n10

   ――藍子、その、チーム名のことなんだが……。

             ――《夜行》、なんてどうだ?

藍子(三ヶ月――あっという間だったなぁ。まるで夜行列車みたい。走り始めたときは、終着駅なんてずっと遠くにあると思ってた。
 なのに、あんまり乗り心地がいいもんだから、気付けば夢の中にいて、ふっと現実に返ると……旅の終わりがもうすぐそこに迫ってる)

藍子(けど……この列車さ、五人乗りの夜行の旅――もうちょっとだけ続けていたいんだ。もう少しだけ夢見心地でいさせてほしんだ。
 もちろん線路はどこまでも続いてるわけじゃないんだけど、それでも、ここで終点はやっぱ寂しいからっ……!!)

藍子(よーしっ、張った張った!! 役ナシだけどテンパイしたっ!! けどこれ、リーチ掛けたら出てこないんだろうなぁ。
 例によって私のツモる位置に和了り牌はないし、それに、たとえ一発ツモできたとしても安過ぎる。それじゃ前半戦の二の舞)

藍子(んー、どうしたもんか。あっ、でも、これ……? おお、そっかっ!! これならいけるかも!! ってか、むしろ積極的にいきたいっ!!
 そーだよそーだよ。このお宝をゲットできたら最高だろうなって思ってたんだっ!!)

藍子(絃さん、もこ、利仙さん、いちごさん……このお宝は、きっと私一人じゃ手に入れられなかった。
 ありがとう……! みんながくれた宝物――中身は山分けにしましょーねーっ!!)

902 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 21:39:22.25 ID:uRvGT8n10

 ――《夜行》控え室

絃「藍子がテンパイしたか。前半戦の天江を見てしまうと、素直には喜べないが……」

 藍子手牌:333456⑤⑤⑥⑥⑦⑧⑨ ドラ:二

利仙「リーチ一発ツモでも1000・2000の一本付け。次の百鬼さんの親番で、天江さんが満貫以上のツモ和了りをしてくると、それだけでパーになってしまいます」

いちご「ほいでも、和了らんよりはマシじゃろ。天江がツモる分には三位、四位との差もそこまで詰まらんわけじゃし」

もこ「」ブツブツブツブツ

いちご「『だから、いちごちゃんは、ダメなのだ』……? ってどういう意味じゃあわれー!!」

     藍子『チーッ!』

利仙「ここで喰い替え……ズラし目的の鳴きですかね。ということは、また百鬼さんにしか見えないルートがあるのでしょうか」

絃「鳴いてはリーチもできない。しかも、喰い替えだからテンパイを崩すことになる。
 さらに、有効牌を引いて断ヤオが成立したところで、場合によってはフリテンになる可能性もある」

いちご「何をするつもりじゃ……藍子。って、はあっ!? あいつ五筒を捨てよったぞ!?」

 藍子手牌:3334⑤⑥⑥⑦⑧⑨/(4)56 捨て:⑤ ドラ:二

利仙「まあまあ、佐々野さん。あたふたしても可愛いだけですよ。ここは百鬼さんを信じましょう」

いちご「ほ、ほうじゃな……。ん? 利仙、今何か変なこと言わんかったか?」

利仙「……なんのことでしょう」コホン

903 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 21:50:21.54 ID:uRvGT8n10

絃「おい、見ろっ――! なるほど、そういうことだったのか、藍子……!!」

 藍子手牌:3334⑤⑥⑥⑦⑧⑨/(4)56 ツモ:[⑤] ドラ:二

いちご「赤五筒!! ほうか……さっきのテンパイは五・六筒待ちじゃったけえ、あそこでズラせば赤をツモれるっちゅうのが見えたわけじゃな!!」

利仙「しかし、役ナシであることに変わりはありません。今のところ、百鬼さんに把握できているのは五・六筒の在り処だけ。
 彼女の打ち筋から考えられる変化として、三索・五筒・六筒の三暗刻でしょうか」

絃「必然的に赤二がつくから、断ヤオに頼らず満貫。しかも、今の手牌で三暗刻だと待ちが単騎になるから、新しい牌を引くたびに超音波《ソナー》で在り処を探知できる。藍子の得意技の一つだな」

いちご「じゃが、確か、天江は《相手の向聴数と打点がわかる》んじゃったよな……? 三暗刻で満貫となると、あの無茶苦茶な支配力で和了りを妨害されそうじゃが……」

もこ「」ブツブツブツブツ

いちご「『いちごちゃんのくせにわかった風なことを。この可愛いだけの雑魚めが』……? コラもこーっ!!!」

     藍子『♪』タンッ

絃「三索を切った!? 狙いは三暗刻じゃないのか……!!」

904 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 21:56:59.74 ID:uRvGT8n10

利仙「面白いですね。モニターで見ている味方の私たちでさえ、予測できない打牌。いかに天江さんといえども、この状況は想定外のはずです」

いちご「ほうじゃの……藍子がシャボから暗刻手にシフトしていったことは、過去にも何度かあったけえ、牌譜をよう研究しとれば対応もできたじゃろ。
 じゃが……今の藍子はちゃちゃのんたちでもわからん打ち方をしちょる!」

 藍子手牌:334⑤[⑤]⑥⑥⑦⑧⑨/(4)56 ツモ:⑥ ドラ:二

絃「さて、一周して六筒を引いたか。三索切りなら二・五索待ちになるが、どちらもほぼ場に見えている。超音波《ソナー》の旨味は少ないな」

利仙「実際に切ったのは四索……三索・五筒のシャボですか」

 藍子手牌:33⑤[⑤]⑥⑥⑥⑦⑧⑨/(4)56 捨て:4 ドラ:二

いちご「三索は全部見えちょるけえ、超音波《ソナー》で新たに増える情報もない。そもそもフリテン役ナシじゃし……まったくわけがわからん……じゃがっ!!」

もこ「」ブツブツブツブツ

いちご「ほうじゃの、もこ。こっから藍子が何かをやってくれるっちゅうのは、ちゃちゃのんにもわかる。一緒に藍子を見守っちゃろう。なっ、もこ!!」ダキッ

もこ「/////」ブツブツブツブツ

いちご「おっ? なんじゃ、照れちょるんかー? われ口は悪いが意外と初心いとこあるのー!!」ナデナデ

905 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 22:03:34.84 ID:uRvGT8n10

 ――対局室

衣(《夜行》の百鬼……先ほどから不可解な動きをしている。安手のシャボ……ズラして三暗刻を狙うかと思いきや、ごちゃごちゃと手を崩して、フリテンの役ナシテンパイだと……?)

 衣手牌:一一二二三三四[五]六七八九⑨ ドラ二

 藍子手牌:33⑤[⑤]⑥⑥⑥⑦⑧⑨/(4)56 ドラ:二

衣(まあいい……三暗刻で和了らないのなら、断ヤオ以外に変化が望めない以上、なおさらその九筒が不要になるはず。
 それに、別に貴様から和了らんでも、先ほどの鳴きで海底は衣のものになった。衣の力なら、現状の倍以上の点数で和了ることも不可能ではない。ここから貴様に何ができる――ッ!!)

藍子(とかなんとか思われてんのかなー? けどさ、天江さん、私の超音波《ソナー》をナメてもらっちゃー困るなぁ。
 天江さんの全体効果系能力は、強力な上に効果範囲もめちゃんこ広い……けどぉっ!!
 私の能力――超音波《ソナー》は、その支配領域《テリトリー》の広さだけなら、あなたの上を行くんだよー? なんたって……私の探知圏は《卓上の全て》だからねっ!!)

藍子「それだぁーっ!!」ゴッ

衣(な……に? バカな、こいつはフリテン役ナシッ!! 衣が振り込む道理はないはずでは――!?)

藍子「カンッ!!」パラララ

衣「……なっ!?」ゾワッ

 藍子手牌:33⑤[⑤]⑦⑧⑨/⑥⑥⑥(⑥)/(4)56 嶺上ツモ:? ドラ:二

906 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 22:09:13.41 ID:uRvGT8n10

藍子(天江さんの力は私の上を行く。それは、前半戦で見えてた牌を《上書き》された時点で理解したよ。
 けど、もし、あなたの支配領域《テリトリー》の外に、私の和了り牌があったら……?
 いくら天江さんの支配力が桁違いでも、力の及ばないとこまではどうしようもないよねっ!!)ツモッ

衣(こいつ……っ! 海底を奪っただけでは飽き足らず……そんな高いところまで!?)

藍子(いっやー、これは感無量だねっ!! まさか大将戦の半荘二回で、場の最深部のお宝と最頂部のお宝――二つも手に入れられるなんてっ!!)

藍子「ツモッ! 5200は5500、責任払いでよろしくーぅ!!」パラララ

 藍子手牌:33⑤[⑤]⑦⑧⑨/⑥⑥⑥(⑥)/(4)56 嶺上ツモ:[⑤] ドラ:二
 
衣(嶺上……開花だと――!?)

藍子(天江さん、もしかして私の能力を逆手に取ったつもりだったかな? でも、残念でした!
 さすがのあなたも、この試合中に私が強くなるなんて――先鋒戦の絃さんの嶺上に触発されて強くなるなんて――予想できなかったみたいだねっ!!)

衣(花天月地とは味な真似を……!! 深い海底の暗闇も、遥か嶺上の頂も、その能力が行き届かぬところはないということか。
 超音波《ソナー》なるその力、こまきに翻弄されていた去年とは比ぶべくもない――!!)

衣(この後半戦……前半戦の焼き直しになるかと思ったが、《新道寺》のも《夜行》のも大いに楽しませてくれる)

衣(良きかな良きかな……興が乗ったぞ!! 貴様らの奮迅に敬意を表し――その身も心も、跡形もなく粉塵にしてくれるッ!!)ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

仁美:35900 藍子:67000 衣:256800 煌:40300

907 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 22:13:28.23 ID:uRvGT8n10

 ――《劫初》控え室

     衣『』ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

憩「ええ感じにゴゴゴしとんなー。これは停電に気をつけな」

菫「結局、前半戦オーラスのノーテン流局はなんだったのか」

智葉「《原石》とやらがそうであるらしいと聞くし、東横の例もある。《通行止め》の能力も、後半にかけて効いてくるものなのかもしれん」

エイスリン「カンオーケイ?」

憩「せやけど、それやったら、前半のオーラスで効いたんは、そのまま後半に持ち越されるんとちゃいますか?
 ステルスさんの場合、見失ったら最後、どんなに集中しても見えへんかったですよ」

菫「二度も直撃を取っておいてよくもまあ……」

     衣『ロン、12000』

     仁美『――っ!』

智葉「……普通に和了れているな」

エイスリン「シュラガ、シュラバッテル」

908 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 22:15:28.10 ID:uRvGT8n10

     衣『ツモ、4000オール』

憩「衣ちゃんの辞書に容赦っちゅー言葉はないんやろな。勝者とか強者とかはあるんやろけど」

菫「……今のは何が面白いんだ? 荒川、すまんが解説を頼む」

憩「菫さんは『ボケ殺し』っちゅー単語を辞書で引いてください」

     衣『ロン、12300』

     煌『すばっ!?』

智葉「今度は《通行止め》からも普通に和了った? 何がどうなっている……」

エイスリン「イチマンテント、ニセンテン、バッカリ、アーガーッーテールー♪」

菫「なあ、荒川。本当に気になって仕方がない。『容赦がなくて勝者と強者がある』……何が面白いのか教えてくれ」

憩「誰かー!! 菫さんのシャープシュート(心理)止めてー!!」

909 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 22:20:51.54 ID:uRvGT8n10

 ――《新道寺》控え室

美子「仁美……っ!!」

友清「あの《魔物》さんは危険過ぎっとですっ!! 池田せんぱいはあんなのと二度も戦ったとですか!?」

華菜「自慢じゃないが、二度ともフルボッコだったし!!」

巴「本当に自慢じゃないね……」

美子「天江衣……恐ろしか。この親でなんもかんも終わらせる気やろか?」

華菜「だ、だいじょーぶですよ、安河内先輩! 江崎先輩なら……きっと――」

     仁美『ロ、ロン! 1000は1600と……!』

     煌『はい』

友清「親ば蹴ったとですー!」

華菜「ほら見たことかしーっ!!」

美子「ばってん、あんな安か手! なかなか二位との点差の詰まらん……っ!!」

巴「…………」

華菜「巴さん? どうかしましたし?」

巴「あ、いや、なんでもない。そんなことより、天江さんの手がまたとんでもないことになってるよ」

友清「ば、倍満とですっ!!」

美子「あいば和了られたら、チーム《劫初》の点数が!?」

     衣『ロン……16000ッ!!』

     藍子『マっ――ジで……?』

華菜「三十万点突破だし……!!」

910 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 22:25:28.06 ID:uRvGT8n10

友清「そ、そう言えば、あの《魔物》さん……予選決勝では三チームば同時に0点にしてたとですよね……?」

美子「そいならそいでよか。チーム《劫初》以外の0点で並びよったら、上家取りで私たちの勝ちと」

華菜「い、意外と現金なんですね、安河内先輩!!」

美子「勝てばよかと! 勝てばっ!!」

友清「江崎せんぱいのラス親……ここで、二位に直撃ばかませばっ!!」

巴「直撃の前に、張れればいいけど。見るからに重そうな手……ツモも良くない」

華菜「でも、焦って鳴くのはやめたほうがいいです。あたしはそれで振り込みましたから」

友清「江崎せんぱいは……門前で進めるつもりみたいとですね」

美子「仁美なら、きっと……っ!!」

華菜「うにゅあああああっ、テンパイが遠いしーっ!!」

911 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 22:30:56.04 ID:uRvGT8n10

巴「マズい……海の底が見えてきた」

友清「ばってん、あん《魔物》さんは海底コースやなかとですっ!」

巴「うん、まあ、今のところはね」

     衣『カン』パラララ

友清・美子・華菜「!!?」ゾワッ

巴「暗槓……これで、海底をツモるのは、一つズレて東家の江崎さん。やっぱり、今のところは、だけど」

     衣『……カンだッ!!』パラララ

華菜「に、二巡連続で暗槓……? こんな天江知らないしっ!!」

美子「こいで、海底ばツモるんは《煌星》の花田さんと」

友清「ちょ、ちょー待ってくださいとです。あの《魔物》さんの手……まだ暗刻の一つ残っとっとですよ……?」

巴「友清さん、よく覚えておいて。息を吸って吐くように、当たり前に《奇跡》を起こす存在――それが、白糸台に五人しかいない支配者《ランクS》なの」

     衣『もいっこ――カン!!』パラララ

美子「し、信じられなか……!!」ゾゾゾ

友清「さ――三色同刻三暗刻三槓子ドラ四……!? そいな……」ガタガタ

912 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 22:34:39.75 ID:uRvGT8n10

巴「これで終わりじゃない。三巡連続の暗槓によって、天江さんは門前のまま海底牌を自分のツモる位置に引き寄せた。なら、当然……」

     衣『リーチ……ッ!!』ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

華菜「あ、和了られたら数え役満だしー!!」

美子「なんでそげん大きかのば仁美の親んときにしよる!! どうせ数えば和了るなら《夜行》にブチ当てたらよかと!!」

友清「や、安河内せんぱい、なんていうかアグレッシブとですね……!!」

巴(え……? そんな、嘘――)ゾクッ

     仁美『そ、それ、チーッ!!』

     衣『ッ!!?』

華菜「ズレたしー!!?」

友清「し、しかもこいで江崎せんぱいのテンパイとですっ!!」

美子「よ、ようわからんが! 仁美ーっ、やったれー!!」

     仁美『ロ――ロンッ!! 5800!!』

     衣『なあ……っ!?』

美子・友清・華菜「きゃああああああああああああ!!!!」

巴(やっぱりそうだ……さっきの差し込みと、今のアシスト。彼女だけが天江さんの支配から逃れている。
 どういう理屈でそんなことができているのかはわからないけど……このまま黙っているわけがない、よね……?)

913 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 22:38:55.83 ID:uRvGT8n10

 ――対局室

 南一局一本場・親:仁美

仁美「」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 東家:江崎仁美(新道寺・28300)

衣(海底をズラした上に直撃まで取ってきただと……? 衣が本気を出しているのに、後半戦でのこいつの個人収支は、今のところプラス。
 この二回戦で負けることはまずありえないが、もし、これほどの力を次の試合でも発揮されたらと思うと……面倒だな)タンッ

 西家:天江衣(劫初・302300)

衣(四位で――背水の陣で対局に臨んでいるというのも、こやつの力を引き上げているのだろう。
 レベル0とは言え、すみれやさとはと同じ三年だと思えば、この底力も頷ける)

衣(よかろう。ならば、背水すら天国だったと思えるような、地獄の淵の崖っぷちに立たせてやる!
 希望という希望を断ち切り、歯向かう気も起きないくらい……徹底的に沈めてくれるッ!!)

衣「ロン――8300ッ!」ゴッ

仁美「くっ……!!」

仁美:20000 藍子:47000 衣:310600 煌:22400

914 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 22:44:19.53 ID:uRvGT8n10

 ――《夜行》控え室

絃「《新道寺》が危ういな。二つの意味で」

いちご「どういうことじゃ?」

利仙「何かの弾みで逆転してきそうですし、その逆で、ふとしたことから奈落の底へ落ちていきそうでもある……ということです」

     衣『ツモ、2000・4000』

絃「これは……満貫程度で藍子の親が流れたことを喜ぶべきなのか」

もこ「」ブツブツブツブツ

いちご「『何故安めなのか』じゃと? まあ、確かに、あの手なら倍満までありえたが……ほういうこともあるじゃろ」

利仙「たまには打点が一万点以下のときがあってもいいでしょう。でないと、こちらの心臓がもちません」

絃「ひょっとすると、ただ力を溜めただけなのかもな。次が天江の最後の親番……ここが正念場だ」

いちご「げっ、配牌からあんなに……!? 豪運って言葉が霞むくらいの爆運じゃの。しかもそれが毎局じゃ。なにもかもが異常じゃて!!」

絃「おいおい……あんなのは序盤で張るような手じゃないだろうに……」

915 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 22:48:26.17 ID:uRvGT8n10

利仙「と、ツモりましたか」

もこ「」ブツブツブツブツ

いちご「ああ、確かにまた安めじゃが、それでも4000オール。大きいことに変わりはないの」

     衣『……』タンッ

利仙「和了り拒否、ですか。しかし、一体なぜ……?」

絃「あくまで高めを狙うつもりだろうか」

いちご「これは――いや、あいつ……張り替えよった! さては出和了りを狙っちょるんか!?」

もこ「」ブツブツブツブツ

いちご「は? 『命脈が尽き果てる』――? それは」

     衣『ロン――18000』

絃・利仙・いちご「……っ!!」ゾワッ

もこ「」ブツブツブツブツ

916 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 22:52:08.04 ID:uRvGT8n10

 ――対局室

衣「ロン――18000」

仁美(こ……こんなことがっ!!)

藍子(嘘っしょ、これ――!?)

衣「塵芥ども、点数を見よ!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

仁美:0 藍子:43000 衣:336600 煌:20400

仁美・藍子「……ッ!!?」ゾクッ

衣「理解したか? 貴様らの行く先に希望など存在しない。それでもまだ抗うというのか!」

藍子(0点って……!? いや、そういうことができるし、そーゆーことをやってくる人だってのは、重々承知だったけどさ!!
 これは……《新道寺》の三年生には悪いけど、最後の最後でひどいトラウマになっちゃうんじゃないかな……?)

仁美「…………」

衣(ふん、あの《砲号》以外でここまで衣をてこずらせる非能力者がいたとはな。さすがにこれだけ痛めつければ立ち直れまい。まあ……凡人にしてはよく戦ったと褒め)

仁美「くっ……くく――はーっはっはっはっはっ!!」

衣(しょ――笑破!?)ビクッ

917 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 23:02:55.28 ID:uRvGT8n10

仁美「いやいや、こいつは傑作と! 白糸台で二年以上も打ってきて……それなりに経験ば積んだつもりやったばってん、こんなことば現実にできる雀士のおったとは!! 思わず飲み物ば吹き出すとこやったと……っ!!」

衣「な……なぜ笑っていられる!? 貴様にはこの絶望的な状況がわからないのか!!」ガタッ

仁美「絶望? なん言うとう。まだ試合は終わってなか。ここで絶望する雀士が白糸台のどこにおっとね」

衣「だ、だが、貴様の持ち点はゼロ!! 生きていても死と隣り合わせッ!! ここから逆転することなど不可能だろう!!」

仁美「は? 二連続で地和ば和了ればよかだけやろ?」

衣「そ……っ! そんなバカなことがありえるわけない!!」

仁美「狙って海底ば和了る魔物のよう言う……。
 あんな、天江衣。あんたのいくら強かろうと、場ば支配しようと、私になんの力もなかろうと、最低の点数状況やろうと……そんなんはな、絶望するに全然足りんけん。
 本当の絶望ていうんは、例えば、どっかの大バカもんのチーム脱退宣言とか、そういうことば言うと。
 そいに比べたら、こんなん、自力でどがんかなる可能性の僅かやけどあっけん、どこに絶望する理由のあっとね」

衣「貴様……!!」

918 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 23:17:07.00 ID:uRvGT8n10

仁美「大体、私は知っとうよ。去年、あんたの池田にしたこと。あんときも0点にしたんやったか。ばってん……池田ば0点にしたのと、私ば0点にしたのやと、どうにも思惑の違うみたいやね」

衣「何が違うというのだ……! どちらも同じ0点だろう!?」

仁美「いーや、違う。こいなこと言うたら自惚れとうみたいやけど、どうやら私は、あんたん中で随分と評価されとうらしい。
 そいけん、親満ツモらんと、わざわざ張り替えて点数ば上げて……私ば狙ったとやろ?」

衣「……っ!!」

仁美「池田のときは、わざと点数ば下げよったんやっけ。この違いは大きか。
 つまり、天江衣。あんたは私ば脅威やと思ったんやろ。私のなんしよるかわからんのが、あんたは不安やった。やけん、私の手足ばもぎに来た……」

衣「そ、それは――」

仁美「読みの浅かね、ランクSの魔物。私はまだまだ勝てると思っとうよ。《新道寺》のリーダーばナメよったらいけん。
 どがんことされても、負けの決まらん限り、私は希望ば捨てん。わかったら、さっさとサイコロ振って勝負の続きばすっとね」チュー

衣「そ――そんなに敗北者の烙印を押されたいというのなら、いいだろうっ!! 衣が直々に引導をくれてやる!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

仁美「そいは楽しみと! やれるもんならやってみんしゃい……っ!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

仁美:0 藍子:43000 衣:336600 煌:20400

919 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 23:27:56.11 ID:uRvGT8n10

 南三局一本場・親:衣

仁美(と……強がってはみたものの、こいは本当に首の飛びよるか? 一つもテンパイできる気配のなか。
 ばってん、私のテンパイせんでも、天江に他のチームば撃ち落してもらえばよかだけとね。去年の美子みたいな小狡か戦法やけど、今はどがん手ば使ってでん勝ち抜いたる……!!)タンッ

 西家:江崎仁美(新道寺・0)

藍子(うっわ……さっさとツモって二回戦抜けたいとか思ったけど、甘かったぁー!
 っていうか、天江さんの支配力が前半戦の最初より上がってきてるの気のせい……? 潮の満ち引きみたいなもんなのかな)タンッ

 北家:百鬼藍子(夜行・43000)

衣(いよいよ夜が深まってきた。満月のときほどではないが、今ならこまき以外には押し負ける気がしない。点差も十分過ぎるほどつけた。だが、なぜだ……月に翳りを感じる――)タンッ

 東家:天江衣(劫初・336600)

煌「」ゴ

 南家:花田煌(煌星・20400)

衣(これは……また貴様なのか、《通行止め》。先刻、東三局二本場で、《新道寺》に差し込んで衣の親を止め、南一局では衣の数え役満を阻止した。
 まるで、そこから先の道が初めから存在しなかったかのように……至極あっさりと)タンッ

煌「」ゴゴ

衣(この局も、前半戦のオーラスと同じ。衣までもが《一向聴地獄》の憂き目に遭っている。だが、しかし……)タンッ

煌「」ゴゴゴゴ

衣(貴様とて、この状況では足踏みするしかあるまい。仮に張れたとしても千点そこらの安手。しかも役がつかないはず。
 ツモればその瞬間に廃滅。出和了りを狙ってリーチをかけてしまえば、《新道寺》がノーテンである以上、和了れなければその瞬間に貴様の負けが決まる。
 かといって、衣か《夜行》から出和了りができれば逆転できる、というわけでもない。勝機皆無の決死行など、それこそまさに正気皆無。
 貴様が衣の道を閉ざしたように、衣も貴様の道を閉ざした。この袋小路で何ができる――《通行止め》……!!)

煌「リーチです」

 煌手牌:一二三四222⑤⑥⑦西西西 ドラ:五

衣(は――?)ゾワッ

仁美・藍子(え……?)

920 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 23:33:55.08 ID:uRvGT8n10

 ――《劫初》控え室

菫「開いた口が塞がらないとはこのことだ。なんだあのリーチは」

エイスリン「キデモ、フレタカ!?」

智葉「ツモったら負け、江崎から和了り牌が出ても負け、たとえ百鬼か天江から和了れても、裏が乗ったところで高々満貫。
 荒川、お前の《悪魔の目》にはどう映る、あの《通行止め》のリーチは」

憩「これは……ちょっと皆目わかりませんわ」

921 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 23:35:22.30 ID:uRvGT8n10

 ――《夜行》控え室

いちご「わ……わけがわからん! 今日一番でわけがわからん!!」

利仙「私たちを勝利に近付けるだけの無謀に見えます……見えますが」

絃「藍子のような例もある。《通行止め》が園城寺を超える感知系のレベル5だとしたら、あいつにしか見えてない道があるのかもしれん」

もこ「」ブツブツブツブツ

922 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 23:38:28.61 ID:uRvGT8n10

 ――《新道寺》控え室

友清「はぁーっ!? なんなんとですかあの人ー!!」

美子「《煌星》の花田さん、そん手でこん状況でリーチやと? 本当になんのつもりと……」

華菜「と、巴さん? どうしたんですか、さっきから難しい顔して」

巴「……いや、どうにも花田さんの能力がわからないなと思って。前半戦オーラスのノーテン流局も、さっきの差し込みも、江崎さんのアシストも、そして今回のリーチも……とても一つの能力の効果とは思えない。
 系統がバラバラっていうか、全ての系統が包括されてるっていうか。ってことは、もしかしてレベル5の多才能力者《マルチスキル》……? いやいや、さすがにそれはないか――」

923 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 23:41:29.81 ID:uRvGT8n10

 ――《煌星》控え室

淡「今頃、私たちとキラメ以外は総ポカーンだろうねっ!!」

桃子「いや、私もポカーンっすけど? あれは何が起きてるっすか?」

友香「私もでー」

淡「…………あれ?」

咲「淡ちゃん……さては煌さんに何か入知恵したでしょ。で、それを私たちに言ってない」

淡「ま、まあ! 説明するより見たほうが早いよっ!!」

     煌『ロンです。リーチのみ、1600は1900』

     藍子『は、はい……?』

淡「ほーらねーっ!!」スバラッ

924 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 23:44:14.68 ID:uRvGT8n10

 ――対局室

煌「ロンです。リーチのみ、1600は1900」

藍子「は、はい……?(そ――その手でリーチとかーっ!?)」ゾワッ

 煌手牌:一二三四222⑤⑥⑦西西西 ロン:一 ドラ:五・九

藍子(それ、ツモったらアウト。《一向聴地獄》から抜け出せてない《新道寺》から和了り牌が出てもアウト。
 今は私から和了れたからよかったけど、別に逆転されたわけでもない。イチかバチかで勝負するにはあまりに心許ない手……!!)

仁美(く、首の皮一枚残ったとっ!! ばってん、《煌星》の花田煌……その和了りはなんや?
 百鬼か天江から確実に和了れる自信のあった……としか考えられんが、一体どげん能力ば使えばそがんこと――)

衣(せ、生路を切り開いただと……!!? どうなっている!! こいつの《通行止め》は道を閉ざす能力ではないのか!? 衣は封殺するつもりで場を支配していたというのに、なぜそれが崩された……!?)

煌「さて……オーラスですね」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

仁美:0 藍子:41100 衣:336600 煌:22300

925 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 23:48:13.89 ID:uRvGT8n10

 ――《煌星》控え室

淡「これは、キラメが強くなってから判明したことなんだけどねっ。ほら、予選の頃まではさ、練習のとき、キラメと私たちで打って最初にトびそうになるのって、いっつもキラメだったでしょ?」

桃子「そうっすね。私とでー子さんと超新星さんときらめ先輩で初めて打った半荘みたいに、きらめ先輩が一人で沈むことが多かったっす」

友香「けど、最近だと私や桃子、稀に淡や咲が沈むこともあるんでー」

咲「……ああ、そっか。その可能性は見落としてたなぁ」

淡「でね、私、キラメに聞いたんだ。キラメ自身じゃなくて、キラメ以外の人がトびそうなときって、キラメはどういうつもりで打ってるのって。そしたら……」

桃子「なんて言ってたっすか?」

淡「『誰もトばさせないつもりで打ってますよ』――って!」

友香「そ、そうだったんでー……全然気付かなかった!!」

淡「要するに、キラメの《絶対にトばない》は、同卓してる他家にも有効ってこと!」

咲「なるほどね。そうすると、あとは私の《プラマイゼロ》と同じ。団体戦で100000点持ちだけど、半荘一回を25000点持ちだと思って、能力を使えばいい」

926 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 23:52:08.08 ID:uRvGT8n10

桃子「じゃあ、前半戦のオーラスで全員ノーテンになったのは」

咲「あのときの点数状況……25000点持ちなら、一番少ない人で《新道寺》の江崎さんが残り500点だった。
 そこに、天江さんの《一向聴地獄》が作用して、天江さん以外がノーテンの状態に陥る。すると――」

友香「もし天江先輩がテンパイしたら、流局のときにノーテン罰符で《新道寺》の江崎先輩がトぶ!!」

淡「しかも、あのちっちゃいのは、さっきから満貫以上の和了りしかしてない。で、あのときは二位のキラメでも25000点持ちなら残り4300点だった。
 そんなギリギリの状況であのちっちゃいのが和了ったら、ツモでもロンでも間違いなく誰かがトぶ。それで《通行止め》を喰らったってわけ!」

桃子「一人テンパイでも誰かがトぶ、和了っても誰かがトぶ……高い火力と強力な全体効果系能力が、そっくりそのまま海底さんに跳ね返ったって感じっすか!」

咲「《一向聴地獄》は煌さんの《通行止め》と相性がいいのかも。あの支配の中では、基本的に天江さんしかテンパイできない。
 だから、煌さんの《通行止め》の抜け道である、トびそうな人以外での点棒のやり取りっていうのが、起きにくい」

927 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/29 23:56:26.89 ID:uRvGT8n10

淡「で、今の南三局一本場も同じっ! 25000点持ちだと、あのちっちゃいの以外の持ち点は軒並みすっからかん。しかも、今回は100000点持ちでもトびそうな人がいた」

咲「ノーテン流局にならなかったのは幸いだよね。天江さん、まるで煌さんを試すみたいに、役ナシの安手をプレゼントしてくれた」

友香「普通なら、あの状況で役ナシの安手を張れたところで、活路がないことに変わりはない。けど……煌先輩はレベル5の第一位だからっ!!」

桃子「きらめ先輩がリーチを掛けたとき、海底さんの能力と支配力によって、羊さんと超音波さんはノーテン状態だったっす。
 羊さんから和了ったり、見逃しフリテンで流局になったり、ましてやツモったりしたら、その瞬間に羊さんがトぶ。
 つまり、羊さんから和了り牌が出てくる道も、流局になる道も、きらめ先輩がツモる道も……全部《通行止め》っす!」

淡「超音波《ソナー》の人は《一向聴地獄》で足止めを喰らってた。ちっちゃいのは打点の高さが災いして、やっぱりツモもロンもできない」

咲「あの状況……天江さんの《一向聴地獄》と、煌さんの《通行止め》で、ほぼ全ての道が塞がっていたんだね」

友香「《通行止め》だらけの中で、唯一残ってた通れる道が、煌先輩が《夜行》の百鬼先輩か《劫初》の天江先輩から出和了りする道だけだった……!!」

928 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/30 00:02:44.32 ID:jQUfd2VL0

淡「そーゆーことっ! で、このオーラスも、既にあちこち《通行止め》になってる。
 《新道寺》と《夜行》はあのちっちゃいのの能力でテンパイできない。あのちっちゃいのは、高火力とキラメの能力が原因でツモもロンもできない!!」

桃子「つまり、このオーラスで和了りをものにできる可能性があるのは……きらめ先輩ただ一人ってことっすねっ!!」

咲「それはどうかな。《一向聴地獄》は煌さんにも有効。前半戦のオーラスみたいにノーテン流局になったらそれまでだよ」

友香「確かに……煌先輩の能力は、道を閉ざすことはできても、切り開くことはできない。前に進むとなったら、煌先輩自身の力でなんとかするしかないんでー……!」

淡「大丈夫。今のキラメなら、それができるっ! この状況でも、きっとなんとかしてくれるっ!! なんたってキラメは――」

「「「「私たちの大将だからっ!!」」」」

929 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/30 00:08:25.28 ID:jQUfd2VL0

 ――対局室

 南四局・親:煌

煌(さてさて。色々やってはみたものの、なんの支配力もない私がこの《一向聴地獄》から独力で脱出するのは、どうやらほぼ不可能なようです)

 東家:花田煌(煌星・22300)

煌(先ほどは天江さんの気紛れでテンパイさせていただけましたが……さすがに懲りたようですね。
 困ったことに、この局は序盤からずっと一向聴。鳴いてテンパイしようにも、九萬の暗刻が重荷となって食いタンもできません)タンッ

 煌手牌:2234689④⑤⑥九九九 ドラ:⑧

煌(このまま行くと、前半戦のようにノーテン流局で試合が終わってしまうかもしれませんね。ただ、思っていたほど焦りはない。
 なぜなら、前半戦のオーラスと今……点数状況はほぼ同じでも、大きく異なっていることが、一つだけあるからです)タンッ

衣「」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 北家:天江衣(劫初・336600)

煌(天江さんの支配力は、夜が深まれば深まるほど高まるのだとか。なら、今は最高潮も最高潮のはず。
 私に一本取られた直後のオーラス……今のこの方が、ノーテン流局に甘んじるとは、とても思えません)

煌(淡さんや咲さんと同等かそれ以上の力。こんな恐ろしいもの……利用しない手はありませんよね――)

煌「ポン」タンッ

 煌手牌:3468④⑤⑥九九九/2(2)2 捨て:9 ドラ:⑧

藍子(ん? 鳴かれた?)

 西家:百鬼藍子(夜行・41100)

仁美(ばってん、手の進んだようには見えんが……)

 南家:江崎仁美(新道寺・0)

931 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/30 00:14:44.83 ID:jQUfd2VL0

煌(変わらず一向聴のまま。ですが、天江衣さん。これで海底はあなたのものですよ? 南一局では潰させていただきましたが、あなたほどの方が負けっぱなしで終わるのですか?
 違うでしょう。少なくとも、同じランクSの淡さんや咲さんなら、この場面、全力で借りを返しに来るはずです)

衣(こいつ……前局の意趣返しか!! 衣に海底を差し向け、衣の力を試しているだと……!!? なんと傲慢な――!!)ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

煌(ええ、そうでしょうとも。私にはできなくとも、あなたの力なら、ここからノーテン流局以外の道へ進むことができる。
 私の能力下で、行き止まりばかりのこの状況で、最も狭く険しい道に踏み入っていくことができる。大変すばらです)

衣(前半戦のオーラスの衣と同じだと思うなよ……!! なんの能力かはわからないが、貴様がいくら道を閉ざそうと、月の光が衣を導く――!!)ゴッ

藍子(はあー!? この感じ、まさか天江さんが張った!?)

仁美(嘘とやろ……? 前半戦のオーラスはレベル5の何かしとったと。こん状況も同じなら、いくらランクSの天江でん、《絶対》の壁は越えられんはず……!!)

衣(レベル5の第一位。あのドラ置き場より上というその序列……そんな肩書きに臆する衣だと思ったか!? 貴様の《絶対》がなんだろうと関係ないっ! 衣は前に進む――ッ!!)ゴッ

煌(なんとすばらな闘気でしょう。しかし、天江さん。残念ながら、あなたに進めるのはそこまで……)

衣「」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

煌(そこから先は《通行止め》ですッ!!)

932 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/30 00:27:00.18 ID:jQUfd2VL0

 ――《煌星》控え室

     衣『』ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

咲「うわぁ……あの人、あそこからテンパイに持っていけるんだ。私は自分の《プラマイゼロ》を振り切るのだってままならなかったのに……」ビリビリ

淡「それをやらせるキラメも、それをやっちゃうあのちっこいのも、ホントとんでもないよねー……!」ビリビリ

桃子「けど、きらめ先輩の能力的に言えば、これこそ狙い通りっすよね!」

友香「いくらテンパイしたところで、どんな支配力を持っていたところで、煌先輩の《通行止め》の前では全てが無力でーっ!!」

咲「天江さんが海底を和了れないのは《絶対》の確定事項。煌さんの能力下では、淡ちゃんのダブリーも私の嶺上も無理だったんだもん」

淡「まあ、ノーテン流局っていう、キラメの能力的に一番落ち着きやすかった可能性をブチ破ったってだけでも、半端ないんだけどね」

桃子「ここから……あとはなんの道が残ってるっすか?」

友香「《新道寺》の江崎先輩と《夜行》の百鬼先輩は、《一向聴地獄》があるからノーテンのまま和了れない。
 《劫初》の天江先輩はテンパイだけど、ツモでもロンでも誰かがトぶから《通行止め》で和了れない。ノーテン罰符で江崎先輩がトぶ以上、流局にもならない」

咲「厳密には全員テンパイ流局って道もあるけどね。けど、その確率は、有難いことに天江さんの《一向聴地獄》が劇的に下げてくれてる。
 上位レベルの能力者である煌さん一人ならまだしも、他の二人までテンパイできるとなると、全体効果系の大能力が《完全無効化》されるってことになっちゃう。
 能力論には、能力はその効果をできるだけ保とうとするっていう原則があるみたいだから、そちらに傾くことは、ほぼないと言っていい。となると、実質残っているのは――」

淡「キラメがあのちっこいのから直撃を取る道っ!!」

933 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/30 00:29:58.99 ID:jQUfd2VL0

桃子「け、けど、きらめ先輩の手は役ナシで張ってすらいないっす。鳴いたからリーチもできないっすし、どうやって直撃を……?」

友香「待ってっ! このパターン……この二回戦で何度かあったんでー!」

咲「うん。煌さんは見抜いてるんだ。天江さんの支配領域《テリトリー》――それが及ばない淵底の向こう……そこが天江さんの弱点だって!!」

淡「キラメにとってはお馴染みの場所だけどねー。なんたって、あそこは私とサッキーの支配領域《テリトリー》だからっ!!」

桃子「支配領域《テリトリー》の《未開地帯》――王牌っすね!!」

友香「幸い槓材がある……これは――!!」

咲「いいなぁ……煌さんっ! 私ももっとカンしたかったよっ!!」

淡「好きなだけカンして嶺上すればいいよ、サッキー! 私も好きなだけカンして裏乗っけるから! この二回戦を突破したあとでねッ!!」

桃子「海の底が見えてくるっす……!!」

友香「煌先輩は一向聴のまま――だけどっ!!」

咲「このまま終わるはずがないっ!!」

淡「ぶちかませーっ、キラメー!!!」

934 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/30 00:34:48.99 ID:jQUfd2VL0

 ――対局室

衣(《通行止め》……あの鳴きからまったく動きを見せない。手も変わらず役ナシの一向聴のまま。次がこやつの最後のツモだが、ここから一体何をしてくる……?)

衣(まあ、いい。何もできないというのなら、貴様の器はその程度だったということ! 衣は衣の打ち方を貫く……ッ!!)

衣「リーチッ!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

藍子(出た……十七巡目リーチッ!!)

仁美(こいば和了られたら……私らの負けと――!!)

衣(さあ、《通行止め》とやら! 衣の全力、止められるものなら止








             め












                          て









衣(~~~~~~~~~っ!!?)クラッ

煌「」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

935 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/30 00:41:53.99 ID:jQUfd2VL0

衣(い、今の……っ!! こいつ……そうか、こいつだったのかッ!? バカな……! し、信じられないっ!! これは月に翳りどころではない!! なんだ、この――全てを閉ざす闇は……!?)ゾクッ

煌「」ゴ

衣(道が――光が……世界の一切が閉じている!? 衣の力をもってしても月の影すら捉えられない……!! 空そのものが塞がれているのか!? こんなの――あのドラ置き場と戦ったときでも感じたことがないぞ……!!?)

煌「」ゴゴゴ

衣(なんたること……天も地も暗黒に圧し潰され――見渡す限り絶望しかない……!! こんなことが人間にできるのか――!?
 否、そうか……こまきや宮永照だけではなかったのだな……!! こやつもまた《神の領域に踏み込む者》!! これがレベル5の第一位――)

煌「」ゴゴゴゴゴ

衣(《通行止め》……花田煌かッ!!!)ゾゾゾ

煌「」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

衣(だ、だが、しかし……どんなに強大な能力であろうと、ルールはルール!
 役ナシ一向聴の貴様に衣が討たれるわけが――待て、おかしい! 衣のリーチ宣言牌はどこへ行った……あの九萬は――)ハッ

煌「……これは失礼をば。聞こえていませんでしたか? リーチした瞬間、私はカンと言いました」

衣「なぁ……!?」ガタッ

 煌手牌:3468④⑤⑥/(九)九九九/2(2)2 嶺上ツモ:? ドラ:⑧・?

936 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/30 00:46:32.47 ID:jQUfd2VL0

衣(大明槓……さては責任払いか!? 衣の支配が王牌にまで及ばないのを見抜かれている……!?
 否ッ! こいつは一向聴で、槓材も尽きたはず。ここから責任払いを喰らうことはない!! たかだかテンパイするのが関の山……っ!!)

煌(っと、ここが弱点だとわかっていても、いざカンをするとなると、なかなか勇気が要りましたね。
 ですが、天江さんがテンパイした時点で、これは予想通りの展開。嶺上、テンパイです――)

 煌手牌:3468④⑤⑥/(九)九九九/2(2)2 嶺上ツモ:[5] ドラ:⑧・?

衣(小賢しい……!! それでも役ナシであることに変わりはないではないかっ!! リーチもできないその状況から、どうやって和了るというのだ。まして逆転など――)

煌「さて、大明槓のカンドラは後めくりでしたね」クルッ

藍子(うっっそぉーん!!?)

仁美(カ――カンドラが!!)

衣(あ、ありえない……ッ!!)ゾッ

 煌手牌:34[5]6④⑤⑥/(九)九九九/2(2)2 捨て:8 ドラ:⑧・九

937 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/30 00:53:56.32 ID:jQUfd2VL0

煌(カンドラ……天江さんの支配領域《テリトリー》が及ばぬ王牌とは言え、これは随分とツいていましたね。
 ここまできたら、あとは一本道。それ以外の道は《通行止め》させていただきますッ!)

仁美(テンパイできず……!! ここまでやったか――)タンッ

藍子(天江さんが海底を和了るなら私らの勝ちだけど……さーてどうなるかなーっ!?)タンッ

衣(な、何も見えないっ!! どこへも進めない――!! 虚ろな暗闇に呑まれ全てが圧し潰される……!! 未だかつてこんな経験をしたことがあろうか!?
 下家に大明槓されたゆえに、海底は依然衣の手中にある。なのに、月に触れることも、月を目にすることさえ、叶わないなど……)ツモッ

煌「」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

衣(ここに来てこの気運!? そうか、そうだったな……!! 役はまだ一つ残されていた!
 全く不覚……これがレベル5の第一位!! その超能力の前では、衣すらちっぽけな雑魚に成り下がるというのか――)タンッ

煌「ロンです。河底撈魚ドラ四赤一、18000」パラララ

藍子(河底ぇー!? てか、ちょ、これ――!!?)

仁美(おー……これは最後に面白かもんの見れたと……)

衣(衣に海底を差し向けたのは、リー棒のためでもあったのだな。完全に踊らされた。まさに見事の一言ッ!!)

煌「和了り止めにします。これで、試合終了ですね」

『たっ……大将戦決着ううううううッ!!』

938 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/30 00:57:07.03 ID:jQUfd2VL0

藍子「あっ……ありがとうございましたぁああああぁああー!!」ウルウル

 三位(総合三位):百鬼藍子・-47600(夜行・41100)

衣「実に心躍る大将戦であった……!!」ザッ

 一位(総合一位):天江衣・+119900(劫初・317600)

仁美「そうやね。私も楽しめたと……あいがとな――」パタッ

 四位(総合四位):江崎仁美・-48700(新道寺・0)

『Aブロック二回戦……勝ち抜けたのは圧倒的な力を見せ付けたチーム《劫初》……!!
 そして、僅か200点差で二位争いを制した――チーム《煌星》いいいいいい!!!!』

煌「ありがとうございましたっ!!」スバラッ

 二位(総合二位):花田煌・-23600(41300)

 ――――――

 ――――

 ――

939 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/30 01:00:04.16 ID:jQUfd2VL0

【Aブロック二回戦結果】

<総合結果>

 一位:劫初・317600

 二位:煌星・41300

 三位:夜行・41100

 四位:新道寺・0

<区間賞>

 先鋒:弘世菫(劫初)・+6100

 次鋒:荒川憩(劫初)・+48400

 中堅:辻垣内智葉(劫初)・+24400

 副将:エイスリン=ウィッシュアート(劫初)・+18800

 大将:天江衣(劫初)・+119900

<役満和了者>

 なし

<半荘獲得点数上位五名>

 一位:天江衣(劫初・大将戦前半)・+68500

 二位:天江衣(劫初・大将戦後半)・+51400

 三位:荒川憩(劫初・次鋒戦後半)・+33700

 四位:荒川憩(劫初・次鋒戦前半)・+14700

 五位:辻垣内智葉(劫初・中堅戦前半)・+13600

<MVP>

 天江衣(劫初)

940 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/30 01:07:36.48 ID:jQUfd2VL0

 ――《劫初》控え室

『Aブロック二回戦……勝ち抜けたのは圧倒的な力を見せ付けたチーム《劫初》……!!
 そして、僅か200点差で二位争いを制した――チーム《煌星》いいいいいい!!!!』

智葉「メンバー全員がマイナス収支でこの二回戦を勝ち上がるとはな。ここまでの点差をつけたのにも拘わらず、さほど勝ったという気がしないのはなぜだ」

エイスリン「タイショウモ、タイショウ、シタノニナ!」

憩「完勝とはいかへんかったのが、ホンマに残念ですわ~。ね、菫さん?」ニコッ

菫「…………わかっている」

 バンッ

衣「ただいま戻ったッ!」

憩「やー、衣ちゃん。見てたでー? 最後の最後でやられたなー?」

衣「やられたもやられた。あれは正真正銘の《怪物》だぞ。プリン事件のこまきより恐ろしいものがこの世にあるとは思わなんだ……」

憩「へえ……《鬼畜》モードの小蒔ちゃんを超えるんか? ちょっと信じられへんわ。
 モニターで見とる分には、衣ちゃんの能力が《無効化》されとっただけな感じやった。それなら玄ちゃんとさして変わらへんやん」

衣「けいも打ってみればわかる。レベル5の第一位と言われているが、あやつは決して、くろと同格の存在などではない。
 能力値《レベル》など、所詮はヒトの決めた尺度――あやつは既にそれを超越しかかっている」

憩「それはつまり……《鬼畜》モードの小蒔ちゃん、それに宮永照と同じ、《神の領域に踏み込む者》――っちゅーことでええの?」

衣「…………同じで済めばよいがな」

智葉「……天江、どういう意味だ、それは」

941 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/30 01:14:17.19 ID:jQUfd2VL0

衣「花田煌……あれは世界を閉ざす者だ。神の領域に踏み込むだけでは終わらないかもしれない。
 本人の思惑はどうあれ……あやつはいずれ、神そのものに取って代わるに違いない」

菫「おい……それはなんだ、あれか? 悪い冗談か何かか? 本気にしてしまうからやめてくれ」

衣「冗談などではない。あの《通行止め》、野放しにしておくにはいささか危険過ぎる。
 世界を閉ざし、闇で覆い、あらゆる希望……そこへ至る無限の道程を一切に断絶する。正体は未だもってわからないが、あれが天上へ上り詰めたとき、この世は絶望に支配されるだろう」

エイスリン「キョーフノ、ダイマオウ!!」

衣「恐怖……そうだな。確かに、あやつは、とてつもなく恐ろしい……」

憩「へ? こ、衣ちゃん?」

衣「この感情は、まさしく恐れなのだろう。こまきに対して感じた畏れとは、質が違う。
 けいの《悪魔の目》ならわかるだろう? 先刻から全身の震えが止まらないのだ。虚ろな闇に喰われ、原形を留めぬほどに、心が……潰されていくようで――」

憩「ちょ、ちょいちょい!? どうしたん、根っからの戦闘狂! 我らが《修羅》こと、衣ちゃんともあろう雀士が!!」アワワ

衣「……いや、なんでもない。ちょっと疲れただけだ」フゥ

憩「もーっ、弱気な衣ちゃんとか愛らし過ぎてメロメロしてまうからやめてやー!」ギュー

衣「ふあっ!? この、ひっつくなー!」

憩「けちー」

942 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/30 01:23:20.55 ID:jQUfd2VL0

衣「さてっ! 《通行止め》のことはさて置くとして、Bブロックの結果はいかに!?」

菫「予想通りの二チームだよ。《豊穣》と《逢天》だ」

衣「ほうっ!! なんと血湧き肉踊るっ!!」

憩「あの頃は毎日のように卓を囲んどったけど、ホンマの敵として当たるんは、これが初めてやもんな……! 小蒔ちゃん、それに玄ちゃん!!」

衣「そこにとーかまでいるのだろう!? こんなに嬉しいことはないっ!!」

智葉「菫、お前は誰が気になる? 一年の頃に散々肩揉みをさせられた石戸か? それとも三年になって初めて土をつけられた松実か?」

菫「元チームメンバーの渋谷が気になるに決まっているだろう」

智葉「お前はどうだ、ウィッシュアート」

エイスリン「トヨネ、オトモダチ! アト、ミホコノ、ヤローッ!!」

智葉「姉帯と……そうか、福路か。確かに、あいつはお前の一つ上だからな」

エイスリン「アノ、ハラグロ、コンドコソ、ルビーサファイア、ブラックホワイト、サセテヤルッ!!」

菫「ちなみに、智葉はいるのか。誰か気になる雀士は」

智葉「私か? 私は……そうだな、実家のちょっとした因縁で、清水谷組の孫娘が気になるぞ」

菫「智葉……! やはりお前はその筋の――!?」

智葉「バカかお前。冗談に決まっているだろう」

菫「一つも笑えない冗談だな」

943 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/30 01:28:07.56 ID:jQUfd2VL0

智葉「……無論、気になるというのは嘘ではない。この国に戻ってきて、最初に私の本気を引き出したのが、あいつだったからな」

菫「それは麻雀の話か? 果し合いの話か?」

智葉「黙れ、マジカル☆スミレ」

菫「智葉アアアアアアアア!!!」シャープシュート

智葉「ふん」セナカサスヤイバ

憩「ちょ……!? オモロいことやってへんで、反省会しましょうよ!!」

衣「弓対刀ッ!!」

エイスリン「イイゾ、モットヤレ!!」

菫「すまんな、荒川。反省会の前に……私は私の過去と決着をつけねばならないようだッ!」

智葉「過去は消せないさ。受け入れろ。なに、お前が思っているほど、似合っていなかったわけではない」

菫「そういう問題では……ないのだあああああああ!!」

憩「ちょ、ちょー!? 菫さーんー!!?」

 ワーワー キャーキャー シャープシュート

 ――――――

 ――――

 ――

944 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/30 01:34:13.74 ID:jQUfd2VL0

 ――《煌星》控え室

煌「というわけで、まずは二回戦突破……すばらっ!!」

淡・咲・桃子・友香「すばらー!!」キュピーン

煌「はい、では早速ですが、いつものように軽い反省会をいたしましょう」

淡・咲・桃子・友香「はーい……」ズーン

煌「まず、先鋒戦。淡さん」

淡「ひゃ、ひゃいっ!」

煌「とにもかくにもまずは平常心。心の乱れは能力や支配力にも影響を与えます。次からは、何かおかしいと思ったら、遠慮なく相談してください」

淡「うぅ……ごめんなさい……」シュン

煌「後半戦は非常に頼もしかったですよ。けど、淡さんならもっとできるはずです。というわけで、今回は57すばら!!」

淡「D評価じゃーん!!」

煌「続いて、次鋒戦。桃子さん」

桃子「は、はいっす!」

煌「持てる力は十分に発揮していたと思います。今回は相手が非常に手強かった。しかし、このような厳しい戦いが、これからも続いていきます。この経験を次回に活かしましょう」

桃子「頑張るっす……!」

煌「荒川さんから直撃を取ったときは、桃子さんに指導を仰いで、心からよかったと思いましたよ。今回は大奮発の80すばらです!!」

桃子「夢の80台っすー!!」

煌「お次は、中堅戦。咲さん」

咲「はい……」ショボーン

煌「いかがでしたか、初めて《プラマイゼロ》を崩された感想は?」

咲「最低の気分です……お姉ちゃんにもやられたことないのに……」

煌「そうですか。私は最高だと思いましたけどね」

咲「え……?」

煌「勝利の美酒に酔い、敗北の苦渋を知ったとき、人は初めて戦士になるのです。
 これから咲さんがいかなる進化を遂げるのか……今からわくわくしてたまりません。というわけで、今回は、次に期待の35すばら!!」

咲「いやああああああああああああ!!」

945 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/30 01:37:50.92 ID:jQUfd2VL0

煌「そして、副将戦。友香さん」

友香「はいでー……」

煌「なぜ落ち込んでいるのです、友香さん。私は、今回のMSP――最もすばらだったプレイヤーは、友香さんだと思っていますよ」

友香「でー……?」

煌「友香さんは、終始攻めの姿勢を崩しませんでした。それも、ただの無謀ではなく、常に最善を考えて動いていた。
 結果がついてこなかったのは、たまたまでしかありません。次に同じ面子で打ったとしたら、私は友香さんがトップになると思いますよ」

友香「そ、そんなこと――」

煌「どんなに強い人でも負けることがあるのが麻雀です。打倒《一桁ナンバー》……次はできるといいですね。その調子で一緒に頑張りましょう。
 というわけで、今回のMSPは、92すばらの友香さんですっ!!」

友香「うわああああああ!!」ポロポロ

煌「さて……最後に、大将戦。私です。みなさん、いかがでしたか?」

淡「最高だよっ!!」

咲「100すばらですよっ!!」

桃子「120すばらっす!!」

友香「10000すばらでー!!」

煌「な、なんと予想外の高評価! 自己採点では5すばらくらいだったというのに……」

淡「キラメ、自分に厳し過ぎるよ……!」

咲「そうですっ! あんなにすばらだった煌さんが5すばらなら、ポンコツへっぽこエースの淡ちゃんなんて100すばらくないです!」

淡「サッキー! 自分が赤点だったからって私に八つ当たりしないー!!」

煌「まあまあ、お二人とも。じゃれあうのはそれくらいにしてください」

946 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/30 01:42:46.04 ID:jQUfd2VL0

桃子「ま……恒例のすばら反省会は、これでおしまいっすね」

煌「ええ、普通の反省会は、このあと寮に帰ってからにしましょう。そして、明日の中日は、三回戦の相手の対策会をします」

友香「三回戦……今日の《劫初》……それに、あの《豊穣》が相手でー」

煌「加えて、荒川さん、天江さんと合わせて《4K》と名高い――ランクSの神代さんとレベル5の松実玄さんがいるチーム《逢天》とも戦うわけです」

淡「っていうかなんでトーナメントのこっち側にランクSが四人もいるかなー!?」

咲「《三強》さんも全員こっちだしね」

桃子「いや、まあ、Bブロックの二チームもそうっすけど、今日の《劫初》に勝たないと、どの道優勝はないっす」

友香「片や五人全員が区間賞の常勝軍団。片やこっちは五人全員マイナス収支」

咲「完封負けもいいとこだよ……」

煌「おやおや、咲さん。それは違いますよ。私たち《煌星》は、他ならぬ、あの方々の完全試合を阻止したチームなのです。
 負けは負けでも、完封はされていません。今回三位の《夜行》の方々でも不可能だったことを、私たちはやってのけました」

咲「どういうことですか?」

煌「もちろん、我らがエース――淡さんの活躍のことですっ!!」

淡「ふっふっふ、さすがキラメ。見るべきとこを見てるね……!! そう、やはり私こそが、この《煌星》のエースなのさーっ!!」ババーン

咲「……煌さん? あんまり滅多なこと言うと、淡ちゃん、つけ上がってまたヘマしますよ?」

淡「サッキー!?」

947 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/30 01:47:44.26 ID:jQUfd2VL0

煌「私はただ客観的な事実を指摘したまでです。思い返してください、淡さんが本調子を取り戻した先鋒戦後半――その半荘でトップを取ったのが誰だったのか」

桃子「それは……確かに超新星さんでしたっすね。普通の半荘だったら西入するレベルの微トップでしたけど」

友香「後半戦と合わせるとマイナスでー」

煌「では、お聞きしますが、あの先鋒戦後半以外の計九半荘。トップを取っていたのは、どこのどなただったでしょうか?」

咲「えっと……淡ちゃんを飛ばして順番に挙げていくと――先鋒戦前半が《劫初》の弘世さんで」

桃子「次鋒戦と中堅戦が、同じく《劫初》のナースさん、ナースさん、極道さん、極道さん」

友香「副将戦と大将戦が、やっぱり《劫初》のウィッシュアート先輩、ウィッシュアート先輩、天江先輩、天江先輩……って、これ!!」

煌「ようやくお気付きになられたようですね。ご察しの通り、この二回戦全十半荘のうち、実に九半荘で《劫初》メンバーがトップを飾っているのです。それは全員が区間賞になりますとも」

淡「で、その《劫初》メンバーが唯一トップを取れなかった半荘でトップを取ったのが、私というわけなのさー!!」キラーン

咲・桃子・友香「……………………」

淡「えっ、なにその冷たい視線……?」

948 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/30 01:53:14.63 ID:jQUfd2VL0

桃子「総合収支は三位じゃないっすか」

淡「うっ!」

友香「前半戦で私たちがどれだけ心配したのか、教えてあげてもいいんでー?」

淡「ううっ!!」

咲「っていうか、こんなことを言うのはお姉ちゃんのお友達さんに悪いんだけど、諸々の数字的に言えば、弘世さんってチーム《劫初》の五番手なんだよね」

淡「ううううううっ!!!」

桃子「っていうか、私的には《煌星》でただ一人区間二位になったきらめ先輩のほうが、スーパーエースだと思うっす!!」

友香「私たちを勝利に導いたあのオーラスは、震えが止まらなかったんでー!!」

咲「煌さんになら、私、喜んでエースの肩書きを譲りますっ!!」

煌「だそうです、淡さん」

淡「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬ……みんなだってボロカスやられてたくせに!!
 モモコはステルス破られるし、サッキーは槍槓で涙目だし、ユーカはまあ頑張ってたけど副将戦唯一の前後半連続マイナス収支だし!!」

桃子「ふん……わかってるっすよ、そんなことは!!」

咲「このままやられっぱなしは許せないよねっ!!」

友香「モチのロンでー!! だからこそ、次の三回戦――!!」

淡「相手が誰だろうと勝つッ!! 結論はそういうことでいいんでしょ、キラメ!!?」

煌「皆さんのその心意気、文句なしの100すばらですっ!!」

淡「っしゃあー! ってことで、二回戦! 無事突破したけど、まあてこずりにもてこずった!!
 そんでもって、三回戦も超ヤバいのばっか出てくる……!! だけど、それがどーしたあーっ!!」

咲「私たちの目標はっ!!」

桃子「このトーナメントで優勝してっ!!」

友香「一軍《レギュラー》になることっ!!」

淡「みんなわかってんじゃん――!! それじゃあせーので言おっか!? せーのっ!!」

淡・咲・桃子・友香「次は《絶対》に私が勝つッ!!!!」

煌「すばらっ!!」

 ワーワー キャーキャー スバラッ

 ――――――

 ――――

 ――

949 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga age] 2014/05/30 02:07:03.53 ID:jQUfd2VL0

 ――理事長室

恒子「いやぁ、終わりましたなー、二回戦」

健夜「シードはどこも順当に一位通過」

恒子「ま、他も予想通りって感じかな?」

健夜「《煌星》にはやきもきさせられたけどね」

恒子「一年生メインだと、どうしても危なっかしい試合運びになっちゃうよねー。ま、次からに期待ってことで」

健夜「決勝まで辿り着けるといいけど……三回戦はどうなるかなぁ」

恒子「三回戦は、中日を挟んで、明後日と明々後日に行われますっ! まずはA・Bブロックから!!」

健夜「いきなり誰に向かって話してるの……?」

恒子「二年《三強》対決か! 或いは、《レベル5》決戦か! はたまた《ランクS》激突かー!? ん、これはね、実況の練習だよ~」

健夜「なるほど」

恒子「まっ、明日は試合がないし、すこやん疲れてるみたいだし、たまには温泉でもいっとく? こないだ美肌効果のある秘湯を見つけたんだ」

健夜「いいね! 温泉のあのだらだらできる感じ、好きだよっ!!」

恒子「初めての温泉は、三十年前、七歳の時でした」

健夜「アラサーだよっ!? いい加減ネタ尽きてきたのがなんとなくわかるよっ!!」

恒子「はい、ではではお後がよろしいようで~」

健夜「よろしくないよー!!」

     [一軍決定戦《ファーストクラス・トーナメント》決勝まで、あと七日]

950 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga sage] 2014/05/30 02:13:24.08 ID:jQUfd2VL0

ご覧いただきありがとうございました。

これにて、本選トーナメント編(Aブロック二回戦)はおしまいです。

次から、スレ移りまして、本選トーナメント編(A・Bブロック三回戦)が始まります。

どのくらいお話が進んだかを大星さんで喩えると、余裕の絶対安全圏内です。

新スレッドは以下の通りです。

スレタイ:【咲SS】淡「ここが白糸台高校麻雀部かー!!」

URL:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1401382574/

次回は、新スレッドのほうに書き込みます。一週間以内に更新できるかと。

本スレッドの残りは雑談やらで埋めていただいて結構です。

以下、新スレに記載予定のまとめ情報などをちょっと書き込んだりします。

951 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga sage] 2014/05/30 02:14:45.54 ID:jQUfd2VL0

<ベスト8チーム一覧>

《チーム名》:リーダー、メンバー×4(名前順)

○A・Bブロック

《劫初》:弘世菫、天江衣★、荒川憩、エイスリン=ウィッシュアート、辻垣内智葉

《煌星》:花田煌☆、大星淡★、東横桃子、宮永咲★、森垣友香

《豊穣》:渋谷尭深☆、石戸霞、清水谷竜華、福路美穂子、松実宥

《逢天》:二条泉、姉帯豊音、神代小蒔★、松実玄☆、龍門渕透華

○C・Dブロック

《久遠》:竹井久、愛宕洋榎、新子憧、小瀬川白望、白水哩

《幻奏》:小走やえ、江口セーラ、片岡優希、ネリー=ヴィルサラーゼ、亦野誠子

《永代》:宮永照★、井上純、臼沢塞、染谷まこ、高鴨穏乃☆

《新約》:園城寺怜☆、愛宕絹恵、薄墨初美、鶴田姫子☆、原村和

(※ ☆=レベル5、★=ランクS)

952 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 2014/05/30 07:39:15.14 ID:dsVOt9tSO

超乙
すばらちゃんやはり最高だわ


元スレ:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1392028470/
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