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1 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 21:56:37.17 ID:NYUL6l7DO

コンセプトはゲス条じゃないのにやらかした上条さん。

鬱展開注意。

後少しエロい。

3 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 21:58:28.45 ID:NYUL6l7DO

その夜、白井黒子は風紀委員の活動がいつもよりも長引き、自らの寮に帰宅するのが完全下校時刻をとうに過ぎた時間になってしまった。


事前に寮監様には連絡を入れてある為、門限破りのペナルティーは受けずに済む。その為わざわざ能力を使って、疲れた身体に鞭打ってまで急いで帰宅するのが馬鹿馬鹿しく、ゆっくりと徒歩で帰り道を歩いていた。


そこで、彼女は見つけた。

彼女が敬愛するお姉様の、その意中の殿方(本人は素直に認めたりしていないが)。



上条当麻が公園のベンチにうなだれるように座って居る所を。

4 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 21:59:52.26 ID:NYUL6l7DO



「……何をなさっているんですの?」


「………白井か」



彼、上条当麻は酷く落ち込んでいるように見えた。


普段から特別生き生きしている訳では無い(非常時はまた別だが)彼だが、今日は何時にも増して暗く、今にも泣きそうな表情をしている。



しばし流れる沈黙…。



仕方なしに白井は口を開いた。



「……お帰りになりませんの? とうに完全下校時刻は過ぎていますのに」


「………」



上条当麻は答えない。

ただ俯いたまま、時が過ぎるのに任せている。

5 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 22:01:25.14 ID:NYUL6l7DO



「何か困り事でも?」



「………」



……沈黙。



「……帰りたくない理由でもあるのでしょうか?」



一瞬、上条は肩を震わせる。質問には答えずとも、その反応で彼がここに居る理由は解った。



「……あのシスターさんと喧嘩でもなさったんですの? それとも機嫌を損ねて追い出されたのでしょうか?」



彼の学生寮に、白いシスターが居候しているのを最近知った彼女は、彼の落ち込む理由を探ってみる。



「……違う。喧嘩もしていないし追い出された訳でも無い」


「ならばどうしてここに?」


「………」



……また長い沈黙。

6 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 22:02:54.25 ID:NYUL6l7DO





「……逃げてきた」







彼は弱々しい声で言った。






「怖くなって、どうすればいいのか分かんなくなって、……逃げてきた」


「何故…、ですの?」


「………」





「……犯したんだ。…………インデックスを」





……そう告げる彼の頬は、





涙で濡れていた。

7 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 22:04:48.67 ID:NYUL6l7DO


 1





「………っく…ぅ…」


…啜り泣く声を聞きながら、上条当麻は立っていた。



目の前には彼のベット。
そこに横たわるのは、彼の部屋に居候する少女。




インデックスという名前の、彼にとって大切な存在である、決して泣かせないと心に決めていた大事なモノ。



「ひっく……ぅ…く」



その大切なモノが泣いていた。




彼が泣かせたのだ。





……自らの手で。

8 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 22:06:12.32 ID:NYUL6l7DO






無理矢理剥ぎ取った彼女の修道服が部屋に散らばる。

安全ピンで留められただけだった彼女の衣服は、驚く程簡単に只の布きれに戻っていった。……客観的にそんな事を考えられる自分に嫌悪感がどんどん増していく。




「………とう…ま」




彼女が己の名前を呼ぶ。


自分を裏切り、心と身体にずっと消えない傷を付けた最低な男の名前を。


今の彼女には普段のような笑顔は無い。きめの細かい美しい銀髪も乱れ、何も身に付けていない身体には所々痣が出来て、まだ成長仕切らない幼い身体に、痛々しい乱暴の後が残る。




摘み取った。



まだ幼さが残る少女の純潔を。




ベットシーツに残る血の跡が彼に取り返しのつかない事をしたと、容赦無く告げる。





自分は、インデックスを無理矢理犯したのだと。

9 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 22:07:34.06 ID:NYUL6l7DO



「………とうま?」



再び己を呼ぶ声。

だが返事は出来ない。

してはいけない気がする…いや、返事をするのが怖かった。


「………とうま………返事して?」



「………ッ」



それでも返事は出来なかった……。



「とうま……ぅ…ひっ…く……ふぇ…ぅ…っ」



彼女はまた泣き出す。



上条はその場に居るのが堪えられなくなった。





だから逃げた。




必死に走り、何度も転びながら。



逃げても何も変わらないと分かっていても……。

11 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 22:09:06.04 ID:NYUL6l7DO





「………ハッ、何してんだよ俺」




夜の人気の無い公園のベンチに座り、うなだれる。


こうなったきっかけはよく覚えていない。


ほんの些細な事だったと思う。だがそんな事は今となってはどうでもいい。



「……幻想殺し…か」



右手を掲げ、それを見つめる。彼の右手に宿る、異能の力ならば例え神の奇跡ですら消し去る自分自身でもよく解らない謎の力。



……その右手で顔を覆う。
だが何かが変わる訳では無い。




「……使えねー右手だな」




彼の右手では、どんなに消し去ってしまいたくても、[現実]は[ピーーー]事は出来ない。

12 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 22:10:57.32 ID:NYUL6l7DO


 2


上条の部屋でインデックスはうずくまっていた。



「……とうま」



彼は何処へ行ったのだろうか、上条が部屋を飛び出してからずっと考えている。



「………とうま」



彼の名前をつぶやく。


自分を乱暴に、無理矢理に貪った少年の名前を。



「………と…うま」



何故あんな事になったのか、彼女には解らない。いつもと同じように接し、同じように笑い、同じように触れ合っていた。



「………とう…ま」



だけどそれは起きた。


唐突に、張り詰めた糸が切れたように。

13 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 22:12:16.94 ID:NYUL6l7DO



最初は驚いた。


突然奪われた口づけに。


次は嫌だった。


優しさがかけらも無い彼の手が、自分の密所をまさぐるのが。


そして悲しかった。


欲望を吐き出す為だけのような交わりが。


だけど、彼女は彼を受け容れた。


泣き叫び、抵抗すれば彼は思い留まってくれたかもしれない。


だがしなかった。


彼が…、この世界で何よりも大切で、絶対に離れたくない人が望むならと。



「……とうま」



驚きと悲しみと、恐怖と痛みでどんなに我慢しても涙が出た。


そして全てが終わると、彼はどこかへ行ってしまった。



「……とうま、どこに行ったの?」




名前を呼んでも、何も返って来ない。

14 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 22:15:21.41 ID:NYUL6l7DO


 3

「取り敢えず今夜はここに泊まると宜しいですわ」


「……すまないな」


白井黒子は上条当麻から話しを聞いた後、同じ学区内にあったビジネスホテルまで上条を連れて来た。


「礼なんて要らないんですの。 ここの宿泊費は貸してあげただけですもの。…後できっちりと返して頂きますわよ?」


「判ってるさ、必ず返す」



本当はお金の事なんてたいして気に留めていない。その辺はケジメなので言っているだけだ。



「………」


「………」



…またも沈黙が支配する。

上条はベットに腰掛けて、先程からそうしているように、うなだれ、俯いたままだ。

15 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 22:17:06.56 ID:NYUL6l7DO




(…全く、我ながらどうかしていますの)



今一緒に居る男は女性に乱暴を働いた卑劣漢だというのに。



(仕方ありませんわね、これもお姉様の為ですの)



彼女、白井黒子が上条に協力するのには訳がある。

それは、自らが敬愛してやまないお姉様、御坂美琴の為だ。


上条当麻が、今日行ったという非道を彼女が知ればどうなるだろうか。



彼女は間違いなく壊れてしまうだろう。



悲しみ、傷つき、怒りの余り破壊に走るかもしれない。


お姉様本人は認めないし、白井としても認めたくない事だが、その位お姉様は、御坂美琴は目の前でうなだれている男に心を奪われている。

16 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 22:18:27.62 ID:NYUL6l7DO



(お姉様にだけは知らせる訳にはいきませんわね……、この類人猿が嫌われるのは大歓迎ですがそれでお姉様が傷ついてしまうのはいただけませんの)



本来ならば即刻婦女暴行の罪で連行しているが、それをしても誰も得をしない処か返って混乱を呼びそうだ。



「……白井」



上条から声が掛かる。



「……なんですの?」


「……本当に俺を捕まえなくて良いのか?」



その質問はこのホテルに来る迄にもされた質問だ。



「それについてはお答えしたはずですの。貴方には多少借りがありますから今回は見逃す…と」



上条にはそのように説明していた。まさかお姉様が貴方にゾッコンでばれたら傷つく。…なんて口が裂けても言えない。まあ借りがあるのも本当ではあるが。

17 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 22:19:44.85 ID:NYUL6l7DO



「……そっか」



上条は力無く微笑む。




prrrrrrr、prrrrrrr!

携帯の着信音がなる。

自分の携帯だ。と白井は携帯に手を伸ばし、画面を見る。



着信:お姉様



「……そういえば帰宅すると言ってから大分時間が過ぎてますのね」



お姉様からの着信の理由を大まかに予想しつつ、通話ボタンを押す。

18 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 22:21:19.65 ID:NYUL6l7DO



「……もしもし、お姉様?」


『もしもし? あんた何してんのよ? 随分と遅いんじゃない?』



予想的中。余りにも帰宅が遅い為、心配して連絡をしてくれたらしい。



「申し訳ありませんの、風紀委員の仕事が思ったよりもはかどらなかったものでして…、そろそろ帰宅できると思いますの」


『フーン? なら良いけどさ、いくら何でもそろそろ帰って来ないと寮監にまた制裁されるわよ?』


「それは御免被りたいですの…、後一時間ほどで帰宅しますのでその旨を寮監様にお伝え戴けますでしょうか?」


『分かった伝えとくわ、……じゃあ切るわよ?』



……通話を終えた白井は軽くため息をつく。



「……御坂か?」



上条の問い掛け。白井は軽く頷く事で返答する。

19 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 22:22:30.57 ID:NYUL6l7DO



「……この事、言うのか?」


「言えるはずがありませんの」


「………」



また沈黙。


白井が見る限り、上条が御坂美琴の想いに気づいているそぶりは無い。


ならば何故、御坂美琴に伝えるか否かという事を気にするのか?




白井には、上条当麻の考えている事など解らない。

20 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 22:23:35.61 ID:NYUL6l7DO





「……まあいいですの。わたくしはもう行きますの。…貴方に頼まれた非常に面倒な用事もある事ですし」



皮肉混じりに別れの挨拶をする。



「ああ、いろいろ面倒掛けて悪いな白井」



「全くですの。迷惑料を貰いたい位ですわ」



苦笑いを浮かべる上条。



「……それじゃあインデックスの事、頼むな?」


「……判っていますわ、だからわざわざお姉様に帰宅時間を遅く伝えたのですから」

21 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 22:24:48.38 ID:NYUL6l7DO



白井が上条から話しを聞いた時、しなければいけない事は二つだと直ぐに思いたった。


一つは上条の寝床の確保。心情的には放って置いても構わなかったのだが、そうしてしまえばこの男はあのまま公園のベンチから動きそうに無かったし、借りに警備員にでも保護されたら自分の仕出かした事を洗いざらい白状して、保護が補導になるだろう。


そうなれば何処からお姉様の耳に情報が入るか分かった物ではない。


だからこそ、こんな敵に塩を贈るような真似をしているのだ。




もう一つは同じ女性としての配慮だ。


白井自身はそんな経験などないのでよく解らない、だが無理矢理に乱暴されるという事を想像してみれば、どんなに辛い事か位は容易に理解できる。


なのでまずは様子を見に行き、必要ならばケアを施して、その後上条から聞いた彼の担任だという人物に彼女を預ければいい(無論事情は伏せてだが)。

22 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 22:26:18.90 ID:NYUL6l7DO



「……俺が携帯持って来てたらお前に頼まなくてもよかったんだけどな」


「……それを言っても仕方ないですわよ」



確かに面倒な事ではあるが自分から(お姉様の為ではあるが)首を突っ込んだ以上はきっちりとこなすつもりだ。



「……後はわたくしに任せて下さいまし。そして貴方は頭を冷やしてこれからどうするのかよく考える事ですわね」



「……分かってる」



踵を返し、ドアに向かう。


最後に、一言だけ上条に言い放つ。




「……お姉様まで泣かせるような事があれば……、その時は貴方の事を死んでも許さないんですの」




白井黒子は何処までもお姉様、御坂美琴の味方なのだ。



その為ならば、例え恋敵で在ろうと庇う事も出来る。




それが白井黒子の強さだった。

23 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 22:28:00.02 ID:NYUL6l7DO


 4

「……ちょっと、いや大分入りづらいですわね」



上条の学生寮、その玄関前で白井黒子は呟いた。


上条当麻の前では見栄を張って任せておけなどと言ったが、内心は不安で胃が痛い程だった。



(風紀委員の仕事でもこういった事件には係わった事無いですし……うぅ、一体どのように接すればよろしいんですの!?)


頭を抱えて唸る。

どうしても扉を開ける踏ん切りがつかない。

24 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 22:29:50.58 ID:NYUL6l7DO



(野蛮人に傷つけられ涙する乙女には一体どんな言葉を掛ければいいんですの!? 一体どんな慰め方をすれば……はっ!! ここはわたくしが文字通りカラダを使って…、ってそんな事思い付いてる場合じゃないですのぉぉぉ!!)



テンパり出してガンガンと壁に頭をぶつけ始める。


こんな時でも煩悩が湧いて出て来る自分の頭にちょっと嫌気がさしているらしい。






そこで、玄関の扉が勢いよく開かれた。


白井は頭を壁に打ち付ける作業を止め、開かれた扉の方へと向き直る。



「……なんだ、……とうまじゃないや」



中から出て来た人物、裸体にシーツを被っただけという姿をした銀髪碧眼の少女は落胆したように呟いた。

25 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 22:31:09.15 ID:NYUL6l7DO



「……何かようなのかな? 今とうまはいないんだよ」



「……あ」




白井は言葉に詰まってしまった。


躊躇う内に先に扉を開けられた事や彼女の姿が裸だった事もあるが、…それ以上にシーツで隠し切れていない腕や首筋にはっきりと乱暴の跡である痣が、白い肌に付けられていたからだ。


「……あの男、金属矢を二・三本お見舞いしてからくればよかったですの…!」



そう言い捨て歯噛みする。
話は聞いていても、実際にその証拠を見ると怒りが込み上げてくる。

26 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 22:32:15.21 ID:NYUL6l7DO




「……しらい?」


「……ふぅ、取り敢えず中に入れて貰えませんでしょうか? 話はそれからですの」



一旦肩から力を抜き、目の前の少女に話し掛ける。


今ここで怒りを表わにした所で何にもならない。


白井は、冷静に自分が出来る事に努めようと心に決める。

27 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 22:33:34.39 ID:NYUL6l7DO


…少し時は過ぎ、常盤台中学女子寮。


「……ただいま戻りましたの」

御坂美琴がせわしなく部屋をうろうろしていると、同居人である後輩がようやく帰ってきた。



「遅いわよあんた! もうちょっとで捜しに行く所だったんだから!!」


「あぅ……、申し訳ございませんの」



複雑な面持ちで謝罪する白井。



「全く…、連絡しても繋がらないし、……本気で心配したんだから」


「……ごめんなさいですの」



白井は頭を深く下げ、再び謝罪した。



「その、作業に勤しむあまりご連絡に気づ 「嘘はつかないの!」



美琴は白井の言葉を遮り、ピシャリと言い放つ。



「…さっきもう少しで捜しに行ってたって言ったでしょ? 私と電話してた時はもうとっくに風紀委員の仕事の方は終ってたんだってねぇ? 連絡つかなかった時に初春さんに電話して聞いてんだからね?」


「えと、…あの、あぅぅ」

28 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 22:34:43.43 ID:NYUL6l7DO




冷や汗をダラダラとかきながらしどろもどろになる白井。


「一体何してたのよ?」


「えと、それは……」



美琴に追及されて口ごもる。



「……」



ついには俯いたまま黙り込んでしまった。



「……言いたくない事なのね?」


「……すみません」

29 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 22:35:47.50 ID:NYUL6l7DO


「そ、ならいいわ」


「へ?」


「危ない事に首突っ込んでる訳じゃないみたいだし、誰だって隠したい事の一つや二つあるでしょ? それを無理矢理聞き出す程私も野暮じゃないわよ」


「お姉様…」



美琴は泣きそうになっている後輩に向かって笑いかける。


気にならないといえば嘘になるが先も言ったように危険な事でないのなら無理に聞き出す事はしたくない(美琴自身もこのような事はしょっちゅうしていたのもあるが)。

30 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 22:36:36.21 ID:NYUL6l7DO

「………ふえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!! お姉様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! やっぱりお姉様は優しいんですのぉぉぉぉ!!」


「ちょっ! 鼻水つけんなぁぁぁ!!」



いきなり抱き着く白井。いつもなら電撃で追っ払う所だが本気で泣いているようなのでそれも憚れる為、今回だけは口だけの抵抗に留めておく。



(……よっぽどやなことがあったのかしら? まあ聞かないって言った手前追及なんてしないけど…ね)



御坂美琴には何が起こったのか知らされ無かった。


彼女にとって、それは納得の行く事ではない。


だが同時にこうも思うのだ。


なにも知らない方が幸せだったとも。


後の彼女はそれを嫌と言う程味わう事になる。


あの時は助けてくれる者が居た。


だが次はそれが居ない。




この日。この夜が彼女が平穏で居られる最後の夜だった。

31 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 22:38:55.69 ID:NYUL6l7DO


 5

降りしきる朝日が目に浸みる。


公園のベンチに座りながら空を仰ぎ見る。


自身の心とは裏腹に、空は気が遠くなる程青く澄み渡っている。


上条当麻は腕で目を覆い隠し、刺すような痛みを与えて来る光から逃れる。


そうしていると昨晩一睡も出来なかったツケもあり、抗い難い睡魔に襲われる。


いっそ何もかも投げだして惰眠を貪ろうかとも思うがそうもいかない。


彼にはやる事も考えなくてはならない事もウンザリする程あった。

33 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 22:40:10.41 ID:NYUL6l7DO



(……どうすりゃいいのかな、俺は)



考えれば考える程、昨日彼が起こした愚行が、彼の脳裏にこびりつき、彼の思考を阻害させた。





何故あんな事をした?





何故彼女を傷つけた?






何故、泣いているに止められなかった?





頭に浮かぶのは後悔と自責の念。


その先の事を考えようと思ってもうまく纏まってくれない。

35 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 22:42:13.18 ID:NYUL6l7DO



(……学校、いかねーと)



今日は平日だ。学生である上条は当然行かなくてはならない。


だが身体に力が入らない。



「なにしてんのよあんた?」



突然声を掛けられる。


目を覆っていた腕を降ろし、空に向けていた顔を声の発っせられたほうへと向ける。



「……御坂か」



御坂美琴。何故か解らないが自分にしょっちゅう突っ掛かってくる少女。



「…随分と元気無いじゃない、なんかあったの?」



どうやら自分は今、端から見ても解る程暗い顔をしているらしい。



「…なんでもねーよ、むしろ元気いっぱいの上条さんの方が珍しいだろ?」



軽口を叩き、自然を装う。


白井との約束もある、彼女にだけは何も悟られてはならない。

36 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 22:43:55.05 ID:NYUL6l7DO



「ふぅん…、そお?」



そういうや否や、美琴は上条の隣に座る。



「……学校行かなくていいのかよ?」



「あんたこそ」



当然の問い掛けは、これまた当然の返答で返される。



「そりゃそーだな、確かにこんな所で油売ってる俺が言える立場じゃねーや」



上条は可笑しそうに小さく笑う。だが美琴は真剣な面持ちのままで上条の様子を見ている。


「……なんでせう? 上条さんの顔に何かついているのでしょうか?」


「無理に茶化さなくていいわよ、……本当に何があったの? 教えて」



美琴の言葉を聞いて、上条は自分の心臓が跳ね上がったような感覚を覚えた。


さらに美琴の言葉は続く。

37 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 22:45:52.18 ID:NYUL6l7DO



「そんな今にも泣きそうな顔して何でもないなんて言われても信じらんないわよ。むしろ聞いてくださいって言わんばかりね」


「……全く、美琴センセーには敵いませんよ」



上条は口を開く。



「いつもの上条さんの不幸ってやつですよ」



嘘をつく為に口を開く。



「実は財布を落としちまってな、見つからなくて途方に暮れてた所なんですよ」



困り顔で頭をボリボリと掻き、飽くまでも普段と変わらない事を装う。


そんな上条を見て美琴はため息をつく。



「…あんた本当に嘘つくの下手くそね」


「………ッ」



上条は心底思う。





この勝ち気な瞳をした少女には本当に敵わないな…と。

38 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 22:48:03.53 ID:NYUL6l7DO


 行間1



「……上条ちゃんはまたおさぼりさんですか」



教室の教壇の前で出席を取りながら、月詠小萌はため息をついた。



「カミやんはきっとまた何処かで女の子とフラグ建ててるん決まってるやん!」



青髪ピアスが根拠は無いが一番有り得そうな事を言う。それに反応してクラス中から 「またか。あの野郎」 だの、「あの節操無しめ!! 学生の本分を分かってないのかしら!?」 だのブーイングが殺到する。


小萌は「みなさ~ん! お馬鹿ちゃんの事はほっといて先生の話を聞いて下さいね~!!」 と注意を促すが鎮まる気配は無い。


騒がしい事この上ないが、一応呼びかければ出席には応じてくれるので放っておく事にする。担任としてどうかとも思うが、別に喧嘩になるような話題でも無い。授業が始まる頃には収まっているだろう。

39 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 22:49:22.20 ID:NYUL6l7DO




出席簿に記入をしながら騒ぎの原因たる困った教え子の事を考える。



(一体上条ちゃんはどうしちゃったんですかねぇ? 昨日も風紀委員の子にわざわざ頼んでシスターちゃんを私の所に泊まらせましたし…)



上条が何も言わないで突っ走るのはいつもの事だ。

…だが今回はそれらとは違うと思う。



(……シスターちゃんも昨日は何か変でしたしねー)



小萌は昨晩のインデックスの様子を思い浮かべる。

40 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 22:50:33.20 ID:NYUL6l7DO


インデックスは自分に対しては普段と変わらないようなそぶりをしていた。


だが小萌はそれに違和感を感じた。


インデックスの行動や言動に隠し切れないぎこちなさが微かにだが感じ取れた。



(……シスターちゃんになにか酷い事したり言ったりして、…それで上条ちゃんがいたたまれなくなって逃げちゃったんですかねぇ?)


おおざっぱな予測を立てる小萌。彼女はインデックスから事情は聞いていない(聞かれたくない事なのだろうと思い、話してくれるまで待つ事にした)。そんな少ない情報でほぼ正解を導き出せるのは流石としか言いようが無い。

41 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 22:51:32.17 ID:NYUL6l7DO



(う~ん、そうだとしたらこの件は私はでしゃばらない方がいいですねぇ…)



年齢的に問題あるかもしれないが、そんな事をいえばインデックスが上条の学生寮に居候している時点でアウトである。



小萌自身、生徒の恋愛沙汰に無理に首を突っ込んだりはなるべくしたくない。



(アドバイス位ならしてあげたいですけど…、それも上条ちゃん次第ですしねぇ~)

42 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 22:52:43.93 ID:NYUL6l7DO




「にゃ~、小萌先生、もう授業始まっちまうぜい?」


「HRは終わってる。でも出席が取り終わってない」



言われて気づく。いつの間にか考えに没頭して出席を取るのを失念していた。



「あっ!? はわわわっすいません!! 急いでやりますから!!」



わたわたとあわてふためく小萌。生徒達から生暖かい微笑みが漏れる。



(とっ…取り敢えず上条ちゃん達の事は保留ですね)




出席を取り終え、そそくさと教室を後にする。廊下を歩き出してすぐに始業のチャイムが鳴る。急いで次の授業の受け持ちに行かなければならない。

43 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 22:53:31.48 ID:NYUL6l7DO



月詠小萌は教師だ。


教師である以上、どんな生徒にも分け隔て無く接しなくてはいけない。


その中には上条当麻も勿論入っているし、直接の教え子では無いがインデックスだって自分の生徒のように感じている。


彼らが助けを求めれば必ず助けるし、力になる。


だがそれだけでは駄目なのだ。


助けを求めるだけしかしないのはただの甘えでしか無い。


まずは何事も自分で考え、努力しなければいけない。

それすらしないで縋るのはお門違いでしかない。



(まあ、上条ちゃんはその辺り弁えてるでしょうからきっと大丈夫ですね)



その上でどうしようもなくなったらきっと助けを求めてくるだろう。




彼女は教師であり、そして大人だった。


見た目小学生の大人な教師は、今日も可愛い生徒達の為に教鞭を振るう。

44 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 22:56:18.00 ID:NYUL6l7DO


 6

「……集中できませんわね」


白井黒子は小声で呟いた。


自分の席で頬杖をつきながら退屈な授業を聞く。


普段ならばこんな腑抜けた態度で授業に参加するなど有り得ないが、今日に限っては大目に見てほしいと白井は思う。


白井は昨晩の出来事を未だに引きずっていた。


無論自分は部外者で、これ以上首を突っ込むのは野次馬以外の何物でも無い事は理解している。


それでも考えてしまう、敬愛するお姉様が慕うあの男と、その傍らに寄り添う少女の事を。


白井は昨晩交わした銀髪の少女との会話を思い出す。





…………

45 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 22:57:36.41 ID:NYUL6l7DO






「…その、大丈夫ですの?」


「うん、別にへいきかも」


「……平気そうには見えないんですの! 貴女はあの卑劣漢に…!!」


「とうまの悪口は言わないで!!」


「……ッ」


「……とうまは別に悪い事していないから、…少し乱暴だったけど…わたしはとうまの事好きだもん。だからとうまは悪くない…!」


「……貴女はそれで良いんですの?」


「うん。わたしはとうまが居ないといやだから。……とうまがわたしを求めるらなどんな事でもできる」


「…そう…ですの」

46 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 22:58:50.63 ID:NYUL6l7DO




…………






間違っていると思う。


上条という少年も。


あの健気な白い少女も。



だが……。


何が間違っているのか上手く纏まらない。


ただ歪だという事。


白井黒子にはそれしか理解出来なかった。



「……たいして歳は変わらないのに、随分面倒な事をしてますわね」

47 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 23:00:21.17 ID:NYUL6l7DO


 7

「……おい、御坂」



上条当麻は呼び掛ける。



「………なあ!」



自分の手を引き歩く少女に呼び掛ける。



「………」



返答は無い。


ただ、握られた手だけは決して離すまいと力が篭められる。



「…………御坂」

48 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 23:01:29.97 ID:NYUL6l7DO



上条当麻は御坂美琴に昨晩の出来事を打ち明けた。


白井黒子との約束を破ったのは悪いとは思うが、上条は美琴に隠し通す事は出来ないと思った(それ以前になぜ美琴に言ってはいけないのかも彼は理解していないが)。


確かにこの事はあまり人に言うような話では無いだろう。だが彼女、御坂美琴は彼を酷く心配していた。


嘘でごまかす事も出来ない。何も言わずにいても悪戯に彼女を不安にさせるだけだと判断した彼は白井との約束を破り、全てを打ち明けたのだった。

49 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 23:03:12.07 ID:NYUL6l7DO



「………ねぇ」



暫く、手を引かれながら歩いていると、ようやく御坂美琴は口を開いた。



「………このままデートしよっか?」



上条は何を言われたかよく理解出来なかった。



「聞こえなかった? デートしよって言ったのよデート♪」


「…お前何言ってんのか分かってんのか?」



上条は目の前の少女が何を考えてるのか本気で分からなくなった。



「さっきの俺の話聞いただろ? そんな奴と一緒に居てお前は平気なのかよ!?」



上条の自分で自分をおとしめる言葉。



「そんなの知らない!!」



だが御坂美琴はそれを否定する。



「あんなの嘘に決まってるもん、あんた…当麻がそんな事する奴な訳ないじゃん……!!」



「御坂…、俺は…」

50 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 23:04:28.38 ID:NYUL6l7DO



上条が言葉を放とうとした所で、繋がれたままの手をさらに強く握られる。



「私には解るもん…、あれは当麻の嘘、本当の事言いたく無いからって適当な事言っただけ…!!」



美琴は握り締めた上条の手を自身の胸の辺りまで持ち上げ、今度は両手で愛おしむように優しく包む。



「……御坂」



わからない。


何故彼女は昨晩の自分の行いを否定する?


何故彼女は手を放さない?


何故、彼女はこんなに泣きそうな顔になっている?






自分には、わからない。

52 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 23:06:20.43 ID:NYUL6l7DO








「…………」

「…………」



上条の手を抱きしめるようにしたまま決して離そうとしない美琴。


そして、されるがまま時が過ぎるに任す上条。


どれ位時間が経っただろうか。長い沈黙の後で、ようやく美琴は口を開いた。







「……………好き」








彼女は俯いたまま口を震わせる。



「……当麻の事、好きなの」



掠れるような声で言葉を紡ぐ。


瞳に涙を浮かべ、慈悲を請うように、上条の手に縋り付く。

53 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 23:08:09.89 ID:NYUL6l7DO





御坂は今なんと言った?



   「 好 き 」



誰に? …自分にだ。


あの御坂美琴が? 自分を?


上条は己の頬が熱くなるのをはっきりと感じた。


いつも怒ってばかりで、ことある事に電撃を飛ばしてくる目の前の少女が、自分・上条当麻の事を好きだと言ったのだ。


心臓の音が自分で解る程、速く脈打つ。


必要以上の汗が噴き出る。


喉が一瞬で干上がり、水分を欲す。





上手く開いてくれない口をなんとか開く。

54 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 23:09:26.58 ID:NYUL6l7DO



「…ありがとう、御坂……、 嬉しいよ」



上条は素直に思う。



嬉しいと。



上条の言葉を聞いて、美琴は顔を上げる。



「ホントに? ホントに嬉しい?」



その顔にあるのは期待。



「……ああ、本当だ」


「じゃあ…!」



上条は美琴の言葉を遮るように告げる。

56 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 23:10:39.17 ID:NYUL6l7DO



「駄目なんだ」



彼女の縋り付くような眼差しから目を逸らして。



「嬉しいのは本当だけど……、駄目なんだよ」



彼女の想いを拒む。


自分には彼女の想いを受け入れる資格は無い。



「……なんで?」



彼女の瞳から大粒の涙がこぼれる。



「……なんで駄目なのよ?」



握られた手が離される。



「……すまない」



謝る事しか出来ない自分に反嘔がでそうになる。

57 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 23:11:59.14 ID:NYUL6l7DO



「……ひっ…く、…う…っ…、…ふ…ぇぅ…っ」


…泣き声。


また泣き声だ。



「…や…だよ…っく、……ひっ…ぃぅ、なん…で…ぐすっ…わたしは…、…だめなのよ……ぅぅ」



「…………」



また泣かした。


また傷つけた。


御坂美琴の姿がインデックスと被る。


どちらも泣いていた。


御坂美琴は目の前で。


インデックスは心の中で。


二人共、自分が守ると決めた大切なモノなのに。


…何故傷つけたのだろう。


後悔の念しか浮かばない。


これが幻想ならば、喜んで壊すのに。


だが、壊れてしまったのは二人の少女の幻想だ。


自分にのしかかる現実ではない。


幻想を[ピーーー]事しか出来ない少年は、守れ無かった幻想を前にして、立ち尽くす事しか出来なかった。

58 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 23:15:45.32 ID:NYUL6l7DO


 7.5(Index)

……待つ。



「……とうま」



彼の帰りを……。



「……今日は帰って来る……よね」



ずっと待っている。



「………とうまは、………いなくならないよね?」



彼の部屋で、彼が必ず帰って来た場所で。



「……とうま」



自分自身が居場所だと思える、唯一の場所で。


幾度も彼の名を呼ぶ。

59 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 23:17:06.41 ID:NYUL6l7DO



「…………とうま、わたしは大丈夫…だよ?」



彼はいつも、名を呼べば優しく微笑んでくれた。



「だから、……早く帰って来て……とうま」



早く帰って来てほしい。


そしていつものように自分に優しく微笑んでほしい。


でないと…壊れてしまう。



「…とう…ま」



縋るように、傷を癒すように呟く。


彼の名を呼べば呼ぶ程、涙が頬を濡らす。


泣いてはいけない。


泣けば彼が傷つく。



「…とうま」

60 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 23:18:22.86 ID:NYUL6l7DO



昨夜、彼は行ってしまった。


何故?


自分が泣いたからだ。



「……わたしは、平気だったのに」



泣いたから、彼は逃げてしまった。



「……とうま」



伝えなくてはいけない。


自分の想いを。


彼を壊さない為に。


自分自身が壊れない為に。



「………とうまは悪くないから」

61 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 23:19:43.17 ID:NYUL6l7DO



彼がする事なら全て受け止める。


欲望も


怒りも


暴力でも。


優しさと、そして愛情をくれるのなら。



「……だから」



ひとりにしないで。



「とうまの事……好きだから!」



壊したまま、置いて行かないで。



「………とうま!」



早く帰って来て。


今は、自分の傍に居てほしい。





これ以上、待つのは嫌だ。

62 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 23:21:57.55 ID:NYUL6l7DO


 7.5(mikoto)

私はあいつが好きだった。

それに気づいたのは何時だっただろうか?


最初はただ気に入らない、ムカつく奴だと思ってた。


いきあたりばったりで。


ホントは強い癖に、のらりくらりと逃げてばっかで。


人の事助けても、別に何でもないようにのほほんとしてて…。





それでいて、…優しくて。

63 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 23:23:18.91 ID:NYUL6l7DO






はっきり自覚したのは、いつかの地下街であいつが何かと戦っていた時?


夏休みの最後の日に、あいつの言葉を聞いた時?


それとも、妹達を助ける為に藻掻いて藻掻いて、どうしようもなくなった時、あいつに手を差し延べられた時?




あいつは誰にでも手を差し延べる。


目に映る全てを守ろうとする。


わかっている。


自分はただ、その中の一人だっただけだ。


あいつにとっては、…自分はただの知り合い。


それが嫌だから、あいつにちょっかいを出していたのかな?


少なくとも、最近はそうだと思う。

64 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 23:24:47.15 ID:NYUL6l7DO




「昨日、……インデックスを無理矢理襲った」



…嘘よ。



「あいつ、泣いてたのに……止められ無かった」



……そんなの信じない。


あんたがそんな酷い事をする訳が無い。


きっといつものように、面倒だから適当に遇っているだけだ。



「…………」



なんでそんな辛そうな顔してんのよ。……あんたは嘘が下手くそなハズなのに。



「………嘘なら良かったんだけどな」



辞めてよ、……嘘だと思えなくなるじゃない。



「……人に話すような事じゃなかったな、すまない」



なんでそんな事言うのよ…、なんで謝るのよ! 聞き出したのは私だけど、……私はこんな嘘が聞きたかった訳じゃないのに。

65 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 23:26:28.63 ID:NYUL6l7DO



「……だから、もう俺には係わるなよ、……こんな奴に付き纏ってもろくな事無いだろ?」



…つまりそういう事なの? 私が嫌だから嘘までついて離れさせようとしてるの?


…嫌よ。


絶対嫌。



あんたが嘘をついてまで離れたくても、私は騙されないし離れてもやらない。



「おい、どうしたんだよいきなり!?」



手を取って歩き出す。


今まではこんな簡単な事すら恥ずかしくて出来なかったのに。



少しドキドキするだけで、別になんてことはない。



「何処行くだよ!? …学校はどうするんだ!?」



関係無い。…学校なんか行くよりあんたと一緒に居たいもん。

66 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 23:28:15.08 ID:NYUL6l7DO




歩く。


手を繋いで歩く。


やっと繋げた。


ずっと繋ぎたかった。


もう離したくない。


離してしまえば、何処かに行ってしまいそうだから。

だから、離れないように力が篭る。


……離せば、あの子の所に戻ってしまう。



「…なあ、御坂!」



……聞こえないフリをしておく。



「聞いてくれ、…御坂!!」



嫌だ。聞いたらまた嘘ついて逃げようとするに決まっている。



「……なあ!!」



…しつこいわね、まあ確かに黙って連れ回されるのも嫌かな?


じゃあデートって事でどうかしら?


こんな事、私が言えるなんて思わなかったな。

67 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 23:29:41.28 ID:NYUL6l7DO





「…本気で言ってんのか?」


当たり前じゃない。あの時みたいなふりじゃなくて…、本当にデートよ。



「何言ってんのかわかってんのかよ? 俺は昨日……」



言わないでよ!!


嘘でも他の女を抱いた話なんてしないで。


あれは嘘。



あんたの下手くそな嘘。



本当の事を話したくないから、あんたがついた適当な嘘。



「……御坂、俺は本当に」



聞きたくない。


お願いだから嘘にさせておいてよ。

68 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 23:31:50.33 ID:NYUL6l7DO

当麻。


彼の名前を呼んでみる。


彼は私の気持ちに気付くだろうか?



「…………」



彼の手を両手で握り直す。


彼は辛そうな顔のままだ。



「………御坂」



名前で呼んでよ。


私にも…少し位優しくしてよ。



「…………」




…………




………



……





言おう


私の気持ちを


伝えるんだ。


このままじゃ、……彼は行ってしまう。


どうにかして、振り向いて貰うんだ。


だから言うんだ。


『好き』って。




私は…



彼、当麻が居ないと嫌だ。

69 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 23:34:46.56 ID:NYUL6l7DO


 8

『……分かったぜいカミやん、禁書目録の世話は舞夏に頼んでおくにゃ~』



電話越しに会話する友人は、軽快でいて妙な口調で、上条当麻の頼み事を承諾した。



「…悪いな土御門。本当はお前に頼むのは気が引けるんだけど…」


『気にすんなにゃ~、困った時はお互い様ですたい』



いつもと変わらない態度、同じ雰囲気で話す友人の言葉で、上条は多少だが心が軽くなる。



「…とにかく礼を言うよ。ありがとな」


『別にいいって言ってるんだがにゃ~? そんなに後ろめたいなら理由位は言ってほしいもんだぜい?」


「…それは」



口ごもる。昨晩の事はなるべく言わないようにと釘を刺されている。



『……冗談だにゃ~。話したくないなら無理に話さないでいいですたい』


「……すまん」



謝る事しか出来ない。


そんな自分が酷く情けなく感じる。

70 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 23:36:41.34 ID:NYUL6l7DO





『そろそろ切るぜい?あまり長話をしててもカミやんは都合が悪いだろ?』


「……そうだな、またな土御門」


『ああ、明日学校でにゃ~♪』



通話を切り、自分も腰掛けているソファに置く。


それから個室サロンの見慣れぬ天井(自身は一度も入った事もないから当然だが)を見ながら、本当にこれで良かったのかと自問する。

71 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 23:37:45.10 ID:NYUL6l7DO



(……インデックスは、どう思ってんのかな)



自分が帰らない事を?


違う。


彼女を傷つけた自分自身の事をだ。



(さっき土御門は、インデックスは俺の部屋に居るって言ってた…)



…何故だ?


何故、彼女は己を傷つけた人間の下に居ようとする?


他に行く所が無いから?


違う。


その気になれば彼女は何処にでも行ける。仲間が居るイギリス、この学園都市にだって彼女の味方は沢山出来た。


それとも、自分が逃げ出したまま帰らないと見越しているのか?


違う、絶対に違う。


彼女はそんな人の心を見透かしたような行いはしない。しないと信じている。


なら…何故だ?


わからない。

72 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 23:39:19.11 ID:NYUL6l7DO




「……お待たせ」



上条の自問は、控えめに掛けられた声によって遮断された。


声の掛けられた方向、丁度シャワールームの入り口の方に目を向ける。


そこには入り口のドアにもたれ掛かり、そして少し大きめなバスローブを身に纏い、頬を朱く染める少女の姿があった。



「……御坂」



御坂美琴。


自分を好きだと言った少女。


そして、自分がその想いを拒んだ少女。


二人は今、同じ空間の中に居る。


二人きりで、誰の目にも留まる事のない所に。

73 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 23:40:37.88 ID:NYUL6l7DO



二人きりだ。


自分を好きだと言った少女と。


確かに自分は、彼女の想いを拒んだ。


だが、彼女が嫌いな訳ではない。


むしろ好意的に思う。


だからだろうか?


この状況に鼓動が早くなるのを否定出来ない。



「……シャワー、空いたけど?」


「あ…ああ、分かった」



座っていたソファから腰を上げ、それから隅の方に置いてあったバスローブを手に取りシャワールームに向かおうとする。


しかしその入り口の前には未だに美琴が寄り掛かっており、どいてくれる気配は無い。

74 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 23:42:10.94 ID:NYUL6l7DO



「…いや、どいてくれないとシャワー浴びれないんだが?」



上条は困った風に口に出した。しかし目の前に居る少女は何も言わずにただ頬を赤らめたまま動かず、その視線は上条と合わせないようにしているのか、右に左にせわしなく動いている。


上条は短く、小さなため息をつくと、少しだけ笑顔を向けて美琴に語りかけた。



「御坂、さっきも言ったけどお前には感謝してるよ、正直今日も帰りたくなかったからな」


「……うん」


「だからさ、そんな不安そうな顔すんなよ? ……少なくとも今日は何処も行ったりしないから」


「………」



何も言わずにドアから離れる美琴。



「……どうかしたか?」


「……何でもない」



上条は美琴の行動を疑問に思いつつも、取り敢えず汗を流す為にシャワールームに向かった。

75 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 23:43:45.22 ID:NYUL6l7DO




…………



今から数時間前、あの告白の後も二人は共に居た。


御坂美琴は上条当麻と一緒に居たいと願い。


上条当麻は、自身の寮に帰るのを躊躇っていた。


そして二人はこの個室サロンに来た。


御坂美琴が望むように。


上条当麻が流されるままに。


御坂美琴は自身の身勝手だと理解して、それでも自分の想いに身を任せた。


上条当麻は自身がここに居るべきではないと理解しながら、それでもその内に燻る罪悪感から、そして恐怖心から御坂美琴と行動を共にした。


互いに過ちと歪[いび]つさを理解しながら、それでも二人はこの場所に来た。

76 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 23:45:36.05 ID:NYUL6l7DO




………





シャワーを浴び終え、美琴の居る部屋へと戻る。


着替えなど用意していなかった為、上条もバスローブ姿のままでいる。



「…おかえり」



ソファに座りながら同じくバスローブ姿のままの美琴が出迎える。



「えと、…着替えないのかよ?」



気恥ずかしさから理由がわかりきった質問をしてしまう。



「だって、今日着てた制服しかないもん…、あんた…当麻だってそうじゃない」



予想通りの返答。何故そんな事を聞いたのかと逆に自分で考えてしまう。


二人きりの空間。


互いに湯上がりのバスローブ姿。


そして自分に好意を抱いている少女。


自分は男だ、これだけ状況が重なれば意識するなと言われる方が難しい。


例え、それが想いを拒んだ相手でもだ。

77 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 23:46:52.61 ID:NYUL6l7DO





「ぼーっとしてないで座ったらいいじゃない、座る所なんて沢山あるんだしさ」



言われて気付く。自分が不自然に固まっていた事に。


適当な所、丁度美琴が座るソファの向かい側に腰掛けながら、自身の緊張をほぐす為に会話を切り出す。



「しっかしこんな所借りる金をポンと出せるとは、流石は常盤台のお嬢様って所だな?」


「そっかな? そんなたいした事ないと思うけど?」



何気ない会話を続ける。


美琴の様子もここに来るまでの雰囲気ではなく、多少いつもの彼女のそれに戻っていた。


それで良い。


昨日とは場所や事情が違うとはいえ、今日も過ちを犯すような事があれば自分はもう立ち直れないと思う。


都合が良いとは感じるが、今談笑している少女とはこれからも変わらずに、今までと同じ関係でいたい。

78 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 23:48:29.78 ID:NYUL6l7DO


「………」

「………」



ふと、何気ない拍子で会話が途切れた。


静まり返る部屋。


先程まで笑顔を見せながら話していたのが嘘のように、お互い口を開かない。


こんな時、いつもならどうしていただろうか?


……わからない。


そして、そこで気付く。


もういままでと同じで居続ける事が出来なくなっている事に。


上条の思考はまた深く、それでいて澱んだ何かに埋め尽くされる。


こんなはずじゃないのに、壊したくなんかないのに、どんなに取り繕っても、一度壊したモノは元に戻らないのだろうか?


右手で殺した幻想と同じで、そこに確かにあったモノは殺せば消えてしまうのだろうか?

79 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 23:49:43.66 ID:NYUL6l7DO





「………ねえ」



彼女が声を掛けてくる。


消え入りそうな小さな声なのに、はっきりと意志が篭っていてよく聞こえる。



「そっちに行かせて?」



同意も拒否も告げさせぬままに動く彼女。


美琴は上条の目の前まで来ると、見下ろすようにソファに座る彼に眼差しを向ける。



「…御…坂?」



彼女の熱を帯びた視線に息を詰まらせながら、彼女に呼び掛ける。

80 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 23:51:14.94 ID:NYUL6l7DO



「……嫌」



拒否の言葉。



「……名前で呼んでよ」



それは懇願だった。



「当麻は、……私が名前で呼んでいても不思議にも思わないのね」


「………ッ」



言われ、初めて気付く。


自分はこの少女に名前で呼ばれた事など無かったはずなのに。



「話してる時もずっと気にしてたのに、わざとかとも思ってたけど……その様子だと違うかな?」



確かにそうだ。決して気づかないフリなどしていない。



「でもさ……」



彼女は言葉を紡ぐ。



「そっちの方が、……私は痛いよ」

81 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 23:52:05.04 ID:NYUL6l7DO



自分の、そして彼の心をえぐる言葉を紡ぐ。



「……当麻」



涙をこぼしながら名前を呼ばれる。


何かを求めるように。


何かを否定するように。


想いの全てを籠めるように。



「………みっ…!」



上条の発しようとした言葉は、無理矢理に中断された。


彼女、御坂美琴の唇で。


彼の答えを受け入れも、拒絶もせずに。


ただ、自分の想いでなにもかも塗り潰すように。


歪つで、不器用な、狂おしいまでの口づけを。


上条当麻はされるがままに受け入れた。


流されるままに、口づけを受け入れた。

82 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 23:56:01.67 ID:NYUL6l7DO


 行間2

「……ごちそうさま」



そう言ってテーブルの上に箸を置くインデックスの表情は、誰が見ても分かる程暗く沈んでいた。



「もう食べないのかー…? 沢山食べると思っていっぱい作ったんだがなー?」


「うん、ごめんまいか。…ちょっと食欲ないんだよ」



彼女の向かい側に座る土御門舞夏は、普段では考えられないような彼女のセリフに、何より彼女のその様子に驚きと気まずさを覚えた。


舞夏自身は彼女の事情知らない。ただ兄、土御門元春に頼まれ彼女の食事の世話をしただけだ。


だから何故彼女がこんな暗い表情をしているのかは知らない。


何故、家主である上条当麻が居ないのかも知らない。

聞き出せる雰囲気でも無かった。

83 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 23:58:18.49 ID:NYUL6l7DO



(うーん…、ドロドロに狂ったラブの匂いがするんだがなー? 流石にコレは聞けないなー)



乙女の勘というやつなのだろうか、かなり鋭い嗅覚を発揮するが、そこは追及するのを自重した(兄からあまり詮索するなと言われているのもあるが)。


と、そこで玄関から来客を告げるチャイムが鳴った。


「ッ!! とうま!?」



いち早く反応したインデックスが玄関に駆け寄る。


舞夏は上条ならチャイムは鳴らさないだろうと思ったが口には出さなかった。



(こんな時間に誰だー? 上条の知り合いは常識通じない奴多いからなー…)



大分失礼な評価だがそれも致し方ない。すでに完全下校時刻も過ぎて、外を出歩く者はほとんどいない。学園都市でこんな時間に訪れるなど非常識とされても何も言えない。

84 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/22 23:59:53.68 ID:NYUL6l7DO





「………あ」



扉を勢いよく開き、自身が待ち望む者の名前を呼ぼうとするインデックスだが、扉の向こうに居る人物が彼女の希望とは異なる人物だった為、代わりに落胆した声を上げる。



「…まさか昨日と同じリアクションで出迎えられるとは思いませんでしたの」


「……しらい」


「……その様子だと上条さんも帰って来ていないようですわね?」



来客、白井黒子の問いにインデックスは何も言わず、頷くだけで肯定する。


それから白井を部屋の中に招き入れ、それに白井も応じる。

85 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 00:01:33.94 ID:mUkdoxTDO



「おー、誰かと思ったら白井だったのかー」


「あら? どうして貴女がここに居るんですの?」



舞夏は白井に事情を説明し、それに白井も納得した。



「…そういえば貴女のお兄様が上条さんのご友人でしたわね。わかりましたの」


「そういう事なんだなー」



そこで会話に区切りをつけ、舞夏は座っていた席から立ち上がった。



「さて私は帰るぞー? …メイドとしては後片付けしないで行くのは癪なんだがなー」


「いきなりですのね? どうしたんですの?」


「んー、何か私はいない方がいい気がしてなー? あんまり人に言いたくない話をするんだろー?」



その指摘にインデックスと白井は何も言えなかったが、その表情だけでその通りだというのは一目瞭然だった。



「……上条が明日もいなかったら言うんだぞー? ちゃんとご飯を作りに来るからなー!!」


「……うん、ありがと……じゃあねまいか」



弱々しくではあるが、笑顔を見せて礼を言うインデックス。



「おー、また今度なー!!」



そう告げて、彼女の大切な友人の一人である土御門舞夏はその場を後にした。



(……本当はすっっっごく気になるんだがなー!! あー…!! ぐちゃぐちゃに爛れたLOVEの匂いがぷんぷんするぞー…!!)

86 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 00:04:38.78 ID:mUkdoxTDO



「……気を使わせてしまいましたわね」


「……うん」



残された二人の表情は暗い。



「…あれから上条さんは?」


「……朝にわたしが戻る前にせいふくとかケータイデンワーとか取りにきたみたいだけど…、わたしは会ってないんだよ」


「……そうですの」



…………。



しばし沈黙が支配し、さらに場の空気が重くなる。


※…眠い、…寝て良い? つかまだ誰か見てる?

89 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 00:06:18.49 ID:mUkdoxTDO



「………お姉様もお帰りにならないんですの」


「………え?」



白井が呟くように放った言葉は、何故かインデックスの心を深くえぐった。



「…携帯の方に連絡も入れてみましたけれども音沙汰無し、しかも学校も無断で欠席してますの…、同じく上条さんも連絡が着かず、学校を無断欠席したみたいですの…」



「………」



インデックスは何も言わない。ただ白井の話を聞く。



「……勿論それだけでお二人が一緒に居るとは断言できませんけれども、……昨日の今日ですから念の為確認しようと思い、お邪魔したのですが…」




「………とうまは……帰ってきてない」

94 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 00:10:03.66 ID:mUkdoxTDO

※わりといらっしゃるご様子ですな。じゃあもう少しだけやる。




痛い。



心が、…痛い。



まだ二人が共に居ると決まった訳ではない。



……それでも痛い。



何故、心が痛むの?



……居ないから。



彼が傍に居ないから。



とうま……。



心の中で彼を呼ぶ。



何度も。



何度でも。



彼がいれば痛くないのに。



彼がいれば、悲しくないのに。



彼がいれば、…寂しくなんかないのに。





「……とうま、どうして帰ってこないの? ……みことといっしょにいるからなの? ……はやく帰ってきてほしいのに……」

96 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 00:12:54.33 ID:mUkdoxTDO


 8(Scene2)

「………んっ…」







………キス。





キスをしている。




御坂美琴と…。




自分を好きだと言った少女と…。


「……っ……ん……!」



その想いを拒んだはずの自分に。


熱く。


深く。


ぎこちなく。


震えながら…。


肩に添えられていただけだった彼女の手が、次第に背中の方へと回される。


乾ききっていない彼女の髪から漂う、微かな香りが鼻腔を擽[くすぐ]る。


思っていたよりも華奢で、しかし柔らかな彼女の身体が自分の身体に重なり合う。

97 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 00:14:21.74 ID:mUkdoxTDO




舌を絡ませ。


唾液を混ぜ合わせ。


優しく。


激しく。


長く。


甘く。


溶けてしまうように。



「…ん……あ…っ……」



彼女の腕に力が篭る。


離れないように。


離さないように。


キスは続く。


愛おしむように。


奪いさるように。



………。

98 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 00:15:53.40 ID:mUkdoxTDO



それを流されるままに受け入れる。


自分は彼女の想いに応える資格は無いのに。


拒まなくてはいけないはずなのに。


自分では傷つけるだけなのに。


自分では、泣かせてしまうだけなのに。



「ん……っ……ふ…」



現に彼女は泣いている。


涙を流しながらキスをしている。


恍惚とした表情を浮かべていても、その瞳から涙だけは流れ続ける。



「……あ…ふ…」



ゆっくりと離される唇。


長いキスがようやく終わる。


絡まり合った唾液が扇情的な線を引く。



「……キスって……気持ちいいんだね……当麻」

99 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 00:17:19.66 ID:mUkdoxTDO



彼女はさらに身体を密着させる。


そして耳、首筋、肩と自らの舌で上条の身体を嬲る。



「っ……うぁ…!?」



快感が迫り上って来るのを感じる。


頭の中が真っ白になり、何も考えられなくなりそうな程の、快楽的な刺激。



「……気持ちいいの?」



甘く蕩けるような囁き。



「……えへっ、こういう事するの初めてなんだけど……上手なのかな私?」



彼女の普段とはまるで違う、艶やかで狂おしい程の色を放つ声。

100 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 00:18:57.70 ID:mUkdoxTDO




「………ッ!!」


「………あ…っ!」



彼女の背に腕を回し、強く抱きしめる。


ソファの背もたれから横にずり落ちるようにして、互いに腕を絡ませながら横になる。


…抱きたい。


彼女を、この女を。


抱きしめて。


貪って。


ぐちゃぐちゃにしたい。




身体を少しだけ浮かせ、彼女に覆いかぶさるような体勢になる。


彼女のバスローブは擦れ合い動いたせいで、はだけて淡い桃色の乳房が露出していた。

101 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 00:20:08.69 ID:mUkdoxTDO



ゴクリッ と無意識に生唾を飲み込む。


頭が痺れたように、上手く思考ができない。


心臓の鼓動がやけに速く、それでいて大きく聞こえる。


彼女がゆっくりと瞳を閉じて、自分を受け入れるように身体の力を抜いた。


頬を朱く染め、少しだけ震えながら、そして幸せそうな表情を浮かべて。



もう涙は止まっていた。



「……当麻、……いいよ?」



彼女が囁く。



「……当麻がほしい」



少女ではなく、女の声で。



「……私も…犯して……?」

102 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 00:21:31.00 ID:mUkdoxTDO

………。


……犯す?


……犯すのか?


……また傷つけるのか?


……昨日と同じように。


………。



「………当麻?」



名前を呼ばれ、我に帰る。覆いかぶさっていた体勢から身体を持ち上げ、そのまま彼女から離れる。



「…ッ! 当麻!?」

103 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 00:22:26.95 ID:mUkdoxTDO

着崩れたバスローブを正して、それから洗面台のあるシャワールームの方に向かう。



「当麻!! 何処行くの!?」



洗面台の前に立ち、蛇口から冷水を出す。その下に頭を突っ込み、直接冷水を被る。



「当麻っ!? 当麻ってば!!」



ゆっくりと頭を上げ、洗面台に設置された鏡を見る。


……酷い顔だ。


自分はこんな顔つきだっただろうか?


自分はこんな飢えた獣のような険しい目つきだっただろうか?


自分はここまで情けない、泣きそうな顔だったのだろうか?



「………当麻…?」



髪の毛から滴り落ちてくる水滴も拭おうとせず、ただ茫然と立ち尽くす。



「………すまない」


「……ッ」



近寄り、触れてこようとする少女に、鏡に目を向けたまま言う。



「……駄目なんだ、……やっぱり俺には資格が無い」



はっきりと言う。



「…お前の気持ちには…応えられない」



もう一度、拒絶の言葉を。





「すまない、……御坂」

104 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 00:25:10.77 ID:mUkdoxTDO

「すまない……御坂」



謝る事しか出来ない。


やはり、彼女の気持ちには応えられない。



(……インデックス)



だって、…重なってしまったのだ。


昨晩のそれ…、あの愚かな行いに。





そして、気づいたのだ。





自分の瞳が、目の前の少女ではなく、重なり合ったそれに向いている事に。

105 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 00:26:33.60 ID:mUkdoxTDO






「……あ…、と…当麻?」



美琴の呼び掛けには応えず、その横を通り過ぎて広間に戻る。


そしてバスローブを脱いで、自分の制服へと着替え始める。



「なん…で、…着替えてるの?」



震える声で美琴が問い掛ける。



「……帰るんだ」



短く、簡単に答える。


帰らなくてはいけない。


自分の家に。


彼女の下に…。

106 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 00:27:36.56 ID:mUkdoxTDO





電話で土御門が言っていたのだ。


彼女、インデックスは自分を待っていると。


自分は、…まだ彼女に謝っていないのだ。



「だから…帰らないと」










「……インデックスの所へ」

107 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 00:28:46.62 ID:mUkdoxTDO



「……だめぇっ!!」



突然の叫び声に驚いて、そちらの方を振り向く。



「……御坂…」



叫び声の主は、両手で肩を抱きながら震えていた。



「………嫌よ、絶対行かせない!! ……言ってくれたじゃない!! 帰らないって、…今日だけは一緒に居てくれるって言ってくれたじゃない!!」


「………」



悲痛な叫びだった。


込み上げる怒りをぶつけて非難するような。



「……行かないでよ!!」



それでいて、縋るような。



「……お願い」



酷く悲しげな、彼女の想いの全てだった。

109 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 00:30:02.99 ID:mUkdoxTDO



「……すまない」



上条は、謝る事しか出来なかった。


何度も、何度も繰り返し。


それでも足りないと分かっていても、それ以外に掛ける言葉が分からないから、だから上条は繰り越す。



「…本当に、すまない」



彼女にとって、何の救いにもならない言葉を放つ。


残酷でも。


非道でも。


他に彼女に出来る事が無いから…。


着替えを済ませ、個室サロンの出入口に向かう。



「………駄目、行かないで」


「………」



彼女の言葉を聞いて、振り向く。



「……御坂、分かってくれ」



傷つける事を承知で言葉を掛ける。

110 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 00:31:41.60 ID:mUkdoxTDO





「……ッ!!」



彼女は右腕を前に伸ばす。


その手には、一枚のコインが掲げられている。



「分からない…、何で? ……何で私じゃ駄目なの?」



彼女から紫電が迸る。



「こっちに来て。…お願いだから」










「…来ないなら、…撃つ」








「………御坂」

111 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 00:32:44.82 ID:mUkdoxTDO

超電磁砲[レールガン]に狙われ、美琴に向き直る上条。



「…………撃てよ」



上条は右手を下げたままで言った。



「……それで気が済むなら撃てば良い。俺は右手は使わない」



「…な…!?」



美琴は戸惑った。仮に撃ったとしても上条には右手がある限り効かない。それが分かっていたからこその、自分がどれだけ本気なのかを見せつける為の脅しだったのに。


上条はその右手を使わないと言い切った。


それは、自分が撃てば彼は死ぬという事だ。



「……撃たないと思ってんの?」


「…分からない」


「……死ぬ気?」


「……死にたくはねえよ」


「っ! なら何で!!」



上条は踵を返し、部屋を出る。



「……お前なら、最後には分かってくれるって信じてるからだよ」



上条はそう言い残して、美琴の下から去って行った。



「……ふざけんな、…何が信じてるよ」



一人残された美琴。



「…私に言った事は……守らない癖に…!!」



結局、美琴は撃てなかった。

112 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 00:36:30.89 ID:mUkdoxTDO


 9

美琴と別れてから数十分後、上条当麻は自分の寮の玄関前まで到着した。



「…いざとなるとやっぱり足が竦むな」



正直、今すぐにも逃げ出したい。


だがそうする訳にはいかないのだ。



「ビビってどうする上条当麻! ちゃんと向き合うって決めたんだろ…!!」



自分は沢山間違った。


取り返しの付かない事をした。


沢山泣いた。


沢山泣かせた。


インデックスも。


御坂美琴も。


もう今までのように互いに笑い合う事はできないかもしれない。


だが、それでももう逃げ出したらいけないんだ。

逃げたって、壊した幻想…[現実]は元に戻らない。


だから逃げない。


もう二度と。

113 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 00:37:45.37 ID:mUkdoxTDO





「そうさ、壊しちまったんならまた創ればいい。[現実]ならそれが出来るはずだろ!」



幻想は殺せば消えてしまう。だが[現実]は壊れても、消えたりなんかしない。


消えないのなら創り直せる。


元の形とは違っても、新しい[現実]を。








「それが出来ないなんて幻想は、自分からぶち殺してやるさ…!!」



上条当麻は、意を決して扉を開けた。

114 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 00:39:12.80 ID:mUkdoxTDO



「……インデックス!!」



その声を聴いた瞬間、金縛りにあったように身体が硬直した。



「……とう…ま…!」



帰ってきた。


帰ってきてくれた。


…たった一日。


たった一日のはずなのに。


まるでずっと会っていなかったかのように感じる。


今すぐ駆け寄って、彼の存在を確かめたいのに。


身体がまるでいうことを効かない。



もう自分の心は嬉しさで溢れているはずなのに…。


彼を抱きしめ。


彼に抱きしめられ。


彼が幻想で無い事を身体全体で確かめたいのに。

116 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 00:40:42.52 ID:mUkdoxTDO





「ぁ…う…!」



言葉すらまともに出て来ない。


自身の身体が他人の物のようにまるでいうことを効かない。


頬が熱くなり、その上を何かが濡らすような感触。


…涙。


泣いてしまった。


泣いてはいけないのに。


泣けばまた彼が行ってしまうかもしれないのに。


止まらない。


拭おうとする腕すらまともに動いてくれない。


ただ頬を伝うに任せるしか出来ない。

117 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 00:42:21.45 ID:mUkdoxTDO



「…インデックス」



彼が呼ぶ。


自分の名前を。


あの時、呼んでくれなかった自分の名前を。


それだけでさらに瞳の奥から熱い物が込み上げてくる。



「…ひっ…く…とっ…とう…ま」



感情の高ぶりで上手く考えが纏まらない。


彼の名前を嗚咽混じりでしか呼べぬ事に酷い苛立ちすら感じる。


身体は漸く椅子から腰を上げる事が出来たのみで、足は未だに動かせない。

119 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 00:43:37.87 ID:mUkdoxTDO



「………」



彼が自分に近づく。


ゆっくりと、真っ直ぐに。


涙が滲んでよく判らないが、…彼は悲しそうな顔をしているようだ。


…だが判る。


彼はそれでも精一杯、優しげな顔をしているのだ。


それだけで彼は、[あの時]の彼でない事が分かる。



……。

120 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 00:45:17.91 ID:mUkdoxTDO



そこで、気づいた。


…そうか、自分は怖かったんだ。


…彼が。


あの時の彼ではないのかと…。



彼が帰ってきた嬉しさの中に、少しだけ昨晩の傷が疼いたんだ。


…だから動けなかった。


彼の全てを受け入れると決めながら、あの時の彼を拒絶していたのだ。



……。



彼が目の前に立つ。


この彼は自分の待ち望んだ[優しい彼]であって、[あの時の彼]ではない。


でも、…目が合わせられない。



「インデックス…」

121 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 00:46:46.28 ID:mUkdoxTDO



彼の手が自分の身体に延びる。


繋がれたい。


抱きしめられたいと想っていた彼の手が。


だが、身体はさらに強張った。


そして、拒みたくないはずなのに震えだし、彼の手を拒もうとする。



「…………ッ」



それに気づいた彼は手を止め、ゆっくりと戻した。



「……ぁ………」



だめだ、どんなに頭で思っても、何処かで恐怖に逆らえない自分が居る。


…こんな事ではまた彼が行ってしまう。


また置いて行かれてしまう。


また孤独(ひとり)になってしまう。


…それだけは嫌なのに。


嫌なはずなのに。


………。

122 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 00:47:46.90 ID:mUkdoxTDO

「……すまなかった」



彼が頭を下げる。



「お前に…インデックスに酷い事をした……」



神に赦しを乞うように…。



「そして…」



懺悔の言葉を紡ぐ。



「孤独(ひとり)にして、すまなかった」



…………。



「もう、…孤独(ひとり)にはしないから」



その言葉だけで救われた気がした。


そして無意識の内に、彼の腕の中に吸い寄せられていった。


優しい彼?


違う。


なら…、あの時の?


…違う。


今そこに居る、有りの儘の[上条当麻]に惹かれたから。



……。



「……ただいま、インデックス」


「……お帰りなさい」





「………とうま」

124 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 00:51:19.89 ID:mUkdoxTDO


 10

行ってしまった。


…彼、上条当麻は。


振り向いてくれなかった。



「……当麻」



二人掛けのソファ、…彼と唇を重ねたソファにもたれ掛かりながら、御坂美琴は彼の名を呟いた。



「…何が、いけなかったのかな」



彼に振り向いて欲しかった。


彼に気に掛けて貰いたかった。


彼に、自分だけを見て貰いたかった。


だから、告白をした。


だから、唇を重ねた。


だから…、あんな売女のような真似までしたのだ。


なのに彼は行ってしまった。


今日は帰らない、自分と一緒に居る。と約束していたのに。


それを破って、あの少女の所へ行ってしまった。

125 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 00:53:07.30 ID:mUkdoxTDO





「……許せない」



彼を引き止められなかった自分が。



「……許せない」



自分を掻き乱すだけ掻き乱した彼の事が。



「許せない」



彼の心に入り込んだ、あの少女が。

126 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 00:54:23.86 ID:mUkdoxTDO







美琴はソファからゆっくりと立ち上がり、着崩れたバスローブの紐を解いた。


バスローブは何の抵抗も無く床に落ち、一糸纏わぬ姿になる。


シャワールームの前、洗面台のある脱衣所まで歩き、設置された籠の中から自分の制服を、隅に取り付けられた小型の洗濯乾燥機の中から下着を取り出した。


今日穿いていた物ではあるが、洗って清潔なショーツに脚を通し、身につける。


次にブラジャーを手に取る。両端を持ってそのまま背中に手を廻してホックを掛ける。それから身体に合うように整え、最後に肩紐を掛ける。


ブラウス、スカート、リボン、ブレザー、短パンと身につけて、美琴は普段通りの姿となる。

127 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 00:55:59.80 ID:mUkdoxTDO



「許せない、…なんで私だけこんな想いしなくちゃいけないのよ」



真っ直ぐ出入口に向かう。



「私だって好きなのに…!! なんであいつ…当麻は私を見てくれないのよ!!」



部屋を出る前に一度だけ振り返る。


視線の先は、彼と唇を重ね…抱き合ったソファ。



「……嘘つき」



美琴はその場を後にした。


その顔にはもう悲しみは無かった。


悲しみは怒りに変わった。


彼を想う恋心も傷つき、抉られた所から徐々に憎しみに変わっていく。


美琴は、はっきりとそのこと自覚しながら、…それを停められなかった。


…否、停めなかった。



「渡さない……絶対に…!!」

130 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 00:59:13.94 ID:mUkdoxTDO


 11

「…あ~、あっちぃあっちぃですの。いちゃいちゃするのはわたくしが帰ってからにしてくれませんことお二人共?」



放っておくといつまでも抱き合っていそうな勢いの上条とインデックスに対し、白井黒子はやっかみ半分にヤジを飛ばした。



「っ!? 居たのか白井!?」



心底驚いたような顔をする上条。



「気付いてませんでしたの?」


「あ…ああ」



上条は気恥ずかしそうにボリボリと頭を掻いた。

131 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 01:00:29.99 ID:mUkdoxTDO




「その様子ですと色々吹っ切れたみたいですわね。少し安心しましたの」



白井は上条とインデックスの様子を観る。


インデックスはまだ上条から離れずに、その腕の中に納まっている。


上条も昨晩の陰欝とした気配はあまり無く、その眼にも光が戻っていた。


…これならば自分が心配するような事は、もう起こらないだろう。


白井は自分の心配していた事が一つ減った事に安堵した。


……これでもう一つの事に集中できる。

132 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 01:02:10.66 ID:mUkdoxTDO



「…さて、上条さん」



敬愛するお姉様、御坂美琴の事に集中できる。



「今まで何処に居たのか、正直に答えて下さいまし」



上条が帰ってきた事で、ここに居る健気な少女の涙は止まった。


だが、その裏で涙を流す少女が居る。





白井黒子には、そんな確信めいた何かを感じていた。

133 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 01:03:37.51 ID:mUkdoxTDO



白井が帰宅した後、上条とインデックスは二人きりになった。



「………」


「………」



だが、会話らしい会話は交わされていない。


上条は白井に今日起こった事を全て話した。


美琴と一緒に居た事。


美琴に告白された事。


…その想いを拒んだ事。


そして、その後唇を重ねた事も。


無論、その話はインデックスも聞いていた。


嫌、インデックスにこそ聞いて貰わなければいけないと思い、話した。



「……とうまと…みことが」



話が進むにつれて、彼女の表情が悲しげになっていった。


それでも話すのを辞めなかった。


己の愚かしさを、卑劣さを、一つ一つ言葉にした。


改めて自分自身に反吐が出る。


こんな誰も幸せになれない、傷つけ、傷つくだけの話をしなければいけなかった自分に、…反吐が出る。

134 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 01:05:03.46 ID:mUkdoxTDO




「……もういいよ」



話を終えた後に、インデックスは言った。



「…とうまが戻ってきてくれた。それだけで十分だよ。……だから、自分ばっかりせめないで?」



インデックスは微笑んでいた。


今にも泣きそうな顔で、微笑んでいた。




…………




その後、白井に美琴の事を頼み、それに白井は「貴方に頼まれる迄もありませんの」と言って席を立った。


そして去り際。



「責任を感じているのなら、 お姉様とは距離を置いて下さいまし。…それが貴方とお姉様……それにそちらのシスターさんの為ですわね」



…と言って、この部屋を後にした。


……それから二人は殆ど喋らないままに時間だけが過ぎ、今に至る。

135 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 01:06:22.97 ID:mUkdoxTDO




合間に気を紛らそうと、そのままになっていた食器を片付けたり、スフィンクスに構ってみたりもしたが、やはり何処かぎこちない。



「……ねぇ、とうま」



スフィンクスを抱えながら、インデックスが聞いてくる。


もう時間は深夜に差し掛かる頃合いだ。



「…どうした? インデックス」


「……うん、あのね? …よかったのかなって思って」



「…御坂の事か?」



インデックスはコクりと頷く。



「…今俺が近づいてもあいつを傷つけるだけだ。なら白井の言う通りにしたほうが良い。…多分それがお互いの為だ」



「……うん、わかった」


「……そろそろ寝るか、もうこんな時間だ」

136 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 01:07:18.34 ID:mUkdoxTDO

上条は立ち上がり、自分の寝床へ向かおうとした。しかし、インデックスが上条のシャツの裾を掴んでそれを拒んだ。



「…? どうした?」


「…えと、あのね?」



裾を掴んだまま離そうとしないインデックス。


そして何か言いづらそうに言い淀む。その頬には朱が刺し、恥ずかしそうに眼をを逸らしている。


「…インデックス?」


「…今日は!」



一旦言葉を止め、真っ直ぐ上条を見ながら続きを言う。



「今日は…一緒に寝たい」



そう言い切ってから、俯いてしまった。


それを上条は…。



「………そっか」


「……だめ、かな?」


「…………」


「………とうま?」


「…分かったよ、インデックス」



すんなりと受け入れた。



「一緒に寝よう」



自分でも驚く程、簡単に受け入れた。



…そうした方が良い気がしたのだ。

137 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 01:10:02.70 ID:mUkdoxTDO



「…じゃあ、電気消すぞ?」


「うん」


上条の言葉に、先にベッドに横たわっていたインデックスは短く頷いた。



「……どうしたの?」



明かりを消した後、ベッドに潜り込もうとしない上条にインデックスが問い掛けた。



「いやっ、…ちょっとな」



躊躇うような仕草をする上条。



「…はやくきて、とうま?」



それを見たインデックスは微笑みながら彼を促した。



「………」

138 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 01:11:10.44 ID:mUkdoxTDO




極力インデックスに触れないようにベッドの中に潜り込む上条。


完全にベッド入り込むと、インデックスに背を向けてしまった。



「…とうま」


「どうした?」


「…こっちむいてくれないの?」



その言葉に上条の心臓は跳ね上がった。


上条の背中に擦り寄り、インデックスはさらに言葉を続ける。



「恐がらなくてもいいよ、わたしはもう大丈夫だから…」


「………ッ」


「とうまは自分の事をゆるせないんでしょ? …わたしに酷い事したとおもって」


「……俺は…」

139 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 01:12:22.62 ID:mUkdoxTDO



…その通りだ。


自分は彼女にしてはいけない事をした。


どんなに謝っても。


どんなに償っても。


決して赦されない事を、自分はした。



「赦すよ」



彼女は告げた。



「とうまが赦せなくても、わたしは赦すよ」


「………」


「だって…わたしは…」


「とうまの事、好きだもん」



彼女の手が何かを求めるように動く。


何を求めているのかはすぐに分かった。

140 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 01:13:27.68 ID:mUkdoxTDO



「……俺は」



だが、戸惑う。


彼女の求める物は自分の手だ。


分かっていて、だからこそ躊躇った。


自分は彼女の手を取って良いのか?


また傷つけてしまうのではないのか?



「とうま」



怯えるように身体を背ける

上条に彼女は言う。



「とうまはどうしたいの?」



問い掛ける。



「相手を思いやる心も、罪の意識に苛まれるその気持ちもだいじだよ? ……でもねとうま」



強い意思を感じさせる声で、問い掛ける。



「とうまが本当に望む事はなに?」

141 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 01:15:01.46 ID:mUkdoxTDO




その声は恋人に告げる睦言のようにも、子供を叱り付ける母親の言葉にも聞こえた。



「俺が、…望む事?」


「そう、罪を贖うためでも、 相手を傷つけないための思いやりでもなくて、とうま自身がどう在りたいのかわたしは知りたい」



自分自身が本当の望む事。


罪に対する意識でも無く。


相手の気持ちを優先するような配慮でも無く。


自分がどうしたいのか。


正直に。


素直に。


有るが儘の心で。


上条は身体を起こし、正面を真っ直ぐ見据えた。


そして、その傍らに居るインデックスの手を取る。

142 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 01:16:32.16 ID:mUkdoxTDO



「……ありがとう、インデックス」


「……うん」



上条もインデックスも、繋いだ手に力が篭る。



「一番大事な事を考えてなかったんだな、俺」



インデックスも起き上がる。



「やっと気づけた、俺がどうしたいのか」



インデックスを見る。


彼女は優しく微笑んで、上条を見つめている。



「インデックスが言ってくれなかったら、…多分ずっと気づけなかった」


「うん」



インデックスと向かい合うように座り直し、繋いでいた左手に、右手も添えようとするが…躊躇してしまった。



「消えないから大丈夫だよ」



彼女は繋いでいなかったもう片方の手で上条の右手を取る。

143 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 01:17:40.39 ID:mUkdoxTDO



「……あっ」



繋がった瞬間、思わず声を出してしまった。



「とうま、わたしは幻想じゃないよ? とうまの右手ではこわれないから」



そう言う彼女は少し可笑しそうだった。



「……はは、そうだな……確かに壊れないな」



無意味な心配をしていた自分が恥ずかしいといった具合に、上条は赤面した。



「…ありがとう、とうま」



インデックスは嬉しそうだった。

144 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 01:18:47.61 ID:mUkdoxTDO



「とうまはわたしのことちゃんと考えてくれてる。大事に想ってくれてる。そばに居てくれる。わたしはそれだけで十分しあわせなんだよ?」


「……そっか」


「……うん」



見つめあう。



「…インデックス」


「……なに?」



上条は告げる。


彼女のおかげで気づけた事を。


自分の正直な気持ちを。


自分の素直な想いを。


有るが儘の心を。



「俺も、お前の事が好きだ」

145 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 01:20:01.04 ID:mUkdoxTDO




上条は告げる。


自分の願いを。


自分の望みを。


自分の我が儘を。



「俺は欲しかったんだ…、インデックスが」



上条はインデックスをゆっくりと抱き寄せた。



「…とうま」



彼女の瞳は潤んでいき、頬にも朱が刺していった。



「だから昨日、無理矢理に奪ったんだ…、自分の欲望に負けて、頭が真っ白になって、お前の気持ちなんか考えもしないで自分の物にする為に」

146 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 01:21:11.93 ID:mUkdoxTDO



上条は昨晩の蛮行を悔いた。悔いて、そこから己の求むモノを見つける。



「……ッ! …ん…」



その求むモノの唇を、自分の唇で塞ぐ。


だが今度は無理矢理でも、強引にでもない。


優しく、互いにいたわるように唇を重ねた。


舌と舌を絡み合わせ、唾液を混ぜる。



「…ぅ…ん…っ、…とうま」


「…今度は優しくするから」


「……うん」



そう言って、さらに唇を重ねようとする。…だが。

147 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 01:22:06.30 ID:mUkdoxTDO




prrrrr!


携帯電話から着信音が鳴り響いた。



「…っと、電話か」


「……むぅ」



上条は携帯電話を手に取る。インデックスが少し不機嫌そうにしていたが彼は気づいていない。



「………っ」



着信中の携帯電話の画面を見て、上条は押し黙ってしまった。



「……とうま?」



着信は、御坂美琴からだった。

173 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 12:24:27.20 ID:mUkdoxTDO

prrrrr、prrrrr!


「…………」


「………とうま?」



携帯電話から電子音が鳴り響く中、上条当麻はその画面を見たまま押し黙っていた。



「……出ないの?」



その彼の様子に少し不安を感じながら、インデックスは問い掛ける。



prrrrr、prrrrr!



鳴り響く電子音。


その音を鳴らしているのは先程まで一緒にいた少女。


自分が傷つけたもう一人の大切な存在。


御坂美琴からだ。

174 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 12:25:44.90 ID:mUkdoxTDO





「………ッ」



通話ボタンを押して、携帯を耳に当てるだけ。…その簡単な動作を上条は躊躇している。


…つい先程だ。


縋るような瞳を向けて叫ぶ彼女、美琴から眼を背け、インデックスの元に帰って来たのは。


恐かった。


…あの後、彼女は泣いていただろうか?


それとも怒り狂ってしまったのだろうか?


それを確かめる行為となる彼女との会話が、どうしようもなく恐かった。



prrrrr、prrrrr!



…自分が葛藤している間にも電子音は鳴り響く。



「…………」

175 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 12:27:11.76 ID:mUkdoxTDO



…だが自分の指は動かなかった。



……



「…………あ…」



切れてしまった。


どうやらこちらがなかなか出ないので諦めたらしい。



(……最低だな、俺…)



自分が躊躇している内に切れてしまった着信。


戸惑ってしまった自分。…そして切れた事で安堵している自分も、どちらも最低だと思った。



「……とうま?」



「…ん、ごめんインデックス。なんか変な空気にしちまったな」



申し訳無いような、恥ずかしいような、そんな表情を作って上条は謝った。



「べつにとうまのせいじゃないと思うんだよ? …でんわはでなくてよかったの?」



…良くない。と言いかけた所で思い留まる。



「……大丈夫だ」



彼女、インデックスには余計な気を使わせたくない。

176 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 12:28:38.42 ID:mUkdoxTDO



「………ほんと?」


「…ああ」



インデックスは上条の顔をじっと見つめる。



「…じゃあ、でんわはかけなおさなくちゃね」



「………ッ!!」



彼女は優しく微笑んでそう言った。



「たぶんだけどでんわはみことからでしょ? とうまはみことをこのままにしておいていいの?」


「……それは…」


「とうま」



咄嗟に出そうとした言い訳も窘められる。



「みことから逃げる口実にわたしをつかっちゃだめ。それに…ここで眼を背けたらとうまはまた自分が許せなくなるとおもう」



「…………」

177 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 12:29:45.16 ID:mUkdoxTDO



prrrrr、prrrrr!



そこでもう一度、携帯の着信音が鳴り響く。


着信は、御坂美琴から。



「…とうま」


「…わかった、ごめんな」



上条は今度こそ、何の迷いも無く通話ボタンを押す。



(…ありがたいな、ホントに)



自分を支えてくれる存在。


自分を窘めてくれる存在。


その価値に気付いて…。



(ありがとう、インデックス)



上条は、心の底から感謝した。

178 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 12:31:07.74 ID:mUkdoxTDO


「………御坂か?」


『………』



上条が発した言葉は、沈黙で返された。



「…………返事くらいしてくれよ」


『………』



またも無言。



「………」


『………』



上条もまた言葉が詰まり、何も言えなくなる。



「………」



数分の間、互いに何も語らない。ただ電話に耳を傾けている気配だけを確認しあっていた。



「……御坂」


『………』



先に沈黙を破ったのは…、上条。



「済まなかった。…いろいろと」


『………』



美琴は何も語らない。ただ携帯を握り絞めたような鈍い音が微かにしたのみ。

179 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 12:32:59.12 ID:mUkdoxTDO




「何度も謝ってるけど、…それでも謝り足りないと思う。だからごめん」


『………』



無言。



「……………今、何処に居るんだ?」


『………公園、いつもの』



やや間を置いて、ようやく一言だけ言葉を放った美琴。



「………帰らないのか?」


『………』



また無言。



「…今日は帰った方が良いだろ。門限もとっくに過ぎてるだろうし、…白井も心配してたぞ?」



上条はなるべく傷つけないように言葉を選んで口にしようとして、…それは今の彼女には無意味な事だと考え直し、そのまま考えを口にだした。

180 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 12:34:11.03 ID:mUkdoxTDO




『………やだ』



短く、一言だけの否定。


それはまるで子供が駄々を捏ねるような、そんな印象だった。



「………御坂」


『今日は一緒に居てくれるって言った。……だから帰らない。当麻が来てくれるまで、絶対に』


「………」



自分が来るまで帰らない。


…稚拙で幼稚な言い分だ。


単なる我が儘でしかない。


そう上条は思いながらも、それを非難したりしない。


…当然だ。


そんな我が儘を言わせるような状況、そしてそんなになるまで傷つけたのは、自分なのだから。

181 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 12:35:25.30 ID:mUkdoxTDO



彼女、美琴にはそれを言う権利がある。


だが……。



「…………ごめん」



それでも……。



「……俺は…行けない」



彼女を突き放さなくてはいけない。



「…お前の所へ行けば、…俺はまた流される。流されて、今度こそ止まらなくなる。…それだけは絶対にやっちゃいけないんだ。……だから、行けない」


『………ッ』

182 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 12:36:49.88 ID:mUkdoxTDO



上条はつい先程、今まで気づけなかった事にようやく気づいたばかりだ。


自分が誰の傍に居たいのか…。


誰の事を一番に想っていたのか…。


気がついてしまえば簡単な事だった。


自分は、インデックスと呼ばれる、今傍らに居る少女の事が好きだったのだ。


自分を取り巻く全てを取り払って。


記憶を失う前の自分の事すら考えずに。


今の自分の心に尋ねた答えが、それだった。

183 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 12:37:52.29 ID:mUkdoxTDO


…そしてもう一つ。


今、電話越しに話す少女。


御坂美琴にも強く惹かれる感情が存在するのだ。


それもまた、好きだという想いと言って良いものだ。


しかし…だからこそ拒む。


…拒まなければ、また流される。


そして誰も幸せになれない。


中途半端な気持ちは、美琴の事をさらに傷つけるだろう。


インデックスもまた、悲しませ…泣かせてしまうかもしれない。


そして、自分は…自分の事を絶対に許せなくなる。


…もうこれ以上、後悔するような事はしたくない。


だからこそ、突き放す。

184 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 12:42:05.74 ID:mUkdoxTDO



「…………すまない」



そうする事しか出来ない自分に歯痒さを覚えながら……。


上条は通話を切った。



「………これでいいんだよな…上条当麻」


「……とうま」



隣でずっと、上条の事を心配そうに見ていたインデックスが不安げな表情を作っていた。



「……それが、とうまのだした答えなんだね?」


「………ああ」



上条は頷いた。


それが最良だと信じて。


彼女なら…立ち直れる。


自分が居なくても前を向いて歩き出せると信じて。


上条当麻は、今度こそ彼女を拒絶した。





今度こそ完全に、粉々にその想いを砕いた。



※(多分一人言だよな…)まだ続けるけどちょっと遅くなります。紙に書き出したやつまだ打ちこみ終わってないの。

185 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 12:52:38.08 ID:mUkdoxTDO


 12

「………」



携帯電話から流れる無機質な電子音を聴きながら、御坂美琴は奥歯を強く噛み締めた。


彼は来ない。


話すら聞いて貰えない。


…自分は、完全に拒絶された。



「……なんでよ」



どうしてこうなったのだろう?



「……当麻」



美琴の手から携帯電話が滑り落ち、地面に転がる。



「……あ…」



落としてしまった携帯電話を拾う為にしゃがみ込む、…しかし携帯を拾って、それを握り締めたまま立ち上がれない。

186 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 13:00:00.97 ID:mUkdoxTDO




「……もう…やだ」



…どうして自分ばかりがこんな想いをしなければいけないんだろう。


自分はただ、傍に居て欲しい。


…自分の事を見て欲しいだけなのに。


夜の公園の片隅で、一人蹲る少女はか細く…消え入りそうだった。

188 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 13:12:12.39 ID:mUkdoxTDO



少女は想う。


一人の少年の事を。


自分が好きな、彼を。



「…やっと…素直になれたのに」



今まで、ずっと自分の気持ちをごまかしていた。


気恥ずかしさと、ちっぽけな虚栄心が邪魔をして、ずっと素直になれなかった。

会う度に喧嘩腰になっていたのだって…少しでも自分に顔を向けて欲しいからなのに、そんな想いを頭ごなしに否定して…、気付かないフリをしていた。


それが自分だ。


自分の気持ちをはっきり自覚した後でも、それは大して変わらなかった。

189 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 13:22:58.70 ID:mUkdoxTDO

>>187 ちょっと進行遅いけど勘弁してね。


「………」



その癖、彼には自分の気持ちを知って欲しくて…、想いに気づいて欲しくて堪らなかった。


自分からは何もしようとしない癖に…。


そして今日、彼からあの話を聞いた。


彼があの子を求めて…抱いたという話を聞いてしまった。


嘘だと思った。


嘘だと思いたかった。


でも彼の言葉は、仕草は、悲しそうな眼は…、それが真実だと容赦無く告げていた。

190 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 13:32:48.11 ID:mUkdoxTDO


彼は無理矢理だと言っていた。…だがそんな事はどうでもいい。


彼が欲したのが、自分では無くてあの子だった。


ただその事だけが自分の胸を抉った。


どうして私では無いんだろう?


どうして私には何もして来ないの?


どうして、気づいてくれないの?


彼の手を引きながら歩いていた時、考えていた事はそういった事ばかりだった。


彼の言った事は嘘だと自分に言い聞かせながら、いつも自分の事を素通りしていく彼を非難して。

191 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 13:37:37.12 ID:mUkdoxTDO




だから言ったのだ。



彼に、好きと。



ずっと素直になれずにいた、自分が嫌だったから。



それ以上に、彼の隣には自分が居たかったから。

192 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 13:49:37.51 ID:mUkdoxTDO



その後、自分の告白は拒絶された。


…でも、彼は去らなかった。


その時、彼が何を思っていたかは分からない。


ただ自分は、彼と一時も離れたくない。それしか考えていなかった。


…いや、本当はその時には気づいていたのだ。


彼が自分を見てくれる事は無い…と。


でも、もう止められない。


足掻いて足掻いて、必死に振り向いて貰おうとして、少しでも自分を想って貰いたかった。


望んだ形でなくても、優しくなくても良かった。


彼が居なくなってしまうより、何倍もマシだった。


そして、…その結果がこれだ。

194 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 13:57:23.43 ID:mUkdoxTDO




「……頑張ったのになぁ」



先程掛けた電話は、本当は今から行くと告げる為に掛けたものだ。


だが、彼の声を聴いた途端に、恐くなってしまった。


彼の声は電話越しでも分かる程、決意に満ちたはっきりとした声だった。



そして、三度目の拒絶。



自分の心を砕くには、十分だった。

195 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 14:03:23.02 ID:mUkdoxTDO

>>193 ありがとう。



「……当麻」



それでも彼を想いつづける自分は愚かだろうか?


自分では、…分からない。


そして、たとえ愚かでも…構わない。

196 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 14:17:26.38 ID:mUkdoxTDO

「………当麻」


彼女は呟く。


「………助けて」



か細く、消え入りそうな声で。



「………助けて…当麻」


彼の名前を。


「…………助けてよ」



助けを求める声を。



ゆっくりと立ち上がり、ふらふらと覚束ない足取りで歩き始める。



「…そうだ、…そうだよね……助けて貰えば良いんだ」



彼女の向かう先は……、彼の所だ。



「…あいつなら、当麻ならきっと助けてくれる……だって…あの時もそうだったもん」



心を砕かれた少女は、心を砕いた少年の下に向かう。



彼女、御坂美琴にはそれしかもう縋るモノが無い。



「……当麻……私を助けて」

197 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/23 14:19:57.11 ID:mUkdoxTDO

今日は終了です。

取り敢えずこれからどんどんやばくなる予定。

じゃあまたノシ

241 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/24 21:36:32.94 ID:UYBYsOZDO


 行間(←)

……何の用だ。


………ちッ、何で俺がそンな下らねェ事で動かねェとならねェンだ。


……確かにあの野郎には借りがある、…あの白いチビにもなァ。


……だがよォ、それは俺が首を突ッ込む話じゃねェだろ。


あの馬鹿がやらかしたつけだろォが、借りが有ろォが無かろォが関係ねェよ。


………チッ…、さッきの海原といいテメェといい、…そンなに重要な事かよ?


…テメェの仕事の話なンざ尚更関係ねェだろ、どッちからの仕事か知らねェがなァ。


………そう思うならテメェらでやれば良いだろォが、いくら超電磁砲を確実に止められンのがあの野郎以外に俺だけだつッても…………あン? ……何だクソガキ。


………チッ、テメェも…いや、テメェらもかよ。


………もういい、切るぞ。


…………クソッ……、くッだらねェ。


どいつもこいつもあの野郎に甘いッたらねェ。

242 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/24 21:38:56.99 ID:UYBYsOZDO


 13





「…お姉様、一体何処へ」



上条の寮を出た後、白井黒子は、上条から聞いた個室サロンへと足を運んでいた。


しかし捜している人物は、チェックアウトもせずに何処かに行ってしまったようだった。



「寮にも戻っておられませんでしたし…、後お姉様が向かいそうな所は…」


prrrrrrr!


そこで、白井の携帯電話の着信音が鳴り響いた。


画面に映る着信表示は…非通知。



(……どなたですの?)



訝しみながらも通話ボタンを押す。



「……もしもし、白井ですが」

243 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/24 21:40:22.41 ID:UYBYsOZDO




『…貴女に伝える事があります』



電話の相手は名乗りもせずにそう切り出す。


丁寧な口調で爽やかな印象を持つ声だ。若い男性だろうか、何処かで聴いた事がある気がするが思い出せない。


電話の向こう側に居る男は続ける。



『彼女…御坂美琴さんは今、彼の所へ向かっています』


「……ッ!」


『心理的に非常に危険な状態のようです。…早く行ってあげて下さい』



その言葉を聴いた瞬間に、白井は空間移動を使い、捜していた人物の所へ向かう。

244 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/24 21:41:47.87 ID:UYBYsOZDO



(……お姉様!)



電話を切る事すら失念して、電話の相手が示した所…そして自身の予測していた場所に急ぐ。



(お姉様!!)



止めなければ。


なんとしてでも。


たとえ、彼女…敬愛する御坂美琴お姉様に嫌われようとも。


今の…あの少年と、白い健気な少女の姿は……お姉様を必ず打ちのめして傷つける。


これ以上、お姉様に傷を増やして欲しくない。


白井黒子は急ぐ。


自分にだって彼女を救う事が出来ると信じて。

245 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/24 21:42:52.36 ID:UYBYsOZDO




「……お姉様!!」


歩き出してからどの位経ったのだろうか?


そんなに経っていない気もするが、異様に長い間歩いていた気もする。


「捜しましたの…ようやく見つけましたわ」


でも、まだ歩かなきゃ。


まだ彼の…当麻の所に着いていない。


「……お姉様、止まってくださいまし」



後どの位歩けば当麻の所に着くのかな?


どの位歩けば、当麻の傍に行けるのかな?


どの位歩けば…当麻は私を助けてくれるかな?

246 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/24 21:43:53.90 ID:UYBYsOZDO



「……行ってはいけません」


………どいてよ。


「……お姉様、もうお止めになってください」


……良いからどいて。


「お姉様!!」


……邪魔すんな。


私は当麻の所に行くんだ。

当麻の所に行って、…当麻に助けて貰うんだ。



その為ならなんでもしてやる、……だから退け。



「……退きません」



………。

247 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/24 21:45:16.61 ID:UYBYsOZDO



「…今のお姉様は普通じゃありませんの! だから! 一旦お帰りになりましょうお姉様!!」



…………。



「それに…! 今あの方の所へ行っても………お姉様は辛い目に遭うだけですの!!」



…それがなんだっていうのよ。



「わたくしは…! 黒子はもうお姉様が辛い目に遭うのが嫌なんです!!」



……ちがうもん。



「だから!! これ以上は進まないで下さいまし!!」



ちがうもん。

248 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/24 21:46:22.01 ID:UYBYsOZDO


…私は助けて貰う為に行くんだ。


辛い目なんか遭うはず無い。


これ以上、辛い事なんか無い。


辛い想いをしていれば。


涙を流していれば。


助けを求めて縋り付けば。


彼は…当麻はそこから救い出してくれる。


涙を止めてくれる。


…きっと、抱きしめてくれる。


だから、行かなくちゃ。



「…お姉様、それでもわたくしは!」



………そう。


…じゃあ、ばいばい。



……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………邪魔するからそうなんのよ。

249 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/24 21:49:05.24 ID:UYBYsOZDO


 14


御坂美琴は、白井黒子に対して容赦無く電撃を撃ち込んだ。



「……あ…ぐ…っ…」



白井黒子は地面に倒れ伏し、朦朧とする意識を必死に保とうとしながら、歩き去ろうとするお姉様、御坂美琴を見つめていた。


「…お…姉……様……」


止められない。


あのお姉様は、自分では止められない。


辛うじて意識を保っているが、もう身体は全く動かない。



(……どう…すれば)



行ってしまう。


お姉様が、更に傷つきに。


もう、これ以上無いという程傷ついているのに。



(どうすれ…ば…!?)

250 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/24 21:50:41.15 ID:UYBYsOZDO



…そこで、異変が起こる。


歩き去ろうとしていた美琴の動きが止まったのだ。



「…………?」



白井は美琴の視線の先を探る。



「…あれ……は…?」



そこあったのは、白。


酷く濁ったような白が美琴の目の前にあった。


「…学園都市…第一位…? …何故こんな…所に」


「……チッ、…メンドくせェな……マジであいつらの言う通りの状況かよ」



近代的なデザインの杖を付きながら真っ直ぐ美琴の方へと歩く存在。



「…な…んで、…なんで今ここであんたが出て来んのよ……!」



震えるような声色でそう呟く美琴。


「…一方…通行…!!」

252 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/24 21:52:04.96 ID:UYBYsOZDO


学園都市第一位、一方通行。


御坂美琴にとって、最凶であり最悪の存在。


御坂美琴にとって、最も許しがたい存在。


御坂美琴にとって、最も出会いたくない存在。



「なんであんたが出て来んのよ…………アクセラレータァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」


紫電を迸らせながら、美琴は叫ぶ。


電撃の余波を受けて、辺りの電灯が弾け、夜の公園を照らす光は美琴が放つ電撃の光のみとなる。



「…………」



一方通行は無言で首のチョーカーの電極スイッチを切り替える。

253 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/24 21:53:51.97 ID:UYBYsOZDO



次の瞬間、無数に襲い掛かって来る電撃の槍。


しかし、一方通行の表面に触れた瞬間に、あらぬ方向へと反射された。



「……効かねェのも忘れる程錯乱してンのか」



攻撃を受けながらも真っ直ぐ美琴に近づく一方通行。



「確かに今のテメェは危険だな、…勢いだけで周りの奴を殺しかねねェ」



美琴は攻撃を続ける。


電撃を飛ばし。


砂鉄を操り。


磁力で辺りの物を投げつける。

254 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/24 21:55:24.26 ID:UYBYsOZDO



「退け…! 退け! 退け!! あんたは関係無いでしょ!! 今あんたが出て来る必要無いでしょ!? なんで出て来んのよ!? なんで私の邪魔をする!? なんであんたが立ち塞がるの!? 私は当麻の所へ行きたいだけだ!! 私は当麻に助けて貰いたいだけだ!! ただそれだけなのに何故あんたが私の前に出て来るの!!」



癇癪を起こした子供のように、聞き分ける事が出来ない子供のように美琴は叫ぶ。



「邪魔をするな!! 何処かへ消えろ!! 私の前に現れるな!!」



叫びながら、助けを求めながら。


辺りに破壊を撒き散らす。

255 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/24 21:57:38.47 ID:UYBYsOZDO




「行かせられねェな、…それがテメェらの為だ、俺は頼まれただけだがそのくれェは分かる」



「糞ッッ!! 糞ッッ!! どいつもこいつも!! あんたも、黒子も…あの女も…!! みんなして私の邪魔をして!!」



美琴の顔が憎悪に歪む。


感情が高ぶるにつれて、撒き散らす破壊にも拍車がかかる。



「死んじゃえ…! みんな死んじゃえ!! 邪魔する奴も……!! 私を苦しめる奴も!! …全部、全部! 全部!!」



「…………」


一方通行が美琴の目前まで近づく。


手を伸ばせば届く距離に。



「………もう良いだろ」



一方通行が美琴の額に触れる。



「…寝ろ、…そンで頭冷やせ」



その直後、美琴は意識を失う。



「……とう…ま」



彼の、今…最も逢いたく者の名前を呟いて。

268 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/25 23:04:26.19 ID:wOTRZY4DO


 Apart Epilogue

翌日。


上条当麻はいつも通り学校に登校した。


退屈だと思える授業を受け。


合間にクラスメート達と馬鹿な話を交える。


そんな日常に戻っていた。

269 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[] 2011/03/25 23:11:21.62 ID:wOTRZY4DO



「にゃー、…自分で撒いた種とはいえ今回もご苦労様だぜいカミやん?」


「……やっぱお見通しかよ」



午前中の授業が終了し、昼休みになってから上条の所に来た土御門元春は、いつもの妙な口調で話し掛けてきた。



「俺の立場を考えれば当然だにゃー、…もしもカミやんが“アレ”を壊していたら大分まずい事になっていたからな」



クラスメートが大勢居る教室で話ているからだろう、曖昧な言葉で話を続ける土御門。



「取り敢えずこの事は向こう側には報告していない。…したらステイル辺りが問答無用でカミやんを燃やしに来そうだしな」


「…あ~、…そうだな」


「まあ一緒に住んでて今まで何も無かったのが異常といえば異常だったんだがにゃー? カミやんはメンドくせぇ性格してるから分かんねえだろうケド」

270 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/25 23:13:36.76 ID:wOTRZY4DO

※しまったsage忘れてた。ごめんなさい。


「…酷い言われようだなオイ」


にやにやしながら語る土御門。上条は反論しようにも大体合ってる気がするので苦笑いするのやっとだった。



「…悪かったな土御門、多分俺が頼んだ事以外にも迷惑かけただろ?」


「ん~…まあな、だが気にすんな。カミやんにかけた今までの迷惑と比べたらおあいこにもならん些細な事ですたい」


「…そっか」


「そうだぜい? むしろ礼を言うなら舞夏に言ってくれ、事情も知らないのにあの食いしん坊の面倒をいつも見てくれんのはあいつだからにゃー」


「…そうだな、後でちゃんと礼を言っとく」


「ちなみに俺は世話役を押し付けた駄目兄貴って事になってるにゃー」


「…ますますスマンな土御門」

271 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/25 23:22:56.99 ID:wOTRZY4DO




冗談めいた事も言っているが、どうやら大分迷惑をかけたようだ。


詳しく聞きたい所だが土御門は話さないだろう。


そこで会話が一度途切れる。…しばし沈黙した後に上条は口を開いた。



「…まだ迷ってんだよな、正直」



その呟きに、土御門は真顔で聞き返す。



「…超電磁砲の事か?」


「…本当に全部知ってんだな、…まあ、そうだな」



美琴との事まで知っていた土御門に少し驚きつつも、肯定する。

272 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/25 23:29:24.75 ID:wOTRZY4DO




「…他に方法は無かったのか、もっとマシな選択が無かったのかってな」


「にゃー、…………ダブルでゲットして両手に花状態になれば良かったんじゃね?」


「……一応真面目に考えてんだから辞めてくれよ、それは選択肢の中で一番やってはいけない事だと上条さんは思いますが?」


(…大真面目に言ったんだがにゃー)


「はぁ、…まあそんな感じでまだスッキリしてるとは言い難い訳ですよ」



ため息をつきながら上条はそう締める。顔つきは少し緩くなっているが、…それは悲しみや淋しさ等、色々な感情が合わさっているように見えた。

273 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/25 23:37:30.37 ID:wOTRZY4DO



「…一つだけ言っておく」



そんな上条に、土御門は鋭い口調を使い告げる。



「超電磁砲には二度と会うな、…お前が出した答えが“アレ”と共に過ごす事ならな」


「…………」


「それがお前の…そしてあの二人の為だ上条当麻」

274 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/25 23:41:14.13 ID:wOTRZY4DO



御坂美琴に二度と会うな。


上条はその台詞を聴いた瞬間、胸が押し潰されるような感覚を感じた。



「……それは」



反論したかった。しかし、その行為をする事も…やはり自身の出した答えを否定する行いに思え、言葉が詰まる。



「…無理なら無理とはっきり言え。お前のその曖昧な態度が今回の事の顛末を招いた、…その位は理解しているだろう」


「…………ッ」


「…俺の言葉だけで揺らぐ程度の決意なら、無いも同然だ。その程度の物なら持たない方が良い」

275 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/25 23:48:40.18 ID:wOTRZY4DO



土御門の容赦の無い言葉。


上条はそれに言い返す事も出来ない。



「…にゃー。まあ仕方ないぜいカミやん? こんなもん大の大人だって悩む事ですたい」



いつもの口調に戻して土御門は言う。



「ただカミやんの場合相手が面倒臭いのばっかだからちょっと慎重になれって話だにゃー」


「……俺は」


「……さっき言った事は冗談だカミやん。…カミやんはカミやんのしたいようにすれば良いぜい。……まあ旗の建て過ぎには注意した方が良いケド」



「………」



土御門の言葉に反応しない上条。それから土御門小さくため息をついて席を立つ。



「悩め悩め青少年、悩みは若人の特権だぜい?」




去り際にそう言い放ち、土御門は教室から出て行った。

276 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/26 00:03:26.76 ID:DjMoqiGDO

「…お話は終わりましたね上条ちゃん?」



土御門が教室を出て行って間もなく、背後から声をかけられた。



「……小萌先生?」



振り返ると、そこには見た目は子供、頭脳と年齢は大人のレア物教師が仁王立ちしていた。



「……えと、何か用でしょうか?」



上条のその台詞の直後、ビキッと音が聞こえたように感じた。



上条は何か嫌な気配を感じつつ、それとなく小萌のご機嫌を伺う。



「…え~と、………もしかして怒ってます?」


「…うふふ~、上条ちゃ~ん? 先生はその質問にはYesと答えるしかないのですよ~?」



何か妖しい笑顔でそう告げる小萌、上条はその雰囲気に押されて座っていた席から落ちるように後ろに倒れ込んだ。

277 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/26 00:11:26.26 ID:DjMoqiGDO




そして何故小萌先生がお冠なのかを考えてみる。



(……はて、何か忘れてる気がしますよ?)


「……さては完全に忘れてやがりますね上条ちゃん!? 先生はいつ上条ちゃんが説明に来るのか今か今かとずぅ~~っっっと待ってましたのに!!」



小萌は尻餅をついている上条のワイシャツの襟を掴み無理矢理引きずろうとして失敗し、仕方ないのでちゃんと起たせてから手を引っ張りだした。



「弁明次第では許してあげようと思ったらまさかのそれ以前の問題ですか!! もうぜっっっったいに許さないです!! 今すぐ生徒指導室に連行です!!」



「ええ!? まだ昼飯食ってないんですが先生!?」



上条の懇願めいた抵抗。…だがしかし。



「も ん ど う む よ う で す !!」



まるで鬼神のような小萌の気配に上条は観念するしか無かった。

278 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/26 00:20:10.04 ID:DjMoqiGDO




………



「…で、何故先生がリミットブレイクしてるか理解しましたかお馬鹿な上条ちゃん?」


「…はい、マジですいませんでした」


生徒指導室に移動した上条は、小萌に何故自分がお冠なのか、その理由をたっぷりと説明されていた。



「そういえば小萌先生に一昨日インデックスを預けて何の説明もしてませんでしたね申し訳ありませんでしたーーー!!」



土下座しながら叫ぶ上条。この生徒指導室に連れて来られてからずっとこの体勢を崩さずに小萌の説教を聞いている。



一方小萌の方は腰に手を当ててずっと怒りっ放しである。

279 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/26 00:28:16.27 ID:DjMoqiGDO



「まったく上条ちゃんはいつもいつもいつもい~っっっっっっつも先生には何にも言ってくれないんですから!! いくら先生が優しくても流石に堪忍袋の尾がぷっつりなのですよ!!」



頬をぷくーっと膨らませて真っ赤になる小萌。



「ホントにすいませんでしたーーー!! 小萌先生にはお世話になりっぱなしでなんと申してよいのやら!!」



床に額をぐりぐり擦りつけながら、上条は謝罪の言葉をマシンガンのように並べ立てる。…そこまでやると言葉の重みが無くなった実に薄っぺらい。



「はぁ~、…もう良いです上条ちゃん。謝るのはおしまいにして下さい」


小萌の言葉で頭を上げる上条。苦笑いを浮かべながら小萌の様子を伺っているあたりどうも謝り方に真剣さが足りなく見える。

280 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/26 00:43:54.13 ID:DjMoqiGDO



「……それで、上条ちゃんはちゃんと前に進めてるんですか? 先生はそれだけ聞きたいのですよー?」


「……進む? …前に?」


「そうですよ? 上条ちゃんが何か悩んでいるのかぐらい先生はお見通しですからねー」



先程までと違い、優しく微笑みながら小萌は話す。



「シスターちゃんもそうですけどね? 上条ちゃんは色々とまだまだ経験が足らないんですよ? まあ当たり前ですねー、私からしたらみんなまだまだ子供なんですから」

281 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/26 01:07:33.16 ID:DjMoqiGDO


見た目子供の大人の女性は諭すように言葉を続ける。



「でも、そろそろ子供の時間は終わる頃でもありますねー、…先生としてはちょっと淋しいですけどね?」



上条は黙って小萌の言葉を聴き続ける。


「上条ちゃんの年頃は色々悩むものなんです! 悩んで悩んで悩み抜いて、それでも答えが出せるか分からないんですよ?」


「…………」


「上条ちゃんは、答えが出なかったんですか?」


「………出ました、いや…出しました」


上条の言葉に満足そうに頷く小萌。


「…ならちゃんと進んでますよ上条ちゃん? 答えが出せるか出せないかで全然違いますからねー」


「……そうですか?」


「そこは経験者は語ると言うやつですね! 先生からすればそうなのです!!」

282 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/26 01:33:29.27 ID:DjMoqiGDO

小萌は話は終わったとばかりに生徒指導室から出て行こうとする。


「悩みは心の成長剤ですよ上条ちゃん? しっかり悩んでしっかり成長して素敵な大人になって下さいね?」



去り際にそう告げて、小萌は部屋を後にした。



「……答え…か」





「…そっか」



上条当麻は子供だった。


そしてインデックスも………御坂美琴もだ。


だが、完全に子供という訳でもない。

283 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/26 01:35:04.09 ID:DjMoqiGDO


「俺達はもう子供じゃないけど、……まだ大人でも無いんだな」



上条は、今回の事で取り返しのつかない大きな過ちを犯した。


そのせいで傷つけた者が居る。


一人はインデックス。


もう一人は御坂美琴。


そして、自分も傷ついた。


子供だったのなら、泣きながら誰かに助けを求めても良かっただろう。


大人だったのなら、こんな傷だらけの結果にはならなかったはずだ。

284 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/26 02:04:58.26 ID:DjMoqiGDO


…もちろん、それを言い訳にするつもりは無い。


そんなもので言い逃れできる事じゃない。


だから悩む。


だから苦しむ。


だから、答えをだした。


そのせいでまた傷つけるかもしれない…否、傷つけただろう。


しかも、それが正解とは限らないのだ。


それでも、答えはだした。


もう逃げる訳にはいかないから。


逃げても、傷が深くなるだけだと気づいたから。

285 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/26 02:13:12.34 ID:DjMoqiGDO

インデックスは傍に居る事で、これ以上傷つけないと決めた。


御坂美琴は、突き放す事で、たとえ更に傷ついたとしても…立ち直れると、彼女の強さを信じた。



幻想は殺せば消える。


でも、現実は殺しても、壊しても消える事は無い。


ただ、その跡が、砕いた跡がいつまでも残る。

だが、消えないのなら治せるはずだ。


元の形には戻らないかもしれない。


その行為は、ただ傷を隠すだけの行いなのかもしれない。


それでも、上条当麻はその答えを出した。


インデックスの傍に居る事を。


御坂美琴を突き放す事を。

286 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/26 02:21:33.59 ID:DjMoqiGDO




「…やり直せるさ、きっと」





そして、上条当麻は前に進む。




第一部 完

301 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/26 23:33:02.96 ID:DjMoqiGDO

こんばんは。


今日やる事がたくさんあって書き溜め出来なかった………orz


だが即興で寝落ちするまでやります。


取り敢えず第二部のタイトル。






上条「…誰も傷つかない最高の結末……か」





こんな感じで。

ではぼちぼちちまちまと開始します。

302 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[] 2011/03/27 00:10:25.31 ID:tckOnERDO


 Bpart Prologue



「………ッ!」


「カミやん? どないしたん急に立ち止まって」

「何かあったのかにゃー?」


上条当麻はある日の放課後、土御門元春や青髪ピアスらと共に何処に立ち寄るでもなく、ぶらぶらと街を歩いていた。

そんな中、込み入った雑踏の中にとある少女の姿が目に入った。



「…………」



しかし、その姿はすぐに人混みに紛れて見えなくなってしまった。


「…カミやん?」

「何ボーっとしてるぜよ?」


その少女の事は、よく知っていた。

ここ学園都市の頂点である七人しか居ないlevel5の第三位。

学園都市で五指に入る名門・常盤台中学校のエース。

自分を好きだと言った少女。

そして…自分が傷つけてしまった、傷つける事しか出来なかった少女。

「誰か居たん?」

「……いや、気のせいだった」

「にゃー、ならさっさと歩くぜよ、道の真ん中に突っ立ってたら邪魔になるぜよ」

「ああ、すまん」


気のせいなはずが無い。

あの日以来、初めて彼女の姿を見たが、自分が彼女を見間違うはずが無かった。

彼女は変わらず日々過ごしているだろうか? その確認だけでもしたいとは思う。

だが、上条はむやみに近づいたりしない。

それが彼女の為だ。

そして、自分の為でもある。

(……大丈夫さ、あいつなら…な)

過去に犯した過ちに、胸を締め付けられながら上条は、彼女の強さを信じた。


御坂美琴。


かつての傷の一つである少女とは、上条は既に接点を無くしていた。

もう二度と会うつもりは無かった。

あの日、あの出来事があった時にそう決めた。

あの出来事から、既に二ヶ月が経っている。

306 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/27 00:53:24.67 ID:tckOnERDO


 1

「ただいま、インデックス」


「お帰りなさいとうま!」



上条が帰宅すると、部屋の中で三毛猫のスフィンクスと戯れていたインデックスがパタパタと駆け寄りながら返事を返して来た。



「今日は少しおそかったね、どこか行っていたのとうま?」



鞄を受け取りながらインデックスは上条の帰宅が少し遅かった事の理由を尋ねる。



「ん? ああすまん、土御門達とちょっとぶらぶらしてたんだ」


冷蔵庫の前まで行き、中から飲み物を取り出しながら答える上条。


「むむ、だったら連絡くらいしてほしかったかも!」


受け取った鞄を所定の場所に置いてから上条の傍に再び近づいてきたインデックスが頬を膨らましながら不満を漏らした。


「…だってインデックスさんたら電話にあんまり出てくれないんですもの」


テーブルに取り出した飲み物を置き、台所のシンクの脇にある食器の置いてある籠から二つコップを取る。

一つは元から自分用に持っていた物で、もう一つは似たデザインで色違いのをインデックス用に購入してきた物だ。



「むむむ! またばかにして! でんわくらいもうきちんと使えるもん!」


「はいはい…インデックスたんはおりこうさんですねー」


「むきぃぃぃぃぃぃ!!」


飲み物をコップに注ぐ上条の隣でブンブン手を振り回して怒るインデックス。

どうやら上条の言い草が相当気にいらないらしい。

309 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/27 01:17:06.02 ID:tckOnERDO



「すまんすまん、ちょっとからかい過ぎたな」



上条はインデックスの頭を撫でながら可笑しそうに微笑む。



「…もう、とうまのばか!」



口では抗議しているインデックスも上条の手には逆らわずに素直に受け入れる。


「ほら、インデックス」



飲み物を注いだコップをインデックスに渡し、上条も自分の分に口をつける。



「…インデックス? 飲まないのか?」



コップを受け取ったままで、それをじっと見つめるインデックス。



「………インデックス?」


「ふぇ!? …なにとうま?」


「飲まないのか?」



不自然な反応をするインデックス。


上条は妙に思いながらも取り敢えずは疑問に思った事をまず口に出した。

310 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/27 01:46:51.07 ID:tckOnERDO


「う、ううん? のむよ?」



そう言うと、コップの中身を一気に飲み干すインデックス。



「……うぷ…、ごちそうさまなんだよ」



「…炭酸飲料の一気飲みとか罰ゲームじゃねえんだからさぁ…、インデックスさんはなんでそんな体を張った事してるの?」



涙目になりながら口に手を当てるインデックス。


それに上条は呆れながらため息をついた。



「…つーかなんか顔色悪くないか? 大丈夫かよ」



「…ちょっと気持ち悪いかも」



上条はやれやれといった具合に肩を落とす。気持ち悪くなるならやるなよ…、と体を使って表現しているらしい。



「気分悪くなったならベットで休んでろよ、夕飯出来たら呼ぶからさ」


「…うん」



短く返事をしてインデックスはベットに向かった。少しふらついている所をみて上条は、結構無理をしてやったんだな…、とさらに呆れてうなだれる。


取り敢えず夕飯はちょっと軽いやつにしよう。と上条は同情心いっぱいで献立を考え始めた。

311 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/27 02:16:48.92 ID:tckOnERDO



「…ごちそうさまなんだよ」



上条当麻は、インデックスのその言葉に凄まじい衝撃を受けた。



「なっ…、なんですって!?」



その衝撃たるや、思わず椅子から跳ね上がり、顔つきがガ〇スの仮面みたいになる程だった。



「…その反応はちょっといらっと来るかも」


「どうしたんだインデックス!? さてはあれか魔術師の攻撃か!? きっとそうに違いないおのれ魔術師ーーー!!!!」


「……とうま?」



じとーっとした目を上条に向けるインデックス。しかし上条はあさっての方向に向かって変な事を口走っているのでそれに気づかない。



「くそ!? 一体何処から攻撃してきやがった!? 何が目的なんだ!? こんな異常な現象見た事ねぇぞ!? 俺のインデックスがこんなに少食なはずがな……」



がぶり。と頭を噛まれる事で上条当麻は無事に現実世界に帰還した。

312 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/27 02:43:11.13 ID:tckOnERDO



「…おかえりとうま」


「………ただいま」



本日二度目の帰還の挨拶を交わし、改めて上条はインデックスと話を始めた。



「どうしたんだよインデックス、…お前が飯残すなんてはっきり言って前代未聞だぞ」


「そこはかとなくばかにしてるね、……ちょっと気持ち悪いだけだもん」



インデックスは体調不良らしい。そういえば顔色も先程よりも悪い。



「調子悪いって…大丈夫か? まさかさっきの一気飲みが原因って事は無いだろうからな、…風邪か?」


「………多分そうかも」


「う~ん…そっか、なら食えなくても無理無いか」


「…………」



上条は心配そうな声でインデックスを気使う。それから常備していた市販の風邪薬と水を用意して、インデックスの前に置いた。


「取り敢えずこれ飲んで今日はもう寝なさい。そうすりゃ明日には治ってるだろ」


「………うん、わかった」

313 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/27 03:31:25.75 ID:tckOnERDO

その後、上条は風呂に入る為に浴室に向かって行った。

インデックスは渡された薬の前に座ったままで、上条が居なくなるの待っていた。

(……今のうちかな?)

インデックスは渡された薬を持って、トイレに入る。
(…えと、…たしかくすりは飲んじゃだめなんだよ)

インデックスは、最近新しく記憶した…とある本の情報に基づいて思考を巡らせる。

(…中身を流して…ふくろはテーブルに…)

粒状の薬をトイレに流して、その袋のみテーブルの上に置いておく、コップに入った水も半分程流して置いおく。

(……これでとうまはわたしがくすりを飲んだって思うよね)


そこで、インデックスは強烈な吐き気に襲われる。

「…っ…う……!」


急いでトイレに駆け込み、便器の前でしゃがみ込み、胃の中に入っていた物を吐き出してしまった。


「ハァ…ハァ…、…ケホ…とうまがおふろ入っている時でよかったかも」


戻してしまった為か…喉に焼けるような痛みを感じる。


(……でも、…どうしよう)

痛みと吐き気で涙目になりながらインデックスは考える。

(……とうまには………いえない)

インデックスの体調不良と食欲不振、吐き気などにははっきりとした原因があった。

(とうまは……絶対よろこんでくれない)


それはいわゆる、つわりと言われる物だった。


(とうまはあの時の事すごく後悔しているもん…………言えるはずない)


インデックスは妊娠していた。


(どうすればいいの……?)


あの日、あの夜の。

上条当麻の過ちによって授かった命だった。

322 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/27 11:36:58.40 ID:tckOnERDO


 2

「………はぁ」



翌日の昼過ぎ、インデックスは気晴らしのつもりで近くにある公園まで散歩に来ていた。

その日は良く晴れて、心地の良い風の吹く、清々しい天気だった。

だが、インデックスの気分は天候のように晴れやかとはいえなかった。



(……わたし一人じゃどうすればいいのか分からないかも、……でも誰に相談すればいいの?)



当然、彼…上条当麻には言えない。


彼の担任である小萌にも言えない。彼女の立場から考えれば間違い無く彼に伝わってしまう。


それ以外の、彼を経由した人達も駄目だ。


……なら、誰が居るだろうか?


「………どうしよう」

323 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/27 11:57:00.21 ID:tckOnERDO



「…あの、どうかしたの?」



ベンチに座って考え事をしていた最中に声を掛けられた。


インデックスは声の方に顔を向ける。


そこに居たのは顔見知りの少女だった。



「気分でも悪いの? …なんか辛そうだけど」


「…みこと…?」



その少女は、御坂美琴。


あの日を最後に会う事の無くなった、彼…上条当麻を想うもう一人の少女だった。

326 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/27 12:17:52.91 ID:tckOnERDO



「…なんでみことが?」


「…ん? 私はただ単に学校が短縮授業だったからぶらついてただけだけど……って、そうじゃなくて」



インデックスの呟きに答える美琴だが、自分の事はどうでもいいとばかりに話を続ける。



「なんか調子悪そうだから声掛けたんだけど? もしかして迷惑だった?」



美琴の問い掛けに対してインデックスは首を横に振る。迷惑だなんて思っていない……ただ、驚いてしまった。


インデックスは上条と美琴の間で何があったのかは全て聴いている。


そして、美琴も同じように彼と自分に何があったのか聴いているはずだった。


その事があり、会ってもまさか話し掛けられるとは思って無かったのだ。


「……なんか平気そうね、もしかして勘違いした私?」


「…ううん? 少し気持ち悪いのはあってるかも、…でも心配するほどじゃないんだよ」

327 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/27 12:42:24.53 ID:tckOnERDO



「そっか、心配する程じゃないならそれに越した事無いよね」



美琴は軽く息をはいてから答える。


その後に、すぐ近くにあった自販機の前まで向かう美琴。



「………ちぇいさーーー!!」



小刻みステップを踏んだと思うと、次の瞬間…鋭いい蹴りを自販機に食らわした。



「………おっ、二つ出て来た! もう一発やる手間が省けたわね」


「……どろぼうなんだよ」



出て来た缶ジュースを手に戻って来た美琴に対して、インデックスは咎めるように言う。



「大丈夫よ、先にお金はたっぷり払ってあるもん」



缶を渡しながら美琴が弁明する。



「水分でも取ればちょっと落ち着くでしょ、あげるから飲んでいいわよ?」


「…ちょっとふくざつだけれども一応ありがとうなんだよ」


美琴はインデックスの隣に座りジュースを飲みはじめる。

330 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/27 13:01:51.07 ID:tckOnERDO



「……ん? 飲まないの?」


インデックスが缶ジュースを持ったまま動かないので美琴はちょっと不思議に思い聞いてみる。



「あ…えと、…その」


「…………もしかして、……開けられないとか?」


「………ぅ……うん」


「…うわー、そんな奴初めて見た」



ちょっと残念な子を見る目を向けながら、美琴はインデックスから缶を取り上げプルタブを開ける。



「…はい、こんくらい出来ないと笑い者になるわよ?」


「うぐ…、なにも言い返せないかも」



改めてジュースを受け取り、中身をちびちび飲みはじめる。


美琴はその姿を見ながら気になっていた事を聞いてみた。



「ところでさ」


「………ふぇ?」


「なんで私の名前知ってたの? どこかで会った事あったっけ?」


「………え…?」



インデックスは美琴の放った言葉の意味が理解出来なかった。

332 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/27 13:59:54.14 ID:tckOnERDO


 行間1


「…で、止めたは良いがどうするつもりだよ? 目が覚めたらまた暴れ始めンじゃねェのか?」

「……その場合は拘束するしかないな、存在の重要度から言って超電磁砲よりもあの二人の方が遥かに重要だ、…上条当麻と禁書目録を無駄な危険に晒す訳にはいかない、可哀相だが…」

「………」

「……お待ちに…なって下さいまし……!」

「…白井黒子か、気を失っていると思ったんだがな」

「…貴方は…、たしか……いえ、今はそんな事どうでもいいですの……! お姉様を…拘束とは一体何故ですの!?」

「……テメェが知らねェ裏事情ってやつだ、悪ィが教えらンねェな」

「……そんな事……!! させる訳には参りません!!」

「………自分も反対させて戴きます」

「……あン?」

「彼女は裏の世界に引きずりこんで良い人じゃない、こんな事で堕ちるなんて事はあったはならないんです」

「……ならどうする? 都合良くあの二人に関する記憶でも消すのか? そんな芸当“学習装置”でも不可能だぞ」

「……いえ、……可能かもしれないですの」

「………第五位か」

「……はい、…お姉様とはあまり交流はありませんが、…交渉次第では上手く行くと思いますの」

「………本当か?」

「……はい」

「…わかった、その方向で行け…交渉には俺も参加してやるからよォ」

「……よろしいのですか?」

「…クソガキ共がウルセェンだよ、…たくっ、何が誰も傷つかねェようにだ」

「…そうか、だがまずは奴の考えを聴いてからだ、まだはっきりしてない所があるからな」

「……はい」

「…まァ、準備はしておけ…本当にそれで良いならな」

「………………」

340 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[] 2011/03/29 00:45:00.17 ID:4jCK+7DDO


 3

「……みことは…わたしの事、覚えてないの?」


「……う~ん…ゴメン、多分会うのは初めてだと思う」


「…………ッ!」



自分の事を知らない。


インデックスは美琴の放った言葉を信じられないと言った具合に、言葉を詰まらせた。

342 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/29 00:47:09.57 ID:4jCK+7DDO



「………ほんとうに覚えてないの?」



同じ事を繰り返しただけの言葉をようやく絞り出したが、美琴の態度や雰囲気はその再確認の言葉を既に必要無い物にしていた。



「……? 一体何よ、私は何かあんたと約束でもしてたの? …こっちは全く身に覚えが無いんだけど?」



インデックスの様子を怪訝に思いながらも言葉を返す美琴。



「……そうじゃないけど、………でも……っ」

343 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/29 00:48:45.86 ID:4jCK+7DDO



「…う~~ん? あんたみたいな妙な格好の子なんて一回見たら絶対忘れない自信あるんだけどな…、…むぅ?」



…そこで、二人の会話を無理矢理中断させるように声を掛けられる。



「これはこれは、お姉様と白いちb…コホン、あの人の所の修道女さんではありませんか。とミサカは突然二人の背後から声を掛けます」


「ひゃう!?」


「に゙ゃっ!?」

344 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/29 00:50:28.82 ID:4jCK+7DDO



突然の事だったのでかなりのショックを受ける二人。


「あ…あんた声掛けるならもう少しまともに掛けなさいよ! 後ろからいきなりとか心臓に悪いっつーの!!」


「緊急的処置が必要と判断した為による行為でしたが取り敢えず謝罪しましょう。とミサカは大して悪いと思ってないのに謝罪の言葉を口にします。すいませんでしたお姉様」


「………相変わらずあんた達と話すの疲れるわね」

345 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/29 00:51:52.35 ID:4jCK+7DDO



肩を落としてため息をはく美琴。それから御坂妹の言葉の中の、気になった部分について聞いてみた。



「ところで緊急的処置ってなによ? まさかいきなり話し掛けるのがそうだったとか言わないわよね?」


「そのまさかです。とミサカはお姉様の予測を覆します」


「………それ何の意味があんのよ?」


「黙秘します。とミサカは口元に指でばってんを作りながら口をつぐみます」


「…………やっぱ疲れる」

346 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/29 00:53:31.28 ID:4jCK+7DDO



そう呟いて、美琴はうなだれながら追求を諦めた。





「…ところでお姉様、この白いのは実はミサカの友人なんです。とミサカは話し掛けた本題を切り出します」


「…へ? そうなの? ……ていうかあんたって友達居たの?」


「えっ、なにその失礼な発言。とミサカはちょっと傷つきました。しまいには泣くぞ畜生」


「はいはいわかったから、…で?」


「………まあ良いです、つまりこの白いのはミサカとお姉様を間違えてしまった訳です。とミサカはいじけながら説明します」

347 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/29 00:55:06.69 ID:4jCK+7DDO


「…ふぇ? …でも…むぐっ」


御坂妹は何か言いかけたインデックスの口を塞ぎ、そして話を合わせろといった具合に目配せをした。



「う~ん? でもその子私の名前知ってたわよ?」


「…えーっと、それはあれです。え~……ミサカがみことと名乗っていたからです。とミサカはめんどくさいので適当な言い訳をします」


「いや言い訳になってないから、てか今考えたでしょそれ」


「……???」

348 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/29 00:56:00.36 ID:4jCK+7DDO



「まあそういう事なのでこの白いのはミサカに任せてください。とミサカはボロがでる前に退散します。アデュー」


「ほぇ?」


「へっ?」


そう言って、御坂妹はインデックス担いで走り去る。その場に残された美琴はただ唖然としるしか無かった。


「…なんなの一体?」

349 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/29 01:00:25.11 ID:4jCK+7DDO


 4

「ただいま~っと、………あれ…インデックス?」



夕方、上条が帰宅すると…いつもなら近寄って来るインデックスが珍しく近寄って来ないので不思議に思い、首を傾げる。



「インデックス? ………………どうしたんだボーっとして?」



部屋の隅で膝を抱え、何処を見るでもなくぼんやりしているインデックスに、上条は怪訝な顔をする。

350 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/29 01:01:33.80 ID:4jCK+7DDO



彼女が家の中で何もせずにごろごろしてるのは基本動作の一つだが、こんな風にボーっとしているのは見た事が無い。



「………あ…、とうまお帰りなさい」


ようやく上条に気づいたインデックス。



「ただいま、…どうかしたのか? なんか変だぞ?」


「…そうかな? べつになんでもないかも」



立ち上がりながら言うインデックス、そうは言うが明らかに元気が無い。

352 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/29 01:12:44.42 ID:4jCK+7DDO


「…インデックス?」


「ねえ、とうま」



インデックスは上条に向かい合うように立ち、瞳を伏せながら問い掛ける。



「…とうまは昔の記憶が無いんでしょ?」


「…ああ、そうだけど……どうしたいきなり?」


「………もし、その記憶の中にすごく大切な思い出があって、…でも、その思い出はすごく辛い物だったとしたら……とうまはどう思う?」

353 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/29 01:29:47.45 ID:4jCK+7DDO

インデックスは御坂妹から彼女、御坂美琴の事を聞いた。


彼女が上条から拒まれ、その後に何があったかを、全て。


御坂美琴は、上条に拒絶された後、暴走し破壊に走ったという事。


それを止めたのが学園都市の第一位、一方通行だと言う事。


…一方通行が美琴を止めなければ、自分と彼は危険だったという事。


そして、再度の暴走を防ぐ為に…美琴の意識から自分と彼に関する事を、全て切り離し…隔離したという事(御坂妹の説明ではそのように言っていた)。


つまり、御坂美琴は彼と自分の事を忘れさせられたという事だった。

354 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/29 01:42:02.87 ID:4jCK+7DDO



それは幸せなのだろうか?


それとも、辛い事なのだろうか?


インデックスは現在からおおよそ一年と数ヶ月分の記憶…思い出しかない。


過去の自分は幸福だったのだろうか?


それとも、自分が彼…上条当麻に出会う前のような、一人ぼっちで寂しい、辛い思い出ばかりだったのだろうか?


人づてにはどのように過ごしていたか、ある程度は聴いている。


だが、自分自身がどのように考え、どのよう感情を持って過ごしたかは、…分からない。

355 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/29 01:51:07.51 ID:4jCK+7DDO



ならば、同じく過去の記憶を失ってしまった彼はどう考えるのだろうか?


自分には分からない答えを見つけているかもしれない。



「………とうまは思い出が無くても平気?」


「…………思い出、か」

356 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/29 02:11:36.53 ID:4jCK+7DDO



「………さあな、平気かどうかは分かんねえよ」



上条はボリボリと頭を掻きながら、なんでもないように答えた。


「分かるはずねぇじゃん、だって辛いかどうかさえ覚えてねえんだろ?」


「…………」


「まあでも…、無いよりはあった方が良いと思うぞ?」


「………それは…なんで?」



上条は不安げな表情のインデックスに、当たり前の事を言うように、はっきりとした声で言った。



「大切なんだろ? その思い出は」


「…………ッ」

357 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/29 02:35:13.58 ID:4jCK+7DDO



「失ってからじゃ分かんねえけど、失う前なら簡単な問題だな、大切なら絶対に失いたくないって思うはずだろ? どんなに辛い思い出でもな」


「…………」


「まああれだ、ぶっちゃけ上条さんにする質問じゃ無いですよインデックス? 記憶がぶっ飛んだら平気もクソも無いってのは確認済みだしな」


「………そっか…うん」



インデックスは何やら納得出来たようだった。上条の顔に真っ直ぐ瞳を向け、にっこりと微笑む。



「…ところで、なんでそんな事聴いて来たんでせう?」


「ないしょかも……ん…」


「…へ? イン…ん…っ!?」



インデックスはほうけた顔をした彼、上条当麻の唇に自らの唇を重ねた。

358 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/29 02:46:56.56 ID:4jCK+7DDO





その翌日の朝、上条はテーブルの上にあったメモを見つけた。




そこにはこう書いてあった。



『 とうまへ  みことにあってあげて? それでたいせつなものをとりもどしてあげて?』




『 いままでありがとう   さよなら index 』



部屋の中には、上条当麻一人だけしかいなかった。

369 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/29 18:28:56.61 ID:4jCK+7DDO


 行間(touma)

上条は走る。


「はぁ…っ…はぁ…っ!」


走り出してから既に、かなり経っている。


(……なんで…!)


もう体力の限界などとっくに過ぎた。


(なんでだよ……!?)


身体から悲鳴を上げるような痛みが込み上げてくる。


(…ずっと…笑ってたじゃねえか!! ちゃんとやり直せてたじゃねえか!!)


それを無視して、無理矢理脚を動かし続ける。


(そう思ってたのは………俺だけなのかよ!?)


大切なモノを失いたくない一心で…。


(…教えてくれよ……!!)


ひたすらに走った。


「…インデックス!!」

370 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/29 18:41:46.81 ID:4jCK+7DDO



「……お待たせしました」


「……うん」



学園都市の第23学区。


そこにある空港の一角に、インデックスは居た。


彼女と話しているのは、神裂火織。


インデックスが昨晩、迎えに来て貰えるように頼んだ為、彼女はここに居た。離れた所にはステイルの姿もある。


二人共、彼女の理解者だ。



「…ありがとうかおり、いきなりだったのに来て貰って」

372 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/29 18:55:07.50 ID:4jCK+7DDO



「それは構いませんよ、……只、事情だけは聞かせて貰えませんか?」


「…………それは……」


「……場所を変えましょうか、人の多い所では話しづらいようですし」


神裂の提案に頷くインデックス。
その表情は暗く沈んでおり、普段のような明るい雰囲気は全く無かった。

373 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/29 19:07:36.88 ID:4jCK+7DDO



「……神裂」



ステイルが、二人から少し離れた所から声を掛ける。



「僕はここに残ってるよ、…ここに来る奴が居るだろうからね」


「……分かりました。では後で連絡します」


「……ああ頼むよ、…それと彼女の話が僕も知って良い事なら、…その時教えてくれ」


「…………」


「……はい」



それから、インデックスと神裂は空港を離れる為に歩き出す。

374 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/29 19:15:07.51 ID:4jCK+7DDO



「………すている」


「……なんだい?」



去り際、インデックスはステイルにこう告げた。



「とうまに何もしないでね? ……わたしはへいきだから、…だから」


「………ッ」



とうまを傷つけないでね?



それだけ告げると、インデックスは神裂の進む方へと歩き出した。

375 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/29 19:17:14.97 ID:4jCK+7DDO



「………やれやれだな」


ステイルは禁煙のロビーで、周りの事も憚らずに煙草に火を付ける。



「……まったく、なんて事を言うんだろうね…」



煙草の煙をゆっくりとした動作で吐き出し、それと共に…自身の想う心も口に出す。



「そんな事を言われて、…君にそんな事を言わせる奴を僕がただで済ますはずが無いだろう……!!」




「…約束を破ったな? ……上条当麻!!」

376 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/29 19:29:34.18 ID:4jCK+7DDO


 6


「………話はこれでぜんぶかも」


インデックスと神裂は空港を出て、すぐ近くのファミレスに来ていた。



「…………………………………………………………」


「……かおり?」



インデックスの方を凝視したまま固まってしまっている神裂。


インデックスが声を掛けると、今度は肩がプルプルと震えだし、…次の瞬間。



「…あ…んの糞ド素人がああああああああああああああああああああああああああああっっ!!!? なんて事しでかしてんだああああああああああああああああああああっっ!!!!!!」



周りの迷惑も考えずに突如として叫びだした。

377 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[] 2011/03/29 19:51:19.02 ID:4jCK+7DDO



「か…かおり!? 落ち着くんだよ!!」



わたわたと慌てながら神裂を落ち着かせようとするインデックス。通常とは逆のパターンなので珍しい光景である。



「フー…フー…、…ふぅ、すいません少し取り乱しました」



「すこしではなかったかも」


一応落ち着いた神裂だが、まだ怒りは収まってないらしい。叫んだ為に喉が渇いたのだろう、彼女は自分の頼んだ飲み物を手にする。…その手に持ったグラスにひび割れが出来いた。



「……あんまりとうまを責めないでほしいかも」


「……しかし!」



インデックスは神裂の怒りを咎める。


自分の為に怒ってくれていいるのは素直に嬉しいと思う。


だが、これは彼だけが悪い訳では無い。


少なくとも、インデックス自身はそう考えていた。

379 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/29 20:08:47.74 ID:4jCK+7DDO



「……貴女はそれで良いのですか?」


「…うん、わたしもうとうまの事は赦してる」


「………そうですか」


神裂は納得はしていないようではあるが、ようやく怒りを静めた。


「……事情は分かりました。…ですが」


「………?」



神裂は、…恐らく間違いないと確信を持って口を開いた。



「貴女は本当にイギリスに
戻るつもりなのですか?」


「……ぇ…」


「いえ…違いますね、貴女は本当は何処に居たいのですか?」


「…………ッ」



その言葉は、インデックスの心を深く抉った。

380 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/29 20:41:24.92 ID:4jCK+7DDO

「貴女は…あの少年の事を赦したと言いました。……なら、何故イギリスに戻る必要があるのです?」


「それは!! …っ…みことの為に…!!」


そこまで言って、インデックスは俯く。

唇を噛み締め、瞳に涙を浮かべながら。

何かに必死に堪えるように。


「………」


「……わたしがいなければ…きっととうまは……みことの事を助けるはずなんだよ……、だって……思い出が無くってしまう事は……とうまが一番辛いって知ってるはずだから……!!」


「………」


「みことだけじゃない…!! わたしも………とうまだって…、みことに忘れられてしまうのはすごく嫌だもん!! ……かおりだって……すているも!! わたしの思い出をころす事はすごく辛かったんでしょ!?」


「……っ…」


「だから……わたしは!!」



そこで、インデックスは頬に感じる痛みの為に言葉を止める。



「…ぁぅ……っ…!」


「…もう辞めなさい…!」



神裂は彼女の言葉を止める為に、その頬を叩いた。

381 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/29 20:59:31.15 ID:4jCK+7DDO



「私が聞きたいのはそんな事ではありません…!!」


神裂は悲しげに顔を歪めながら、諭すようにインデックスに言葉を投げる。


「私が聞きたいのは!! 貴女がどうしたいかです!! ……そんな自分の幸福を投げ棄てるような言葉じゃない!!」


「……でも…っ」


「貴女はそれで良いのですか!? それで貴女は幸福になれるのですか!? 貴女は…彼が傍に居なくても辛くないのですか!?」



「………っ…う…」



神裂は、目の前に居る大切な友人を責める。


彼女の…その隠された本心を引き出す為に。

382 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/29 21:15:16.72 ID:4jCK+7DDO


「…辛い思いをしてまで…自分の幸福を棄ててまで貴女が犠牲になる必要が何処にあるんです?」


「…う…っ…ひっ…ぅ…」



神裂の言葉を聴いて、泣き出してしまうインデックス。



神裂はもう一度、彼女に問い掛けた。



「もう一度聞きます。…貴女は本当にそれで良いのですか? 彼から離れて…貴女は幸福になれるのですか?」



「………わたし…は…」



インデックスはその問い掛けに答え始める。



「…とうまと……いっしょに…」



本当の、自分自身の想いをさらけ出す。



「ずっと…ぅ…くっ…、居たいよ……! ひっ…く…」



泣きながら。


押し殺そうと決めていた想いを…。



「…とうまが…いなきゃ……ふ…ぇ…、やだ…ょ…!」

383 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/29 21:44:19.26 ID:4jCK+7DDO


 7


「………そうか、わかったよ。…じゃあ切るよ?」



ステイルが神裂からの連絡を終えるのと、彼が空港に留まった目的の少年を見つけたのはほとんど同時だった。



「……やっと来たか」


「…ステイル」


上条当麻。


ステイルは、この男に用がある為にインデックス達について行かなかった。


「取り敢えず聞こうか、何しに此処へ来た?」



上条は肩で息をしながらも、振り絞るように声を上げる。



「インデックスは何処だ……!!」


「…質問してるのは僕だ、……何しに此処に来た」



上条の表情が険しくなる。こういった問答をしている間すら惜しいといった、…まるで余裕の無い顔つきだ。



「……迎えに来た、…インデックスはイギリスに行かせない……!!」


「行かせない…か、おかしな事を言うね、彼女は元々イギリスが故郷だよ?」


「…いいからインデックスの居る場所を教えろよ!!」



上条は今にも飛び掛かりそうな勢いでステイルに噛み付いた。

386 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/29 21:59:24.85 ID:4jCK+7DDO

「…ふん、ついて来い」


「…………」



ステイルがどこかに向かって歩き出したので、上条はその後ろについて行く。



……しばらく歩き、ステイルが立ち止まった場所は空港の外、その近くにある何かを建設中らしい作業現場だった。



「…さて、事前に人払いのルーンを貼ってあるからね、多少の事なら騒ぎにはならないだろう」


「……てめぇ、インデックスが居る所に行くんじゃねえのかよ?」



上条の言葉にステイルはつまらなさそうに答えた。



「誰が案内するなんて言った? 僕はただついて来いと言っただけだぞ」


「………てめぇ…!」

390 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/29 22:21:53.37 ID:4jCK+7DDO



「…上条当麻」


「………」



ステイルを睨みつける上条。


その表情は獣のように険しい。



「…君がそんな顔をするなんて知らなかったよ。…今まで戦って来た奴らにもそんな顔を向けた事無いんじゃないか?」


「……いいからインデックスの居場所を教えろ!! てめぇは知ってんだろ!!」


「知ってるさ、僕らを呼んだのは彼女だからね。………だが」



言葉を一旦切るステイル。


…そして、上条に負けぬ程に険しい顔になって先を続けた。



「…逢わせると思うのかよ糞野郎」



その言葉と共に、ステイルの両手から炎が迸る。

391 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/29 22:40:51.29 ID:4jCK+7DDO




両手に炎剣を振りかざし、ステイルは上条に飛び掛かる。



「……そう…かよ…!」



上条は右手を強く握り締め、同じくステイルに飛び掛かって行った。



「だったら…!! 殴り倒してでも聞き出すぞステイル!!」



二人共真正面からぶつかり合う。


上条はステイルの左手の炎剣に右手を突き出す。瞬間、炎剣は何か砕けるような音と共に消え失せる。



「僕は君に言ったはずだ!! “あの子の笑顔を死んでも守れ”と!!」


「…………ッ!」

392 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/29 22:57:44.19 ID:4jCK+7DDO



炎剣の消えた左手で上条の右腕を掴む。


直ぐさま右手の炎剣を横に振るうが、上条は前に転がり込むように避わし、さらにステイルに体当たりするように身体をぶつけた。



「…ぐっ!! …だが君はあの子に何をした!? 君自身が守ると決めたあの子に何をした!? 言ってみろよ上条当麻!!」



バランスを崩された拍子に掴んでいた腕を外される。だが、懐に入ってきた上条の腹に、膝蹴りを入れて相手の動きを鈍らせた。



「が…っ…!? …く…そ…!」

393 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/29 23:17:20.22 ID:4jCK+7DDO



「なんであの子を傷つけた!? なんであの子に涙を流させた!! ………なんであの子を汚すような真似をした!!」



炎剣を振り下ろして上条の身体を狙う。
それに対して上条は前転の要領で転がるように避ける。



「……っ……!」



ステイルは上条が離れた隙に、左手に炎剣を再び燃え上がらせる。



「答えろよ上条当麻!! お前はあの子を傷つけてまで共に居る事が赦されると思うのかを!! あの子が赦したからそれでお前の罪が消えたのかどうかを!!」


「…………っ…!!」

396 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/29 23:38:07.62 ID:4jCK+7DDO



両手の炎剣を合わせ、一本の巨大な炎剣を生み出す。

それを突き刺すような体勢で、上条目掛けて身体ごと突進する。



「少なくとも僕は赦さない!! ほかの誰が赦しても、例え神が赦しても!! …僕だけはお前を絶対に赦さない!!」


「…ステイル…!!」


炎剣を携え突撃してきたステイルに、上条は右手を前に突き出してそれに備える。


次の瞬間、ステイルの炎剣と上条の右手がぶつかり合い、ステイルの炎剣は跡形も無く消え去った。



「……あの子に子供が出来た事に君は気づいているか!?」


「……な……」


ステイルの言葉に絶句する上条。


ステイルはそんな上条の顔面を全力で殴り飛ばした。


「あ…ぐ……っ…!?」


「…わかったかよ? ……君の罪は大きいんだ、……君が思っているより…ずっと!」

397 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/29 23:56:08.92 ID:4jCK+7DDO

ステイルは殴られた反動で倒れ込んだ上条の胸倉を掴み、無理矢理に立させる。


「…もう一度聞くぞ上条当麻。お前は此処に何をしに来た?」


「………ぁ……」



呆けた反応をする上条を、ステイルはもう一度殴り飛ばす。


地面に転がるように倒れる上条。



「何度でも聞くぞ、…何をしに来た? あの子に逢ってそれからどうする?」


「…子…供…? …俺…の?」



また殴りつける。



「お前以外に誰が居る? 見苦しいからそんな確認なんかしないでくれ」


「…ぁ…、な…?」

398 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/30 00:23:26.14 ID:k6ZZnnGDO

「…良かったな糞野郎」


「………」



ステイルは殺意を剥き出しにしながら言葉を続ける。


上条に掴み掛かり、何度も殴りながら。


「僕は今すぐにでも君を消し炭にしたい。…でもそれをやると…あの子は悲しむんだよ…」


「イ…ンデッ…がふっ!?」


「僕の前であの子を呼ぶな、それだけであの子が汚れる」



上条の囁きを拳で無理矢理中断させるステイル。殴り続ける彼の手も既に皮膚が擦り切れ、上条の血と彼自身の血によって、酷く汚れてしまっていた。



「だから僕は君を殺さない。あの子の瞳からは涙を流させない、それは僕だけは絶対に守るんだ……例え君に汚されて、それでも君しか見えていない愚かな娘でも…だ」


「………ぅ…ぐ…」



ステイルは上条を投げ棄てるように解放する。



「…失望したよ上条当麻、君が約束を破るなんて正直思っても無かった」


その言葉を最後にステイルはその場を後にした。



「……お…れ……は…」



残された上条は、しばらく倒れたまま動けなかった。

408 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/30 15:23:09.23 ID:k6ZZnnGDO


 行間(14&18)

「…気は済みましたかステイル」


「……神裂」



作業現場を出てすぐの所で、ステイルは神裂に呼び掛けられた。


「…あの子は?」


「近くの店で待たせています。…貴方も今は彼女が居ない方が都合が良いでしょう?」



ステイルは煙草を懐から取り出して、それに火を付ける。



「まあ…ね、正直今僕がしているだろう顔も…あそこで転がっている奴の情けない顔も、あの子には見せたくないからね」


「……話したのですね?」



神裂の表情も曇る。

409 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/30 15:24:22.56 ID:k6ZZnnGDO



「ああ、言ってやったよ。僕のような第三者が告げていい事じゃないだろうけど……敢えて告げさせて貰った」


「…それで良いと思います。もし貴方が言わなかったら私が彼に告げていましたから」



ステイルは煙草を根本近くまで吸い切ってから無造作に投げ捨てる。その吸い殻は地面に届く前に燃え上がり、灰になって辺りに霧散した。



「…彼はこの後どうするのでしょうか?」


「さあね、それは奴にしか分からないよ。…僕もこれ以上何か言う気も無いしね」



二本目の煙草を口元で揺らしながらステイルは歩き出す。



「取り敢えずあの子の所へ行こうか、折角休暇まで取って来たんだ、あの子に観光でも付き合って貰うとしよう」


「……ステイル」


「僕らが遊んでいる間に…あの馬鹿はやるべき事を見つけるだろうさ」

410 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/30 15:27:01.19 ID:k6ZZnnGDO


 8

夕方、上条当麻は第七学区…そこにある、彼が普段からよく立ち寄る公園まで来ていた。



「………」



彼自身、何故ここに居るのかよく分かっていない。


ステイルとの一件の後、呆然としたまま歩きつづけ、気がついたらこの公園のベンチに座っていた。

411 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/30 15:28:26.45 ID:k6ZZnnGDO



「……インデックス」



インデックスに子供が出来た。


ステイルははっきりとそう告げた。



「…俺…の…」



間違い無く、あの日に宿った命だ。


彼はあの日以来、彼女を抱いていない。


インデックスに、あの日の過ちを…傷つけた事実を思い起こさせるのが嫌だった為に。


…否、自身の過ちを思い出したくなかったからかもしれない。

412 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/30 15:29:46.72 ID:k6ZZnnGDO



「………どうすりゃいいんだよ……」



彼女が自分に言わなかった理由はすぐに予測出来た。


多分、恐かったのだろう。


当たり前だ、…彼女の立場、性格…それに自分の立場や状況を考えれば、言い出せなくても無理は無い。


それ以上に、今…自分がしているであろう表情を見たくなかったのだろう。


きっと彼女は、自分にこう望んでいるはずだ。


二人の間に命が宿った事を、喜んで欲しい。…と。

413 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/30 15:30:50.01 ID:k6ZZnnGDO



「………喜べって…、………ははっ…無理だっつの」


正直な所、彼の意見はそれだった。


喜びたくても…無理だった。



「俺……学生だぞ? …責任なんて……まだ取れねぇよ……」



上条はありふれた言い訳を口に出す。


自分の、本当に思い起こした理由を隠すように。

414 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/30 15:31:59.11 ID:k6ZZnnGDO



(インデックスは……産むだろうな、…俺が何言っても)



自分はインデックスに、恐らくこう告げるはずだ。


堕ろせ、と。


それ以外に、上条は思いつかない。


産ませてやりたくとも、上条にはそれを支持する事は出来ない。


…だが、それを告げる勇気も無い。



(……どうすりゃ良いんだよ)

415 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/30 15:32:47.91 ID:k6ZZnnGDO



そこで、上条の前を通り過ぎていく少女が居た。



「………ちぇいさーーー!!」


その少女は自販機に鋭い蹴りを入れて、中から缶ジュースを吐き出させる。



「…っ…御…坂!?」



その少女は御坂美琴。


あの日以来、二度と会わないと決めていた少女が目の前に居た。

416 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/30 15:45:33.82 ID:k6ZZnnGDO



「………ん?」


「………ッ」



美琴が上条の声に反応し振り向いた。


上条は咄嗟に呼んでしまったが、その事をすぐに後悔した。



(……話し掛けてどうすんだよ……くそ…っ)


「…何か用?」



美琴はなんでもないような口ぶりで聞き返して来る。


「……いや…っ…」



上条は口ごもる。今、彼女に掛けるような言葉は何も持っていない。


黙ったまま眼を逸らす上条に、美琴が取った行動はこうだった。



「…ちぇいさーーー!!」



もう一度自販機に蹴りを入れる事だ。

417 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/30 16:01:49.30 ID:k6ZZnnGDO



美琴の行動に理解が及ばない上条は、ただ目を点にして美琴の方を見る。



「……はい!」


「………へ?」



差し出された缶ジュースを見ながら上条はますます理解が追いつかなくなる。



「良いから受け取りなさいよ、口止め料よ口止め料!」


「………はぁ?」


「一応マナーが悪い事だと思うしね、学校にチクられても嫌だし、これあげるから黙っててくんない?」



上条は「んな事気にするなら初めからやんなよ…」と思いつつも缶ジュースを素直に受け取った。

418 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/30 16:17:23.95 ID:k6ZZnnGDO

「ちょっと隣座らせてくんない?」


「…あ…ああ」



美琴の言葉に上条はベンチにスペースを開ける。


美琴はそこに座りながら缶ジュースを空け、上条を気にする様子もなく飲み始める。



「…………」



上条は訝しむ。


何故、目の前の少女はこんな自然な態度を取れるのか?



(……あれか? 私過去は振り返らない主義なの! …って感じなんですかね?)



上条はテレビなんかでよく聞くフレーズを思い浮かべる…が、どうも違う気がする。


取り敢えず、上条は声を掛ける事にした。

420 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/30 16:34:18.91 ID:k6ZZnnGDO

「…その、久しぶりだな……御坂」


「………ん?」



上条の言葉で美琴が振り向く。



「……えーと、…元気だったか?」


「……ちょっと待った!」



美琴は上条の話を遮り、待ったをかける。



「…もしかして勘違いしてない?」


「……え?」


「昨日の子もそうだけど……私とそっくりだけどゴーグル掛けた子が居るんだけど、そっちと間違ってない?」


「…御坂妹の事か? たしかに瓜二つだけど、…お前は御坂美琴だろ?」


「…間違いじゃないの? ていうかあの子の事までなんか知ってるっぽい……」



美琴はベンチから立ち上がり後ずさるように上条から距離を取る。



「………御坂?」


「……………………もしかして、…ストーカー?」



上条は流石にその言い草には絶句した。

422 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/30 16:54:28.41 ID:k6ZZnnGDO

「…………………………………えーと、冗談だよな?」



美琴がじりじりと距離を開けて行くので、上条も取り敢えず立ち上がって近づいて行く。



「…ちょ…! こっちくんな!!」



バチバチと電撃を出して威嚇する美琴。上条はどうにも美琴の自分に対する態度に違和感を覚える。



「……どうしたんだ御坂? …お前なんか変だぞ?」


「うっさいわね! 大体あんた何処の誰よ!? 私はあんたなんか知らないわよ!?」


「……なっ……!?」



自分を知らない?


御坂美琴が?



「……どういう事だ?」



上条はつかみ掛かるように美琴に一気に近づく。



「……!? …近づくなっつってんのよ!!」



触れられる前に美琴から電撃が放たれる。…それを右手で打ち消しながら、上条は美琴の腕を掴んだ。

423 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/30 17:05:38.54 ID:k6ZZnnGDO



「…この…っ…離せばか!!」


腕を捕まれ、じたばたと抵抗する美琴。



「つかなんなのよあんたは!? なんで能力が!?」


「……御坂! 一体どうしたんだよ!? 俺が誰だか分かんねえのか!?」


「…しつこいわね! 知らないって言ってんでしょ!?」



なんとか逃れようとする美琴、それを上条は力任せに引き止める。



(一体なんなんだよ!? 御坂はどうしちまったんだ!?)

425 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/30 17:12:40.30 ID:k6ZZnnGDO




「…ふぁ…っ…!?」


その時、美琴がバランスを崩し、倒れそうになる。



「………っ……!」



上条は、咄嗟に美琴が転ばないように支えるように美琴の身体に触れた。



左手は腰の辺りに。



右手は、彼女の頭に。



バキンッ



瞬間、何かを砕く音が辺りに響いた。

428 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/30 18:02:13.90 ID:k6ZZnnGDO



「………!?」



上条は自分の右手、“幻想殺し”が発動した事を感じ取った。



「……………」



美琴は真っ直ぐに上条を見つめている。その顔には少しだけ驚きが混ざっているように見える。



(………何を…壊したんだ……?)

429 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/30 18:06:44.08 ID:k6ZZnnGDO



上条は知らなかった。


御坂美琴の記憶の一部にブロックが掛かっていた事を。


その記憶は、自分とインデックスに関する記憶である事を。


そして、そのブロックは他者の異能による物だという事を。


上条当麻は、知らずにその幻想を殺してしまった。

430 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/30 18:12:20.17 ID:k6ZZnnGDO



「………放して、平気だから」



上条は美琴の一言で意識を外に向けた。



「…あ…ああ、すまない」



ちゃんと立たせるような体勢にしてから美琴から手を離し、向かい合う。



「……御坂…さっきのは」


「…ん、気にする事ないわよ」


「…………」



上条は美琴の態度が急変した事に気づく。先程までの邪険な態度がまるで無い。

431 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/30 18:20:26.51 ID:k6ZZnnGDO




「……お前、どうしたんだ? やっぱり俺が分からないのか?」


上条の問い掛けに美琴はなんでもなさそうに、少しだけ妖しく微笑んで告げた。


「…さっきのは冗談よ、只単に当麻と会ったのが久しぶりだったからちょっとからかってやろうと思って」


「………そう…なのか?」


「そうよ? もしかして本気にしたの?」


「……いや…ならいいんだ」


美琴の可笑しそうにする口ぶりに、上条は取り敢えずは納得した。

432 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/30 18:38:28.54 ID:k6ZZnnGDO



「ところで、…当麻はまた何か悩みでもあったの?」



美琴の突然の問い掛けに上条は言葉を詰まらせる。



「…なんでもねえよ、気にするな」



「……ふ~ん? …そお?」



上条は言葉を濁して追求を避わす。


「ほんとに何でもねえよ、…心配ないからさ」


「じゃあその傷だらけの顔は何? 只の喧嘩ならそんなになるまでやらないでしょ当麻は?」


「……う…」



的確な突っ込みばかりする美琴に上条は口ごもるしかない。

433 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/30 18:50:21.86 ID:k6ZZnnGDO



「…まあ良いわ、言いたくないみたいだし」


「………」



ようやく追求を辞めた美琴に、上条は少しだけ安堵する。



「あの時はあっさり喋ったのになぁ…、ちょっと悔しいかも?」


「………ッ!」



上条を横目に見ながら呟いた一言が再度、上条の胸を締め付けた。



「……御坂…」


「ゴメンゴメン♪、ちょっと意地悪だったよね」



そう言う彼女はただ笑顔だった。

434 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/30 19:03:07.85 ID:k6ZZnnGDO



「…じゃあ私帰るね?」


「…ああ」



そう告げて美琴は歩き出す。



「………あ、そうだ」



少し離れた所から、美琴は上条に向き直る。



「これからはちょっとくらい会ってよね? 流石に二度と会わないとか馬鹿みたいだもん」


「……いいのか?」



美琴は上条の返事に対して、指先を向けて銃を撃つような仕草で返す。



「…当麻が居ないとストレス溜まる一方なのよ、だからたまには発散させてよね!!」



それだけ言って、美琴は駆け出した。



「……なんか、心配する程でもなかった…のか?」



残された上条は見えなくなるまで美琴の背中を見つめていた。

435 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/03/30 19:23:34.73 ID:k6ZZnnGDO


 行間(mikoto2)


思い出した。


…思い出した!


彼…当麻の事を…!


やっぱりだ…。


当麻は私を助けてくれる。


邪魔した奴らの企みから私の思い出を取り返してくれた……!


当麻の事を忘れてたなんて…、例え心理掌握の能力とはいえ…自分自身が許せない。


でも…それはもう良い。


だって、当麻が思い出させてくれたもん。


だからそれは良い。


記憶は戻った……後は当麻を私の当麻にするんだ。


でも……今すぐ当麻の所に行っても駄目。


焦っては駄目だ。



無理矢理に押し通して…、またあの一方通行が出て来たらまずい。


だから慎重に動く。


周りには、…当麻以外には、私はまだ当麻の事を忘れている事にしよう。


そうすれば…目眩ましになるはずだ。


ゆっくり、確実に当麻を手に入れよう。


大丈夫だ、きっと上手く行く。


私は、学園都市に七人しか居ないlevel5の第三位。



御坂美琴なんだから。

461 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/01 18:41:06.80 ID:+ibZkYUDO


 9

「…ただいま」


美琴と別れを告げた後、上条当麻は自身の部屋へと帰って来た。


彼は帰宅を告げる声を出すが、…当然返事は返って来ない。



「…インデックス」



彼女の名前を呟く。


今朝、彼女は何も言わずに…たった一枚のメモを残しただけでこの部屋から出て行ってしまった。


上条からすれば、あまりにも突然過ぎる別れだ。


当然追いかけた。


彼女の行く先は間違い無くイギリスだ。


なら、空港まで行けば必ず逢える。…必ず引き止められると思っていた。


だが、実際には逢う事すら出来なかった。


…代わりに分かった事は、彼女が妊娠したという事。


上条はインデックスに逢う事を躊躇ってしまった。


…どんな顔をして逢えば良いのか分からなかった。

462 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/01 18:58:37.69 ID:+ibZkYUDO



上条は夕日に照らされる部屋の中で、ただ呆然と立ち尽くす。


その心にあるモノは、後悔。


そして、自分自身への落胆だった。


「…インデックス…!!」


彼一人しか居ない部屋の中は、ただ寂しく。…嫌な程静かだった。


彼女の名前を呼ぼうとも、その言葉に返って来る声など無い。


自分自身で、あの日から取り繕ったモノが幻想だったと知ってしまった少年は、ただ立ち尽くすしか出来なかった。


自ら幻想を殺し、それに隠されていた現実は、彼には荷が重い事実だった。


上条当麻は再び現実から逃げ出した。


その事が、彼の胸に深く突き刺っていた。

463 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/01 19:16:50.24 ID:+ibZkYUDO


 10

「……っ……?」


インデックスは、誰かに呼ばれたような気がして、窓の外へと顔を振り向かせた。


だが、彼女の居る場所は地上から十数メートル放れた所だ。


そんな高い所の窓の外に人など居るはずもなく、彼女も気のせいだとすぐに思い、顔を前に向け直した。



「どうかしたのですか?」



そんな彼女に声を掛けるのは、今日自分をイギリスに連れて行って貰おうと頼み、この学園都市まで迎えに来て貰った神裂火織だ。



「…ううん、なんでもないかも」



彼女とインデックスは今、神裂とステイルが学園都市に数日滞在する為に宿を取った、そのホテルの一室に居た。


先程までステイルも同じ部屋に居たのだが、何やら用があると言い、外出していた。

464 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/01 19:37:39.59 ID:+ibZkYUDO


「……とうま、どうしているかな?」



インデックスは…ふと彼の事を呟いた。



「…………」



その呟きに、神裂は何も言えない。



(……やはり、彼が居ないと救われませんか)



インデックスの想いの強さは、そういう事柄が苦手な神裂でも分かる程に強かった。


どれだけ傷ついても。


どれだけ辛い想いをしても。


彼女の想いは揺るがない。


(想いが強ければ…それだけ辛く、苦しくなる…ですか)


目の前の少女は…もうあの少年にしか幸福にする事が出来ないのだろう。


それが同時に彼女を傷つける事だとしても…。



(……少し、羨ましいですね)



そんな事を思いながら、神裂は少しだけ頬を緩めた。

465 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/01 19:58:37.87 ID:+ibZkYUDO

「…彼に逢いたいですか?」



神裂はインデックスに問い掛ける。


答えなど聞かなくても分かるような問いだが、敢えて聞いた。



「………うん……でも…」



言い淀むインデックス。


何かを逡巡するように、その瞳は辺りをさ迷っている。



「……恐い、…ですか?」


「………うん」



その答えも神裂は予想していた。



「……とうまが…この子をどう思ったのか、……知るのが恐い…」


「……………」


当たり前だと、神裂は思う。


恐くないはずが無い。


はっきり言ってしまえば、彼女が宿した命は…望まれて宿った命では無いのだから。


それを考えれば、当たり前の事だ。


もし彼女の立場に自分が立ったとしても、自分だって同じような心境になると思う(…上手く想像は出来ないが)。


それに、彼女自身だってまだ幼いのだ。


これで不安や恐怖を感じるなという方が無理な話だろう。

466 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/01 20:24:07.22 ID:+ibZkYUDO

「…大丈夫です。…彼ならきっと」



神裂は、目の前の少女に告げた。



「彼は、…貴女だけはもう傷つけたりしないですよ」



確信がある訳では無い。…ただそうであってほしいといった、神裂自身の願望でしかない。



「だから、恐がらなくても大丈夫です…きっと」



ただの慰めでも何でも良い。



「…だから、信じてあげなさい。…貴女自身が彼を」



彼女を笑顔にする為に。



「…ほんの少し待てば、彼は必ず貴女の所に来ますから」


「…………うん」



神裂はただ、彼女をいたわるように言葉を出す。


少しでも幸福になれるように、ただ言葉を紡ぐ。



「……ありがと、かおり」



今はこの位の事しか神裂には出来ない。

470 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/01 21:28:24.12 ID:+ibZkYUDO


 11

「ただいま戻りましたのお姉様!」



白井黒子は、常盤台中学女子寮の自室に帰宅すると、いつもと同様にルームメイトたる愛しのお姉様、御坂美琴に帰宅の挨拶をした。


「…って、あら…お姉様?」



いつもならばおかえりの一言があるはずなのだが今日はそれが無い。


そのお姉様、御坂美琴は自分のベットに潜り込んでいた。…どうやら寝ているらしい。



(……お昼寝ですの? 珍しいですわね…?)

471 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/01 21:39:17.20 ID:+ibZkYUDO



若干劣情に駆られつつも起こしては悪いと思い、物音を立てないように行動する。


机に鞄を置き、それから自分のベットに座り込む。



(……寝顔くらい鑑賞させて戴いてもばちは当たらないですわよね、…うぇっへっへっへ………!)



かなりアブない顔つきで寝ている美琴を見つめる白井。ぶっちゃけこの程度の行為で済ましている方が珍しかったりする。


………マ。


「……………へ…?」



美琴が寝言で何か呟いているのに気がついた白井は、妙に気になったので顔を近づけて耳を澄ませる。

472 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/01 21:57:36.92 ID:+ibZkYUDO



(…ん~、何とおっしゃってますの?)



…ト……マ…。



「っひ!?!?」



白井はそれを聞いた瞬間、短く悲鳴を上げ、さらにバランスを崩して床に倒れてしまう。



「…………ん…」



物音に気づいて美琴が目を覚ます。ゆっくりと身体を起こし、口に手を当てて小さく欠伸をした後に、床に倒れている白井に目を向けた。



「…ん…、黒子帰ってきてたんだ……ていうか何してんのあんた?」

474 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/01 22:16:19.82 ID:+ibZkYUDO

「…っ、いえっなんでもございませんの!」



そう取り繕いつつ慌てて立ち上がる白井。



「おっ…お姉様こそこんな時間にお休みになられてるなんて珍しいですわね!」


「そうだっけ? …まあ今日はちょっとはしゃぎ過ぎて疲れちゃったからね、横になってたらいつの間にか寝ちゃったのよね」



「そ…そうでしたの」



白井は胸の動悸を鎮めようとしながらも会話を続ける。


そして、ある程度落ち着きを取り戻してから質問した。

478 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/02 07:39:22.91 ID:Fm1m3TsDO

「…大分幸せそうな寝顔でしたけれどもどんな夢を見ていたんですの?」



「…夢? ん~…、そうね…」


ごくり…、と白井は喉を鳴らした。


「…良い夢だったかな? うん、たぶんそうだわ」

「………」

そう語る美琴の表情は明るかった。


(……気のせい……ですわよね?)



白井は、自身の聴いた美琴の声を幻聴だと思う事にする。


だって、彼女は忘れているはずなのだ。

あの少年と白い少女の事を。


心理掌握が施した能力の、記憶を閉ざす壁はそう簡単に無くなる代物では無い。


もし、それが無くなっていたとしたらお姉様はこんなに穏やかな表情など出来るはずがない。


「…そうですの、それは良かったですわね」



あの記憶が蘇っているならば、お姉様はきっと辛い想いをしているはずなのだ。お姉様の夢、そこで放たれた…あの少年の名前は自分の聞き間違いのはずだ。


今のお姉様、御坂美琴は“当麻”という言葉は知らないのだから。

479 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/02 07:57:11.06 ID:Fm1m3TsDO

(……その方が良いに決まってますの)



確かにその、自分達の取った行動は誉められる物では無いだろう。


だが、彼女を守るにはそれしかないと思った。


例え大切でも、例えその想いに縋ってしか生きられないのだとしても。


忘れてさえしまえば…その悲しみ、嘆きも共に忘れてしまうのだから。


…それが、白井黒子が選択した彼女の守り方。


酷く拙い、ただ…見えなくしただけの、ちっぽけな守り方。



(…お姉様が壊れてしまうよりマシですの)



それでお姉様が笑って暮らせるのならば…と。


白井はいつ壊れるとも知れない幻想で彼女を守っていた。


二度と壊れないようにと願いながら。

480 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/02 08:18:13.01 ID:Fm1m3TsDO


 12

「……遅かったな」


学園都市の一角にあるビル…その屋上でステイルは背後に現れた人物に声を掛けた。


「…にゃ~、すまんな。何せ急な呼び出しだったもんでな?」


その人物は土御門元春。


イギリス清教から学園都市に潜り込んだスパイ。


…そしてその逆でもある人物だった。



「…それで、何の用だ?」



土御門が冷徹な口調で用を尋ねる。



「僕の用件は…君は分かっているだろうが敢えて言わせて貰うよ」


「………」


「…何故、報告しなかった」



報告。…当然だがそれはインデックスと上条当麻の事を言っている。


土御門はその事をイギリス側には報告していない。


だから、ステイル達はその事実を今日この日まで知る事が出来なかった。

481 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/02 08:43:17.67 ID:Fm1m3TsDO



「報告する必要が無かった……では駄目か?」


「……ふざけているのか?」



ステイルは土御門を睨み付ける。


そんな答えで納得出来るはずが無い。



「あの子は必要悪の教会<ネセサリウス>でも重要な存在だ。それが理解出来ていないはず無いだろう!」


「………そうだな」


「なら何故報告をしない? 事実を知らなければこちらは動きようがないんだ、この件はお前の一存で報告を怠って良い物じゃ無い!」



土御門を睨みながらまくし立てるステイル。


一方土御門は、ただ冷静にステイルの言葉を聴いていた。

482 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/02 09:25:57.25 ID:Fm1m3TsDO

「…やれやれだな」


肩すくませ、仕方なしと言った具合に土御門は告げた。


「…仕事と私事を混同するな、もっと冷静になれ」


「…っ…!!」


ステイルの表情が更に険しくなる。…それに構わず土御門は続ける。


「今回の事であの禁書目録が…10万3千冊を宿す魔導図書館が使い物に為らなくなったのか? …そんな事は無いだろう?」


「…………ッ」


「あれの中身が無事なら上は何も言わんさ、…入れ物が傷物になろうが何だろうが使えれば問題無いだろうからな」


「……この…っ!」


「お前があれにどういう感情を持っても何も言わん、…だがそれに振り回されて周りに当たるのは辞めるんだな」


「…………っ」


「もう一度言う。イギリス清教に報告する必要は無かった。…お前の意見はただの個人的な憤りだ」


「…………」


「…あれの管理は上条当麻の役目だ。お前が納得するしないは関係ない」


「……それを崩したのが奴でもか?」


「…崩れていないだろ? まだな…」


「……………」


「上条当麻をもう少し信用してやれ、これはあいつの問題だからな」

483 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/02 10:01:10.44 ID:Fm1m3TsDO

「…随分と辛辣でしたね?」


「……海原か」



土御門がステイルと別れてすぐ、物陰から掛けられた言葉に土御門は立ち止まった。


「…何の用だ?」


海原は土御門の隣まで近づいてから口を開いた。


「…御坂さんの記憶が戻りました」


「……そうか」


海原は土御門の反応に意外そうな表情を作る。


「驚かないのですね? 良いんですか?」


「お前こそどうなんだ?」


「…自分はこれで良かったと思ってますよ。…あの場さえ凌げれば良かったですのでね」


「自分勝手な野郎だにゃー」


土御門はボリボリと頭を掻きながら言った。


「…一方通行には連絡しますか?」


「…どうせ「放っとけェ」の一言で切られるぜい? 必要無いにゃー」


「ではどうします?」


「カミやんに任せるぜよ、禁書目録に危害が加わらないなら俺は動く必要無いからにゃー」


「そうですか…なら自分は発破でも掛けて来ますよ」


それだけ言って海原はその場を離れる。


「海原はそれで良いのか?」


その背中に言葉を投げる土御門。


「…ええ、自分では役不足だとわかってますからね」



困ったように笑ってから、海原はそこを離れた。



「……どいつもこいつも面倒臭い奴らだにゃー」

489 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/02 19:52:25.00 ID:Fm1m3TsDO


 13

翌日、上条当麻は登校の為に道を歩いていた。



「…………」



だが、その顔は酷く疲れた表情をしている。


昨晩、上条は寝付けなかった。


孤独(ひとり)で眠る夜が、あそこまで寂しく…胸を締め付けるものだとは知らなかった。


だが…その原因を作ったのは自分なのだ。


誰に文句を言える訳でも無い。

490 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/02 19:53:48.93 ID:Fm1m3TsDO



(……本当に一人だったのって、そういや初めてだったか)



自分には過去の記憶が無い。…今の自分は、始めからインデックスと共に居た。今考えれば、自分は孤独感など今まで感じた事は無かった。


感じる暇すら無かった。



(……インデックスは、これをずっと感じて過ごしてたんだな……俺と出会うまで)

491 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/02 19:54:51.48 ID:Fm1m3TsDO



インデックスが自分と出会うまで、どのように過ごしていたかは知らない。


知らないが、……最低でも一年間もの間、この感覚に耐えてきたのだ。



(…成る程な、妙に何処にでもついて来ようとするのも納得出来るな)



上条は素直に、これは堪えられるものじゃ無い…と感じた。


それは孤独(ひとり)に慣れていないだけなのか。


…それとも自分がただ弱いだけなのか。



「…孤独(ひとり)は、辛いもんだな」

492 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/02 19:55:59.92 ID:Fm1m3TsDO


「……その意見には賛成ですよ、自分は慣れましたけどね」



突然掛けられた言葉に反応し、そちらの方を見る。



「……海原?」


「はい、その偽物の方です」



にっこりと微笑み、上条に返事を返す海原。



「…久しぶり…だよな? 何か用なのか?」


「ええそうです、…用が無ければわざわざ引き止めたりしませんよ」



「…そうだな」



少し刺を含む海原の返事に、上条は何も言わずに先を促す。

493 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/02 19:57:02.93 ID:Fm1m3TsDO



「簡単に言えば、“約束”の事ですね」


「……っ…!」



約束。



かつて、目の前の魔術師と交わしたもの。




「今日はそれの確認です。…貴方は守れていますか?」



「………それは…」



言葉が詰まる。


上条はその約束を守れているとは言えない。



「…少し責めるような言い方になってしまいましたね……気にしないで下さい、貴方の今の状況は知ってますから」


「…………」

494 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/02 19:58:24.38 ID:Fm1m3TsDO



海原の言葉を聞いて、目を逸らす上条。



「…ただ忠告します、貴方が向き合わなくてはいけないのは、……あの禁書目録だけでは無い」


「……御坂は…何も変わっていなかったぞ?」



上条は言い訳するように反論する。


昨日、久しぶりに会った御坂美琴は確かに妙ではあったが…普段とさして変わらぬように見えた。



「………ふぅ、相変わらずそちらの方面はからきしですか。…貴方の周りの女性は本気で可哀相ですね」

495 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/02 20:07:05.34 ID:Fm1m3TsDO




「………何が言いたいんだよ?」


海原は上条の問い掛けに…笑みを消してから答える。


「…貴方の目は節穴だと言ってるんです」


「……何だよそれ…?」


「昨日の彼女の事が普段通りに見えたのなら、貴方は本気で残念な人ですよ、……本当に何の違和感も感じなかったのですか?」


「……それは…」



口ごもる上条。


確かに違和感は感じた。


だが、それを意識して何かしようとまでは考えなかった。

496 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/02 20:30:31.72 ID:Fm1m3TsDO


「…例えば、貴方に会ってからすぐの彼女の態度と、最後の態度の違い」


「…………」


「……その合間に在った、貴方の右手が何かを破壊した音」


「………!」



海原の紐解くような言葉に上条は考えを巡らせる。



「……俺が何か異能を消したから態度が変わった?」


「そうです。…今まで分からなかったのは…まあ良いですよ」


「……俺は何を消したんだ?」



上条は海原に尋ねる。…目の前の男はどうやらそれが何か知っているようだ。



「…簡単ですよ、貴方の右手が殺したのは彼女の記憶の“蓋”です」


「…“蓋”?」


「…ええ、彼女があの禁書目録と…貴方の事を思い起こせないようにする為の物でした」


「………っ!!」


「…あの日、貴方が彼女を拒絶した日の少し後に我々が第五位の能力者に頼んで被せた、…貴方達三人を守る為の“蓋”でした」

497 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/02 20:52:07.45 ID:Fm1m3TsDO


 14

「…ここまでで良いかも」


「…そうですか? まだ彼の寮からは少し遠いですが」


「…うん、ちょっと一人で考えたいから」


「……分かりました。では…何かあれば言って下さいね? まだ数日は学園都市に滞在しますから」


「うん、ありがとうかおり」


「…はい、ではまた今度」



インデックスは、上条の部屋を飛び出した翌日の昼に、結局は舞い戻って来ようと道を歩いていた。


やはり、彼と離れるのはどうしても嫌だった。


確かに、彼に逢い…自分から全てを話すのは恐い。
だけど、かつて自分自身が彼に言った事がある。


自分が本当はどうしたいのか?


神裂に言われて、それに気づいた物ではあるが、…自分が彼に諭した事を、自分で否定してしまうのは駄目だと彼女は気づいたのだ。

498 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/02 21:15:54.74 ID:Fm1m3TsDO



(……とうまなら、大丈夫だよ…ね?)


彼は、既に自分が身篭っている事を知っている。


ステイルがそれを告げた。


それを聴いた瞬間、自分は酷く憤った。


何故、伝えてしまったのか? と、泣きながら彼らに当たり散らした。


それは…酷く見苦しい行為だったと思う。


只の癇癪。


…子供がするような、理屈を考えないヒステリーだ。


自分で伝える勇気が無かったのが悪いのに…ただ事実を知られるのが恐かったから、知られた後の彼が…どんな顔をするか分からないのが恐かったから。


それをただ、周りに怒りとしてぶつけた。


…まあ、直ぐさま羽交い締めにされて無理矢理おとなしくさせられたけれど。



(…おそるべし聖人かも)



昨日の行いを反省しつつ、あの二人に感謝する。



(……ありがとうかおり、…すている)

499 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/02 21:33:39.46 ID:Fm1m3TsDO

(……ここから先は自分でしなきゃ)



だから、自分はイギリスへは行かないと思い直した。


…それもあの二人のおかげだ。


あの二人は、自分の気持ちを最優先に考えてくれた。


だからそれに応える為にも…彼に話さなくてはならない。


どんなに恐くても。


どんなに逃げたくても。


…どんな結果になっても。

(……とうま)


彼はどんな想いで一晩過ごしただろうか?


悩んでいるだろう。


それに、悔いているかもしれない。


でも、自分はそんな彼を受け止めなくてはいけない。

500 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/02 21:52:15.26 ID:Fm1m3TsDO



「……見~っけ…」


ふと、横合いから声が聞こえた。



「………?」



インデックスは声の放たれた方に顔を向ける。



「……また会ったわね」



そこに居たのは御坂美琴。


「……みこと?」



インデックスは立ち止まる。…そこに美琴が近づいて来た。



「…いきなりだけど、ちょっと付き合ってくんない?」


「…えと、…みこと?」



突然の誘いに戸惑うインデックス。



「………あんたとはもうちょっと仲良くしたいかなってね。…だめ?」



そう言う美琴の顔は優しげな微笑みが作られていた。

509 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/02 22:57:48.94 ID:Fm1m3TsDO


 15

夕方、上条は自分の部屋へと帰って来ていた。


海原の話では…美琴はあの日、かなりの錯乱状態だったらしい。


それこそ、人すら殺めかねない程に…。



「……そこまで追い詰めてたのかよ」



上条は、あの日の美琴の事を思い出す。


…確かに、彼女は自分に異常なまでに執着していた。


「……なんでそこまで…」



上条には理解出来なかった。


自分にそれほど魅力がある等到底思えない。


本気でこんな奴何処が良いんだ? と問い掛けたい位であった。

510 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/02 23:05:51.46 ID:Fm1m3TsDO



そこで、ふとテーブルを見た。


そこには、昨日からそのままにしてあった…インデックスが残したメモがある。


「………」



それを手に取り、もう一度読む。



『とうまへ みことにあってあげて? それでみことの大切なものを取り戻してあげて?』


その部分を読み上げ、上条は目を伏せる。


「あいつ…自分がこんな事になってんのに……」

511 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/02 23:18:50.11 ID:Fm1m3TsDO



昨日の時点では、インデックスが居なくなった事に気が動転してこのメモの内容をあまり考えていなかった。


さらに思い出す。


インデックスが出て行く前日…一昨日の会話の事を。


辛く、悲しい思い出。

だが…とても大切なモノ。


「…あれは、御坂の事だったんだな?」


海原が言っていた美琴に被せた記憶の“蓋”。


その事をインデックスは何かしらのきっかけで知ったのだろう。

512 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/02 23:31:37.31 ID:Fm1m3TsDO

自分もインデックスも、過去の記憶を失っている。


その記憶(思い出)は…もう元に戻らない。


だが…美琴は違う。


自分の右手、幻想殺し<イマジンブレーカー>で触れれば元に戻る。


記憶(思い出)を取り戻せる。



だけど、自分は美琴に逢う事を避けていた。



二度と逢わないとまで誓っていた。



…それは何故だ?



インデックスが居たからだ。



インデックスを…自分が選んだからだ。



「……だから、…居なくなったのかよ……!」



きっと彼女は…こう考えたはずだ。


自分さえいなければ、全て丸く収まる…と。

513 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/02 23:53:43.14 ID:Fm1m3TsDO

結果だけ言えば、美琴の記憶は取り戻した。


それは偶然だったが…きっと自分はわかっていても美琴の記憶を元に戻していたはずだ。


インデックスも…それを望んでいた。


だが、それは別の問題だ。


「…お前が出て行く必要が何処にあるんだよ? ……インデックス!!」


やはり、彼女に逢わなくてはいけない。


確かに自分はまだ迷っている。


彼女の宿した命に戸惑っている。


自分の罪と、再び向き合わなくてはいけない事に…恐れを為している。



「逃げるなよ上条当麻…!! もういい加減…子供でいるのを辞めろ!!」


「取り戻すんだろ!? ……だったら大人になれよ!!」



上条は自分自身に言い聞かせるように叫ぶ。


迷いを、恐怖を、自身の情けなさを[ピーーー]為に。


「いいぜ…? …それでもまだ迷うなら…恐いって言う自分が居るなら……!!」



まずはそのふざけた幻想(自分)をぶち[ピーーー]!!

517 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/03 00:26:27.51 ID:kxBLfkjDO


 行間

「……彼女は大丈夫でしょうか?」

「…さあね」

「……やはりついて行った方が良かったでしょうか?」
「…さあね」

「………さっきから上の空ですがどうかしましたか?」

「…さあね」

「……………真面目に聞いていますか?」

「…さあね」

「………………すている=まぐぬすくんじゅうよんさいです」

「…かんざきかおりじゅうはっさいです」

「……………………………………………」

「………」

「…………表出ろやド素人がああああああああああああああああああああああああっ!!!!」

「……ん、電話か」

「ぐっ!! ~ッ!!」

「……もしもし……なんだ君か」

「………………なに?」

「…っ、…どういう事か説明しろ……!」

「……ふー…、…どうかしたのですか?」

「……もう既に君の所に向かったぞ……!! …それも4時間も前にだ…!!」

「………っ…!?」

「……なら何故居ないんだ!! ……もう良い…切るぞ!」

「…何かあったのですね?」

「……ああ、……くそ!!」

「……今の電話は…上条当麻ですか?」

「…そうだ……そして、…あの子に逢わせろと言ってきた…!!」

「…それは…!?」

「……ああ…!! …あの子がどこかへ消えた…!!」

「………っ!?」

「…行くぞ神裂!! …あの子をさがす!!」

「……ええ!!」

526 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/04 19:07:03.90 ID:OR1bFKpDO


 16

「……えと、話ってなにを話すのかな?」



インデックスは現在、美琴に連れられて第七学区にあるファミレスの中に居た。


「ん~…そうね、何から話そうかしら?」



美琴は自分用に頼んだデザートをフォークでつつきながら、気怠そうに返事をする。



「………」



インデックスは怪訝に思う。…なぜ美琴は自分をここに誘ったのだろう?


話では美琴は自分の事を忘れているはずなのだ。


一昨日、偶然再開したが…ただそれだけで見知らぬ人物を誘うとは思えない。

527 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/04 19:10:03.78 ID:OR1bFKpDO


…それ以前に、美琴の雰囲気が出会ったばかりの人間に対する物ではないような気がする。


(……よく分からないかも)



ただ、少しだけ違和感のような物は感じる。


その程度の物だ。



「………あんたってさ、学生じゃないわよね? なんで学園都市に居るの?」


「えと、…それは…」


「それは?」


「……いろいろ事情があるとしか言えないかも」


「………ふ~ん」


デザートをいじりながら気の無い返事をする美琴。


口に運ぶでも無く、ただフォークで形を崩していく。

528 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/04 19:22:00.72 ID:OR1bFKpDO



「………お姉様!」

二人の座る席の、少し離れた所から声が掛かる。



「………しらい?」


「………チ…ッ…」



声を掛けて来たのは白井黒子。


その白井の腕には風紀委員の腕章が付けられている。


どうやら風紀委員としての巡回中に偶然見掛けて声を掛けて来たらしい。



「……、黒子? こんな所でどうしたのよ?」


「…いえ、巡回していたらお姉様をこちらで見掛けたので挨拶をと思いまして」



横目でインデックスを見つつ、白井は答える。

529 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/04 19:35:35.69 ID:OR1bFKpDO



「お姉様こそ……その、珍しい方とご一緒ですのね?」


「う~ん…まあシスターさんなんて確かに学園都市じゃ珍しいけど」



美琴は白井に目を向けて言葉を放つ。…その表情には若干だが鋭い物が混じっている。



(……なぜお姉様がこのシスターさんと一緒に居るんですの?)



白井は自身の心境を表に出さないように必死で笑顔を作る。


…意識しなければ、途端に焦りや恐れが顔に出る。
それほどに今の白井には余裕が無い。


自身が恐れている事態への懸念で、白井は今にも押し潰されそうだった。

530 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/04 19:56:54.15 ID:OR1bFKpDO

「……お姉様はこのシスターさんとお知り合いでしたの?」


白井が質問する。


その質問は、確認の為の質問だ。



「……………まあね、知り合いって言っても一昨日会ったばかりだけど」


「……そうなんですの?」



美琴の言葉にいまいち納得が出来ない白井。



「…………」



一方インデックスは、…何か複雑な表情で押し黙っている。



「…どうかしたの黒子? 何か変な所でもある?」


「………いえ、そのような事はありませんが」



口ではそう言うが…白井は違和感を感じて仕方がなかった。



(……ぶっちゃけお姉様が知り合って間もない方と二人で遊ぶなんて考えられませんの。……失礼ですがお姉様って実はぼっちの気質がございますからね…!)



白井黒子のお姉様生態観察脳内記録から鑑みても…この状況は異常。…らしい。

531 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/04 20:15:46.60 ID:OR1bFKpDO

「……ていうかあんた、風紀委員の仕事は良いの? こんな所で油売ってたらまた初春さんに文句言われるわよ?」



美琴は呆れるような口調で白井に告げる。



(…まるで早く行けと言わんばかりの言い方ですの)


「………って、なんで座るわけ……おいこら人の話聞けってのメニュー見始めんな!!」



美琴の言葉に反して居座る体勢万端の白井。


メニューをじっくりと眺めてから店員を呼び、紅茶とケーキを頼む。


その間も美琴が話聞けだの仕事真面目にやれだのいろいろ言って来たが取り敢えず右から左へ受け流す。


「…あんた私の話聞いてんの?」


「ムーディーですの」


「……は?」


「しらい…ふるいんだよ」

532 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/04 20:32:04.54 ID:OR1bFKpDO

「……ところで、お二人は何をお話していたんですの?」


白井は確認の為にも話を切り出す。


(…わたくしの思い違いならばそれでよいのですが)


「……えと、まだたいした話はしてないかも」


インデックスの答えを聞いて、白井は思考を巡らせる。


(…このシスターさんは……お姉様の今の状況を理解しているのでしょうか…? ……分からない事が多過ぎてちょっとやりづらいですわね)



インデックスが美琴の記憶に関する事を聴いたのは御坂妹からである。


白井もインデックスと会うのはあの日以来久しぶりなので、その状況を把握しているはずもない。



(……さて、無理矢理居座ったは良いですけれどどうやって状況を把握致しましょうか?)

533 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/04 20:56:33.79 ID:OR1bFKpDO


 16(mikoto)

………くそ…!


…これからって時に邪魔がまた入った。


こっちは今すぐにでもズタズタにしてやりたい所を必死に我慢して進めてるのに……!


………でも駄目。


焦るな。


まだ誰も知らないはずなんだ。


私が当麻の事を思い出した事は……まだ誰も。


黒子は多分怪しんでる。


それなりに長い付き合いだからそれぐらい分かる。


目の前のこの女も…私が記憶を無くしたままだと思ってるはずだ。


…どうせ私が当麻の事忘れてた事は教えて貰ってたんでしょ?


きっとそうだ…そうに決まってる。


…邪魔者が居なくなったと思って笑ってたんでしょ?


…………ふざけんな。

536 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/04 21:10:03.07 ID:OR1bFKpDO

本当は今すぐにでも殺してやりたい。


…当然じゃない。


こいつは今まで当麻居てと幸せだったんだ。


私が一人で居る間、……ずっと当麻の傍に居たんだ。


私がどんなに望んでも。


どんなに泣いて叫んでも。


手に入れられなかったモノをコイツは手に入れたんだ。


…それはなんで私じゃないの?


なんでコイツなの?


私の方が絶対に当麻の事を好きなのに。


なんで当麻は、私には幸せをくれないの?


なんで?


なんで?


なんで?


………コイツが居るから?


コイツが居るから、私には何もくれないの?

537 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/04 21:26:40.17 ID:OR1bFKpDO

私は当麻に記憶を蘇らせて貰った。


…偶然だった。


でもそんな事はどうでもいい。


確かに助けて貰ったんだから………当麻の手で。


もしかしたら…その偶然だって運命なのかもしれない。


でも足りない。


まだ足りない。


欲しい。


全部欲しい。


当麻を…。


コイツが手に入れた幸せを…。


それを……私の足りない所に埋めるんだ。


私の心の中の……。


抉られて、痛くて仕方ない傷に埋めるんだ。


そうすれば…私はもう淋しくない。


もう泣かなくて良いはずなんだ。


…だから。


……………消すんだ。


……誰にも知られずに。


コイツを。


その為に、今私は動いてる。

539 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/04 21:45:38.09 ID:OR1bFKpDO


 16(index)

みことが話し掛けて来た時は……正直驚いた。


だって…彼女は、私達の事を忘れているはずだったから。


わたしは…とうまの所に行かくてはいけない。


…でも、みことの事も放ってはおけなかった。


みことはきっと傷ついている。


例え、その傷がなんの為についた物か分からなくても。


……その傷の痛みで、泣いている。


何故痛むのか分からないままに、泣いているはずだ。

541 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/04 21:55:19.58 ID:OR1bFKpDO

とうまが前に言っていた。

『心にだって、思い出は残るだぜ?』


それを聴いたのはとうまが記憶喪失だって分かってから。


『そうじゃなかったら…記憶を無くしてないフリなんて出来ねぇよ』


彼は…優しく微笑んでそう言った。


本当に優しそうに。


少しだけ…淋しそうに。


きっと…それは本当なのだろう。


だったら、みことも同じはずだ。


思い出が、彼女を泣かせているはずだ。


それが何か分からないままに…。

543 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/04 22:12:24.85 ID:OR1bFKpDO

それは残酷な事だと思う。

どうにかしてあげたかった。


…原因が自分にあるのなら尚更だった。


みことの記憶は、超能力によるもの…らしい。…よくはわからないけれど。


なら、話は簡単だ。


とうまに会わせればいい。


とうまなら…彼女を必ず救ってあげるはずだ。


思い出を取り戻す事も。


…その後の、彼女の苦しみを取り除く事も。


…彼が、どんな選択をするかは分からない。


でも…逃げてはいけないと思う。


はっきり言って、自分は彼の重荷にしかならない。


自分は、彼の傷そのものになってしまった。


もしかしたら、彼はみことの傍に居る事を選んでしまうかもしれない。


それでも…逃げてはいけないんだ。

544 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/04 22:29:00.41 ID:OR1bFKpDO


 16.5

「……みこと」


「………なに?」


「……」


インデックスの呼びかけに一拍置いてから返事をする美琴。


「……みことは…だいじな事を忘れてるんだよ?」


「……ッ……!」


「………な…っ!?」


インデックスの言葉に訝しむ美琴。


(……何よコイツ、…何考えてんの?)


大事な事。


美琴にとって、それを指すモノは一つしかない。


(…どういうつもり?)


表情を隠すのも忘れ、険しい目つきになる。



一方、白井は…。


(ひいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?!!? なに喋ってんですのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?!?)


ムンクになった。

545 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/04 22:49:07.95 ID:OR1bFKpDO

「……えと、…だから……」

「ちょっとストォォォォォォップですのぉぉぉ!!!!」


インデックスの台詞を掻き消すように白井の雄叫びのような全力の叫び声が店内に響いた。


「……~ッ!? …いきなりなんて声出すのよ!?」


「…はああ~、……これはちょっと予想外過ぎますの…!!」


「……あぅ…、耳がいたいかも…」


耳を押さえながら目を回すインデックス。


そんな彼女の袖を…白井は乱暴に掴んだ。



「…お…おほほほほ~~っ!! お姉様!? このシスターさんはちょーーーっと頭がイカれ…ケホン、体調が悪いようなので病院へ連れていきますわね!? それではご機嫌よーーー!!」



かなり不審な挙動と言動で言い訳する白井。美琴は何か言おうとしたが、白井はすぐに瞬間移動でその場から消えてしまった。


残された美琴は、…今まで抑えていた感情をさらけ出すように、その顔を歪める。



「…………くそ…また邪魔したわね……?」

573 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/10 07:40:46.37 ID:iYACBZfDO


 17

「…くそっ! インデックスは何処に…!」



夕方になり、空が赤く染まる時刻になっても上条はインデックスを見つけられずにいた。



「あいつが行きそうな所は全部廻った…、やっぱり誰かに連れて行かれたのか!?」



そもそもインデックスが行きそうな所などこの学園都市には数える程しかない。


それらを全て見て廻った今は、既に手掛かりになるものは何も無い。

574 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/10 07:42:01.92 ID:iYACBZfDO



「……インデックス!!」



それでもがむしゃらに街を走る。


それしか出来ないのなら、ただそれをやる。


上条は必死に走り続けた。

575 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/10 07:43:28.11 ID:iYACBZfDO



「……当麻?」



走る最中、通り過ぎた道の分岐から声を掛けられる。


「っ! 御坂!?」



立ち止まって振り返ると、そこに居たのは御坂美琴だった。

576 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/10 07:44:33.41 ID:iYACBZfDO



「…なに急いでんの? 凄い汗だけど」



訝しむように眉をひそめながら上条に近づく美琴。



「…なんか必死そうね、また何か危ない事でもしてんの?」



上条の顔を覗き込むように見ながら問い掛ける。


そして、顔と顔が触れそうになるギリギリまで接近する。

577 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/10 07:45:33.85 ID:iYACBZfDO



「…い…いや…」



上条は、どんどん近寄ってくる美琴の顔を避けるように後ろに一歩下がる。



「……なによ?」


「…別にそこまで近づかなくても良いと思うのですが?」



「やなの?」


少し不満そうにする美琴。



「いやそうじゃなくて!」



上条は戸惑いつつも美琴の言葉を否定するが、二の句が継げずに吃ってしまう。

578 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/10 07:46:34.87 ID:iYACBZfDO



「まあいいや、…それで当麻は何してんの? またトラブル?」


「………え…と…」



急な質問に上条はどうするか迷う。…インデックスを捜している事を美琴に告げるべきか、それとも言わずにおくか…。


それに、今は大しておかしな雰囲気は感じないが…美琴の方も気になる。


(……どうする?)

579 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/10 07:51:11.47 ID:iYACBZfDO

さて、次の投下は安価だ。

だが今投下しても多分人が居ないだろうからしばしの間中断します。

安価取りに参加したい人は今日の正午に集合。

本当は夕方にやりたいけど暇が無いのだ……。

すまぬ。

581 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/10 12:01:36.26 ID:iYACBZfDO

…時間だ。

準備はよろしいか?

584 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/10 12:07:33.74 ID:iYACBZfDO

※…では始める。


(……どうする?)


1.まずはインデックスを捜さないと…!

2.この際だ、御坂にも手伝って貰おう。

3.……御坂の事が気になるな、……インデックスはひとまず神裂達に任せておこう。


安価>>593

kskがてらにみんなでどれが良いか相談してね。
その為に少し遠めにしとく。

593 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)[sage] 2011/04/10 12:16:19.41 ID:WYx1SD4c0

2

596 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/10 12:22:18.87 ID:iYACBZfDO

すげえもっと時間かかると思ってた。

安価把握です。





…この際だ、御坂にも手伝って貰おう。



「……御坂、少し手を貸してくれないか?」



「…! ……なに?」



「……インデックスを探しているんだ、……良ければ手伝ってくれないか?」



その言葉を聞いた後、ほんの一瞬だったが美琴の顔つきが変わる。



「…………ふ~ん、まあいいけど」



微妙な反応で上条の提案を肯定する美琴。…しかし、それ以上は深く聞いて来なかった。

599 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/10 12:24:10.58 ID:iYACBZfDO





「…すまない、御坂」



「………別に良いわよ、私もちょっと暇だったし」



「…そっか、助かる」



美琴は上条の言葉を聞き終える前に動き出す。



「じゃあ見つけたら連絡するからね! 当麻もちゃんと状況報告してよね!!」



「分かった! じゃあ頼んだぞ御坂!!」



二人は互いに別の方向に走り出した。



「………さぁてと、…………まずは黒子にお仕置きしなきゃ…!」



御坂美琴は顔つきが歪んで見える程の笑みを浮かべながら携帯電話を取り出す。


電話を掛ける相手はもちろん…白井黒子だ。


そこに、彼の捜す人物も居るだろう。

600 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/10 12:36:14.08 ID:iYACBZfDO


 18b

「………つまり、貴女はお姉様の事を考えた上で全て語ろうとしたと?」


「…うん」



インデックスと白井の二人は、現在先程まで美琴と居た店とは別のファミレスに来ている。


白井はインデックスから事情を聞き、自分とは異なる考えでお姉様…御坂美琴をいたわる姿に胸を締め付けられる思いだった。



「……記憶(思い出)ですの、…確かにそうですわね」



あの時は仕方がなかった、…そういう事もあるが、やはり自分の判断は間違いだったのかもしれない。

602 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/10 12:45:19.20 ID:iYACBZfDO



「……ですが、それを伝えた上で貴女はどうするつもりですの?」


白井はインデックスに尋ねる。


確かに自分は間違っていたかもしれない。


でも…それはもう過ぎてしまった事だ。


だから、その事は後でいくらでも反省する。


今は目の前の状況に集中しなければいけないのだ。



「…今のお姉様は、心を揺さぶられる事が無いので非常に安定してますの、……それを壊して…その後はどうしますの?」

603 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/10 12:55:04.18 ID:iYACBZfDO

「……どうなるかはわからないかも」


「……」


「……でも、このままにはしておけないんだよ」


「………」



白井はインデックスの言葉を黙って聞く。



(……まるであの類人猿のようないきあたりばったりな答えですの)



少々げんなりしつつも、その言葉を否定はしない。



「…そうですわね、……このままにはして置けませんの」



白井はインデックスに向けて優しく微笑んだ。



「ありがとう…しらい」

604 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/10 13:11:31.62 ID:iYACBZfDO

…prrrrr!


そこで、白井の携帯電話から電子音が鳴り響いた。


白井はスカートのポケットから携帯を取り出して、画面を見る。



「……お姉様」


「………みことから?」


インデックスの声に頷きながら、白井は通話ボタンを押して、携帯を耳に当てる。


「…もしもし、お姉様?」


『…黒子、あんた何処にいるの?』


美琴の声は…何か冷たいものを感じるような、…酷く平淡な声だった。


「先程お姉様とご一緒だった店からそんなに遠くない所ですの、…なにかご用でしょうか?」


『……そうね、ちょっと合流したいんだけど大丈夫?』


白井は携帯のマイクの部分を指で塞ぎ、インデックスに尋ねる。



「…お姉様とこれから会いますの……貴女は一旦ここから離れて下さいまし」

606 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/10 13:27:54.97 ID:iYACBZfDO

「……っ!」


インデックスが声を上げようとするのを白井は手で制する。


『……黒子?』


「…はい、なんでもないですの! ではわたくしはこの場でお姉様をお待ちしますの、…店の名前は〇〇という所ですので」


『…ん、わかった…ちょっと待ってなさいね』



それで通話が切れる。



「しらい! なんでわたしは居ちゃ駄目なの!?」


「…念のためですの」


「……念のため?」


「……お姉様に誰も傷つけさせない為の判断ですの」


「………しらい」



白井はお姉様…御坂美琴を慕っている。


それは、例えどんな事になっても変わらない。


だがだからといって彼女の愚かな行いを見過ごす訳にも…起こさせる訳にもいかない。



「…ですから、貴女は離れていて下さいまし」

607 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/10 13:40:40.27 ID:iYACBZfDO


 19b

「…お待ちしておりましたお姉様」


程なくして、白井の下に美琴が到着した。



「……あんた一人?」



美琴は挨拶など交わさずにそう尋ねた。



「はい、そうですが?」


「………ふ~ん」



美琴は白井の言葉に一応納得する。


「…お姉様は何か急用でしたの? 寮に帰れば二人で話す事なんていくらでも出来ますわよ?」


「…まあね、ちょっと急用だったけど……居ないなら後で良いかな」



「………?」



白井は美琴の言葉に再び違和感を覚えた。



(……用があったのはわたくしだけでは無い?)

609 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/10 13:58:16.97 ID:iYACBZfDO

白井はその違和感の存在でほぼ確信を抱く。



(…お姉様は記憶が戻っている…?)



そう考えれば色々とつじつまが合う。


「……お姉様、つかぬ事をお聞きしますの」


確信を抱い上で、最後の確認をする。



「…お姉様は“上条当麻”という方をご存じですの?」


「…………」



上条当麻。


あの少年…お姉様の想い人であるあの類人猿の事。


知らないならばそれで良い、…今からゆっくりと思い出させれば良いのだから。

だが、既に思い出しているなら話は厄介な事になる。


…思い出していたなら、その状態でこんなに落ち着いた雰囲気を出しているという事だ。


それは、諦めているからとかの物ではきっと無い。


想像するだけで、嫌になりそうな事が起こる。


白井はただそれに戦慄する。

610 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/10 14:10:38.46 ID:iYACBZfDO

「…………な~んだ」


美琴はつまらなそうに息を吐く。



「……お姉様?」


「……もうばれちゃったの? せっかく隠してたのに、……思い出した事」


「…………っ!!」



その言葉は白井の背筋に嫌な汗を流れさせるに十分だった。



「…ふぅ…じゃあもう強行手段しかないよね、……黒子…あのシスターの居場所教えなさい」


「………」



態度が一変した美琴の様子を見ながら、白井は必死に考える。



(…どうすれば、……お姉様が傷つかずに…誰も傷つけさせずに済む方法は………!!)

611 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/10 14:26:51.55 ID:iYACBZfDO

「……ここじゃやりにくいかな、……黒子、ちょっと場所移動するわよ」


「……分かりました」


そして美琴と白井は空間移動でどこかに移動した。


…それを物陰から見ていた人物が居た。



「みこと…、しらい…!」


インデックスだ。


白井からは店を出るように言われていたが、…彼女は従わずに隠れて様子を伺っていた。



「どうしよう…! あのみことは少し危ないかも、…しらいが……!」


動揺しながらもインデックスは考える。


「……いかなきゃ」


インデックスはすぐにその考えに至った。


「わたしの事だもん…、だからいかなきゃ!!」



インデックスは既に夜の帳が覆う街を駆け出した。


誰も傷つかない為に。


誰も傷つけさせない為に。

612 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/10 14:48:19.97 ID:iYACBZfDO


 20b

「……ここで宜しいでしょうか?」


「……ここは…いつもの公園か」


美琴達が移動してきたのは、彼とよく遭遇する…言ってみれば思い出の場所でもある所だった。


そこには今、美琴達以外誰も居ない。


既に夜となり、完全下校時刻も過ぎた時間だ、こんな時間に公園を歩き回る変わり者なんて滅多に居ないだろう。


「…一応聞いとくわよ? 居場所を言う気はある?」


「………それを聞いてどうするつもりですの?」


「…あー…もう」


美琴は白井の目の前に立ち、……そして、酷く冷たい眼をしながら白井の頬に平手で叩いた。


「……あぅ…!?」


乾いたような音が辺りに響き、白井の頬に痛みが走る。

613 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/10 14:57:18.05 ID:iYACBZfDO



「…お…お姉様…!」


直ぐさま、今度は反対の頬を叩かれる。


「い…っ…!?」



白井の頬が赤くなっていき、徐々ににヒリヒリとした痛みが滲み出て来た。


「…どうするのかなんてあんたには関係無い。私は言う気があるのか、無いのか聞いてるんだけど?」


「…………」


白井は頬に手を当てながら美琴を見る。


(…お姉様)


白井はやはりと言った具合に口を開き、美琴に告げる。


「今のお姉様にお教えする訳にはまいりませんの!」

614 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/10 15:12:26.00 ID:iYACBZfDO

白井がそれを告げた瞬間、美琴の身体から紫電が迸しり、白井の身体を電撃が駆け巡った。


「あ…ぐっ…あっ!?」



消し飛びそうになる意識をかろうじて保ち、美琴の顔を見る。


美琴は先程と同じく…酷くつまらなそうな顔だった。

「……まだ言う気にならない?」


「………ぐ…ぅ…!」


「…なんか言いなさいよ」


「あ…がぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!?」


先程よりも強い電撃を喰らい、堪らず叫び声を上げてしまった。


(…お姉…様…!!)


それでも白井は何も言わない。

616 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/10 15:27:03.32 ID:iYACBZfDO

「……頑固ねぇ、……じゃあこれはどうかな?」


美琴はそう言うと、手に黒く長い、剣のような物を作り出した。



(……砂鉄の…剣!!)



二度の電撃の為に、地面に倒れ伏しながら…白井は恐怖に顔を歪ませる。


「……これで切ったり刺したりしたら……どうなるか位分かるわよね?」


「……お姉様…!!」


「………………………………………言え」



白井はその言葉に無言で返した。



「………馬鹿な黒子」



それから…美琴は手に持つ凶器を、白井の白く細い太ももに突き刺した。


だが…悲鳴は聞こえ無かった。

648 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/17 09:56:53.90 ID:MDEfKviDO


「……ホント…馬鹿みたい、さっさと言えばこんな目に遭わないのに」



白井の太ももから、砂鉄の剣を引き抜き、美琴は呆れたように言う。



「ッッ!! ぅ…ぐ…!!」



…その傷口から鮮血が溢れ出す。激痛に顔を歪め、瞳から涙が滲み出る。



「…お姉…様…!!」



しかし、決して悲鳴を上げようとはしない。


「お姉様があのシスターさんの居場所を知りたがっているのは……何故ですの……?」



痛みに耐えながら、搾り出すように声を出す。


しかし、その声に美琴は何も返さない。


…だが解る。


美琴の…その冷たい表情は、そして自分に対しての仕打ちは…、彼女があのシスターをどう扱おうとしているのかを把握するには十分過ぎた。

649 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/17 09:58:29.22 ID:MDEfKviDO


…それをしようとする理由も、自分には推測出来た。


「……何故……! どうしてそこまで……あの殿方にご執着なさるのですか!!」


「…………………………………うるさい」


「あぐ…っ…!!」



問い掛けは、その一言と…腹部への蹴りで返される。



「……あんたには関係無いでしょ黒子、…私が何をしようと…誰をどうしようと…!」



追い打ちを掛けるように、先程つけた傷口を踏み付ける。



「……ぅ…ぐ…!」


「…それなのに余計な事ばっかりして私を困らせて、…私の邪魔するような事をして! 私の想いをみんなで踏みにじって!!」


「…ぎ…ぃ…っ!!」



踏み付けた傷口からさらに血が滲む。…タイルの上に白井の血が広がり、血だまりが出来る。



(…お姉様…!!)



苦痛で顔を歪めながら必死に堪える白井。


自分が悲鳴を上げて、誰かにお姉様のこの行いを目撃される訳にはいかない。


だから、白井は必死に堪えていた。


堪えながら、どうすれば彼女を…敬愛するお姉様を止める事が出来るのかを考える。



「……お姉…様!!」

650 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/17 09:59:53.44 ID:MDEfKviDO



「みこと!! …しらい!!」



…そこで、自分達を呼ぶ声が聞こえてきた。


声のした方向に二人は顔を向ける。


そこには息を切らして、額に汗をかいている…悲痛な表情の少女が居た。


その声の主は、インデックス。



「……な…っ!?」


「……………」



白井は驚愕の表情で、…美琴は微かな笑みを浮かべてインデックスを見る。



「…ハァ…ハァ…、やっと見つけたかも…!」

651 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/17 10:02:01.55 ID:MDEfKviDO



「……なんだ、ほっとけば来たのね。…てっきり黒子がどこかに匿ってるのかと思ったんだけど」


「…っ……!!」



白井は歯噛みする。…美琴の言うように何処かに匿っておくべきだった。



「……しらい!! その傷……!?」



近寄りながら、白井がどのような状態なのかを確認したインデックスは、顔をさらに悲しげに歪める。



「……みことがやったの?」


確認するようにインデックスは美琴に問い掛ける。



「……だから何よ?」


「……どうして?」


「…白々しいわね、…自分でも分かってんでしょ?」


「…みこと」


「あんたを庇ったから少しお仕置きしただけよ、…黒子ったら強情だから全然あんたの居場所喋らなかったけど」


「………ッ」



美琴の言葉に胸を締め付けられる。


彼女…白井は自分がこうなりうると考えた上で一人で美琴と会ったのだ。



「……しらい」


「………ぅ…、…全…く…念のために行った事を……台なしにしないで下さいまし……!!」



これではわざわざ自分一人で美琴と話をしに来た意味が無い。

652 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/17 10:24:13.68 ID:MDEfKviDO



「……みことは…もう思い出していたんだね?」


「………やっぱりあんたも知ってたのね、………そうよ、当麻に思い出させて貰ったわよ?」


「………」


「……だからさ、悪いけどあんた邪魔なの…あんたも当麻の事が好きなら分かるでしょ?」


「………みこと」


「あんたは良いわよね、…当麻とずっと一緒に居れて、……当麻に求められて、幸せを感じる事が出来てるんだから」


「………」


「私が当麻の事を思い出せなくなった事だって、…あんたは喜んだんでしょ? これで当麻を一人締め出来るって……心の中で私の事笑ってたんでしょ?」


「…違…っ…!」


「嘘つこうとすんじゃないわよ、…あんたがそんな余裕ぶっていられるのは当麻に選ばれたからだ…! 頭ん中では私の事蔑んでる癖に…!! 当麻から拒絶された惨めな奴って笑ってる癖に!!」


「そんな…!! わたしはそんな事!!」


「だったらその見下すような瞳を辞めろ!! 憐れみなんていらないのよ!! その瞳は私が負けたって…! 当麻から拒絶された可哀相な奴って言われてるようでムカつくのよ!!」


「………!」


「そんな瞳で私を見る位なら…! 当麻を私にちょうだいよ!! 私は当麻だけ居れば良いんだ…!! 他には何も要らない!!」

653 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/17 10:47:14.59 ID:MDEfKviDO

「……みことは、本当にとうまの事が好きなんだね」


「…………」


「……とうまはずっとみことの事…気にしてたよ? 本当にこれで良かったのかなって…口には出さないけどずっと」


「…………」


「……わたしは確かにとうまに選んで貰えたよ? …でも……それはとうま自身の罪悪感もあるからなんだよ…とうまは関係無いように振る舞うけど、わたしには分かるもん」


「…………それがなんだって言うの? 結果的に当麻はあんたを選んでる、…当麻が何をしたかなんて関係無い、…あんたの言い方は当麻に抱かれた事があるって自慢してるようにしか聞こえないのよ…!!」


「……そうかもね、……でも聞いてほしいんだよ、…みことが悩んで悩んで…とうまが好きで好きでしょうがないのと同じで、……わたしもとうまの事が好きだから」


「…………」


「……みことには分からないの? ……とうまはみことの事も好きなんだよ?」


「………っ……!!」

654 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/17 11:13:58.17 ID:MDEfKviDO



インデックスの言葉を聞いた美琴は奥歯を強く噛み締める。


当麻は自分の事も気に掛けていた。


…当麻は自分の事も好き。どれも、自分が聞きたくて仕方が無かった言葉。



…だが。



「………ふざけんな」



…ならば何故?



「ふざけんな…!!」



…どうして?



「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」



なんで……自分には、彼は優しくしてくれないの?


美琴はあらん限りの力で叫ぶ。


「ふざけんじゃないわよ!! …なんであんたがそれを言うの? …私が聞きたいのは当麻からだ…!! あんたが言ったって!! あんたに慰められたってちっとも嬉しくない!!」


「…っ…みこと!!」


「さっきも言ったはずよね!? あんたは私を見下してるって!! あんたが居るから私は辛いんだって!! …あんたが本当に私を可哀相だと思うなら当麻の傍から消えろ!! それが出来ないなら下手くそな慰めなんて吐き出すな!! どんな言葉を使ったってあんたには私は救えないのよ…!!」

657 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/17 11:34:25.73 ID:MDEfKviDO

「………もういい、あんたとこれ以上話す事なんて無い」


美琴の身体から紫電が弾け始める。


「…もうみんな私が思い出した事知ってるんでしょ? …だったらもう良い。…邪魔が入る前にあんたを[ピーーー]」



「……みこと」



辺りを電撃の光が照らす。


「後の事はその時考えれば良い、…こいつさえいなければどうにでもなる」



美琴自身でも制御しきれない程の電撃を身に纏いながら、インデックスを憎しみに満ちた瞳で睨み付ける。



「…っ!? お姉…様!!」


「……あんたは黙ってなさい」


制止しようとする黒子を一言で黙らせ、…さらに能力の出力を上げる。


人に当てれば、ほぼ間違い無く死ぬであろう程の威力だろう。

658 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/17 11:45:34.03 ID:MDEfKviDO



「…………じゃあね」


「………っ…」



美琴から極大の電撃の槍が放たれる。


インデックスは瞳を閉じて…その必殺の一撃が自身に届くのに備えた。



…そのくらいしかインデックスに出来る事は無い。

659 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/17 11:55:29.90 ID:MDEfKviDO

「…………?」


…しかし、インデックスが電撃に襲われる事は無かった。


確認出来たのは、誰かが駆けつける足音と…。


何かを破壊するような…、バキンッという辺りに響く音。



「…………大丈夫か、インデックス?」



そして、彼の…今はもう、愛してるとはっきりと言える彼の声だった。



「………とうま…!!」


「……………当…麻!!」


「すまない…少し遅れた」

661 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/17 12:09:51.46 ID:MDEfKviDO

上条当麻の右手によって、美琴の放った電撃は跡形もなく消え失せた。


「…………怪我は…無いみたいだなインデックス」


「……うん、わたしは平気かも、…でもしらいが」



インデックスの指し示す方へと目を向けると、白井が倒れながら血を流しているのを確認する。


「……白井、…また迷惑かけたみたいだな」


「……まったくですの」



短くそれだけ会話をする。


…それから、もう一人…御坂美琴の方を向いた。



「……………御坂」


「…ぁ……う……!」



美琴は、まるで悪戯がばれた子供のように…震えながら上条から目を逸らしている。

665 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/17 13:02:50.07 ID:MDEfKviDO

「………御坂」


「………」


上条の呼びかけに反応しない美琴。


ただ、泣きそうな顔のまま震えている。



「…………」



上条は、美琴のその様子に…自分自身のふがいなさを再度確認させられる。



彼女が白井を傷つけてしまったのも。


インデックスに悪意をぶつけ、殺そうとまでしたのも…。


…彼女自身がここまで壊れてしまったのも。



(……全部、俺のせいだ)



彼女なら、立ち直れる…、彼女は強いから大丈夫と決めつけて、突き放した自分のせいだ。



「……………」



ゆっくりと、上条は美琴に近づいて行く。



「……っ…ひ…」



美琴は俯いて小さく悲鳴を上げる。


…彼女はこれ以上、彼に拒絶される事を酷く恐れていた。


こんな所を見られてしまったのだ、…またあの嫌な想いをしなければいけないと、…また突き放されると思って。


だから、美琴は恐怖のあまり…震えるしかなかった。

667 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/17 13:13:07.48 ID:MDEfKviDO

上条は美琴の目前まで、すぐに触れ合える程の距離まで近づいた。



「………っ……」



美琴は未だに何も出来ずに居る。


逃げる事も。


罵倒する事も。


そして上条は、少し間を置いてから口を開いた。



「………美琴」



彼女の名前を告げる為に。

668 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/17 13:39:06.68 ID:MDEfKviDO

「……………!!」



それを聞いて顔を上げる美琴。


上条は、上を向いた美琴の顔を見つめる。


…酷く、思い詰めた顔に見えた。


そして、…今にも泣きそうな瞳をしていた。


しかし、それでもその顔は可愛いらしく、綺麗だと思えるものだった。


「…………悪かった」


「………」


「……俺は、お前の気持ちを完全に無視してた、……自分の事だけばっかりで……他の事に気づけなかった…」


「……当…麻」


「……お前が、…美琴が苦しんでる事も気づけないでいた、……赦されるとは思ってないけど……俺には謝る位しか出来ないから」


「………あ…ぅ…!?」



上条は腕を美琴の背中に回して、強く抱きしめた。



「……これ以上、壊れないでくれよ……お願いだから…!!」


「……当…麻…!」



上条は美琴を抱きしめたまま、彼女に願いを伝える。



「俺を殺したいなら殺しても良い…! だから…もう誰も傷つけないでくれ!」

669 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/17 13:57:13.46 ID:MDEfKviDO

「…………ずるいよ」


美琴はようやく…その一言だけ呟いた。



「…私の事を選ぶつもりも無い癖に! ……なんであんたは優しくすんのよ…!!」


上条の背中に腕を回しながら、強く力を籠めながら……美琴は言葉を紡ぐ。



「……ずるいよ! ……ホントにずるい…!! ……なんでここまで来てから優しくなるの? …こんなんじゃ決意が鈍るじゃない…! 止まっちゃ駄目なのに……止まるしかないじゃん!! …ずるいよ!!」


「………美琴」



上条に抱きしめられながら、それに縋り付きながら……大粒の涙を、上条の肩に染み込ませる。



「馬鹿……!! ホントに馬鹿…!!」


「……そうだな」



それから、美琴は子供のように泣きじゃくり、…上条はそれを泣き止むまで美琴の傍を離れなかった。

672 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/17 14:23:01.15 ID:MDEfKviDO


 route b epilogue

……数週間後。


「………じゃあ、インデックスを頼んだぞ神裂、…ステイル」


「…分かっています、心配しないで下さい」


「君に言われるまでもない」


「…………とうま」


「……インデックス」


「………やっぱり、とうまと一緒に居たいんだよ」


「…………俺もだよ」


「………とうま」


「…でも、今は仕方ないんだ……それはもう二人で沢山話し合ったろ?」


「……うん」


「……俺は今はただの…何の責任も取れない子供なんだ、…せめて学校を卒業して…自分自身で全部出来るようにしないと俺もお前も…幸せになんかなれないんだから」


「………うん」


「………だからさ、…少しの間だけ待っててくれインデックス。…必ず迎えに行くからさ」


「………とうま…!」


「…インデックスも…ちゃんと元気な赤ちゃん産んでくれよ?」


「………うん…!」


「………俺が学校を卒業して…自分の力だけでお前達を守れるようになったら………」


「………」


「…………結婚しような、インデックス!」


「…ふぇ…とーまぁぁ!!」


「……うお!? 人前!! みんな見てるから!? 上条さんは嬉しいけどちょっと恥ずかしいですよー!?」


「……バカップルですね」


「……やれやれだな」

675 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/17 14:56:21.78 ID:MDEfKviDO

………

とある病院の一室にて。


「…………お姉様?」


「……黒子……その…」


「……停学が明けたのですか、……まあlevel5の超能力者にして常盤台中学のエースとなれば退学は当然無し、…それどころかかなり軽い罰で済むとは思っておりましたけれど」


「…………」


「………暗い顔ですの、お姉様には似合いませんの」


「…………黒子…ごめ…」


「謝罪ならもうとっくに戴いてますの、それよりもその辛気臭い雰囲気をどうにかして下さいまし! せっかくお姉様と久しぶりにお会い出来たというのに黒子は幻想をぶち殺された気分ですの!!」


「………うん…そっか…ゴメン」


「……まだちょっと無理がある笑顔ですがまあ良いですの……先程は少々意地が悪い事を言ってすいませんですの」


「…ううん、大丈夫」


「……辛かったらいつでも黒子に頼って下さいましね? お姉様」


「……うん、ありがと」


「……はぅ!?」


「っ!? 黒子!?」


「…あがががが!? 疼きますのぉぉ!! 助けて下さいましお姉様ああああああああああああ!!?」


「なに!? 一体どうしたの黒子ー!?」


「疼くんですの!! お姉様ああああああ!! 摩って下さいまし!! 黒子の指示した所を摩って下さいましぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」


「ええっ!? 何処!? 何処を摩れば良いの!?」


「お姉様に刺された傷の辺りを丹念にしっぽりとお願いしますのぉぉぉぉぉぉ!!」


「………………えぇー」


「……あー痛いですの痛いですのー傷が摩ってくれないと疼いて仕方ないですのー!!」


「………後で覚えてなさいよ…!」


「出来るもんならやってみろですの!!」

677 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/17 15:15:25.83 ID:MDEfKviDO

……


「……ようカミやん! 何を黄昏れてるんだにゃー?」


「…ん、ちょっとな」


「……やっぱり淋しいか?」


「……そうだな」


「まあ、事の発端はカミやん自身だからな、多少の事は我慢するんだにゃー」


「わかってるさ…ただ、インデックスはどうなのかなってな」


「それなりに楽しくやってるみたいだぜい? つか連絡位取ってんダロ」


「…なぜか電話にはステイルが必ず出てインデックスに取り繋いで貰えない…」


「……姑息な嫌がらせですたい」


「…インデックス~」


「……そんなカミやんに朗報だにゃー、……これが何か分かる?」


「……!! イギリス行きの航空チケット!? すごいや土御門!! 世界で5番目位に愛してるー!!」


「…気持ち悪い事言わないで欲しいぜい、…ただしこれは成功報酬だぜい?」


「……へ…?」


「………期待してるぜい幻想殺し」


「………まじか」


「恋人に逢いたいならそれなりに苦労するべきだぜいカミやん?」

678 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/17 15:27:46.51 ID:MDEfKviDO



「……ん、おーす」


「ん…あんた今帰り?」


「ああ、ちょっと補習の方をですね…」


「…相変わらずねー」


「お前こそちょっと遅くないか? もう少しで完全下校時刻だってのに」


「うん、ちょっと黒子の所行ってたから」


「…そっか」


「……あんたさ」


「…ん?」


「…どうして私の事まで気に掛けてたの? あの子の事が好きなら……私の事なんてほっとけば良かったのにさ」


「………んー」

679 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/17 15:46:38.71 ID:MDEfKviDO



「……これ言ったら浮気にならねーかな?」


「………?」


「…うーん…聞きたいの?」


「そりゃあ…まあ…ねぇ」


「………えぇー」


「何よそれ!? そんな風にされたら余計に気になるじゃないの!!」


「ああはいはい…わかったよ、わかったからびりびりするの止めましょうね?」


「……う~!」


「…まああれだ……俺はお前の事も好きだったからだよ」


「………っ!」


「……あれ? 気づいてなかったの? てっきり伝わってるものかと…」


「…………言われてないわよ」


「……えー、上条さんとしては結構揺れてたんですが…?」


「………」


「恐いから睨まないで…」


「……はー、私もあんたの事鈍いだのなんだって馬鹿に出来ないって事か」


「……えーと、美琴さん?」


「……“だった”ねぇ」


「……ん?」


「…なんでもない! …じゃあまた今度ね!」


「ん? ああ、またな!」


………


「好き“だった”か…、こりゃ完全に失恋だわ」


「……やれやれね………………ばーか」

680 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/17 15:49:17.32 ID:MDEfKviDO




   HAPPY END

683 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/17 15:57:06.67 ID:MDEfKviDO

はい、これにてルートBが終了でございます。

まさか一本しかないHAPPYをいきなり選ぶとはなかなかやりますな。

残り二つはもう救いようのないBAD ENDですのに。

では…

1.まずはインデックスを捜さないと…!

×この際だ、御坂にも手伝って貰おう。(HAPPY END)

3.……御坂の事が気になるな、……インデックスはひとまず神裂達に任せておこう。

安価>>700
また遠めに取っておきます。
ではノシ

691 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/17 16:20:53.80 ID:MDEfKviDO

自分でksk

もうちょい細かく説明すると…。

うあああああ!なBAD ENDか…

エロぉぉぉぉ!なBAD ENDか…。

どっちがどれだろうね?

700 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東)[sage] 2011/04/17 16:51:30.63 ID:U4DrodlAO

3なんだよ!
なんかエロそうなんだよ!

703 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/17 16:58:58.27 ID:MDEfKviDO

……御坂の事が気になるな、……インデックスはひとまず神裂達に任せておこう。


「……いや、やっぱりそっちは後で大丈夫だ」


「ん…そうなの?」


「ああ、…それより御坂、今から少し話出来るか?」


「え…うっうん、平気」


「…そっか、ならどっか落ち着いて話が出来る所が良いな……近くの店でも入るか」



上条は辺りを見回しながら歩き出す。



「……………」



美琴は、その上条の後ろ姿を見ながら呟いた。



「……どういうつもり?」



それを耳にした上条は、立ち止まり、ただ一言だけ告げた。



「…大事な話があるんだ」



それから、再び歩き出す。


「………」



美琴は黙って上条について行った。

704 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/17 17:00:22.86 ID:MDEfKviDO




「……それで? 大事な話って?」


上条と美琴の二人は近くにあった喫茶店にの中に入り、向かい合うように座る。

「…お前の事、全部聞いた。…あの時何があったのか全部」


「………………」



上条の言葉を黙って聞く美琴。



「そして…俺と会うまで俺とインデックスの事を忘れてた事も」


「……………………」



美琴は表情を全く動かさない。



「………すまなかった」



上条は謝罪する。


こんな事になったのは、…自分の責任だ。


美琴が傷ついたのも。


そのせいで記憶を閉ざされていた事も…。


全ては自分の決断が招いた事だ。


「…だから、すまなかった」

705 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/17 17:10:51.89 ID:MDEfKviDO

※入れんの忘れてた。18 Cです。



「…………それだけ?」


謝罪の言葉を口にする上条に対して、美琴はそう呟く。


「……当麻は、謝る事しかしないよね、…私はそんなものが聞きたいんじゃないのに」


「………御坂」


「……謝れば…赦されるの……?」


「………ッ」



美琴の言葉は、どんな凶器よりも鋭く、上条の胸に突き刺さる。


「全部知ってるなら…、私が望む事も分かるでしょ?」


「…………御坂」


「……嫌、……名前で呼んで」



上条はそれを無言で返した。


そして……。

706 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/17 17:37:37.35 ID:MDEfKviDO


 19 C

「……何か用かよ?」


一方通行は、自室のソファの上に寝そべりながら、携帯電話から聞こえる声に応答した。


『……上条当麻をロストしました、…勝手な願いですが捜索の手伝いをお願いします一方通行』


「……どういう事だ? あの野郎またなンか面倒な事に首突っ込ンでやがンのかよ?」


『……確かに面倒事でしょうが…相手は御坂さん…超電磁砲です』


「……第五位の“蓋”はどうした」


『…数日前に彼自身の手で壊されています』


「……チッ…面倒臭ェな」



一方通行は怠そうな動きで身体を起こす。



「…海原、テメェは土御門と一緒にあの白いチビを保護しとけ、…あの馬鹿は俺が捜す」


『…既にそのように動いています、ただ…まだ発見出来ていませんが』


「……急いで捜せ、発見が遅れたらその分死体になってる確率が上がると思え」


『…わかりました、……では彼の方はお願いします』

そこで通話は切れる。


いつも通りの澄ました感じの声だったが端々に焦りのようなものが感じられた。


「……馬鹿が」


一方通行は誰にでもなく毒づいた。


「…どいつもこいつも大馬鹿野郎だ」

707 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/17 17:57:31.51 ID:MDEfKviDO


 19-2 C

……そして、美琴の身体から強力な…人体に直撃すればほぼ間違い無く感電死するであろうほどの電撃が撒き散らされる。


「…く…っ!?」


上条は咄嗟に右手を掲げ、その電撃を打ち消した。


それで上条自身は事なきを得たがそれ以外の所は黒く焦げて、煙りを上げる箇所もある。…完全下校時刻を回っていた為か、店の中でも人が周りに居ない事は不幸中の幸いだった。


「………御坂…!」


「…当麻が悪いのよ」



俯いたままでゆっくりと席から立ち上がる美琴。


その抑揚のない呟きは、上条の背中に冷たいものを感じさせた。



「……もういいや、私に辛く当たる当麻なんか…………」


「…………御…坂…?」


「……少し壊せば……、私に優しくなってくれるかな?」


「…………っ…!」


「………試してみよ。……どうせ今の当麻は優しくないし」

733 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/19 16:14:47.28 ID:vvCDkAgDO

「っ…まずい!!」


上条は美琴のただならぬ雰囲気に、かなりの焦燥感を覚えた。


あまり人が居ないとはいえ…今二人が居る所は普通のファミレスだ。


先程の電撃では誰も被害に遭わなかったが…次もそうだという保障は無い。


(……ここに居るのはやばい…!!)


「………!」


上条はそう判断した瞬間に、先程の電撃で割れてしまっていたウインドウガラスを飛び越え、路上に出る。そしてすぐに、人気の無い方向へと走り出す。


「……ふ~ん? 久しぶりに追いかけっこするの?」


美琴は上条と同じく窓から路上に出て、上条の走る方向に顔を向ける。


「………♪」


自分の姿を見失わせないようにしているのだろう、上条は走る速度を緩めてこちらを振り返っていた。


「…いいわよ? 付き合ってあげる」


美琴は楽しそうに笑う。


「今日こそ捕まえてやるから覚悟しなさいよね…!」

734 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/19 16:39:38.81 ID:vvCDkAgDO


 20 C

「………これは」


「……何かあったのかな?」


インデックスと白井の二人はあるファミレスまで足を運んで来ていた。


そのファミレスは、店内の一部が黒く焼け焦げ…ウインドウガラスも爆ぜるように砕け散っていた。


「……まさか…!」


「………しらい?」


白井は店内の惨状が誰の仕業なのかをすぐに推測した。


「……お姉様…!」


焼け焦げたテーブルや椅子はほぼ間違い無く電撃による物だ…。


そして、今の美琴の心理状態ならば…何かのきっかけでこのような行いをする可能性は極めて高いと思えた。


「…これは…みことがやったの?」


「………」


無言で頷く白井。…こんな事を…しかも店の中をこれほど破壊する威力で放てる人物はそれしか考えられなかった。


「………とうま!」


インデックスは彼の名前を口にした…、直感的に彼の身が危険だと思えて仕方ない。


「…多分、それで合ってますわね…!」


インデックス達が未だに二人で居るのは、美琴と再び話をする為だ。


インデックスから事情を聞いた白井が一人で行くのは危険と判断した為だった。

735 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/19 16:56:44.98 ID:vvCDkAgDO

「……これはまずいですわね」


白井は美琴の心理状態がこれほどまでに危険な状態だとは予測していなかった。


(……話し合うだけならこのシスターさんと会わせても…わたくしがついていれば大丈夫だと思いましたが…!)


今、美琴はあの少年に揺さぶられてかなり危険な状態のはずだ、…そこにもう一つ起爆剤を投入するような真似は避けるべきだった。

「……インデックスさん? 今はお姉様と貴女が会うのは控えた方が良いと思いますの……ここはわたくし一人でお姉様を探して…………ってぇ!? 居ないですのーーー!!!?」


先程まで隣に居たインデックスはいつの間にか消えていた。


「…まさか一人でお姉様達を探しに!? た…たた大変ですの!!」


白井は慌ててインデックスを捜す…が、あのシスターは想像以上にすばしっこく、既に周辺には影も形も無かった。


「こ…こんちくしょーーー!!!! やる事増やさないで下さいましぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」


白井の絶叫は虚しく響くだけで、誰も応答してくれなかった。

736 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/19 17:28:54.74 ID:vvCDkAgDO


 20-2 C

「…ハァ…ハァ…! …くそ!」


上条は人気の無い裏路地を走りながら毒づく。


上条は本気で恐怖していた。


「………っ!? …上!!」


頭上からの気配を感じ取り、足を止めて右手を上にかざす。


直後、学園都市第三位の通称の由来となった一撃が上から下に向けて放たれた。


「………ッッ!!」


超電磁砲<レールガン>。


音速の三倍のスピードで放たれる、御坂美琴の能力の中でも最大の威力を持つ一撃。


…だが、その一撃も上条の右手、幻想殺し<イマジンブレーカー>が受け止めた瞬間に、何かを砕くような音と同時に消え失せる。


「……くっ…!?」


しかし、上条はそれで気を緩める事は出来ない。


超電磁砲を消した次の瞬間には、もう次の攻撃が襲ってくるはずだった。


上条は、逃げながら…既に三回、超電磁砲をフェイクにした連携を捌いている。


…それは、回を増す毎に正確な攻撃となって行く。


「痛…っ…う…!」


背後から飛んで来た物体を避け切れず、肩を掠める。


恐らく電磁力で金属製の物を操っているのだろう。…飛んできた物はマンホールの蓋だった。


「……ち…くしょう…!」


本気だ。


御坂美琴は…本気で自分を壊すつもりだ。


「……御坂…!!」


その事に、上条は本能的に恐怖を覚える。

737 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/19 17:50:02.14 ID:vvCDkAgDO

「……さて…と、…次どんな風にやろっかな…♪」


上条の真上、地上から十数メートル程度のビルの屋上から下を見下ろしながら、ほくそ笑む美琴。


彼女は上条を攻撃しながら、努めて冷静に状況を分析する。


「…当麻の能力を消す力は右手首から先、…つまりそれ以外は何の能力も無い。……それが解っていればいくらでも対処できる」


足元に居る彼は、攻撃が止んだ事で、再び走り出す。


…しかしその動きは何処か痛々しい、…恐らく先程の攻撃を捌き切れなかったのだろう。


「…後、純粋にただの物体は消せない…と」


美琴は上条を追い詰めながら…確実に彼を倒す方法を思案する。


「…今までは頭に血が登ってまともに考えて無かったからね……そりゃ勝てないわよ」


過去の…彼との戦績を思い出しながら笑う。



「……今日…勝ったら少しは見直してね?」



「…当麻」

738 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/19 18:08:45.26 ID:vvCDkAgDO


 21 C

「………ここは…?」


上条が逃げながら入り込んだ所は…人が出入りしなくなって久しい寂れた雑居ビルだった。


(……御坂…は、俺がここに入ったのに気づいたか?)


上条がわざわざ逃げ場の無いビルの中に入ったのは、…美琴の攻撃に人が巻き込まれる事を恐れた為と…もう一つ。


(…外を逃げ廻ってもじわじわ遠距離からなぶり殺しにされるだけだ…! なら多少危険でも近寄れる所じゃねえと…!)


上条は本気で掛かって来る美琴の攻撃に相当苦しめられていた。


今までのじゃれあいのような攻撃とは比較にならないほどの正確な戦法。…はっきり言って、完全に油断していた。


(…流石学園都市の第三位って事か)


今まで自分はこれを遇っていたと言うのが信じられなくなりそうだった。


…それほど、今の御坂美琴は全力を出している。

739 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/19 18:33:36.50 ID:vvCDkAgDO

「…当麻」


背後からの声。


…それに上条は、身体を強張らせた。


「……随分あっさり追いついたな、…御坂」


振り返って上条は声を掛ける。


「…追いついた…ねぇ? …やっぱり当麻よりは私の方が頭良いよね」


にっこりと微笑みながら美琴は告げる。


「…当麻がこういう所に逃げ込むの分かってたから先に入ってたんだけど?」


「………っ!」


「私ね? 当麻の考えそうな事ならだいたい分かるよ? …私が暴れれば当麻は周りに被害がでないように絶対に人が居ないような所に逃げ込むとか…」


「………」


「私を止めるには近づく必要があるからなるべく狭い所を選ぶとか…ね?」


「…お見通しって訳かよ」


上条は自分の考えを完全に読まれていた事に驚愕する。


「うん、だって…当麻の事はずっと見てたもん!」


…美琴は無邪気に微笑む。


「ずっと見てたから、私は当麻の事ならだいたい分かる」


微笑みながら…静かに涙を流し始める。


「分かっちゃうのよ…! …当麻は…もう私の事を好きになってくれないって………!! …大事な話があるって言った時の当麻の顔は…私にそう言ってたもん!!」


「………御坂…!」


「だから壊す!! 今の当麻を壊して…!! 新しい当麻になって貰うんだ…!! 私の事を好きになってくれる当麻に!! 私に優しくしてくれる当麻に!! ……私をちゃんと見てくれる当麻に!!!!」

740 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/19 18:54:07.62 ID:vvCDkAgDO

美琴が叫んだ直後、彼女の身体からこれまで見た事が無いほどの規模で、紫電がほとばしる。


電撃の槍。


彼女の中では最もシンプルな能力の使い方だ。


だが、…その一目でそれが相当危険な物だと解る。


彼女…御坂美琴の最大出力は10億ボルト。


右手で受け止めなければ、確実に絶命するだろう。


上条は右手を振りかざす。


電撃の槍は、超電磁砲の速度を遥かに凌駕する。…はっきり言って回避は不可能だ。


「…ぅああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!」


美琴の叫び声と共にそれは放たれる。


「………ッッ!!」


放たれた電撃を右手で消す…だが。


「…ッ! …御…坂!!」


消した直後を狙って、畳み掛けるように再度電撃が放たれる。


「うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!!!!」


右手が消して、消されれば直ぐさま電撃を放つ。


それを繰り返す。

741 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/19 19:21:17.92 ID:vvCDkAgDO

「…!! 御坂っ!! もう辞めろ!!」


上条は動けない。


動けば即座に電撃の餌食となる。


「…っ……御坂ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


あらん限りの声で叫ぶも、美琴はそれを聞こうとしない。


このまま彼女が攻撃を続ければ…どうなる?


…普通に考えれば、最後には身体に限界が来て身動きが取れなくなる程度だと思う。


…だが、今の彼女はそれで止まるのだろうか?


限界を超えてでも、命を削ってでも辞めないのではないだろうか?


「…………ッッ!! 御坂ああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」


「………一応心配はしてくれるんだ?」


美琴は叫ぶ事を辞めて、小さく呟く。


「…でも、もう遅いよ」


「………み…っ!」


上条の声は、肉に何かぶつかる音と、彼の頭部を襲う衝撃によって中断される。

「…だって、もう当麻の事壊しちゃったもん」


上条には既に、美琴の声は聞こえない。


彼は、上条当麻は頭部から血を流して倒れ伏した。


美琴は電撃の槍を放ちながら辺りに転がっていた鉄筋入りのコンクリートの塊を上条の頭部…左目の辺りに電磁力を使いぶつけた。


右手が塞がれた状態からのその一撃は、上条の意識を刈り取るには十分だった。

「………勝った」

美琴は呟く。

そして…。

「…………………あは…、あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははッッ!!!!!」


泣き叫ぶように笑い声をあげる。


その瞳は未だ涙で濡れている。

744 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/19 20:12:37.40 ID:vvCDkAgDO


 22 C

「…………」


上条と美琴が戦った雑居ビルに、一方通行が訪れた時には二人の姿は既にに無かった。


(…………この出血量、…致死量じゃあねェが…負傷箇所によってはかなり危険だな)


彼の足元に転がるコンクリートの塊に付着する血液を見て、おおよその推測をする。


「…………」


一方通行はその場を離れ、捜索を続行する。


この場所に居ないのならば長居は無用だ。


(…………あの馬鹿…幻想殺しが危険な可能性があるのになぜ学園都市は動いてねェ?)


雑居ビルから外に出て、携帯電話を取り出す。


(………解せねェな)


ボタンを操作して登録してある番号の一つに掛ける。


『…見つかったのか?』


電話の相手は繋がるとすぐにそう問い掛けてきた。


「…まだだ、戦闘の跡なら見つけたがな」


『……ならなんの用だ、こっちも禁書目録の捜索であまり余裕が無い、なるべく手短に頼むぞ』


電話の相手…土御門元春はいらついたように話す。…だが一方通行にとって電話の相手の心境など気に掛けるに値する事では無い。

745 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/19 20:15:18.49 ID:vvCDkAgDO


「…今回の事、何故上は動いてねェ? 知ってるなら話せ」


『……』


沈黙する土御門。…しばらくしてから重たそうに口を開く。


『…俺も確信がある訳じゃ無いが……』


土御門は…それを言葉にする。


『                   』 


「………っ!!」


一方通行はそれを聞いた直後、赤い眼を空に向け…睨みつける。


「…クソ野郎が…!!」


…その先にあるのは、窓の無いビルだ。


そこは、学園都市統括理事長…アレイスターの居る所だ。

746 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/19 20:36:56.81 ID:vvCDkAgDO


 22-2 C

「…とうま、…みこと!」


インデックスは街を走りながら、必死に二人を探していた。


どうして上手く行かないんだろうか?


彼も。


彼女も。


…そして自分も。


ただ、幸せになりたい。


そう願っただけなのに。


「……とうまぁ!!」


彼は、確かに過ちを犯した…。


でも…もう赦されても良いはずじゃないだろうか?


彼が傷つけたのは、自分と…彼を好きなもう一人の少女だ。


自分は、もう彼の事を赦している。


あの時の行いで、自分は身篭る事になった。


不安だし…恐いと正直に思う。


でも、同時に…嬉しく思えたのも事実だった。


彼と自分の子供。


確かに、彼が望んで出来た子では無い。


でも…それでも、彼の子供なのだ。


その事実だけは、自分には素晴らしい事に思える。


それは…おかしい事だろうか?


…自分は、そうは思わない。

747 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/19 20:59:55.20 ID:vvCDkAgDO

「……みこと…!!」


彼女も、彼は必要な存在なのだろう。


しかし…気づくのが遅すぎた。


だから、彼女は壊れてしまった。


…自分にも、責任がある。


彼を、彼女から引き離したのは自分なのだから。


彼が自分を選んでくれた時、自分は嬉しくて仕方がなかった。


…でも、その陰で彼女は泣いていた。


自分はそれに気づきもしなかった。


…彼の傍に居られる事に浮かれて…気づこうとしなかった。


彼女は、今も泣いているの?


…わたしはどうすればいいの?


……とうまは、どうするの?


…何度も答えを探しても、正解と思える答えは出て来ない。


「……なんで、誰かが傷つかなくちゃいけないの?」


その問い掛けに答えられるのは、居るのだろうか?


…きっと、神さまだって分からないと思う。


「……わたしはもうシスター失格かも…?」


ふと出て来た考えにそう漏らす。


別に、…それでも良いと思う。


救いを差し延べられない者に…聖職者を語る資格は無いと思うから。


彼も、…彼女も救えない自分は聖職者とは言えないだろう。

748 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/19 21:28:28.54 ID:vvCDkAgDO

「…ハァ…ハァ…、…とうま…もしかして部屋に戻って来てるかも…?」


走り続ける内に、いつの間にか上条の寮の近くまで戻って来ていたようだ。…目の前に彼と過ごした…彼との思い出に溢れた場所があった。


「………とうま」


最近になってようやく覚えたエレベーターの使い方。


…彼は面倒臭そうにしながらも根気よく教えてくれた。


「…………」


エレベーターを降りて、彼の部屋まで続くテラスを歩く、彼が学校に行った後は見えなくなるまで彼の姿をここで眺めていた。


…他にも沢山思い出がある。


自分にはここに来る前は一年分の記憶しか無い。


…だから、ここでの思い出は自分の思い出の大半を占めると言っても良い。


………否、そんな事が無くても…きっと大切だったと言えるはずだ。


それくらい、…自分はこの場所が好きだった。


そして、…彼とここで暮らすことが幸せだった。


「………とうま」


全部、…彼がくれたんだ。

……だから。


彼の部屋の扉を開ける。


大好きな、彼と出会った。


大好きな、彼に貰った自分の居場所。


…大好きな、彼と愛しあえた場所。


「……とう……ま」


「……お帰りなさい」


そこには、一人だけ人が居た。


「………みこと?」


…御坂美琴。


彼女は満面の笑みでインデックスを迎える。

754 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/19 21:52:52.69 ID:vvCDkAgDO


 23 C

「………ぅ………?」



インデックスがうっすらと意識を取り戻すと…そこは薄暗く、窓も無いような小さな部屋だった。


(………ここ…は?)


意識がはっきりしない。


霞んで良く見えない瞳を擦ろうとする…が。


「………っ…!」


…自分が何か、手錠のような物で拘束されている事に気づく。


「…………なに…これ?」


インデックスは訳が分からない。


何故自分は意識を失っていたのか、…そして何故、身動きが取れない状態なのだろうか?

756 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/19 22:22:08.98 ID:vvCDkAgDO

「………ん……ぁ…」


「………っ…?」


インデックスは何かくぐもるような…妙な囁きを耳にする。


…丁度インデックスの真後ろ辺り、…今向いている方向からは見えない位置から聞こえる。


「………」


身体をよじり、向きを変える。…ようやく見えるようになってきた瞳で……その声の元を見た。


「…っ…!! …あ…ぅ…!?」


直後、インデックスは…自分の見た光景を現実と認識するのを躊躇った。


「………ん………、…やっと起きたんだ?」


「…ぁ……あ…!?」


先程の声の主…御坂美琴がインデックスに語りかける。


インデックスは震えるように首を振る。


「……ああ、…ちょっとやり過ぎちゃったのよね」


美琴はインデックスの反応を見て、…何に困惑しているのかを察知する。


「……でも仕方ないじゃん、…こうでもしないと当麻は言う事聞いてくれないもん」


美琴はそれに擦り寄りながら、悪戯っぽく微笑む。


「………と…う…っ!!」


美琴の擦り寄るそれ…上条当麻は、…血だらけの状態で、…顔の半分が赤黒く…潰れたようになっていた。

瞬間…インデックスの悲痛な叫び声が部屋の中で響いた。

757 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/19 22:37:10.68 ID:vvCDkAgDO

「とうま!? とうまぁ!! …う…とうま!!」


ボロボロと涙を流しながら、必死に名前を呼ぶ。


「………」


…だが、上条はなんの反応も示さない。


「…と…っ…ぅ……ま…!」


彼に近寄ろうと必死にもがく。…しかし、手錠は鎖で壁に繋がられてその場を動く事が出来ない。


「…あは♪ …良い気味よ」


インデックスの姿を嘲笑うように美琴が言う。


「…あんたは今まで幸せだったでしょ? ……だから交代よ」


…美琴は上条に絡み付くように肌を合わせる。


美琴は何も身につけておらず、上条も脱がされたのだろう…上半身は何も着ていない。

758 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/19 22:49:17.31 ID:vvCDkAgDO

「…やっと捕まえた、……もう放さない」


美琴は上条の唇に…自分の唇を重ねる。


「……ちょっと血の味がするかな…? まあ仕方ない…か」


「ひっ…く…ぅ…とう…ま」


「……ちゃんと見てるのあんた? …見てくれないと何の為に連れて来たか分かんないんだけど?」


美琴の催促のような言葉。


…インデックスはもう美琴の考えを理解する事が出来ない。


「……まあいいや、こっちは勝手にやるから」


美琴はそう言って…再び上条に口づけをする。…今度は自分の舌を押し入れるように…強引な物を。

759 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/19 23:06:52.16 ID:vvCDkAgDO

「……当麻……ん…!」


キスを続ける美琴に…上条の傷から滴る血がこびりつく。


…だが美琴はそれを気に留めもしない。


絡み合う内に、美琴の裸体は赤く染まり、錆臭い中に女の匂いが徐々に交ざっていく。


「……ぁ…ぅ…、ホントは…当麻にして貰いたいけど無理だもんね……ん…ぁ……!」


上条に跨がりながら自らの指で自身のそれを弄る。


「…ん…ぁ……当麻ぁ…!」


美琴の息が荒く、激しくなる…。


「…………」


…上条は何も言わない。


「……返事くらい……してよ……!」



上条の首を…強く絞める。


「…ぅ…が……ぁ…」


「……よかった、…まだ生きてるよね…♪」


「………ひ…ぁ…?」


インデックスはただ、その現実感の無い光景を眺める事しか出来ずにいる。

768 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/22 13:06:51.80 ID:OktkxWBDO

「………当…麻…ん…」


「………ッ……」


美琴は上条の血に塗れた身体に、這うように自身の舌を滑らせる。


首筋…、鎖骨……、胸板。


「…当麻……ぅ…ん…」



上条の適度に筋肉の付いたその身体が、美琴の唾液によって濡らされていく。

769 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/22 13:13:00.80 ID:OktkxWBDO


「………ぐ…っ…」



上条の身体には、細かい擦り傷や切り傷が無数にある。


汗と泥…血で汚れたそれらの傷にも美琴は唾液を染み込ませる。


上条が痛みの為か呻くように声を上げる。



「………ん…ぅ…ふ…ぅ……ぁ…、……当麻…!」



美琴は興奮したように彼の名前を呟く。


彼の汗の匂いが。


彼の男らしい身体つきが。


…彼と行為を及んでいるという状況が。


美琴の身体を疼かせる。

770 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/22 13:23:21.16 ID:OktkxWBDO

「…とうま…みこと……!」


インデックスは瞳を覆いたくなる光景を目の当たりにしながらも、彼と…彼女に呼びかける。


「…お願いだから……やめて……!」


「………あは…♪」


美琴はその言葉を聞いてほくそ笑む。


「………ちょっとは私の気持ちわかってくれた?」


上条の胸元に頬を擦り寄せ…彼のモノをズボン越しに撫でる。


「………みこと…!」


「……止める訳無いじゃん、…せっかく捕まえたのに……馬鹿じゃないの?」

771 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/22 13:44:35.74 ID:OktkxWBDO

「……とうま…!」


インデックスの言葉を聞き入れようとなど美琴はしない。


「………ずるいわよね、あんたは当麻と繋がった事があるんだから」


美琴は上条のベルトのバックルを外し、ズボンのチャックを下ろす。


「…でも…これで、やっとあんたに追い付ける。……………当麻」


…その中に美琴は手を滑り込ませる。


「…………これ…だよね?」


下着から…上条のそれを外に露出させて美琴は興味深そうに見つめる。


「………当麻」


初めて見る男性のモノに躊躇う事無く触れる。

772 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/22 14:01:38.40 ID:OktkxWBDO

「………ぅ……」


上条が僅かに反応するのを美琴は見逃さない。


「……やっぱり気持ち良いのかな?」


…美琴はそれをぎこちない手つきで弄る。


「………っ……ぅ…」


「………ふーん」


美琴が弄ると、それは脈打つような反応をする。


次第にそれは大きく、硬く…そそり勃っていく。


「………見てよ、…別に当麻はあんたじゃなくても良いってさ…!」


「…………」


インデックスに向けて言葉を放つも、それにはインデックスは何も答えない。


…ただ美琴と、…彼に向けて悲しげな瞳を向ける。


「………つまんない奴」

773 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/22 14:26:13.61 ID:OktkxWBDO

「……ん…もういいかな?」


「………………」


「………私のも……多分大丈夫……だよね?」


上条のモノに手を添えて…自身は腰を浮かせて、上条に跨がる。


「……ぁ…ん…!」


そして、上条のそれと自分の密所が触れるように、…繋がり易いようにする。


そのまま…美琴は少しずつ腰を沈める。


「…っ! …痛…っ…!」


何かが破れるような、膣に侵入させる事を拒むような痛みが美琴の身体を襲うが、…その痛みも、彼女にとって喜びを与える物だ。


「…あ…ぐっ………当麻…………ぅ…あ…!!」


喪失の痛みも、…彼によって与えられるのなら、性的な快楽とさして違いは無い。


「………当麻……!!」

774 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/22 14:39:01.82 ID:OktkxWBDO

「……う…ん…、…全部…挿った」


「………ッ」


「…やっと…! やっと当麻と一つになれた……! ………当麻…!」


美琴の瞳から、涙が零れる。


痛みと。


喜びで…。


彼女の頬が濡れる。



「……当麻」


「………………」



物言わぬ彼と繋がりながら…。



彼女は…御坂美琴は再び告げる。





「…大好き、…当麻」

778 : しょーちゃん(愚者) ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/22 15:26:03.40 ID:OktkxWBDO

「………もうやめて」


美琴の行いを眺めながら、インデックスは言う。


「……お願い……みこと………!」


だが、もう美琴はインデックスを意識していなかった。


「…あ…ぅ…! …い…ぎっ……!」


「………っ……ぅ…!」


掻き交ぜるように。

貪るように。


自分自身を汚すように。


痛みに引き攣る身体を無理矢理に動かす。


「…あぐ…っ…! …当麻……当麻ぁ…!!」


二人の繋がる部分から、愛液が混じる鮮血が溢れる。

血みどろの上条を、更に美琴の血が汚す。


「………お願い……だから……!」


インデックスはそれを見つめながら、決して届かない願いを呟き続ける。


「……とうまが…死んじゃう………お願いだから………みこと……!」

779 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/22 15:41:00.58 ID:OktkxWBDO

「……あ…あん……ひ………ぐっ………当麻…! ………ん!」


乱暴に腰を振りながら、僅かに呻くだけの彼にキスをする。


痛みは徐々に薄れて、性的な刺激の方が強くなって行くのを美琴は感じていた。


「…ふ…ぁ…! …当…麻!」


「………っ……」


「…当麻…、…当麻! ……あふ…ん…!」


上条は何も言わない。


美琴にどんなに名前を呼ばれても…ただ、時折くぐもるような呻きをあげるだけだ。

781 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/22 15:55:01.89 ID:OktkxWBDO

「……………ひ…っあ!? …あ! …すご……ん!!」


美琴の身体を一際大きな快楽の波が襲う。


「………っ…ぁ…!」


…それと同時に、上条も果てる。


脈打つように…美琴の身体の膣に放たれる。


「…あつ…い…、ん…! …………当麻……」


下腹部に熱を感じて、…美琴は動きを止めた。


「…ハァ…ハァ……ん、……………当麻」


そのまま上条に重なるようにもたれ掛かる。


繋がりが外れた二人のそれには…愛液と、美琴の血と、…彼の精液がこびりついている。

782 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/22 16:08:59.33 ID:OktkxWBDO

「………………ス…」


「…………え……?」


美琴は、上条の囁く声を耳にする。


「…………当麻?」


上条を見下ろすように、少しだけ身体を起こして彼を見つめる。


…今、彼は何て言った?


………誰を、……誰の名前を呼んだ?


彼は、再びそれを囁く。


「……イ…ン…デックス…」美琴はそれを聞いて…。


「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」



「……ぁ……が…ぐ…」



彼の首を力の限り締め付けた。

783 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/22 16:15:26.98 ID:OktkxWBDO

なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ

784 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/22 16:19:27.45 ID:OktkxWBDO

なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?なんで私じゃ無いの?どうしてあいつなの?どうしてあいつなの?どうしてあいつなの?どうしてあいつなの?どうしてあいつなの?どうしてあいつなの?どうしてあいつなの?どうしてあいつなの?どうしてあいつなの?どうしてあいつなの?どうしてあいつなの?どうしてあいつなの?どうしてあいつなの?どうしてあいつなの?どうしてあいつなの?どうしてあいつなの?どうしてあいつなの?どうしてあいつなの?どうしてあいつなの?どうしてあいつなの?どうしてあいつなの?どうしてあいつなの?どうしてあいつなの?どうしてあいつなの?どうしてあいつなの?どうしてあいつなの?どうしてあいつなの?どうしてあいつなの?どうしてあいつなの?どうしてあいつなの?どうしてあいつなの?どうしてあいつなの?どうしてあいつなの?どうしてあいつなの?どうしてあいつなの?どうしてあいつなの?どうしてあいつなの?どうしてあいつなの?どうしてあいつなの?どうしてあいつなの?

786 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/22 16:39:27.36 ID:OktkxWBDO

「止めてみこと!! とうまが……とうまが!?」


「……………………………………っ!!」


美琴は奥歯を強く食いしばりながら、…あらん限りの力で首を絞める。


「…が…あ……ぐ…!」


「みこと!! とうまが死んじゃうよ!! お願いだから止めてよ!!!!」


インデックスは叫ぶ。


美琴の行為を辞めさせる為に必死で叫ぶ。



「お願いだから!! お願いだから!! ……みこと!!!!」


「…………………………………………五月蝿い」


美琴は上条の首から手を離す。


ゆっくりと立ち上がると……インデックスに向きあった。


「……………やっぱりあんたなの?」


「……みこ…うぐっ!」



美琴は、インデックスの顔を踏み付けるように蹴り飛ばす。


「……あんたが居るから当麻は私を呼んでくれないの?」

788 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/22 16:59:27.55 ID:OktkxWBDO

もう一度。…倒れ伏しているインデックスの顔に蹴りを入れる。


「あぐっ! …み…こ…!」


口の中が切れたのか…、インデックスの口から血が垂れる。


「……………………………………」


美琴は何も言わず、何度も…何度もインデックスを執拗に蹴り飛ばす。


最初の数発は呻くように悲鳴を上げていたインデックスも、…何十発も顔を蹴られるうちに声を出せなくなった。


「……………………」


「………ぅ……」


床に、インデックスの血が滴る。


美琴の足にも血がこびりつく。


「…………と……ま」


顔の形が崩れるほどに痛めつけられ、口と鼻から血を垂らして…。


「…とうま…を…、病…院に……みこ…と…!」


それでも、彼女は…彼の身を案じていた。


「…………ムカつく……ホントにムカつく…!」


美琴は更にインデックスを踏み付けた。

790 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/22 17:13:25.45 ID:OktkxWBDO

「………あんたさ、なんで顔守らないの? 手錠されてても腕で守るくらい出来るのに」


「……………」


インデックスは、美琴の言う通り、一度も顔を守っていなかった。


…インデックスの手は常に、…ある部分を必死に守っている。


「…………お腹なんか防いでも顔は守れないわよ?」


インデックスは顔を執拗に蹴られても自分の腹部から手をどけなかった。


「…………」



「………お腹……? ………………あんた、まさか」



「…………子供でも出来たの? ……当麻の子供が」

791 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/22 17:30:51.12 ID:OktkxWBDO

美琴の言葉にインデックスは身体を強張らせる。


自身の腹部を…その中に宿る命を守るように、さらに腕で覆う。


「……くふっ、…あは……あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっっ!!!!」


美琴は狂ったように、狂った自我をさらに狂わすように…叫び声のような笑い声を上げる。


「そっかぁ! そういう事だったんだ!? だったら仕方ないかな!? だって当麻ってそういう事に対して凄く真面目そうだし!! あはははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」


インデックスは美琴の笑い声を聞きながら、恐怖する。…美琴はもう…止まらない、もう元に戻らない。


(………とうま)


「……じゃあ、それをどうにかすれば良いよね? ………その中にいるのを…さ!!」


彼女には、もう声は届かない。


(…助けて…とうま!!)

793 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/22 17:40:33.30 ID:OktkxWBDO

………眠い。


……寝てる訳にはいかないはずなのに……。



意識が保てない……。



俺…は、…どうなった?


…………



なんで…、こんなに眠い?



眠いし……身体が動かない……。



俺は…………。



……やる事があったはすなのに。



必ずやらないといけない事があったはず……なのに。



……どうして、その事しら思い浮かばない…?



俺……は?

……………

794 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/22 17:48:37.13 ID:OktkxWBDO

……マ…!


…………?


…ト………!


………声?


……誰…だ?


…と………ま…!


………なんで、聞こえてくるんだ?


……誰が…?


……とうま!


俺を……呼んでるんだ?


………眠い……。


…………………でも。


とうま!!


………呼んでる。


……そうだ……!


とうま……助けて!


インデックスが……!


俺を呼んでる……!!

795 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/22 17:58:03.24 ID:OktkxWBDO

「う……が、がああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」


突然、背後から放たれた叫び声に美琴は驚き、そちらを振り向く。


「……っ!! 当麻!?」


美琴が振り向いたその先には、無理矢理手に嵌められていた手錠を外し、立ち上がる上条の姿だった。


「……ひっ…!?」


「…と…うま…!」



無理矢理に手錠を外した上条の右手は、肉が削れ……骨と思われる部分が露出していた。


「…イ…ンデック…ス…!!」

「…あ…ぅ……!?」

796 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/22 18:14:40.63 ID:OktkxWBDO

「と…当麻…!?」


ふらふらと、覚束ない足取りで二人に近寄る上条。
全身血まみれで、顔の半分が醜く潰れ、…右手も肉が削げ落ちた姿で。


ゆっくりと、近づいて来る。


「…ひ……!?」


「………イン…デックス!!」


美琴は立ちすくみ、その場から動けない。


「……なん…で、…どうしてそこまで…!?」


「………」


「なんで私にはそうしてくれないの!? なんで私の名前は呼んでくれないの!? ……そこまでされてなんでこいつの為に動けるのよ!?」


「……………」


「私だって当麻の事好きなのに!! 私だって当麻の事ずっと呼んでるのに!! 私だって助けてって言ってるのに!!」


「……………」


「ちくしょう!! クソックソッ!! 私にも優しくしろ!! 私の事もちゃんと見ろ!! 私はここに居るのに!! 私はちゃんとここに居るのに!!」



「私の事も好きっ言ってよ!! 当麻!!」

797 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/22 18:44:30.26 ID:OktkxWBDO

「………イン…デックス…を…放…せ……!!」


美琴の叫びに対して、上条の言葉はそれだった。


上条はの残る右目は…焦点が定まらず…何処に目を向けているのか判断出来ない。


…意識すらまともに保っているのか怪しく見える。


「…………………………………」


美琴は、そんな状態の上条を抱き寄せる。


「………なんで…言ってくれないのよ…?」


「………イ…ン……………………………」


上条の足から力が抜けて、倒れ込む。


美琴の手から滑り堕ちる上条の身体は………。

…驚く程冷たく感じた。

798 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/22 18:45:39.38 ID:OktkxWBDO


「………とう…ま?」


「…………ぁ…う…?」


「………」


インデックスは近くに倒れた上条に触れる。


「……ぇ……?」


上条当麻は、もう動かない。


「…とうま……?」


上条当麻は、もう言葉を放たない。


「…と…っ…!! ……ぁ…?」


上条当麻は……もう笑わない。


「…あ…あ…、…………………あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!?!?!?」


上条当麻は最後の力で立ち上がり…。


…そして、力尽きる。


後に残るのは、それを呆然と眺める御坂美琴と…。


叫び狂うインデックスの姿だった。

799 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/22 19:04:36.55 ID:OktkxWBDO


 24 C

………それから数日後。


御坂美琴は特殊な施設に監禁されていた。


…あの日、その後の事はよく覚えていない。


しかし、はっきりと覚えている事が一つだけある。


…自分が、彼を殺したと言う事だ。


それ以外の事は…正直どうでもいい。


…彼以外の事なんてくだらなくて覚えていられない。

800 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/22 19:18:33.92 ID:OktkxWBDO

「………少しはまともに喋れるよォになったかよ?」


監視する為に取り付けられた窓の向こうから声が聞こえてきた。


…一方通行。


かつて自分のクローンである妹達を大量に殺害した者が…ガラス越しにだがすぐ近くに居る。


でも、それも今となってはどうでもいい。


あの赤い眼を見ても、…なんの感情も湧いて来ない。

「………何か用?」


本当は話すのも億劫だが、一応対応する。


「……こっから出られるそォだ」


「……ふ~ん」


どうやらここから出ても良いらしい…どうでもいいが狭いのには飽きてきていたので丁度良いかもしれない。

801 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/22 19:30:06.52 ID:OktkxWBDO

「…どうして出られンのか聞かねェのか?」


「……別にどうでもいいから」


「……………そォかよ」


何か言いたげな一方通行だったが…私がまともな返事をしないと判断したんだろう、…それだけで話を終わらせる。


「……海原、後はテメェで話せ……俺はもう手を引く」


一方通行が誰かと話している。


どうやらもう帰るつもりらしい…たった一言言う為だけにわざわざご苦労な事だ。


「…わかりました、では」


「…………じゃあな、糞っ垂れな第三位さんよォ」


「…………ふん」


一方通行と入れ違いに入ってきた人物は自分も知っている奴だった。

802 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/22 19:44:06.14 ID:OktkxWBDO

「……言わなくても分かりますよね? …自分は偽物の方ですからね?」


そう笑い掛ける男。


…どうでもいい。


「……御坂さん、貴女の処分が決定したようです」


……処分、ねぇ。


「………ここに居たと言う記録は残さずに学校の方で謹慎処分を受けていたと言う事になるそうです。………つまり、今までの生活に戻れるという事です」


………そう、それで?


「……貴女は何もしていない、ちょっと校則を違反した位で後のお咎めは一切無しです…よかったですね」
……だから?


「………おかしいとは思わないんですか? ……仮にも人を殺したと言うのに」


……おかしいかもね、……でも思うだけよ。


ホントにどうでもいいもん。

803 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/22 19:54:27.63 ID:OktkxWBDO

「……どうやら貴女はもう依然の彼女には戻れないみたいですね」

……だからなに?

「……残念です。…彼も哀しむと思いますよ」

…………………………………………………………………だから?

もう遅いでしょ?

もう当麻は居ないんだから……。

今更、謝って赦して貰えるの?

…違う、その前に誰に謝れば良いの?

当麻のお墓?

当麻の両親?

当麻の友達?


…それともあの女?

…違うよ。


だって…私が謝りたいのは当麻だけだもん。


……その当麻はもう居ないもん。

804 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/22 20:04:10.35 ID:OktkxWBDO

「………一方通行が先程言っていた手を引くという言葉。…意味が分かりますか?」


…さあね。


「……貴女に何があったとしても…助ける事は無いと言ったんですよ」


……それが?


「…一方通行だけじゃありません、貴女を陰ながらに見守っていた人はみんな貴女から離れて行きます………残念ですが自分もです」


……だから、それが何?


「……もう良いです、……やはり貴女には彼の言葉しか届かないんですね」


…わかったるなら、ほっといてよ。


「……………さよならです、御坂さん」


…なんなの?


………なんなのよ。

805 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/22 20:16:20.53 ID:OktkxWBDO

「……お姉様。とミサカは呼びかけます」


……今度はあんた?


「…ミサカは、お姉様の事が許せません。とミサカはミサカ達の意見を代表して告げます」


…………。


「確かにお姉様を止められなかった事は皆さん責任を感じています、…ですがお姉様が思い留まってくれさえすればこうは為らなかったのも事実です。とミサカは至極真っ当な意見を発言します」


そう…そうよね。


「……ミサカ達は言うならお姉様の分身です…ですからお姉様の気持ちも解らなくはありません。とミサカは自身の恋する乙女っぷりをアピールします」


…………。

806 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/22 20:25:45.23 ID:OktkxWBDO

「だから尚更お姉様の事が許せません。とミサカは敵意を示します」


……そっか、そういえばあんた達も当麻の事…。


「……最後に聞かせて下さい。……何故こんな事になってしまったんですか? とミサカはお姉様に真面目に質問します」


……わかんないよ。


…私が悪いのは解るよ?


……でも、自分の気持ちをぶつける事がそんなにいけない事なの?


…私は、自分に正直にしたかっただけよ。


…素直に成れないまま終わるなんて絶対嫌だっただけ……。


「…そうですか。とミサカは一応納得します」

807 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/22 20:40:21.55 ID:OktkxWBDO

……もう誰も来ないか。


まあ…別に良い。


周りに誰が居なくなろうと……どうだって良い。


…一つだけ、誰にも言っていない事がある。


私は当麻から生きる希望を貰ってる。


それは、まだ確証がある訳じゃない。


でもわかる。


自分に命が宿った事を確信してる。


…きっと、当麻だ。


当麻が私の子供になってくれる。


…だから平気だ。


たとえ私の周りに誰も居なくなっても。


みんなが私を赦さないと叫んでも。


私は強く生きていける。


絶対に耐えられる。


だから…大丈夫。


また逢えるよ。



………当麻。

819 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/22 21:54:47.16 ID:OktkxWBDO



 第22次 幻想殺し関連報告書(最終)

〇月×日 幻想殺し、上条当麻の死亡を確認。

その後、殺害したとされるlevel5第三位 超電磁砲の身柄を拘束、身体検査<システム スキャン>とともに各種検査を実施。

身体検査の結果、超電磁砲の能力levelは0と測定。

これの原因究明の為、検査を続行するも原因は不明に終わる。

その後、超電磁砲の妊娠が発覚。

これによって導き出された仮説が、何らかの理由で胎児に幻想殺しが移動もしくは発生し、母体となっている超電磁砲の“自分だけの現実<パーソナル リアリティ>”に影響を及ぼしていると言う説が立てられる。

その仮説の証明の為に、学園都市統括理事長の許可の元、摘出手術を行い、これを成功させる。

母体である超電磁砲は、能力levelはlevel5に戻り、胎児が影響を及ぼしていたと証明した。

なお摘出した胎児は、超電磁砲のクローンである妹達の製造マニュアルを応用し成長促進、学習装置<テスタメント>による人格生成を執り行う予定となっている。

         以上。

820 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/22 22:12:31.75 ID:OktkxWBDO

※待て! まだルートCは終わっとらん。


 route C epilogue

……一年後。

「……御坂さん卒業おめでとうございます!」


「おめでとうございます!」


「うん、ありがとう初春さんに佐天さん」


「あ~あ、来月には御坂さんも高校生かぁ、…なんかちょっと寂しいかも」


「え? なんで?」


「だって高校生と中学生って区切りがついたらちょっとよそよそしくなったりしませんか? そういうのってあたしはやだかな~って」


「佐天さんは考えすぎだと思いますよ?」


「う~ん……そうかな?」


「私は高校生になってもみんなで遊びたいけど? 佐天さんは嫌なの?」


「いっいやそういい意味で言ったんじゃないでしって!! 御坂さんが遠くに行っちゃうんじゃないかな~と心配になって!!」


「……………大丈夫よ、私は私でしょ?」


「………? はい」


「………うん、ちゃんと居るよ」


「……?」

821 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/22 22:30:22.18 ID:OktkxWBDO

「…白井さんもくれば良かったのに」


「……黒子?」


「はい、昨日支部に居た時誘ったんですけど…」


「……白井さんも変わったよねー、前はあんなにお姉様ーお姉様ーってしつこいくらいにべったりだったのに」


「…あはは、まあそうですね」


「…ん、ちょっと色々あったからね、その内仲直りするわよ」


「色々っていうと…一年位前に御坂さんが能力使え無くなっちゃったあれの関係ですか?」


「……佐天さん! その話は……!」


「……大丈夫よ初春さん。いい加減私もすっぱり諦めてるし」


「………そうなんですか?」


「うん、…別にlevel5にこだわる必要は無いでしょ? 今のlevel3位の力でも別に不自由はないもん、…常盤代もちゃんと卒業出来たし」


「……はあ、なら良いですけど」


「…そんな事より、ほら! みんな食べましょ! 今日はこれでもかって位甘い物食べるって決めてたでしょ!?」


「………はい!」


「うわー、しばらく体重計は乗れないなぁ…」

824 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/22 22:48:31.13 ID:OktkxWBDO


-常盤代中学女子寮-


「………黒子?」


「……何か用でしょうか?」


「……うん、ちょっと話し合いしたくて…ね」


「……なら」


「…………」


「…“お姉様の演技”をまずは辞めて下さいまし…! 見ていて不快ですの…!」


「……」


「………わたくしの前でお姉様の振りは必要無いでしょう…!」


「……そうですね…確かにその通りです。とミサカは素の喋り方に戻して会話をします」


「…………」


「……ミサカを目の敵にするのは筋違いではないですか? とミサカは睨みを効かせている貴女に問い掛けます」


「……確かにそうですわね」


「…まあ納得行かないのは理解しています。とミサカは貴女の心境を理解して同意します」


「……同意して下さるならほっといて貰えませんこと?」


「………」


「お姉様と同じ顔でわたくしの前に居て欲しくないんですの………黒子にとって、お姉様は一人だけなのですから」


「…………」


「……一年前に自殺して仕舞われた…御坂美琴お姉様だけが…!」

825 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/22 23:09:43.24 ID:OktkxWBDO

「……ミサカだって好きでお姉様の振りをしている訳じゃないですよ。とミサカはちょっと愚痴ってみます」


「………もう良いですの、…何か用があったのではないのですか?」


「…はい、簡単に言えばもうちょっとミサカと仲良い振りしろよ。とミサカは無茶振りと思いつつ発言します」


「………ホントに無茶振りですの、先程の話の流れでそれを言いますか?」


「…………」


「…まあ、良いですの。……でもあの一年前の…お姉様の自殺の理由を聞かせて貰います…!」


「……マジですか。とミサカはちょっとどうするか考えます……うーん」


「…お姉様が自[ピーーー]る数日前に言ってました……! 『私は何があっても生きていける』と…! そのような事を言える方が自殺なんてするとは思えません! …あの時何があったのです! 全て教えてくださいまし!」

826 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/22 23:29:53.01 ID:OktkxWBDO

「………え…、マジですか運営? ……えー? セロリが多少なら話して良いって? ……えぇー? 何かあったら責任とれよなちくしょう」


「……?」


「……やれやれ、…お待たせしました、…じゃあちょっとだけお話します。とミサカは多少投げやりになりつつ説明を始めます」


「…………」


白井は妹達の一人である…御坂美琴のクローンから話を聞く。


要約するとこういう事だ。

まず美琴が上条当麻を殺害したと言う事。


次に美琴は上条の子供を妊娠していたと言う事。


そして…その子供は、無理矢理美琴の身体から摘出されたと言う事。(…本人には只の中絶手術だと言っていた)


自分の身体に宿った命に、生きる希望を見出だしていた美琴には…それは耐え難い事だった。


「………なん…ですの? ……それ?」


「…………」


「……………お姉様…!!」

829 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/22 23:50:18.64 ID:OktkxWBDO


…イギリスのとある場所。
「…いないいない…ばー♪」

「あぅー」


「……元気そうだね?」


「あっ! すている!」


「…うん、君もその子も元気そうでなによりだよ」


「うん、すているもかおりもほかにもみんなが支えてくれるからね」


「……そうかい?」


「……ねえ、やっぱりきいちゃだめなのかな?」


「………なにをだい?」


「……この子の父親の事………」


「………………………」


「…みんな何も言わないけど…わたしだけじゃ子供は生まれないもん……」


「………そう…だね」


「……“わたしには一年前からの記憶しか無いから”、…知ってるなら教えてほしいかも」


「……………………」


「……すている?」


「……いや、すまない……僕は何も知らないんだ」

「……そっか」

「……でも」


「………?」


「…………とても優しい奴だった……って聞いた事がある」


「………」


「………優しい…黒髪の人かぁ」


「あーぅー」


「………」


「……すている」


「……ん?」


「ありがとう」

830 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/23 00:03:23.93 ID:QnMwWzYDO

…時は更に過ぎ去り、数年後。

学園都市の一角に、とある少女が立っていた。


その少女は不幸だった。


…それは、自身の生まれの為か。


それとも…右手に宿る力の為か…。


「………禁書目録…?」


「うん、そうだよ」


その少女に向かい合うように…幼い少年が立っている。


禁書目録と呼ばれた…黒髪の少年はあどけない笑顔を見せる。


「………うさんくさっ」


「…しんじてない!?」


時は廻り、再び幻想殺しは禁書目録に出会う。


科学と魔術が再び交差する時、物語は始まる。

831 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/04/23 00:04:36.50 ID:QnMwWzYDO




    BAD END

879 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/05/08 07:39:04.38 ID:qwWJTIfDO


…まずはインデックスを捜さないと…!



「……御坂すまん、今は急いでるんだ」


「…え?」



上条はそれだけ言うと、再び街の中を駆け出して行った。



「……………………………………………………………………………ふん」



その場に残された美琴は、つまらなそうな顔つきでその後ろ姿を見ていた。



「……結局、当麻は私の事なんかどうでもいいって事?」



その言葉に反応する者は誰も居ない。


「……まあ、…まだいいわよそれで」


美琴は上条とは別の方向に歩きだす。


「…私もちょっとやる事あるしね」

880 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/05/08 07:41:07.67 ID:qwWJTIfDO


 18 A

「………しらい? なにをそんなに怒っているの?」


「…貴女はホント~に空気読みませんわね、さっきのはガチで焦りましたの!」



インデックスは白井黒子に連れられて、夜の街を歩いていた。


二人は先程の美琴とのやり取りについて話している途中である。



「…まあ良いですの、貴女がそのように考えているとは以外でしたが」


「…そうなの? なにか変かな?」


「いいえ? むしろ殊勝な考えだと思いますわよ?」


インデックスの先程の行為…美琴の記憶に関する、彼女の考えを聞いた白井は素直にそう思った。


「…わたくしは間違っていたんでしょうか?」


白井は美琴の記憶を弄ぶような自身の判断に……今更ながら疑問を抱く。



「あの時は仕方がなかった…と、それで済ませてお姉様の傷を見えないように隠しだだけですものね……わたくし達は」

881 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/05/08 07:43:31.73 ID:qwWJTIfDO




「……」



あの時はそれが最良だと考えていた。


しかし、その判断は最悪の結果を招いてしまったのかもしれない。



「…お姉様の付き人失格ですの」


「しらい…」



肩を落として呟く白井。


「…お姉様の気持ちを考えるなら…貴女の言うように全てを明かすべきですわね」


「……うん、そう思うかも」



白井は自らの誤りを認め、そう考えた。


インデックスと同様に、彼女の想いに同調する。



(今からでも…間に合いますわよね?)


(…お姉様)

882 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/05/08 07:44:48.21 ID:qwWJTIfDO



Prrrrrr!


会話の途中、白井の携帯から電子音が鳴り響いた。



「………この番号は」



自身のメモリには登録されていない番号。


だが、白井はその番号には見覚えがあった。



「………もしもし」



通話ボタンを押して返答する。



『…お久しぶりです、白井黒子さん』



「…海原光貴…の偽物さんですわね?」



電話の相手は、あの時…美琴が暴走した時に姿を見せていた人物からだった。

883 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/05/08 07:46:31.64 ID:qwWJTIfDO


 19 A

「…では土御門、あの子は無事なのですね?」


『ああ、今は白井という常盤台の学生と一緒に居るぜい』



土御門からの電話に応答しながら…、神裂火織はため息を漏らした。


そのため息は安堵の為。



『…今なら禁書目録を俺の方で保護出来るがどうする?』


「………」



土御門の問いに…しばし黙り込む。



(………あの子の身の安全を優先するならそうすべきですが)



…それでは彼女の意志を蔑ろにしてしまうのではないだろうか?

884 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/05/08 07:48:12.43 ID:qwWJTIfDO



『……上条当麻はまだ禁書目録を探しているみたいだな……携帯も持たずに街を駆けずり回っているらしいから無事だと連絡しようにもその手段がないですたい』


『そう…ですか』



彼女…インデックスは彼が捜し回っている事に気づいているだろうか?


「…彼は」


『………』


「……彼は、自分がどうするべきか…答えを出したのですか?」


『…さてな、それは本人じゃないとわからんぜよ』



神裂の呟きに土御門はそう答える。



「…土御門」


『……なんだにゃー?』


「……あの子が幸せになる為には、…私達は動くべきですか?」


『………』

885 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/05/08 07:49:50.93 ID:qwWJTIfDO



今、彼女が望む事は何だろうか?


神裂はそれを考えていた。


「私達があの子に出来る事は何でしょうか?」


『……心配なのは分かるんだがにゃー、ねーちんは思い詰めすぎだぜい?』


「………」


『…ステイルにも言ったがあいつを…上条当麻を信用してやれ、奴が禁書目録を裏切るような事はもう二度と無いはずだ』


「それは…そうですが」


『ねーちんが迷ってるなら俺から言うぜよ。後の事はカミやんに任せれば良いですたい、…ぶっちゃけ俺らが動くのは野次馬と変わらんにゃー』


「……………」


『まあどうするかは自由だぜい、ねーちんが最良だと思う行動をすれば良いですたい』

886 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/05/08 07:52:41.00 ID:qwWJTIfDO


「……はい、そうですね……ではまた連絡します」



会話に区切りがついたので通話を終わらせる。


それから横に立っているステイルと目を合わせた。



「……で、どうするんだ神裂?」



「……様子を観ます」


「…そうか」



神裂の言葉を聞きながら煙草の煙を吐き出すステイル。



インデックスの無事が確認出来たからであろう、ステイルはゆったりとした動作で煙草を吸っている。



「ならまずは上条当麻を見つけようか、あれがどうするのか確認したいからね」


「ええ、そうですね」



神裂とステイルは動きだした。


彼と彼女を見守る為に。

887 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/05/08 07:54:14.33 ID:qwWJTIfDO


(…もう私達がしても良い事はこのくらいでしょう、……あの子を守らなくてはならないのは上条当麻なんですから)


神裂はそう判断した。


確かに自分達が動けばインデックスの身体だけは守る事が出来る。


…でも、心はどうだ?



(…私達ではあの子は幸福に出来ない)



心だけは守れない。


それが分かっているからステイルも黙ってついて来ているのだろう。



「……上条当麻」


「……頼みますよ!」

888 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/05/08 07:56:52.57 ID:qwWJTIfDO


 20 A

「……………」



一方通行は夜の学園都市を歩いていた。


それはただ単にコンビニに買い物に行くだけ、ただそれだけの用事なのだが…。



「…くそっ、面倒臭ェ野郎に」


「…一方…通行!」


一方通行が遭遇したのは、御坂美琴。



「………ッ」



美琴は一方通行と向かい合った途端、険しい顔つきになる。



「………はン…、随分つまンねェ顔をするようになったじゃねェか、超電磁砲<オリジナル>」


「…五月蝿い」



美琴の身体から紫電が弾ける。


美琴の顔には怒りと憎しみの他に…焦りの色が強く出ていた。



「……なんでいつも…! お前が出て来んのよ…!」


「…一方通行!!」

895 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/05/13 13:10:23.41 ID:dLsNwJdDO


「…いつも、ねェ…」



美琴の反応で、一方通行はある事に気が付く。



「……なンでテメェはそンな反応をしやがンだ?」


「……ッ」


一方通行が美琴と係わったのは過去に二度しか無い。


一度目はあの実験の時。


そして二度目が、二ヶ月前の…美琴の暴走を止めた時だ。


…あの時の記憶は、目の前の奴は覚えていないはずだ。


そうなるようにわざわざ第五位に貸しまで作って記憶に蓋をしたのだから。

896 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/05/13 13:11:34.23 ID:dLsNwJdDO



「…俺を邪険にすンのは当然だろォが、…その口ぶりが気にいらねェな」


「…………なんの事よ」


「ごまかそォとしてンじゃねェよ、…テメェ思い出したな?」


「…………」


たった一言。


ただそれだけで美琴の状態を見抜く。



「……チッ、その様子じゃテメェはあの時と同じみてェだな」



一方通行は美琴に一歩近づく。



「………ッ」



近づく一方通行を警戒してか、美琴も一歩後退する。



「胸糞悪りィし気も進まねェが……」



また一歩近づく。


近づきながら、首のチョーカーに付いたスイッチを切り替える。



「…今度こそ頭冷やして貰うぞ、…無理矢理にでもなァ…!」

897 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/05/13 13:29:15.87 ID:dLsNwJdDO


 21 A

「……ではお姉様は全て思い出しているんですのね?」



白井黒子は、電話越しに語られる状況に…眩暈を覚えるような心境だった。


『…貴女をあまり深く係わらせない方が良いと判断して今まで伏せていましたが…そうも言ってられない状況かもしれないので』



電話を通して語る声は申し訳なさそうな声だが…あくまでも冷静で、落ち着いた印象を受ける。



「むしろもっと早く伝えて欲しかったですの…わたくし不安で胃に穴が空くと思いましたわ」


『…もっともですね、そこは謝罪しましょう』

898 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/05/13 13:49:28.39 ID:dLsNwJdDO


「…それで、貴方はわたくしにどのように動いて貰いたいのですか?」


『……話が早くて助かります』


このタイミングで自分に連絡してきたという事は…そういう事なのだろう。


自分にやって貰いたい事があるのだ。…つまり、自分を利用しようとしているのだろう。



「事と次第によりますが敢えて利用されて差し上げますの、わたくしはどうすれば宜しいのですか?」



白井は電話越しに会話する人物…海原の偽物の事を信用などしていない。


わざわざ他人の姿を借りて本当の姿を隠しているのだ、そこは当然だろう。


だが…その行動までは否定したりは出来ない。



(…この男もお姉様の為に動いているようですわね)


その部分だけは、信用しても良い。

899 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/05/13 14:11:42.51 ID:dLsNwJdDO


 22 A

「…さて」


白井黒子との会話を終えた海原…その姿を借りたアステカの魔術師、エツァリはこの先の行動について思案する。


(…禁書目録の方はこれで安全でしょう。…こっちは自分にはあまり関係無いですが…彼女に危害を加わえると御坂さんの立場が悪くなるでしょうからね)


彼が白井黒子に頼んだ事は…禁書目録を速やかに安全な所に待避させる事だ。


他の連中は見守る事にしたようだが…自分にはあれの想いなど知った事では無い。



「……彼が御坂さんを選んでくれていたのなら良かったのですが」



…それはもう叶わないだろう。


今、彼がこの学園都市を駆けているのは禁書目録の為だ。


自分が想う者、御坂美琴の為では無い。

900 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/05/13 14:49:20.50 ID:dLsNwJdDO


「はたして、そう上手く行くかにゃー?」



背後からの声で、意識を内から外へ向ける。


声の主は、土御門元春。


「…貴方は彼の方を見ていたのでは?」


「そっちは他の奴に任せてきたぜい」


「そうですか…」


「……一方通行が超電磁砲と接触した」


「………!」


「どうやら戦闘に入ったらしいな、…一方通行に連絡しなかったのがまずかったかもな」


「……御坂さん」


「…俺はそっちにはあまり関わるつもりは無い。…だがお前はどうする?」


「………」


海原は土御門の問い掛けには答えない。


…そのまま彼の横を通り過ぎて目的の場所へと向かう。


金星の光は…太陽の下では感じる事は出来ない。


だが、それは存在しないのでは決して無い。


日が沈めば金星は輝く。


そして、今は夜だ。


光に紛れていた金星が、微かにだが輝く。


再び太陽が昇るまでの僅かな時間だが…彼は輝く事を決意した。


たとえ、その光が彼女に届かなくとも構わない。


それでも、自分の想いが変わる訳では無いのだから。

901 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[] 2011/05/17 20:15:37.17 ID:HFtiNHDDO


 23 A

夜の学園都市に鳴り響く音…そして瞬く光。


その源となる存在は学園都市第三位、御坂美琴。


彼女は自身の能力を最大限に駆使していた。


電磁力を使い、地面を平面的に移動するだけで無く、群立するビルや鉄柱などを利用してより多方面に、より複雑な動きを見せている。


さらに、もっと単純な…彼女の最もシンプルな能力の使い方である電撃。


それを使っての牽制。…電撃の光を使った目眩まし。

彼女…御坂美琴は自身の持つ全てを駆使していた。


それは、逃げる為にだ。


最強の能力者…学園都市の第一位、一方通行。


彼女にとって最悪の存在。


悪魔にも等しい憎むべき存在。


彼から逃げる事に、御坂美琴は必死だった。

902 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/05/17 20:36:08.07 ID:HFtiNHDDO


迫りくるあれは、絶望だ。


追いつかれれば…自分の望みは叶わなくなる。


…嫌だ。


そんなの絶対に嫌だ。


もう忘れたくない。


もう失いたくない。


…もう、泣きたくない。


なのに…なんで邪魔するのよ。


そんなにいけない事なの?


当麻を好きでいる事が。


当麻の傍に居たいと想う事が。


そんなはず……無い。


絶対に無い。


ちがう、…駄目だとしても構わない。


たとえ誰に否定されても…誰も認めてくれなくとも。

私は、私の想いを貫くんだ。


だから……誰にも邪魔はさせない。

905 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[saga] 2011/05/24 18:04:43.23 ID:GgNrsegDO

「…いい加減諦めろ超電磁砲<オリジナル>」


「………っ…!」


一方通行は、美琴の進路を塞ぐように立ちはだかりながら告げた。



「テメェの力じゃ俺から逃げンのは不可能だ」



美琴が咄嗟に放った電撃を何も無い上空へと反射しながら、一方通行は舌打ちする。



「……これで8回だ」


「………」


「…俺のお情けで殺さなかった回数、気づいてねェとは言わせねェぞ」


…分かっている。


たった数分の間に…第一位と第三位、その実力の圧倒的な差を痛い程に感じている。


「……」


でも。


「………だから何?」


美琴は決して諦めようとはしなかった。

906 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[saga] 2011/05/24 18:27:09.28 ID:GgNrsegDO



「…逆に言えばあんたは8回、私を殺せなかった」


「………」


「それはなんでかしら?」


「……くだらねェ」


美琴の言葉をその一言で跳ね退ける一方通行。


それを聞いた美琴は、以前聞いた話に確信を得た。


「……妹達<シスターズ>」


「…………あン?」


「…あの子達とあんたが繋がりを持っているって話……どうやら本当らしいわね?」


妹達と一方通行の間にあの実験の時とは違う…新しい繋がりが出来ている。


以前のような殺す側と殺される側といったものでは無い、…何か絆のような繋がりが。


「…あの子達の一人から聞いた事がある、あんたはあの子達を傷つける事を極度に恐れている…ってね」


「………………」


「……なら、あの子達のオリジナルである私は? あの子達と同じ遺伝子、同じ顔を持っている私はどうかしら?」

907 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[saga sage] 2011/05/24 18:38:30.99 ID:GgNrsegDO


「………チッ……」


「……無理なんでしょ? だからこそ私はまだ生きている」


美琴は未だ追い詰められた状態だ。


だが、たった今述べた事が真実ならばいくらでも付け入る隙がある。


「……殺さずに止めようなんて思っているならあんたこそ諦めろ…!」








「私の想いはそんなに軽いものじゃない」

908 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/05/24 19:06:44.43 ID:GgNrsegDO



「……そこまでです、御坂さん」


ふと、どこからか声が聞こえてきた。


「…………誰?」


声は近くに枝分かれしていた狭い路地の奥から聞こえてきたようだ。


微かにだが足音が近づいて来ている。


「…………海原か」


同じく声がした路地に顔を向けていた一方通行が声の主を言い当てる。


「…海原 ……海原光貴?」


その人物は美琴も知っている……だが。


「…流石です一方通行。今の自分は海原光貴の姿も声も借りていないのに見抜くとは」


「…はン、オマエのいけ好かねェ雰囲気だけあれば馬鹿でも分かるだろォよ」


路地の奥から姿を現したのは、褐色の肌をした男だった。


「一応自己紹介をしましょうか、…海原光貴の姿でしかお二人には接していませんでしたし」


(……こいつあの時の)


美琴は思い出す。


現れた男は以前…あの夏休みの最後の日に彼と対峙した男だ。


「自分の本当の名前はエツァリと言います」


「………」


「…御坂さん、貴女を止める為に…自分は今ここにいます」

909 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[saga sage] 2011/05/24 19:32:38.65 ID:GgNrsegDO



「……私を止める?」


この男はいきなり現れて何を言い出すのか。


「………また邪魔? …どいつもこいつも…!!」


美琴の顔がさらに憎悪で歪む。


「そんなに楽しい? 私の邪魔をすんの? …ねぇ?」


辺りに電撃による火花が爆ぜる。


美琴の怒りは爆発する寸前だった。


自分を慕っているはずの黒子に。


何故関わってくるのか理解が出来ない、出会いたくもない存在である一方通行に。


さらには自分がよく知らない男にまで。



「…うっとうしいのよ」


「………全員死ねば良いのに」

911 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[saga] 2011/05/30 17:09:35.43 ID:jCac9tMDO

「…………」



一方通行はもはや話は通じないと断して、前に出ようとした。


だがその歩みをエツァリは片手で制する。



「………退け」


「退きません、…ほんの少しでいい、彼女を説得する時間を下さい」



エツァリは視線を美琴に向けたままで一方通行に頼む。



「……人の話を聞くよォな状態に見えンのかよ?」


「…………」



一方通行の指摘を無言で返す。



「………チッ、好きにしろ」


一方通行はエツァリの意思は揺るがないだろうと思い、その場から少しだけ離れた。



「………ありがとう、一方通行」



エツァリは視線を動かさないままで、小さくその言葉を放った。

912 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[saga sage] 2011/05/30 17:12:53.74 ID:jCac9tMDO



「……勝手に話を進めてんじゃないわよ」



そのやり取りを見ていた美琴は、まるで全く面白くない芝居を見せられているような、…ただただ時間を無駄にしたような怒りが込み上げてきていた。



「説得? …私を? 何に対して?」


「…………」


「そんなに私が異常? …ううん違う、……なんであんたのような良く知りもしない奴からそんなもんされなきゃいけないの?」



バチバチと電撃を爆ぜさせながら美琴は続ける。





「私の前から消えろ、私はお前の指図も受けないし話も聞かない」





「私の前に立つな、私の視界に入り込むな」





「邪魔をするから私はそれを掃うだけだ、邪魔をしなければそんな事私はしない、…黒子も、あの女も、…一方通行も、私の邪魔をするから…私はそれを掃うだけなのに!」

913 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[saga sage] 2011/05/30 17:14:55.00 ID:jCac9tMDO



「………御坂さん…」



エツァリは彼女の名前を呼ぶ。



「…自分は貴女がおかしいとは思っていません」



「その感情は…人ならば誰だって持ちえるモノですから」


「…でも、その想いは貴女を傷つけている…今も傷つき続けている」


「その傷が疼くから貴女は苦しむ、…疼いて、掻きむしるから更に傷が広がって痛みが増すんです」


「……………」

914 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[saga sage] 2011/05/30 17:16:24.89 ID:jCac9tMDO



「自分達は…貴女にその傷の存在を忘れさせました」


「…勿論あの時はその場凌ぎのただの応急処置でした、…時期が来れば、もしくは彼の側からそれの対処をして貰うつもりで…実際に偶然ですがそうなりました」


「…………それが何?」



「…仕方なかったとはいえあれは失敗でしたね、記憶に蓋をした事も、…貴女がそれを取り戻したタイミングも最悪と言っていい」


「……………」


「…あれが無ければ、貴女はこんなに狂う事も無かったでしょう」


「……何? …もしかしてそれって謝ってるの?」


「…いいえ? 謝罪なんて無意味でしょう? …貴女はもうそんな事どうでもいいはずです」


「……………」


「これはただの自分の反省みたいなものです、…貴女に聞かせたい事はまた別にありますよ」


「……」

915 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[saga sage] 2011/05/30 17:18:11.56 ID:jCac9tMDO



「…簡単に言いましょう、彼を…上条当麻を諦めて下さい」


「………………」


「…貴女はもうとっくに気づいてるはずです、彼はもう貴女には振り向かない」


「貴女がしている事は…玩具を欲しいと駄々をこねて親を困らせているのとほとんど変わらない…買って貰えないとすでにわかっているのにただ甘えたいから我が儘に振る舞っている…少しだけ賢しい子供と同じだ」


「それだけならまだ可愛いで済むかもしれない、…でも貴女には力がある」


「簡単に人を傷つけてしまえる力が」


「…自分は貴女が傷つく所は見たくないし、貴女が人を傷つける所も見たくありません」


「……だから、諦めてくれませんか?」

916 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[saga sage] 2011/05/30 17:19:42.96 ID:jCac9tMDO



エツァリの言葉を聞き終えた美琴の反応は、このようなものだった。



「……ふ…ふふ」



顔を僅かに臥せ、息を吐くような微かな笑い声。


そして。



「…ふ…あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっ!!!!」



それはすぐに狂ったような笑い声に変貌する。



「……やはり、聞き入れては貰えませんか」



その笑い声を聞きながらエツァリは落胆の声を上げる。

917 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[saga sage] 2011/05/30 17:21:14.47 ID:jCac9tMDO



「聞き入れる? 何を? さっきあんたがほざいたの馬鹿みたいな事を!? ……あはははははははははははははははははは!!!! なにそれ? 出来る訳無いじゃん!! 構って貰いたくて何が悪いの? 一緒に居たいと思って何がいけないのよ!? 我が儘の何処が悪い? 子供じみた駄々がなんで駄目なの!? そうさせてる奴が居るからそうしてるだけなのになんで私が責められるの!?」


「…………」


「なんとか言いなさいよ? …くっふふ…あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっ!!!!」



…やはり自分では駄目なようだ。


偽りの仮面を脱ぎ捨て、本当の姿を晒して…自分の本心を紡いでも……彼女の心には届かない。



(……残念です、御坂さん)

918 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[saga sage] 2011/05/30 17:22:35.04 ID:jCac9tMDO




もう彼女を救う手段は自分の手元には無い。


…いや、きっと始めから無かったのだろう。


自分では彼女に遠すぎた。


自分の言葉は彼女には届かない。



(…わかっていた事ではありますけど、突き付けられると辛い物ですね)


「……本当に残念です、御坂さん」

919 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[saga sage] 2011/05/30 17:23:32.96 ID:jCac9tMDO


「…………一方通行」


「……なンだよ」


「…彼女を止めて下さい、もう十分です」


「…………けッ」


「…良いンだな? 次は第5位の甘っちょろいシケた蓋とは比較にならねェ………俺の能力で脳細胞に記録されたメモリを直接破壊すンぞ」


「構いません、寧ろそれが御坂さんの為になります」



「…彼女の思い出を」







「殺してあげて下さい」

921 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[saga sage] 2011/05/30 17:43:37.26 ID:jCac9tMDO


「……冗談じゃない」



エツァリの言葉に反応したのは美琴だった。



「思い出を…殺す?」



紫電を身体に纏わせて、その怒りを外側へと放出する。



「…ふざけんな、…………………ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!」



叫びと共に、四方八方に電撃の槍が放たれる。



「嫌だ…!! 絶対に嫌!! もう亡くさないって決めたんだ!! もう失ったりしないって決めたんだ!! …例えどんな事をしたって私の心は殺させたりなんかするもんか!!」

923 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[saga sage] 2011/05/30 18:12:01.48 ID:jCac9tMDO

>>920 もうここまで来たら変でも押し通すしか無いんだぜい…orz



美琴は電磁力を操り、近くにあった街灯へと自身の身体を誘導する。



「あんたらの何処に私から思い出を奪う権利があるの? …これは私のモノだ!! 他の誰が好きにして良いモノじゃない!!」


張り付いた街灯を足掛かりに更に上へ、…ビルの側面を伝い…駆け上がるように移動する。



「私の大切なモノを奪うなら…!!」


「………ッ!!」


ビルの屋上に到達した美琴。


「……オマエ…ッ…!!」



…そこには事態を見守る影が一つあった。



「……あんたも失う覚悟を決めろ!!!!」

924 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/05/30 18:24:06.92 ID:jCac9tMDO


美琴の動向を主に監視していたのは…他でもない彼女達だ。


今現在の一方通行との接触は、ただ偶発的に起きたものであるが、その事態を放置などしないだろう。


それは、誰かに従い行った事ではなく…彼女達自身が決めた事だ。


一方通行を介入させたのも彼女達の進言による所が大きい。


妹達<シスターズ>



御坂美琴の軍用クローン、彼女達の一体を、美琴は捉えていた。


一方通行の弱点となりうると確信した存在。


今の御坂美琴には、それ以外に思う事は無い。

926 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[saga sage] 2011/05/30 18:47:47.97 ID:jCac9tMDO



……………


一瞬で目の前が真っ白になった。


……何が起きた?


………身体が…痛い。


……私は…どうなった?


………



「……俺が甘かったみてェだな」



……声が聞こえる。



「まさかオマエが……こいつらに手を出すとは予想して無かったからなァ」



…声の主は……一方通行。


……そうだ、私はこいつから…逃げなくっちゃいけないんだった。


…だから、近くに居た妹を盾にしようとした。



「…俺がオマエの行く手を阻む理由……理解出来たかよ?」



…痛い、……身体が動かない。



「……オマエは周りが見えてねェ、…オマエが守ろォとしたもンまで…今のオマエはぶち壊す」



一方通行の背中に白い翼みたいなものが見える……天使? ……あんたが?




………笑えない。

927 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[saga sage] 2011/05/30 19:11:09.81 ID:jCac9tMDO

「……あ…ぐ…っ…?」


「…………」


それは一瞬だった。


美琴が妹達の一人に、攻撃を加える刹那…。


辺りに光が噴き出した。


否、…それは白い翼のようなものだ。


一方通行の身体から顕れたそれは、直後に美琴の身体を吹き飛ばし…ビルの屋上にたたき付けた。


「…………と………ま…」


一方通行は美琴を捩伏せ、傍らで見下ろしている。


「………助……け……」



目の前の少女は…ボロボロに痛めつけられた身体の痛みからか、大切なモノを失う恐怖からか……大粒の涙を流している。



「…………」



一方通行は哀れむような眼を彼女に向ける。


出来る事ならば…傷つけたくはなかった。


自身が守ると決めたモノと同じ姿をした少女を。



「………や…だ………と…ぅ……ま…!」


「…………」


…これ以上は見るに堪えない。



「………今、解放してやる………もう楽になれ」



一方通行は美琴の額に手を差し伸ばした。

928 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[saga sage] 2011/05/30 19:24:20.63 ID:jCac9tMDO



「…待って!!」


一方通行の手が美琴に触れる寸前で、それを制止する声が掛けられた。


一方通行はその声のした方へと眼を向ける。


そこに居るのは、白い修道服を着た銀髪碧眼の少女。

それに…。



「………白いチビガキと………テメェか」



「……一方通行」




上条当麻。


その二人が、必死な面持ちでこちらを見据えていた。

935 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/06/03 18:11:34.60 ID:yr+Ec17DO

んー…、ちょっと返事するか。

美琴の事は何度も言うけど好きだよ?

補足になるかな? ヤンデレってつまりは精神を病む程に人を好き(愛?)になってしまう事だろう?

このスレの美琴はたとえ自分の取り巻く全てをかなぐり捨ててその上から唾を吐き付けてでも上条さんからの気持ちが欲しい子なの。
そんでそれが上手く行かないからさらに想いは強くなる。

例え話をするなら目の前にどうしても欲しい物、それが無いとむしろ死ぬと確信してる物があるとする。

しかし今、自分の腕には大事にしている荷物がある。

…欲しいけど取れない。

手に入れるには荷物を捨てなくっちゃいけない。

さて、君達はどうする?





…ちなみに俺は捨てた。




捨てて後悔したぜ!

……うん、やっぱり虹だよね。
惨事なぞ糞喰らえぜよ。

…長々とすまんな。

今日投下するからちょっと待ってくれ。

937 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[] 2011/06/03 20:59:12.54 ID:yr+Ec17DO


 行間(Final)


「インデックス…!」


「……っ…!」



上条は夜の学園都市を走り続けて、遂にインデックスを見つけ出した。

彼は、すぐさま彼女の元へと近づいていく。


「…よかった、……探したぞマジで……!」


「……とうま……あ!」



上条はインデックスの目の前まで来ると…倒れ込むようにへたり込んでしまった。



「…くそ…! …足に力が……くそ!」



ずっと宛ても無く走りつづけたのだ、彼の身体はとっくに限界だ。


「……わたしを…さがしてたの?」


「当然だろ!!」


「…っ」



インデックスの言葉に上条は間髪入れずに返す。


荒く息を吐きながら、まともに立ち上がる力すら尽きたはずなのに、…その一言だけは力強く。



「……もう…会えないかと思ったぞ……!」



彼がインデックスに向ける顔は、くしゃくしゃで涙が滲んだ泣き顔だった。


それでいて、心から安堵した微笑みにも見えた。

938 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/06/03 21:25:02.74 ID:yr+Ec17DO


「………ッ」


インデックスは、上条が自分を探していた事を、素直に嬉しく思った。


彼は、全て知った上で自分を探してくれていた。


それだけで瞳の奥から込み上げていくものを感じる。

…でも。


「………とうま」


まだやる事がある、彼も……自分も。


「…おねがい、…もう少しだけ頑張って?」


インデックスは白井と離れて行動していた。


白井達の言う通りに、安全な所へと行く事は出来ない。…それでは何も解決しない。


だから、隙を見て抜け出してきたのだった。


「…美琴を」


インデックスが向かっている先で、時折まばゆい紫電が闇を照らしている。


「助けてあげなきゃ」


インデックスは美琴と一方通行が戦っている事までは知らない。


でも、彼女は今…苦しんでいる。


その苦しみを取り払うには

彼と……自分が行かなくてはいけないはずだから。

952 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[] 2011/06/04 23:30:53.26 ID:FX+LKULDO


 24 A

「…一方通行」


「………」



上条の呼ぶ声に、一方通行はただ無言で返す。


しゃがみ込んでいた体制から立ち上がり、向かい合うように身体の向きを変えた。



「……一応聞いといてやる…何しに来たンだテメェは?」



一方通行は上条に問い掛ける。



「……止めに来た、もう十分だろ…!」

953 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/06/04 23:33:11.20 ID:FX+LKULDO



「……止めに…ねェ、……それはどっちに吐いた台詞だソレは?」


「…………」


「…俺に言ったンなら聞けねェな、超電磁砲<オリジナル>が危険なのはもう疑いよォがねェ、…それを放置する程俺は甘くもねェ」


「…ッ……!」



一方通行の言葉に上条は何も言い返せない、…ただ拳を強く握り絞めるしか出来ない。



「……とうま」



一方通行の傍らで倒れる美琴を抱き寄せるインデックスは二人のやり取りをただ見守る。


美琴は意識を失っているのか、何の反応もない。

954 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/06/04 23:34:43.39 ID:FX+LKULDO



しばし、その場を沈黙が支配した。



「………頼む…!」



その沈黙を破ったのは、上条。



「………あン?」


「………これは…御坂の事は俺が悪いんだ…」


「…………」


「……だから、御坂の事は俺がなんとかしなくちゃいけない事なんだ…! だから…」



苦しそうな表情を浮かべて上条は言う。


「もう止めてくれ…! 一方通行!!」

955 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/06/04 23:36:06.73 ID:FX+LKULDO



「……………」



上条の必死な言葉。


それを聞いた一方通行は、怠そうに息を吐いた。


「……ったく、くっだらねェな」


「………」


「…もともと俺はやりたくてやってる訳じゃねェ、…誰も止めらンねェから仕方なくやってるだけだ」


「…一方通行」


「テメェがキッチリとケツ拭くってンなら俺は何もしねェ……出来ンならなァ」


「………」



一方通行はかったるそうにその場から離れる。



「……この程度でうだうだしてンじゃねェっつの馬鹿が、…じゃあな元凶」



それを最後に言い残し、一方通行は夜の闇の中へと消えて行った。

956 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/06/04 23:37:31.37 ID:FX+LKULDO




「…………」


「………とうま」


「………まずは御坂を病院に連れていくか」



インデックスが抱き寄せている美琴を、静かに受け取る。



「………元凶、か」



上条は美琴を抱えるように抱き上げながら呟く。



「……確かに…な」


「……とうま」


「…………行くか」



そして、夜に静けさが戻る。

957 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/06/04 23:55:24.67 ID:FX+LKULDO


 25 A

…翌日、美琴が目を覚ましたのは病室のベッドの上だった。



(………………)



何故、自分がここに居るのか覚えていない。


記憶が途切れる前の最後の光景は…一方通行に捩伏せられて…夜の闇の中で光る紅い眼を見上げている所だ。



(………忘れて……ない)



自分の記憶は奪われていない。



(……当麻の事、ちゃんと覚えてる)

958 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/06/04 23:58:26.16 ID:FX+LKULDO




…何故?


あの状況で…一方通行が自分の事を見逃した?


…判らない。


「……………!」



起き上がろうと身体を起こしてから気づいた。


自分のベッドにもたれ掛かって……静かに寝息を起てている人物に…。


「………」


…起きる気配は無い。





美琴は微笑む。





ただ…その顔に笑顔を作る。

959 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/06/05 00:00:31.05 ID:Sw2Dw67DO




…何故?


あの状況で…一方通行が自分の事を見逃した?


…判らない。


「……………!」



起き上がろうと身体を起こしてから気づいた。


自分のベッドにもたれ掛かって……静かに寝息を起てている人物に…。


「………」


…起きる気配は無い。





美琴は微笑む。





ただ…その顔に笑顔を作る。

960 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/06/05 01:27:38.33 ID:Sw2Dw67DO


 routeA epilogue


病室を離れたのはほんの少しの間だった。


理由だってたいした事のないものだ。


油断した?


…違う。


本当にそんな事になるなんて思っていなかった。


目が覚めたら、話し合うつもりだった。


自分が元凶になった事。


二人の少女を傷つけてしまった事から。


もう逃げたりしないと、決めた。


決めていた。


誰も傷ついたりしない方法を探して、…必ずそれを選ぶって。


……なのに。

961 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/06/05 01:29:17.63 ID:Sw2Dw67DO


「……御…坂…?」


「……………当麻…?」


「…イン…デック…ッ!!」



上条は目の前の光景を現実と受け止める事が出来ずにいた。


美琴の手の中には刃物が携えられていた。



何処にでもあるような、簡単な造りの果物ナイフ。



それは今、赤い液体を滴り落としながら鈍く光を反射している。



「……あ~あ、後は隠すだけだったのに」



彼女の足元には、…ナイフに附いたものと同じ色をした水溜まりが出来ている。


「……ぅ…ぁ……?」



その赤いものの中心に、…そこにあるモノをただ見つめる。



「…はぁ、…上手く行かないなぁ…ホント」

962 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/06/05 01:30:47.10 ID:Sw2Dw67DO



それは、もう動かない。



もう何も語らない。



…もう、笑わない。



「……な…んで……」



決めたばかりなのに。



「……なんで…!!」



まだ、自分は何もしていない……償っていないのに。





「……………御坂あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!!!!」

963 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/06/05 01:31:53.89 ID:Sw2Dw67DO




上条は叫ぶ。



悲しみよりも……怒りと憎しみが心を支配する。



「あぐっ!? 当…ま…がふっ…!!」



…否、感情をぶつける先があったから、……憎悪を言い訳にして、悲しみから逃げ出したのだ。

965 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/06/05 01:33:39.65 ID:Sw2Dw67DO

…死んだ。
守ると決めていた存在は、突然…何も告げられずに。止められなかった。
自らの行いが原因で、狂ってしまった少女の愚行を。

何がいけなかった?


自分は…どうすればよかった?


どうしてこんな結末になった?



「…あ…が………ぅ…」


「畜生…畜生畜生!! インデックスが何したんだよ!? なんで…なんでだよ!!!!」



ひたすらに拳をたたき付ける。



「お前の事考えてたんだぞ!? 自分だって辛いはずだったのに…!!」



「なんでインデックスなんだよ!? …なんで俺じゃないんだよ!? ………俺が……俺が全部悪いはずなのに!!」

966 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/06/05 01:35:31.11 ID:Sw2Dw67DO



「………あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!」







その時、上条当麻は砕け散る。







何も出来なかった自分自身への怒りと憎しみを…大切なモノを奪ったモノへのそれに紛れ込ませて…ただひたすらにその現実から逃げた。










もう、以前の上条当麻へは戻れない。

967 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/06/05 01:37:03.27 ID:Sw2Dw67DO




「…………もう、言って良いよな?」


しばらくして、その動きを止めた上条が呟く。



「…誰も傷つかない最高の結末、…か」



「はは…ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!」




上条は…ずっと殴り続けて動かなくなったそれと…その近くにある、血だらけでもう動かないそれをみながら笑う。







「………あーあ」








「…不幸だ」

968 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[] 2011/06/05 01:38:42.20 ID:Sw2Dw67DO




    BAD END

969 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/06/05 01:40:58.10 ID:Sw2Dw67DO

これにて全部終了です。


…やっと終った。

ラストだけで二ヶ月掛かるとかどんだけ。

983 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[] 2011/06/06 19:48:16.45 ID:ZDJ0QqaDO

乙センキューだ。

でもなんか1000まで行かない気がするからちょっとなんかやろうと思う。



…で、これを書こうとした段階の時に紙に書き出したものがなんか妙に笑える気がするから投下する。

注意としては、完全に話の内容がズレてる。

台本調でキャラの口調無視してる(ホントに話の骨組みのつもりで書いたから)

途中までしかない。

こんな所だな、では投下。

984 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/06/06 19:50:18.99 ID:ZDJ0QqaDO

 1

黒子「どした?」

上条「……」

黒子「はよ言えや」

上条「インデックスの事犯っちゃった」

黒子「マジか」


 2

禁書「……」シクシク

上条「……えーと」

禁書「………」シクシク

上条「……うーん」

禁書「…とうま?」

上条「………」タタッ

禁書「…逃げた」

 3

黒子「今日はここ泊まれ」

上条「さーせん」

黒子「てめぇお姉様に言うなよな?」

上条「おk、あとインデックス見てきて」

黒子「パシってんじゃねーよKs」

985 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/06/06 19:51:58.69 ID:ZDJ0QqaDO

 4

黒子「来た」

禁書「…とうまじゃねーし」

黒子「で? お前どうすんの?」

禁書「帰って来るの待ってる」

黒子「やめとけ、帰ってこねーから」

禁書「やだ」

黒子「駄々こねんな、奴の担任とこ行くぞ」

禁書「やだやだやだやだ!」

黒子「めんどいなお前」

 5

美琴「どこ行ってたん?」

黒子「ないしょ」

美琴「ふ~ん?」

黒子「……ふぅ」

 6

上条「……はー」

美琴「どした?」

上条「なんでもねーし」

美琴「うそつくな」

上条「…財布落としたー」

美琴「もっとましなうそ付けや」

上条「おうふ…」

986 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/06/06 19:53:30.56 ID:ZDJ0QqaDO


 7

禁書「…まだ帰ってこねーし」

禁書「…………」

禁書「…とうま」グスン

 8

美琴「好き」

上条「…なんだってー」

美琴「好き」

上条「話聞いてた?」

美琴「嘘乙。好き」

上条「…無理」

美琴「……やだ、好き」

上条「困ったな、うーん」

 9

禁書「…帰ってこねーまだこねー」

黒子「お姉様も帰ってこねー」

禁書「あの野郎」

黒子「まさか」

987 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/06/06 19:55:09.52 ID:ZDJ0QqaDO

 10

美琴「やらないか」

上条「なんと」

美琴「やらないか、むしろやれ」

上条「…えー」

美琴「じゃーちゅーして」

上条「…ちゅー」

美琴「……いまだぁ!!」

上条「いやーん///」

美琴「よいではないかよいではないか」

上条「やめろってばよ」

美琴「けち」

上条「帰る」

美琴「…一緒にいるって言ったのに?」

上条「うん」

美琴「…うそつき」

美琴「……うそつき」グスン

 11

上条「ただいま」

禁書「どこ行ってた」

上条「かくかくしかじか」

黒子「てめーなにしてんだこら」

上条「ごめんなさい」

黒子「ざけんなしね」

禁書「ゆるしてあげる」

黒子「えっ」

上条「えっ」

988 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/06/06 19:56:46.51 ID:ZDJ0QqaDO


 12

美琴「うー」

美琴「…やっぱ好き」

美琴「…奪っちゃうか」


 13

小萌「一昨日の事Kwsk」

上条「かくかくしかじか」

小萌「カスが」

上条「でもゆるしてくれたよ?」

小萌「だから貴様はあほなのだ」

上条「えっ」

 14

美琴「当麻よこせ」

禁書「ざけんな」

美琴「あ"?」

禁書「あ"あ"ん?」

黒子「なにこれこわい」

989 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/06/06 19:58:37.52 ID:ZDJ0QqaDO


 15

上条「なにしてんだ?」

禁書「女の」

美琴「戦い」

上条「…えぇ~」

禁書「…で」

美琴「どっちが良いの」

上条「インデックスで」

禁書「わーい」

美琴「…orz」

上条「帰るぞ」

禁書「おk、あばよ負け犬」

美琴「……」

美琴「……まだだ」



美琴「まだ終わらんよ」

 16

禁書「やらないか」

上条「無理」

禁書「けち」

上条「ごめん」

禁書「じゃあ行ってらっしゃいのちゅーは?」

上条「なにそれこわい」

 17

小萌「どうよ?」

上条「インデックスがこわいです」

小萌「しっかりしろカス」

上条「おk、わかた」

990 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[saga sage] 2011/06/06 20:00:50.85 ID:ZDJ0QqaDO


 18

美琴「よこせ」

禁書「またか」

美琴「じゃねーと殺す」

つ包丁

上条「おいやめろ」

ぶすり

上条「…ぐふ」

禁書「とうま!?」

美琴「えっ」



美琴「えっ?」

 19

禁書「…とうまー」グスン

美琴「……」シュン

冥土帰し「大丈夫だし」

禁書「……とうま!」

上条「オレ不死身だし」

美琴「………会わないで帰ろう」トボトボ

美琴「……ごめんなさい」

 20

美琴「……」ウジウジ

黒子「……」

美琴「………当麻」グスン

黒子「やつにたのむしかないな」

991 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/06/06 20:02:10.50 ID:ZDJ0QqaDO


 21

黒子「よし、やれ」

上条「マジか」

美琴「………」ウジウジ

上条「わかた、ゴメンインデックス」

美琴「Ktkr」

 22

禁書「てめー裏切ったな」

上条「すまぬ」

禁書「ざけんな」

992 : しょーちゃん ◆QsM9ueLMyk[sage] 2011/06/06 20:06:13.22 ID:ZDJ0QqaDO

ここまでだ。


どうだ全然内容違うだろう。

ぶっちゃけるとヤンデレールガンを特化させ過ぎたのがぐだぐだの原因です。

反省。

では梅をお願いします。

さらばノシ


元スレ:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1300798597/
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