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1 : ◆7zy9BuaCrE[saga] 2016/02/05 00:29:10.40 ID:ayNS8PVU0

隼鷹「………」


隼鷹「………よっこらしょっと」


隼鷹「ふぃ………提督がいなくなってもこの場所は変わんねえか。ま、当たり前だけどさぁ」


 鎮守府の端っこ。倉庫の裏手にあるこの場所は、丁度死角になっていてる。隠れて酒を飲むにはもってこいの場所。海に面しているから眺めも良い。


隼鷹「うーん、良い夕日だねぇ……」


 地平線に沈む夕日が眩しい。波がオレンジ色に染まり、キラキラと光っている。

 夕暮れを肴に提督と酒を飲むのがあたしの何よりの楽しみだ。

 いや、楽しみだった……か。提督はとはもう飲めない。提督は死んじまったからなぁ。


隼鷹「はぁ…何で死んじまうのかなぁ。まったく……」


 あたしが着任して丁度3年目。記念に二人でパーっと飲もうかと思ってたのに、その2日前に逝っちまった。せっかくその日まで禁酒してたんだけどねぇ。はぁ。


 逝くなら艦娘であるあたしの方が先だと思ってたんだけど、人生分からないもんだ。運が悪かったといえばそれまでだけど。


隼鷹「………」


隼鷹「そういや提督とこの場所で初めてあったのも、夕日が綺麗な海だったな……」


 今でも鮮明に思い出せる。3年前のあの日。丁度その日も海がオレンジ色に染まっていた。



2 : ◆7zy9BuaCrE[saga] 2016/02/05 00:34:40.21 ID:ayNS8PVU0


ーーーー
ーー3年前


隼鷹「………」キョロキョロ


隼鷹「…よし、誰もついて来てないね」


隼鷹「ふぅ…どっこいしょっとぉ」


隼鷹「いやー、今日も疲れた疲れた。一杯飲まなきゃやってらんないよ」


隼鷹「まったく…どいつも酒を飲まないとはなぁ。しかも倹約倹約っつうから肩身が狭くて仕方がないねぇ」


隼鷹「提督も酒なんか飲まねぇってつらだからなぁ。あれは堅物だよぉ。期待は出来ないねぇ……」


隼鷹(ま、こうやって隠れて1人で飲むのも悪かないけどさ。いい場所を見つけたよ)


隼鷹(万が一見つかったら営倉行きだからねぇ)


隼鷹「……」グビッ


隼鷹「……ぷはぁー! 美味い!」


ガタッ


隼鷹「!?」ビクッ


隼鷹「だ、誰?!」

3 : ◆7zy9BuaCrE[saga] 2016/02/05 00:36:03.71 ID:ayNS8PVU0

提督「……隼鷹か」


隼鷹「て、提督…」


隼鷹(な、何で提督がここに……)


提督「一体こんな所で何をしている」


隼鷹「え、えーと……その……」


隼鷹(こんな酒瓶片手じゃ言い訳の仕様がないよう……ど、どうしよ)


提督「……酒か」


隼鷹「え?! それは…そのぅ……はい……」


隼鷹(ああ…営倉行き決定だねぇ。酒も取り上げられるだろうし……はぁ…)


提督「隼鷹」


隼鷹「は、はいぃ…」


提督「この場所は人が来ないのか?」


隼鷹「はい?」

4 : ◆7zy9BuaCrE[saga] 2016/02/05 00:37:11.73 ID:ayNS8PVU0

提督「この場所に人は来ないのかと聞いているんだ。今までずっとここで飲んでいたんだろう」


隼鷹「は、はい。今までは誰にも…」


提督「ふむ……。確かに普通ならこの場所には辿り着かないだろう」


提督「おまけに景色も良い。隠れて飲むには持ってこいだな」


隼鷹「それはもう…」


提督「私が使っていた場所よりずっと良い。流石だな、隼鷹」


隼鷹「へ?」


提督「………」


提督「………その、なんだ」ポリポリ


提督「良ければ、私も一杯やっても良いか」スッ


隼鷹「……え」


隼鷹「…えええええええ?!」

5 : ◆7zy9BuaCrE[saga] 2016/02/05 00:38:28.47 ID:ayNS8PVU0

 何て事はない。提督も酒飲みだったのだ。堅物規則野郎って印象だったのに、人間分からないもんだ。

 最初は驚いたが、あたしと提督は共犯者。自然に腹を割って話せるようになった。それで分かったんだけど……提督は以外と人間味があったんだ。



提督「なぁ、隼鷹。あの新しく来た戦艦の霧島なんだが……どうやって周りと打ち解けさせれば良いだろう…」


隼鷹「というと?」


提督「いや、彼女は真面目でとても良いんだが……如何せん硬くてな。真面目が服を来て歩いているようでね」


隼鷹(普段の提督の方がよっぽど硬いけどねぇ)


提督「まだ、金剛型も他にいないし……どうしたものか」


 提督の悩みは何時も似たような感じ。部下に周りと打ち解け欲しい。特に、真面目で堅物な艦娘は特に気にかけていた。提督曰く、ずっと肩肘張ると疲れてしまうからだとさ。自分がそうだから良く分かるんだろう。

 酒を飲みながら、2人で堅物の崩し方を話し合ったもんだ。

 

6 : ◆7zy9BuaCrE[saga] 2016/02/05 00:42:11.62 ID:ayNS8PVU0


 提督は優秀な奴だった。まぁ、顔も優秀そうな司令官って感じだしねぇ。着々と任務をこなし、艦娘も増えていった。……つまり酒飲みも増えていったってこと。



提督「うーむ…」


隼鷹「ん、どうしたのさぁ」


提督「新しく来た、重巡の那智なんだが…あいつも中々難しくて……」


隼鷹「…………」


提督「隼鷹?」


隼鷹「提督、あたしの勘が囁いているんだ」


提督「?」


隼鷹「那智。あいつは…かなりの酒飲みさぁ!」


提督「ええ?! うーむ、見た目からは想像もつかんなぁ」


隼鷹(アンタには負けるって……)


提督「じゃあ、サプライズで酒でもプレゼントしてみるか」


隼鷹「ええ、いきなりかい? 冒険だねぇ……」


提督「まあ、部下と打ち解けるサプライズ術に関しては勉強したからな。安心しろ」


隼鷹「何だそりゃ…」


提督「隼鷹にもいつかサプライズしてやるからな」


隼鷹「それ言っちゃダメじゃないかい」


提督「……あ」


隼鷹「以外と阿呆だねぇ……」


7 : ◆7zy9BuaCrE[saga] 2016/02/05 00:44:03.89 ID:ayNS8PVU0

 那智、そして千歳。酒飲みがどんどん鎮守府に増えていった。お金にも余裕が出来たのもあるだろうが、酒飲みは市民権を得ていったのだ。艦娘のバーがで来るくらいにはねぇ。


 要するに、もう隠れてコソコソ飲まなくて良くなったのだが………あたしと提督はちょくちょく倉庫裏で飲んでいた。


隼鷹「………」


隼鷹「……」グビッ


隼鷹「ふぅ……」


提督「隼鷹、早いな」


隼鷹「お、提督。遅いよう」


 特に集まる約束をするわけではない。あたしが先に来る時もあれば、その逆もある。でも、2人が集まらない事は滅多になかった。


提督「随分出来上がっているな」


隼鷹「だぁからぁ、提督が遅いからだよぅ」


提督「何だ、俺のせいなのか」


隼鷹「そうだよぉ、えへへ…。さ、飲も飲も!」


提督「ああ」


 触れるか触れないかの距離に座り、静かに飲む。皆と飲むのも好きだけど、提督との時間はもっと好きだった。

 あたしが先に飲んでいて、提督が後から必ず来てくれる。提督が先に飲んでいれば、あたしは必ず行く。

 そんな関係がたまらなく心地よくて暖かかったんだ。まぁ……つまるところ、あたしは提督の事が――。

8 : ◆7zy9BuaCrE[saga] 2016/02/05 00:46:30.73 ID:ayNS8PVU0

ーーーー
ーーーー


ザザーン


隼鷹「………」


隼鷹「夕日が落ちちゃったかぁ……戻らないとね」


隼鷹「あはは………こんな時間になって。また、飛鷹に怒られちゃうねぇ…」


隼鷹「…………」


隼鷹「うっ……く……ぅ」グスッ


隼鷹「うぐっ……うあ………うああああ……」グスッグスッ


隼鷹「うう……提督……何で死んじまったのさぁ……」


隼鷹「あたし、寂しいよぅ………」


隼鷹「頼むから……帰ってきておくれよぅ……」


隼鷹「うう……うあああああああ…」

9 : ◆7zy9BuaCrE[saga] 2016/02/05 00:47:24.94 ID:ayNS8PVU0

ーーーー
ーー


隼鷹「……」トボトボ


千歳「あっ…」


那智「むっ……おい、隼鷹」


隼鷹「あ…那智に千歳。どうしたのさ」


那智「今夜、一緒に飲まないか。良い酒が入ったんだが…」


隼鷹「あはは……ごめん。遠慮しとくよぅ」トボトボ


那智「あっ……お、おい」


千歳「………」


千歳「……隼鷹!」ガシッ


隼鷹「ど、どうしたのさ…」



10 : ◆7zy9BuaCrE[saga] 2016/02/05 00:48:53.33 ID:ayNS8PVU0

千歳「どうしたのじゃないわよ! 貴方最近おかしいわよ!」


那智「おい、千歳…」


千歳「提督がいなくなって悲しいのは分かるわよ! でも、いつまでもそんなんじゃ、提督も悲しむわ!」


隼鷹「………」


千歳「飛鷹も那智も千代田も心配しついるわ。お願いだからしっかりしてよ! このままじゃ、貴方も死んじゃうわよ!」


隼鷹「………」


隼鷹「お酒、飲みたいよ」


千歳「じゃあ飲めば――」


隼鷹「味がしないのさ」


千歳「え……」

11 : ◆7zy9BuaCrE[saga] 2016/02/05 00:49:59.68 ID:ayNS8PVU0

隼鷹「味がしない……どんなお酒飲んでも……味がしないんだよぅ」ポロポロ


千歳「隼鷹……」


隼鷹「ダメなんだ…もうダメなんだよぅ」ポロポロ


隼鷹「あんなに好きだったのに……味が……味が……」


隼鷹「うっ……うう……」


千歳「そんな……隼鷹……」

12 : ◆7zy9BuaCrE[saga] 2016/02/05 00:52:12.09 ID:ayNS8PVU0

ーーーー
ーー

ザザーン


隼鷹「………」


隼鷹「……今日は、3周年で2人で飲もうと思ってた酒を持ってきたよぅ」


隼鷹「提督、来ないからもう1人で飲むね」


隼鷹「………」グビッ


隼鷹「………」グビッグビッ


隼鷹「………」


隼鷹「……」ポロポロ


隼鷹「やっぱり……駄目だぁ。味がしないねぇ………」ポロポロ


隼鷹「提督……アタシ、提督と飲む日まで禁酒してたんだ」ポロポロ


隼鷹「だから、きっと提督と飲まないと味がしないんだよぅ……」ポロポロ


隼鷹「……帰ってきておくれよ……提督のお酒……飲ましておくれよぉ…」ポロポロ









ガタッ





隼鷹「?! 提督!」


13 : ◆7zy9BuaCrE[saga] 2016/02/05 00:53:59.52 ID:ayNS8PVU0

隼鷹「………」


隼鷹「何だ、ガラクタが物音立てただけか……」


隼鷹「ふふっ…そもそも死んだ提督が戻って来るわけないよぅ。阿呆だね、あたしも…」


隼鷹「………ん?」


隼鷹「何だあれ。ガラクタの物陰に何かある……」


隼鷹「………」ゴソゴソ


隼鷹「何だこの木箱。ガラクタにしては綺麗だねぇ……」


隼鷹「あ、開いた…………え」


隼鷹「何だこれ、酒? ………ん、何か紙が――」


《3周年おめでとう。これからも頑張ってくれ》


隼鷹「は?」


隼鷹「て、提督の字だ……」

14 : ◆7zy9BuaCrE[saga] 2016/02/05 00:55:14.42 ID:ayNS8PVU0

隼鷹「3周年って…………」


隼鷹「………」


隼鷹「サプライズであらかじめ隠しといたのかな」


隼鷹「………」


隼鷹「……ふ、ふふ。提督、渡す前に自分が死んでどうするのさ」


隼鷹「阿呆だね……抜けてる所はあったけど」


隼鷹「………本当に……阿呆だよ」


隼鷹「………提督、あたしにくれるやつだよね。いただくよ」


隼鷹「………」


隼鷹「………」グビッ


隼鷹「………あ。美味しい……」

15 : ◆7zy9BuaCrE[saga] 2016/02/05 00:58:00.32 ID:ayNS8PVU0

隼鷹「………美味しいよ」


隼鷹「そっか……提督からのお酒だもんね…」


隼鷹「………」グビッ


隼鷹「………美味しいなぁ」


隼鷹「ふふ、なんだよぅこれからも頑張ってくれってさあ」


隼鷹「仮にも女にプレゼントを渡すんだ。もう少し、気の利いた言葉をかいておくれよ。まったく……」


隼鷹「………」グビッ


隼鷹「提督。あたしはあんたの事、好きだよ」


隼鷹「あんたはどうだったの?」


隼鷹「………」グビッ


隼鷹「ぷはぁー……美味い」


隼鷹「………」


隼鷹「提督、あんたの事。好きだったよ」


隼鷹「お酒、ありがとね」


隼鷹「また、美味しく飲めるようになったよ」


隼鷹「だから……提督の言うとおり、これからも頑張ってやるよ」


隼鷹「…………」グビッ


隼鷹「………」


隼鷹「さよなら、提督」





ーー完ーー

16 : ◆7zy9BuaCrE[saga] 2016/02/05 00:58:58.84 ID:ayNS8PVU0

短いですが終わりです。ありがとうございました


元スレ:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1454599750/
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